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 肺サルコイドーシス
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肺サルコイドーシスの概要は?
おもな症状
  目がかすむ
黒い点のような物が飛んで見える

呼吸困難
リンパ節の腫脹
皮疹
似ている病気
  網膜裂孔(もうまくれっこう)
虹彩炎(こうさいえん)
虹彩毛様体炎(こうさいもうようたいえん)
結核
起こりやすい合併症
  緑内障
白内障
角膜混濁

肺サルコイドーシスってどんな病気?
皮膚の病気として発見された病気
  イメージ画像 サルコイドーシスは、約100年以上も前に、イギリスで皮膚の病気として発見された疾患です。
 その後、研究が進み、炎症に集まる異常な細胞の類上皮細胞(るいじょうひさいぼう)などが集まった肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれる結節が、リンパ節、目、肺など、全身のさまざまな臓器にできる病気であることがわかりました。
原因不明の多臓器疾患
   サルコイドーシスは、原因不明の多臓器疾患です。
 両側肺門リンパ節、肺、眼、皮膚に病変を示すことが多い特徴があります。肝臓、脾臓(ひぞう)、耳下腺(じかせん)、心臓、神経系、筋肉、骨、その他の臓器が侵されることもある病気です。
 病変部には、マクロファージなど、炎症や免疫にかかわる細胞が集まり、加えて類上皮細胞と呼ばれるマクロファージから派生したと考えられる細胞が集まって肉芽腫を作ります。
20歳代と50歳代に多い
   地域、人種によって、発生率や重症度に違いがあります。ヨーロッパでは、南欧よりも北欧に多くみられます。アメリカでは、白人より黒人の方が数倍も罹患しやすいと言われています。
 日本国内でも、過去8回にわたって全国調査が行われました。その結果、最近は増加傾向にあり、男女共に20歳代と50歳代に多い二峰性を示していることがわかりました。特に、男性では20歳代、女性では50歳代に多くみられます。
診断基準
   診断は、臨床症状、胸部エックス線写真の異常を確認します。
 さらに、病変部の組織を採取し、組織学的に壊死(えし)をともなわない類上皮細胞肉芽腫(るいじょうひさいぼうにくげしゅ)が証明されれば、確定診断となります。
 すでに知られている原因による肉芽腫、局所性サルコイド反応は、サルコイドーシスとは診断しません。
サルコイド結節の合併
   肺サルコイドーシスは、肺にサルコイド結節が存在する病気です。肺門リンパ節、縦隔リンパ節にも、同時にサルコイド結節が多く合併します。

肺サルコイドーシスの原因は?
原因不明
  イメージ画像 今まで、結核菌説、溶連菌説、ウイルス説など、原因についてさまざまな説が考えられてきましたが、はっきりとした原因は、まだわかっていません。
 遅延型アレルギー反応や、免疫反応が背景にあると考えられています。
 現在では、ニキビの原因となるアクネ菌が原因ではないかという説が有力となっています。しかしまだ、世界に認められたわけではなく、今後の研究に期待されています。
Tリンパ球の活動
   なんらかの物質がリンパ球、特にTリンパ球の活動を活発にさせ、この細胞が作り出す物質によって、マクロファージという細胞が刺激されるため、肉芽腫という病変が起こると考えられています。

肺サルコイドーシスの症状は?
視界にゴミのようなものが見える
  イメージ画像 日本人の場合、視界に小さなゴミのようなものが見える霧視(むし)と呼ばれる症状が多くみられます。
 痛みをともなわない皮膚結節、皮下結節、筋肉内の結節、頸部リンパ節の腫脹、腋窩リンパ節の腫脹、鼠頸部リンパ節の腫脹がみられることもあります。
 障害される臓器別の割合では、肺門や縦隔などのリンパ節の腫れを中心とするものが90%、肺そのものの障害が40%、目の症状が20%〜60%、皮膚の症状が10%〜20%、体表近くのリンパ節の腫れが10%〜20%となっています。
 ごくまれな症状としては、発熱、倦怠感(けんたいかん)、体重減少などがみられます。
日本人は軽症が多い
   日本人の肺サルコイドーシスは、軽症例が多いという特徴があります。
 自覚症状がなく、健康診断の胸部エックス線写真で偶然に発見されることも多いです。全体の40%では、自覚症状がありません。
肺の症状
   初期では多くの場合、胸部エックス線写真に肺門部(はいもんぶ)にリンパ節の腫れがみられ、病気が発見されます。両側肺門リンパ節腫脹(BHL)といい、肺にできる肉芽腫の特徴です。この場合、ほとんど自覚症状がなく診断がつきます。
 肺の中にまで病気が進行すると、咳、息切れが出てくることがあります。症状が軽いうちに、肺線維症(はいせんいしょう)へ進行する前に治療を始めることが推奨されます。
目の症状
   日本人では、欧米に比べると、目の症状をきっかけに病気が発見されることが多いのが特徴です。
 目のぶどう膜と呼ばれる部分で炎症が起こり、視界に小さなゴミのようなものが見える霧視(むし)と呼ばれる症状が起こります。また、蚊が飛んでいるように見える飛蚊症、視力低下などが起こります。
 眼科でぶどう膜炎と診断されたら、サルコイドーシスである可能性も考慮し、内科へ紹介され全身の検査を行います。
 放置しておくと失明する危険性もあるため、適切な治療を受けることが大切です。肺の病変とは異なる時期に起こることもあるため、注意が必要です。
心臓の症状
   心臓にサルコイドーシスの病変が起こると、脈が不規則になる不整脈、めまい、動悸(どうき)、失神などが起こります。
 さらに心臓の機能が低下すると、動くと息切れがするなど、心不全の症状が出てくることがあります。
 日本でのサルコイドーシスによる死因でもっとも多いのは、心臓におけるサルコイドーシスです。そのためサルコイドーシスとわかったら、症状がなくても、定期的に心臓の検査を行うことが大切になります。
皮膚の症状
   サルコイドーシスによる皮膚病変は、いろいろな型があります。一般的には皮膚サルコイドーシスと呼ばれます。
 皮膚の表面には、丘疹、紅斑、しもやけのような変化がみられます。

肺サルコイドーシスの診断は?
霧視症状と画像検査
  イメージ画像 霧視があり、胸部エックス線検査画像、またはCT検査画像で、縦隔と肺門リンパ節が腫れている場合、サルコイドーシスが強く疑われます。
組織検査
   サルコイドーシスの診断には、組織検査が必要になります。
 表在リンパ節を皮膚を切開して取り出すか、気管支ファイバースコープを使用して肺組織を採取し、顕微鏡で診断を行います(経気管支的肺生検)。または、胸腔鏡という内視鏡を使って、肺の大きな組織を取って診断する胸腔鏡下肺生検が行われます。
 どうしても組織を取られたくない患者さんの場合、気管支ファイバースコープを使用して、気管支肺胞洗浄(BAL)を行うことで、細胞を採取し、Tリンパ球の増加とCD4/CD8リンパ球の比率の増加を確認することで、診断率が高くなります。
 Tリンパ球の増加と、CD4/CD8リンパ球の比率が3:5を超える場合、サルコイドーシスの確率は94%になります。
血液検査
   サルコイドーシスでは、血液中にアンジオテンシン変換酵素(ACE)という酵素が増えます。ACEは、肉芽腫によって作り出されると考えられていますが、すべての患者さんで必ずしも増加するとは限りません。
 血液検査では、ACE値の上昇、血清カルシウム値の増加が認められることがあります。
 また、γ-グロブリン(免疫グロブリン)、リゾチーム(細胞などを溶かす力のある物質)の濃度が高くなります。
眼科や皮膚科で
   眼の症状で最初に眼科を訪れた場合、眼科の医師に正しく診断してもらわなくてはいけません。
 皮膚の症状で最初に皮膚科を訪れた場合、皮膚科の医師の診断と共に、生検が必要なときもあります。
 多くは、診察後、内科を紹介されます。
ツベルクリン反応
   多くの症例では、ツベルクリン反応が陰性であるのも、診断に重要な手がかりになります。日本人の多くは、結核ではなくてもツベルクリン反応は陽性なので、陰性化することが診断に役立ちます。
 放射性物質を注射して画像を得るガリウムシンチグラフィー、PET検査で、病気の広がりを調べることも大切になります。
検査結果から総合的に判断
   他の病気でないことを十分に確認した上で、症状や検査結果を総合的に判断して診断を行います。
 生検で病変に特徴的な組織の像があれば診断が確定しますが、一般的には経過の良い病気なので、すべての人に組織検査が必要というわけではありません。

肺サルコイドーシスの治療法は?
基本は経過観察
  イメージ画像 原因不明の病気であるため、特効薬のような治療法はありません。
 サルコイドーシスの約50%は、自然に治ります。日常生活に支障がなく、胸部エックス線写真に肺門のリンパ節が腫れているだけで重要臓器の障害がなく、進行性でなければ、半年に1回程度の経過観察を行います。治療は外来通院が基本になります。
 ただし、経過観察中は、定期的に検査を受ける必要があります。
 眼の障害は、点眼ステロイド薬の目薬を使用します。それでも症状が改善されないようなら、内服ステロイド薬を使用します。
 強い咳、息切れなどの症状があれば、治療の対象となります。
心臓サルコイドーシス
   重要臓器の障害では、心臓サルコイドーシスがあります。
 伝導系の異常、心筋へのサルコイドーシス結節が、心臓サルコイドーシスの病態の特徴です。突然死や重い回復不可能な症状が起こることがあるため、治療の対象となります。神経サルコイドーシスも同様に、治療の対象となります。
腎サルコイドーシス
   腎サルコイドーシスでは、腎機能不全がみられます。
神経サルコイドーシス
   神経サルコイドーシスでは、顔面神経麻痺、視神経炎(ししんけいえん)、視床下部下垂体異常(ししょうかぶかすいたいいじょう)、髄膜炎、などの症状がみられます。
ステロイド薬の内服
   腎サルコイドーシスや、神経サルコイドーシスのように重症例では、ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)の内服による治療が必要になります。ステロイド薬にはさまざまな副作用があるため、使用については専門医に十分相談する必要があります。
 関節リウマチの治療に使われるメトトレキサートなどの免疫抑制薬も有効です。
 これらの薬は副作用もありますが、重篤なものは少ないので、怖がらずに治療を受けてください。
 ステロイド薬を服用しても症状が改善されない症例や、中年以降の女性の発症例では、治療が長期化する傾向があります。

肺サルコイドーシスかなと思ったら?
治療方針を決めるために診察を
  イメージ画像 霧視(むし)を自覚し、頸部、腋窩、鼠頸部のリンパ節の腫れを自覚した場合。皮膚、皮下組織、筋肉に結節を自覚し、痛みがない場合。
 これらの症状では、サルコイドーシスが疑われます。
 日本人の場合、重症例は少ないので深刻に受け止める必要はありませんが、眼病変、心臓、腎臓、肺など、重要臓器への障害の程度を見極めて、治療が必要かどうかを治療方針を決めなければなりません。
 呼吸器内科の専門医がいる病院を受診するようにしましょう。
心身を休ませる
   発病して症状があれば、無理をせずに、ストレスを避け、心身を休ませることが大切です。過度の仕事やストレスは、病状を悪化させてしまうことがります。
出産・妊娠
   女性の場合、出産後にサルコイドーシスが悪化することがあるため、注意が必要です。ステロイド薬を使っている場合、妊娠して良いか、医師に相談するようにしてください。
特定疾患に指定
   サルコイドーシスは、厚生労働省の特定疾患・難病に指定されています。治療費は公費によって、医療費補助を受けることができます。
 難病に指定されている理由は、いまだに原因不明の病気であること、患者さんの約80%は約2年以内に軽快するものの、残りの5%〜10%では病気が長引き、悪化することによります。
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