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 シアン中毒

シアン中毒の概要は?
おもな症状
  大量の場合ただちに意識不明、痙攣
少量の場合、呼吸促進、顔面紅潮、血圧低下、速脈
似ている病気
  硫化水素などの有毒ガス高濃度吸入
起こりやすい合併症
  慢性中毒では痴呆、運動失調
急性中毒では心停止、酸素欠乏による合併症

シアン中毒ってどんな病気?
シアン化合物・青酸化合物による中毒
  イメージ画像 シアン化合物・青酸化合物が、経口、経皮、経気道によって体内に入り、細胞の呼吸を妨げて、細胞の活動を停止させることによって起こる中毒症状です。シアン化合物のことを青酸化合物とも呼ぶことから、青酸中毒と呼ばれることもあります。
 症状の発症は急激で、もっとも影響を受けるのは脳になります。一刻も早い処置が必要になります。
グリコ・森永事件で有名
   1984年(昭和59年)、「グリコ・森永事件」で犯人がチョコレートに混入させたものが青酸カリで、シアン化合物の一種です。
 また、第二次世界大戦中にナチスドイツの強制収容所で使われた毒ガスも、シアン化合物の一種です。

シアン中毒の原因は?
青酸ガスや青酸カリなど化学薬品
  イメージ画像 シアン化合物・青酸化合物には、シアン化水素・青酸ガス、シアン化カリウム・青酸カリ、シアン化ナトリウム・青酸ソーダなどがあります。いずれも、輸入穀類や果物の燻蒸(くんじょう)、冶金、金属のメッキ、アクリル樹脂や繊維の製造、化学薬品の材料に使用されます。
 大抵はこのような職業に従事する人に中毒が起こります。しかし、これが自殺や他殺目的など故意に使われることもあります。工業用に使われることの多い物質のため、社会人男性が自殺に使用するケースが多いです。
 シアン化合物が体内に入ると、細胞内でチトクローム酸化酵素の鉄と結合して、チトクローム酸化酵素の働きを妨げ、細胞が酸素を使って働くことをやめてしまいます。
急激な症状
   全身の臓器が急激に損なわれます。特に脳への障害が深刻になります。
 また、酸素が使われずに糖が代謝されるために乳酸が蓄積し、血液が酸性になる代謝性アシドーシスになります。このため、呼吸障害、意識障害などを促進します。
自然界にも存在する青酸化合物
   自然物でもシアン化合物・青酸化合物は存在します。
 青梅には、青酸配糖体が含まれています。小児が青梅を食べた場合、シアン中毒になることがあります。
家庭で起こることも
   火事・火災によってアクリル繊維、アクリル樹脂、ポリウレタン、ナイロンなどが燃えると、シアン化水素・青酸ガスが出るため、それを吸い込んでしまいシアン中毒になることもあります。

シアンを含む植物
バラ科の植物のタネ
  イメージ画像 ウメの種子の中の核、ナシ、リンゴ、アンズの種子には、シアン(青酸化合物)の一種である遊離シアンが含まれていて、食べると中毒を起こします。
 100gの種子の中に、100mg〜200mgの遊離シアンが含まれていて、20粒〜40粒食べると、致死量に達する計算になります。しかし中毒が起こるのは、殻をむいて中身を食べた時だけで、殻を破らずに食べれば中毒は起こりません。
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マメ科の植物のタネ
   アカシア、ソラマメなどのマメ科の植物、デンプンを採るタピオカの根にも、シアンの仲間の青酸配糖体(せいさんはいとうたい)が含まれています。
 青酸配糖体そのものは無害ですが、腸内細菌が作るβ-グルコシダーゼという酵素で加水分解されてヒドロキシニトリルが生じると、ヒドロキシニトリルから青酸が発生し中毒を起こします。
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シアン中毒の症状は?
重症では死亡
  イメージ画像 シアン中毒の症状の発症は急激です。シアンが体内に入ってただちに、あるいは長くても数分以内に症状が現われます。場合によっては数秒で死に至ることもあります。
 軽症の場合、頭痛、めまい、嘔吐が現われます。特徴的な症状としては、顔面紅潮、呼吸促進、頻脈(ひんみゃく)、代謝性アシドーシスなどが生じます。
 シアンの量が多く重症の場合は、血圧低下、呼吸困難、心房細動(しんぼうさいどう)、肺水腫(はいすいしゅ)、痙攣(けいれん)、意識障害が生じます。やがて呼吸停止、心停止に進行します。

シアン中毒の診断は?
シアンの特定
  イメージ画像 もっとも確実な診断法は、中毒の原因物質となっているシアンを特定することです。
 原因となったものが残っていればそれを調べます。経口摂取の場合、吐物や胃の内容物の中のシアンも調べる必要があります。
 簡易的な検査法としては、古い10円玉を濡らして、その上に吐物を乗せ、表面が還元されて綺麗になるのを見る方法があります。
アーモンド臭がすることも
   症状の急激な発症、代謝性アシドーシスなどの特徴的な症状、患者さんの呼気のアーモンド臭などが診断の手掛かりになります。

シアン中毒の治療法は?
軽症と重症とで異なる治療法
  イメージ画像 軽症の場合、酸素の投与と炭酸水素ナトリウム(メイロン)による代謝性アシドーシスの補正を行います。
 重症の場合、心肺蘇生(しんぱいそせい)、呼吸管理が必要になります。
シアン中毒特有の治療法
   シアン中毒に特有な治療法では、亜硝酸ナトリウムを投与して、シアンと結合しやすいヘモグロビンを作ります。これに結合したシアンを、チオ硫酸ナトリウムの投与によって尿中に排泄させる方法があります。
 この治療法に即した治療キットが市販されています。
 心停止が起こっていなければ、大抵はこの治療法で救命することができます。
後遺症
   重症の場合、後遺症として酸素欠乏による脳障害、パーキンソン症候群が起こることがあります。

シアン中毒かなと思ったら?
すぐに救急車を要請
  イメージ画像 シアン中毒が疑われる人を見付けたら、すぐに救急車を呼びます。
 酸素吸入をさせながら、治療キットがある救急病院へ搬送する必要があります。
 救急車が来るまでに人工呼吸などが必要になる場合もありますが、口移しでの人工呼吸は行ってはいけません。また、周囲の人も患者さんの呼気を吸ってシアン中毒になる可能性があることを十分に注意してください。
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