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 バセドウ病・甲状腺機能亢進症

バセドウ病・甲状腺機能亢進症の概要は?
おもな症状
  動悸
頻脈
体重減少
発汗
手の震え
疲労感
食欲亢進
下痢
眼の具合が悪い
似ている病気
  体重減少をともなう消化器疾患
自律神経失調症
躁病
起こりやすい合併症
  眼突症
不整脈・頻拍症・心房細動
心不全
発熱
肝障害
低コレステロール血症
限局性浮腫

バセドウ病・甲状腺機能亢進症ってどんな病気?
甲状腺機能亢進症とバセドウ病
  イメージ画像 甲状腺から甲状腺ホルモンが多量に分泌され、全身の代謝が高まる病気です。
 甲状腺機能亢進症とバセドウ病と、同じ意味に扱われることが多いですが、厳密に言えば別の病気になります。
甲状腺ホルモンの過剰分泌
   バセドウ病以外にも、無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)、亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)、機能性甲状腺腺腫・プラマー病でも、甲状腺ホルモンが多量に分泌されます。
 さらに、故意や事故によって、甲状腺ホルモンを過剰に摂取するといったこともあります。
バセドウ病の名前の由来
   バセドウ病は、この病気を報告したドイツ人医師の名前に由来します。アメリカやイギリスでは、別の医師の名前から、グレーブス病と呼ばれています。

バセドウクリーゼ
命の危機
  イメージ画像 クリーゼとはクライシス、つまり危機のことです。バセドウクリーゼとは、バセドウ病で命が危機にさらされるほどの究極の状態を指す言葉です。
 実際にはっきりとした定義があるわけではありませんが、未治療のバセドウ病患者さんで、感染症、手術、出産などのストレスときっかけに、毎分120回以上の頻脈、滝のように流れる汗、頻回の下痢、高熱、精神的な不穏状態など、激しい甲状腺機能亢進症が起こったものをいいます。
治療法
   眼球突出、甲状腺腫などの状況からバセドウ病と推定したら、血液検査の結果などは待たずに治療を開始します。治療には大量の抗甲状腺薬、β遮断薬、副腎皮質ステロイド薬、酸素吸入、身体の冷却などを行ないますが、死亡率は約30%です。
 しかし、バセドウ病と診断されている患者さんでバセドウクリーゼが起こることは極めてまれです。
 医師の指示に従って治療を続けていれば、バセドウクリーゼを心配する必要はありません。

バセドウ病・甲状腺機能亢進症の原因は?
甲状腺のホルモン
  イメージ画像 血液中に抗TSHレセプター抗体(TRAb)ができることが原因です。
 抗レセプター抗体は、甲状腺の機能を調節している甲状腺刺激ホルモン(TSH)というホルモンの受け手であるTSHレセプターに対する抗体です。
 TSHレセプターが甲状腺を無制限に刺激するので、甲状腺ホルモンが過剰に作られて、甲状腺機能亢進症が起こります。
遺伝的素因
   20代〜30代の女性にもっとも頻度が高い病気ですが、思春期の女子、および男子にも見られる病気です。
 抗TSHレセプター(TRAb)ができる原因はまだわかっていません。甲状腺の病気は家族に同じ病気を持つ人が多いため、遺伝的素因が関係していると考えられています。

バセドウ病・甲状腺機能亢進症の症状は?
代謝の亢進
  イメージ画像 甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の代謝が亢進します。
 食欲が出て良く食べるのに体重は減少する、暑がりになる、全身に汗をかくといった症状が現われます。高齢者の場合では、食欲に変化はなく、体重だけが減少します。
精神的な興奮や手足の震え
   精神的には、興奮して活発になり、イライラして怒りっぽくなります。そのわりに、まとまりがなく、疲れやすくなり、動悸(どうき)を1日中感じるようになります。
 手が震えて字が書きにくくなり、ひどくなると足や全身が震えるようになります。
 排便の回数が増えます。
 大きさに差はありますが、ほとんどの症例で、柔らかいびまん性の甲状腺腫が認められます。
眼球突出
   バセドウ病では、眼球が突出するといわれます。ですが実際には、5人に1人くらいにみられる症状です。
妊娠と出産
   バセドウ病をもつ女性が妊娠した場合、出産後期に母体の甲状腺機能が低下すると、出産後の子が甲状腺機能低下症に陥ることがあります。
 また、母体の抗TSHレセプター抗体(TRAb)が50%以上の高値の場合、新生児に一過性の甲状腺機能亢進症・新生児バセドウ病が発症します。

眼球突出症
バセドウ病の有名な症状
  イメージ画像 バセドウ病では眼球が突出すると良く言われます。実際にバセドウ病の患者さんの眼球は、ヘルテルの眼突度計(がんとつどけい)という器具で計測すると、健康な人より全体で1.5mm、眼が出ており、眼球の突出がバセドウ病の全員で起こる現象だといえます。
 しかし、眼球が出てくるために角膜が傷付いたり、眼痛がある患者さんは全体の約20%程度です。
視神経を守るための症状
   眼球は眼窩(がんか)という狭い場所に入っています。眼球の後の脂肪組織や筋肉が腫れると眼球が押し出されて前に出ます。もし前に出ないと、視神経が圧迫されてしまうので、眼球の突出は視神経を守るための安全弁のようなものです。
 もし、眼科的に問題がある時は、副腎皮質ステロイド薬の投与、放射線の照射、手術などの治療を行なうこともあります。心配な患者さんは、医師に相談しましょう。
 喫煙が眼の突出と関係するので、喫煙している人は禁煙を心がけましょう。

バセドウ病・甲状腺機能亢進症の診断は?
甲状腺ホルモンの検査
  イメージ画像 甲状腺ホルモン(遊離チロキシン:FT4)と、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで診断できます。
バセドウ病の検査
   バセドウ病かどうかを診断するためには、原因物質である抗TSHレセプター抗体(TRAb)を測定します。
 この抗体が陰性のことがあり、無痛性甲状腺炎と区別するためには、放射性ヨード摂取率を測定します。
 甲状腺腫大の有無は、視診と超音波検査によって行ないます。
 眼球突出などのバセドウ病眼症の診断のためには、眼窩CT検査を行います。
バセドウ病チェックリスト
   バセドウ病を見つけるための、簡単なチェックリストです。もし、6つ以上にチェックが付いた場合は、バセドウ病の可能性があります。
□ 真冬でも汗をかくようになった
□ 暑がりになった
□ 脈が速く、動悸を感じる
□ 些細なことでイライラして、怒りっぽくなった
□ 疲れやすく、体力が落ちたと感じる
□ 少し動いただけでも息切れを感じる
□ 食欲が高まり、つねに空腹を感じる
□ 1日に何回も便が出たり、自然に便秘が治ったりしている
□ 食事の量は減っていないのに、体重が減った
□ じっとしていると落ち着かない
□ 眼が出たり、見開いたようになった
□ 手が細かく震えて字が書きにくい
□ いつも手の平が湿っており温かい

バセドウ病・甲状腺機能亢進症の治療法は?
おもに3種類の治療法
  イメージ画像 抗甲状腺薬治療、手術、アイソトープ治療の3種類があります。
 通常はまず最初に、抗甲状腺薬治療を行ないます。
抗甲状腺薬治療
   抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)は、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬です。
 抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンの合成を抑えると、4週間くらいで甲状腺ホルモンが低下し始め、約2ヶ月で正常になります。そのため、自覚症状はなくなり、完全に治ったようになります。
 抗甲状腺薬は、妊娠中でも医師の指示のもとに服用することが可能です。
 しかし、原因の抗TSHレセプター抗体(TRAb)が消えるのは、2年後〜3年後になるため、抗TSHレセプター抗体(TRAb)が陽性の間は、抗甲状腺薬を飲み続ける必要があります。
手術・アイソトープ治療
   いつまでも抗TSHレセプター抗体(TRAb)が陰性にならない場合は、甲状腺を一部残して切除する甲状腺亜全摘出術(こうじょうせんあぜんてきしゅつじゅつ)を行なうか、放射性ヨードを投与して甲状腺を壊すアイソトープ治療を行ないます。
 どちらを選択するかは、甲状腺の大きさ、年齢、妊娠の希望などを考慮して決定します。
女性に多い病気
   バセドウ病は、女性の100人に1人の頻度でみられる病気です。決してまれな病気ではありません。
 自覚症状がなくなっても治ったわけではなく、いつ薬をやめるか、薬物治療以外の治療に切り替えるかなど難しい点もあるので、できる限り甲状腺専門医と相談しながら治療をするようにしましょう。
 また、花粉症のある患者さんでは、春先に花粉症の悪化とともに再発しやすいという報告があります。

周期性四肢麻痺
突然起こる四肢麻痺
   バセドウ病の患者さんでは、多量の飲酒、甘い物をたくさん食べたあと、突然、手足に力が入らなくなり、動けなくなることがあります。普通は数時間で自然に動けるようになります。
 時々起こるという意味で、周期性という言葉が使われますが、周期性があるわけではありません。
原因
   甲状腺機能亢進状態の時に、血糖が増えるとインスリンの作用によって血液の中のカリウムが急激に低下します。そのために、筋肉がうまく収縮できなくなるためだと考えられています。
 しかしなぜか、東洋人の男性に多く起こるのかなどの原因に関しては、まだわかっていません。
治療
   バセドウ病の治療によって、甲状腺のホルモンが正常になれば、起こらなくなります。
 普通は呼吸筋などの生命の維持に必要な筋肉には麻痺は起こりません。

バセドウ病・甲状腺機能亢進症かなと思ったら?
専門医の診断を
  イメージ画像 バセドウ病チェックリストで、もしバセドウ病の可能性があるという結果になったら、医師の診察を受けるようにしましょう。
 かかりつけ医か、内分泌科、代謝科のある病院を受診し、バセドウ病の可能性があることを伝え、甲状腺ホルモン(遊離チロキシン:FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗TSHレセプター抗体(TRAb)を測定してもらいましょう。
 子供の場合は、内分泌疾患の専門外来のある小児科を受診すると良いでしょう。

バセドウ病の有名人・芸能人
シンガーソングライターの絢香さん
   2009年4月に俳優の水嶋ヒロさんと結婚したシンガー・ソングライターの絢香さんが、バセドウ病を告白しています。
 絢香さんがバセドー病と診断されたのは2007年のことです。バセドウ病を公表せず、薬を飲みながら音楽活動をしてきました。ファンの前でパワフルな歌声を披露してきましたが、病状には波があり、体調が悪いときはコンサートの曲数を減らしていました。病気の兆候が出ると、数日後に控えたイベントや番組収録を延期したり、出演時間を短縮したこともあったそうです。
クレオパトラも?
   クレオパトラもバセドウ病だったのではないかという説があります。
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