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選択性緘黙症・場面緘黙症


選択性緘黙症・場面緘黙症ってどんな病気?

一部の場面で沈黙してしまう

 

イメージ画像 選択性緘黙症の基本的な特徴は、言語理解、発言などの言語能力は正常であるにもかかわらず、一部の生活場面で沈黙を続けることにあります。たとえば、家族や親しい人とは普通に会話をしますが、学校や友達との遊びの場面になると、沈黙を続けてしまいます。
 発症の原因は明らかでないことが多く、幼稚園・保育園への入園、小学校への入学によって気が付くことが多いです。

有病率

 

 選択性緘黙症の発症は5歳以前が多く、有病率は1%以下で、全児童の0.2%前後といわれています。
 家庭では普通に喋っていることと、学校では周囲に迷惑を及ぼすことがほとんどないため、問題視されずにいることも少なくありません。
 男児よりも女児にやや多い傾向がありますが、その原因は不明です。


選択性緘黙症・場面緘黙症の原因は?

不安・緊張・抵抗など

 

イメージ画像 選択性緘黙症が長期間に渡って続けられる背景には、母親から離れることへの不安(分離不安)、家族外での社会的な活動に参加していくための力が十分に育っておらず、不安や緊張が高まりすぎていることが考えられます。
 また一部には、周囲から指示されたり動かされたりすることに対する抵抗を「喋らない」ということで意志表示している、と理解できる場合もあります。


選択性緘黙症・場面緘黙症の症状は?

3つのタイプ

 

イメージ画像 選択性緘黙症は、治療経過などからコミュニケーション意欲の強さの程度により、以下の3つのタイプに分類されます。

 

タイプT

   

 家族以外にコミュニケーションを自ら求める、神経症的不安に基づくタイプ。

 

タイプU

   

 家族以外にコミュニケーションを自ら求める意欲に乏しく、性格や人格発達の未成熟性に基づくタイプ。

 

タイプV

   

 家族内外ともにコミュニケーションを拒否する傾向が強く、精神病的な問題をも含むタイプ。

症状と経過の特徴

 
 タイプT 
家族以外にコミュニケーションを自ら求める社会化欲求型
神経症的不安に基づくタイプ
随伴症状として、爪かみ、遺尿などの神経症的症状(神経症習癖)などがみられることがある
家庭内
おしゃべり
自己主張が強い
家庭外
沈黙
非言語的伝達行動がある
 タイプU 
家族以外にコミュニケーションを自ら求める意欲に乏しい社会化意欲希薄型
性格や人格発達に基づくタイプ
言語能力に対する劣等感がみられ、自己を守るために沈黙している
家庭内
寡黙で消極的
家庭外
沈黙
非言語的伝達行動が希薄
 タイプV 
家族内外ともにコミュニケーションを拒否する社会化拒否型
精神病的な問題をも含むタイプ
対人緊張、対人恐怖などが強く認められることがある
統合失調性人格障害、統合失調症などが疑われる症例もある
家庭内
寡黙
選択的に沈黙
家庭外
沈黙
非言語的伝達行動を拒否

爪かみ・遺尿とは?

爪かみとは?

 

 4歳、5歳〜10歳くらいにかけて良くみられます。ときには成人まで習慣化して続くことがあります。
 一般的に心理的緊張の置き換えと考えられ、無理にやめさせると、さらに緊張を高めて他の行動へ置き換わるだけになるケースもあります。爪かみ自体を気にしないようにすることが肝要です。

遺尿とは?

 

 昼間、目が覚めている時に尿が漏れてしまうことをいいます。
 排泄の習慣がいったん確立されたあとに、4歳、5歳を過ぎてからみらえるときは、何らかの心理的な要因が考えられます。


選択性緘黙症・場面緘黙症の診断は?

臨床での診断

 

イメージ画像 臨床での診断は、DSM-W-TR精神疾患の診断・統計マニュアルの診断基準に従って行われています。

選択性緘黙症の診断基準

 
A.  他の状況では話すことができるにもかかわらず、特定の社会状況(学校など話すことが期待されている状況)では、一貫して話すことができない。
B.  この障害が、学業上、職業上の成績、または社会的な意志伝達を妨害している。
C.  この障害の持続期間は少なくとも1ヶ月(学校での最初の1ヶ月に限定されない)。
D.  話すことができないことは、その社会状況で要求される、または快適な話し言葉を知らないことによるものではない。
E.  この障害はコミュニケーション障害(吃音症など)ではうまく説明されないし、また、広汎性発達障害統合失調症、またはその他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。

選択性緘黙症・場面緘黙症の治療法は?

自我の発達

 

イメージ画像 選択性緘黙症の本質を対社会、対人間との交流障害と考えるなら、治療や対応の目標は、話すことよりもコミュニケーションの拡大と自我の発達を促進することになります。
 まず大切なのは、周囲の大人たちが話すことを無理強いしないことです。無理に話させようとすると、ますます萎縮や緊張したり、大人に強制されたと感じて引きこもるといった悪循環に陥ります。喋らないでその場にいることを周囲が認め、本人がその場に慣れて自分らしさを発揮できるような援助が必要です。
 外の世界での経験不足を補う意味で、習い事などさまざまな活動への参加も有効なことがあります。ただし社会的な物事への不安や恐怖の高い子供の場合、無理に経験を積ませようとしても上手くいかないケースがみられます。焦らず子供のペースを尊重してあげてください。

タイプTの治療法

 

 タイプTの治療法は、患者さんである子供の不安を理解し、意志や感情を安心して表出できるような環境作りを目指した精神療法的な働きかけが重要になります。

タイプU・タイプVの治療法

 

 タイプU・タイプVでは、精神療法などに馴染みにくく、コミュニケーションも深まらず、家族関係の変化も乏しいケースが多い傾向にあり、よりきめ細かな生活療法的な援助が必要になります。
 また時には、発達障害、他の精神病性の障害との区別が必要になることもあるので注意しましょう。


選択性緘黙症・場面緘黙症かなと思ったら?

早めに気づいてあげる

 

イメージ画像 選択性緘黙症の発生要因は、幼児期に起因することが多いようです。
 幼稚園や学校などの教育現場で、精神保健や心の発達の問題として、教育的な立場から早めに気付き、早めに対応することがポイントとなります。

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