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 骨髄異形成症候群・MDS

骨髄異形成症候群・MDSの概要は?
おもな症状
  貧血
発熱
出血傾向
起こりやすい合併症
  急性白血病
肺炎などの感染症

骨髄異形成症候群・MDSってどんな病気?
造血幹細胞の異常
  イメージ画像 骨髄異形成症候群(MDS)は病名でも示す通り、骨髄中の細胞に形態異常が生じます。それと共に、血球数の減少を起こす病気です。
 血液の中に含まれる赤血球・白血球・血小板の種にあたる細胞である造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)自身に原因不明の異常が起こっているため、血液細胞の形態異常を起こし、正常な血液細胞を作れない無効造血状態が特徴です。
白血病に移行
   骨髄異形成症候群(MDS)の特徴は、血球減少の経過をみているうちに、白血病に移行する例があるという点です。
 以前は、前白血病(ぜんはっけつびょう)、不応性貧血(ふおうせいひんけつ)、くすぶり白血病と呼ばれていました。現在、治療法の確立が急がれている病気のひとつです。
高齢者に多い
   発症年齢のピークは60代〜70代で、人口の高齢化に伴って増加傾向にあります。男性に多くみられる傾向にあります。
 定期的に受けられる老人健診の結果で、貧血が進行していたり、白血球や血小板の数が減少している場合は、考慮しなければならない重要な病気です。
 慢性化してすごしているうちに、白血病化したり、感染症、出血などで亡くなることもあります。

骨髄異形成症候群・MDSの原因は?
半数に遺伝子の異常
  イメージ画像 造血幹細胞の遺伝子に異常が起こる原因は、まだ良くわかっていません。
 放射線治療や、抗ガン薬の投与を受けた患者さんに、二次的に骨髄異形成症候群(MDS)が起こることがあります。
 全体の患者さんの約50%に染色体異常があり、ガン遺伝子や、ガン抑制遺伝子の異常が証明される例もあります。
急性白血病に移行
   遺伝子異常のために遺伝子が不安定な状態になり、当初は作られていた血液細胞が早く死んでしまうアポトーシスを起こしてしまうため、血球数が減少します。
 しかしやがて、増殖能力の高い変異細胞が生まれます。その結果、急性白血病に移行すると考えられています。

骨髄異形成症候群・MDSの症状は?
貧血や発熱
  イメージ画像 汎血球(はんけっきゅう)が減少するため、息切れ・動悸・倦怠感などの貧血症状が現れます。慢性に進行する貧血では自覚症状に乏しい場合があり、健診や他の病気で通院中に発見されることもあります。
 また、皮下出血、鼻出血、歯肉出血などの出血傾向がみられます。白血球の減少による肺炎などに感染しやすくなり、発熱がみられる感染症状で発見されることもあります。
 これらの症状は何年も変わらないこともあれば、数ヶ月で進行することもあります。
FAB分類とWHO分類
   骨髄異形成症候群(MDS)は、おもに芽球(がきゅう)の比率によって5つの病型に分類されます。
 不応性貧血と鉄芽球性不応性貧血は、白血病に移行する確率が10%〜15%で、生存期間の中央値が約4年なので、比較的予後の良い低リスクMDSと呼ばれています。
 その他の3つの病型は急性白血病に移行する確率が50%〜80%で、生存期間の中央値が約1年前後と短いため、高リスクMDSと呼ばれています。
FABのMDS分類
(1〜5)
芽球比率 その他の所見 WHOのMDS分類
骨髄 末梢血
1.不応性貧血
(RA)
5%未満 1%未満   A.不応性貧血(RA)
A-1.環状鉄芽球を伴わない
2.環状鉄芽球を伴う不応性貧血
(RARS)
5%未満 1%未満 環状鉄芽球15%以上 A-2.環状鉄芽球を伴う
B.3血球系の異型性を伴う不応性貧血
3.芽球増加を伴う不応性貧血
(RAEB)
5%〜20% 5%未満   C.芽球増加を伴う不応性貧血
(RAEB)
4.慢性骨髄単球白血病
(CMML)
20%未満 5%未満 単球1μl/1000超 D.5q-症候群
骨髄増殖性疾患
5.白血病移行期にあるRAEB
(RAEB-t)
20%〜30%未満 5%以上 アウエル小体 急性白血病
(芽球が20%以上の場合)
国際予後判定システム
   新しいWHO分類では、RAEB-tは、本質的に急性骨髄性白血病と変わらないことから、骨髄異形成症候群(MDS)から除外されました。慢性骨髄単球白血球は、骨髄増殖性疾患に分類されました。
 治療方針を決定するためには、国際予後判定システム(IPSS)を用いて、予後を予測する必要があります。
予後因子 配点
0 0.5 1.0 1.5 2.0
骨髄中の芽球 5%未満 5%〜10% - 11%〜20% 21%〜30%
核型 良好 中間 不良    
血球減少 0 or 1 系 2 or 3 系      
リスク群 点数
低 (Low) リスク群 0
中間 (Int1) リスク群 0.5〜1.0
中間 (Int2) リスク群 1.5〜2.0
高 (High) リスク群 2.5以上

骨髄異形成症候群・MDSの診断は?
血球の減少
  イメージ画像 専門医でも診断の難しい病気です。
 末梢血は、貧血を中心とする2血球系統以上の血球の減少がみられます。にもかかわらず、骨髄の細胞密度は正常か、正常よりも高いことが特徴です。
 もっとも重要な特徴は、2血球系統以上の血液細胞に形態異常がみられる点です。
骨髄細胞を詳しく調べる
   末梢血の検査だけではなく、骨髄の細胞を詳しく検査する必要があります。
 代表的なものでは、赤芽球(せきがきゅう)の多核化、巨赤芽球様変化、顆粒球(かりゅうきゅう)における顆粒の減少、核の過分葉、偽ペルゲル核異常を含めた低分節、巨大血小板、微小巨核球、巨核球の円形分離多核などがあります。
染色体の異常
   骨髄異形成症候群(MDS)で頻度の高い染色体異常には、第5染色体長腕部分欠失(5q-)、第8染色体トリソミー(プラス8)、第7染色体モノソミー(マイナス7)・あるいは長腕部分欠失(7q-)、第12染色体短腕欠失(12q-)などがあります。

骨髄異形成症候群・MDSの治療法は?
確立されていない治療法
  イメージ画像 標準的治療法は確立されていないのが現状です。
 蛋白同化ホルモン、抗胸腺細胞グロブリン、シクロスポリンなどの免疫抑制薬が用いられることがあります。
 貧血が強い場合には赤血球輸血、血小板が減少して出血傾向がみられる場合には血小板輸血が行われます。輸血は効果的ですが、何回も繰り返している間に効果がなくなってしまう輸血不応症になることがあります。
 活性型ビタミンD、ビタミンAの誘導体、ビタミンKが血液細胞の分化誘導を目的に用いられますが、有効率は低いとされています。
低リスクMDSの治療法
   低リスクMDSで予後を左右するのは、骨髄機能の低下です。そのため、蛋白同化ステロイド薬、免疫抑制療法など、再生不良性貧血に準じた治療が行われます。
 また、活性化ビタミンD、ビタミンKなどの分化誘導療法が効く例もあります。
造血幹細胞移植
   エリスロポエチンという赤血球産生刺激ホルモンが効いて、輸血が不要になる例もあります。しかし日本国内では、保険適用外になってしまいます。
 輸血が必要な若年の患者さんに対しては、同種造血幹細胞移植が考慮されます。
高リスクMDSの治療法
   高リスクMDSでは、イビルビシンとシタラビン(キロサイド)という抗白血病薬を組み合わせた治療によって、50%〜70%の患者さんで症状の治まる寛解(かんかい)が得られます。
 しかし通常の急性骨髄性白血病と違って、寛解が維持できる例はまれとされています。
 高齢の患者さんが多いため、生活の質を考慮し、シタラビン(Ara-C)やエトポシドなどによる少量療法も試みられています。芽球の増加を抑制するのが目的ですが、急性白血病と同じように無菌管理などの支持療法が必要になります。治療関連死亡は少ないものの寛解導入率は20%〜30%にとどまり、生存期間の延長には繋がらないとされています。
根治はやはり移植術
   根治を期待できる唯一の治療方法は、同種造血幹細胞移植しかありません。
 かつては同種造血幹細胞移植の年齢の上限は50歳とされて、高齢者には造血幹細胞移植は積極的に行われていないのが現状です。最近の支持療法の進歩、骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(ミニ移植)の開発によって、70歳くらいの患者さんにまで適応が広がっています。
急性白血病に移行した場合
   急性白血病に移行した場合には、抗ガン薬を複数組み合わせて用いる多剤併用化学療法が行われます。寛解が得られる確率は約25%と不良です。

骨髄異形成症候群・MDSかなと思ったら?
病気と長く付き合う覚悟を
  イメージ画像 骨髄異形成症候群(MDS)といっても、その病態はさまざまです。
 すべてが白血病に移行するわけではありません。病気と長く付き合っていくという姿勢も大切です。
 治療への反応、予想される予後については、専門医とよく相談してください。血液内科(血液科)が専門医となります。
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