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急性腎不全


急性腎不全の概要は?

おもな症状

 

数時間〜数日間で起こる乏尿(1日尿量が400ml以下)
無尿
頭痛
吐き気
嘔吐
めまい

似ている病気

 

水分摂取過少
体内水分停滞(胸膜炎腹膜炎などの滲出液貯留期、うっ血性心不全に代表される心機能障害による浮腫など)
水分排泄過多(急性熱性疾患や運動による多量な発汗、激しい下痢、嘔吐)

起こりやすい合併症

 

ショック症状
高血圧
不整脈
心外膜炎
消化管の炎症・びらん・潰瘍
低ナトリウム血症
高カリウム血症
感染症


急性腎不全ってどんな病気?

腎臓機能の急激な低下

 

イメージ画像 急性腎不全とは、何らかの原因によって腎機能が数時間〜数週間のうちに急激に低下します。その結果、血清クレアチニンが高値になる高クレアチニン血症、血中尿素窒素が高値になる高窒素血症、体液中の水・電解質異常などが起こり、身体の内部環境の維持ができなくなってしまった状態です。

乏尿性急性腎不全と非乏尿性急性腎不全

 

 尿量が減少し400ml/日以下になる乏尿性急性腎不全と、尿量の減少をともなわない非乏尿性急性腎不全に分けられます。
 30%〜60%が、非乏尿性急性腎不全と言われています。


高齢者の急性腎不全は?

加齢による腎機能の低下

 

イメージ画像 腎臓の糸球体(しきゅうたい)の濾過率(ろかりつ)は、30歳頃をピークにして、その後徐々に低下していき、70代になると若年者の60%〜70%になります。
 濃縮能と希釈能の尿細管機能も加齢によって徐々に低下していき、調節可能域が狭くなります。
 高齢者では、こうした腎機能の低下によって、急性腎不全を起こしやすくなっています。

脱水症状から

 

 体内水分量は、若年者に比べて男女共に約10%減少するので、脱水症状を起こしやすくなります。下痢、嘔吐、発熱、利尿薬などの影響で簡単に腎前性腎不全になってしまいます。

治療薬が原因になることも

 

 高齢者では、同時にさまざまな病気を持っている率が高くなるため、薬剤投与の機会も多くなります。
 抗生剤・抗生物質、鎮痛薬・解熱薬、悪性腫瘍の治療薬・抗ガン剤、あるいは検査のための造影剤使用などが腎不全の原因になることもあります。


急性腎不全の症状は?

特有の症状はありません

 

イメージ画像 原因疾患によって現れる症状は多彩ですが、急性腎不全には特有の症状はありません。まったく無症状の場合もしばしばあるので、注意が必要です。
 蛋白尿、血尿、全身倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。不眠、意識障害の一種であるせん妄など、精神面での症状が現れる場合もあります。

尿量の低下

 

 典型的な例では、短時間〜数日で突然の乏尿や無尿になります。乏尿は1日の尿量が300ml〜400ml以下、無尿は1日の尿量が50ml〜100ml以下です。
 無尿の場合、両側性の腎動脈の閉塞、腎後性急性腎不全、急性皮質壊死をともなう播種性血管内凝固症候群、急速進行性糸球体腎炎などが考えられます。前立腺、尿道の閉塞による腎後性急政治不全では、下腹部で拡張した膀胱が触れます。むくみは脱水により生じた腎前性急性腎不全ではみられないので、注意が必要です。


急性腎不全の原因は?

3つに分類される原因

 

イメージ画像 障害された部位によって、腎前性(じんぜんせい)、腎性、腎後性(じんごせい)に分類されます。
 それぞれの占める割合は、腎前性が55%〜60%、腎性が35%〜40%、腎後性が5%以下と言われています。時間の経過と共にこれらの原因が組み合わさって、病態はより複雑になります。

 腎前性
循環血漿量の減少 出血、下痢、嘔吐、やけどネフローゼ症候群、利尿薬、肝不全、膵炎、副腎不全
心拍出量低下 心筋梗塞心筋症心筋炎、心タンポナーデ
末梢血管拡張 敗血症アナフィラキシーショック、肝硬変、麻酔薬
 腎性
腎血管 血管炎、悪性高血圧、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)
糸球体 急速進行性腎炎症候群、膠原病(ループス腎炎、強皮症など)、急性糸球体腎炎
間質 薬剤、膠原病(シェーグレン症候群など)、高カルシウム血症、横紋筋融解症
尿細管閉塞 尿酸、シュウ酸、多発性骨髄腫
 腎後性
腎盂尿管の閉塞 腫瘍、結石、凝血、後腹膜線維症、結紮
膀胱の閉塞 腫瘍、結石、凝血、前立腺腫瘍前立腺肥大症
尿道の閉塞 腫瘍、狭窄

腎前性急性腎不全

 

 腎臓自体に障害はなく、循環血流量が低下することが原因で起こる急性腎不全です。尿を作る原料である血液が、腎臓へ供給が不足して腎不全になった状態です。
 出血や下痢などによる循環血漿量の減少、心筋梗塞などによる重症の心機能低下、敗血症などによる末梢血管障害、両側腎動脈狭窄など、腎臓以外の臓器障害が原因になります。

腎性急性腎不全

 

 腎臓自体が障害されることが原因で起こる急性腎不全です。腎臓自体の病気、薬物、その他の病気の代謝産物による閉塞やその物質の腎毒性などが原因になります。

腎後性急性腎不全

 

 腎臓で作られた尿を体外へ排泄するための尿管、膀胱、尿道などの経路が閉塞することで起こる急性腎不全です。普通は、他臓器の腫瘍の後腹膜(こうふくまく)への転移、泌尿器科的な病気が原因になります。

急性腎不全の診断は?

血清クレアチニン

 

イメージ画像 血液検査での血清クレアチニンの値で診断できます。血圧も高くなります。
 しかし原因検査のために、血液検査、尿検査、超音波・エックス線・CT・MRIなどの画像診断、詳細な病歴・経過が必要になります。
 カリウムが高すぎると心臓が止まってしまいます。胸のエックス線写真では水が溜まり、心臓の影が大きく映ります。胸に水が溜まりすぎると呼吸が出来なくなり、とても危険です。

治療方針を決めるための検査

 

 急性腎不全は元に戻ることが可能な可逆性な病気ですが、高齢者では二次的に心不全や重症感染症を発症しやすいため、早期診断、早期治療が重要になります。腎性か、腎前性かによって治療方針が異なるため、どちらなのか診断する必要があります。
 尿中ナトリウム濃度、ナトリウム排泄率(FENa)の数値が、見分ける際の指標として有効です。

   腎前性   腎性 
尿所見
  蛋白
  沈渣
 
(-)〜(+)
軽微(赤血球、その他円柱)
 
(+-)〜(++)
赤血球、各種円柱
尿比重
尿浸透圧(UOsm)
尿中ナトリウム濃度(UNa)
尿中カリウム濃度
一定せず
500mOsm/kg以上
20mEq/l以下
上昇
多くは低張尿(1.010)
350mOsm/kg以下
20〜30mEq/l以下
低下
尿中/血漿中濃度比(U/P)
 尿素
 クレアチニン
 浸透圧
 
10以上
20〜30以上
1.5以上
 
10以上
20〜30以下
1.5以下
FENa(%) 3以下 5以上

急性腎不全の治療法は?

原因の病気を治療

 

イメージ画像 治療の基本は、原因となる病態を改善し、腎機能が回復するまで、腎不全によって破綻した体内の内部環境を維持することです。
 薬物療法で、臨床上、効果が証明されたものはありません。水と塩分の摂取は制限されます。
 進行した急性腎不全には、血液浄化療法が必要です。

脱水状態か溢水状態か

 

 体液が減少して脱水状態にあるのか、体液が過剰で溢水状態(いっすいじょうたい)にあるのか判断します。
 脱水による腎前性急性心不全では、電解質の数値を参考に、補液の内容を決定し早期に補液を試みます。
 脱水が改善されたり、溢水の場合、フロセミドなどのループ利尿薬を静脈注射します。利尿反応を確認しながら20mg〜100mgまで増量し、その間に尿量が2倍になれば継続します。
 ドーパミンの持続投与や心房性ナトリウム利尿ペプチドの投与も有効な場合があり、いずれも静脈投与します。これらは併用も可能です。

利尿薬で効果が出ない場合

 

 治療効果が現れず溢水となった場合、肺水腫、脳神経症状の出現、高カリウム血症(6mEq/l以上)、BUNが80mg/dl以上、HCO3が15mEq/l以下の場合、透析療法が必要になります。
 高カリウム血症は致命的な不整脈を誘発するので、透析を用意する間にも緊急の処置が必要です。

回復期

 

 回復期には大量の尿が出るため、喪失分を考慮した水の補充、電解質補液を行い、脱水状態にならないように注意します。

予後は?

 

 急性腎不全の予後は、約50%が死亡してしまいます。
 腎機能の不完全な回復が30%にみられ、そのうち腎機能が軽度低下していても安定した経過をたどる人は約25%です。腎機能が一時的に回復しても、徐々に低下する人が約5%にみられます。
 完全回復は約15%です。腎機能が回復せず、慢性的に低下する人は約5%です。


急性腎不全かなと思ったら?

病歴の確認を

 

イメージ画像 病歴をはっきりさせることがもっとも大切です。
 これまで罹患した病気、受けた検査や手術、薬物の服用歴とアレルギー、健康食品や嗜好品などについて詳細に医師に伝えることが、原因の早期診断に繋がります。
 外来による治療は不可能なので、入院が必要になります。

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