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髄膜炎・脳炎


髄膜炎・脳炎の概要は?

おもな症状

 

発熱
激しい頭痛
悪心
嘔吐
頸部硬直
意識障害
痙攣


髄膜炎・脳炎ってどんな病気?

髄膜炎、脳炎、髄膜脳炎

 

イメージ画像 髄膜炎とは、持続する頭痛をおもな症状として、発熱、項部硬直(こうぶこうちょく・一般的に言ううなじの部分)など、髄膜刺激症状、髄液細胞増加などが認められます。
 脳炎とは、脳実質の炎症をおもな症状として、発熱、意識障害、痙攣、髄膜刺激症状などが認められます。痙攣は20%〜30%の患者さんにみられます。
 髄膜炎と脳炎を合わせて、髄膜脳炎として認められることもあります。
 乳幼児が多くかかります。

予後は良くない

 

 類縁の疾患、同一の疾患群としては、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(きゅうせいさんざいせいのうせきずいえん)、遅発性ウイルス脳炎などがあります。
 一般的に予後が悪く、早期の診断と治療が重要です。


髄膜炎・脳炎の原因は?

ウイルス、細菌、寄生虫など

 

イメージ画像 病原体にはさまざまなウイルス、細菌、寄生虫などがあります。他臓器での感染巣からウイルス血症、菌血症として、あるいは特発性に髄膜腔や脳実質へ侵入すると考えられています。
 病因からみたおもな髄膜炎は、ウイルス性、細菌性、結核性、真菌性で、この他、寄生虫、髄膜ガン腫症(ガン性髄膜炎)、梅毒、サルコイドーシス、ワイル病、ベーチェット病などによる髄膜炎もあります。
 髄膜炎を起こす細菌は鼻、咽喉、肺にくっつきやすく、そこから血管内へ侵入して髄膜に到達して髄膜炎を起こします。髄膜炎や脳炎を起こすウイルスは、神経にも感染しやすい性質があります。しかし、感染しても髄膜炎や脳炎を発症するのはごく一部です。

 髄膜炎・脳炎の原因 
ウイルス RNAウイルス
日本脳炎ポリオウイルス、コクサッキーA、コクサッキーB、ムンプス麻疹風疹ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
DNAウイルス
単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘・帯状ヘルペス、エプスタイン・バル、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス6型、ヘルペスウイルス7型
プリオン 蛋白質性感染性粒子
細菌
その他
細菌
グラム陽性菌:肺炎球菌、連鎖球菌
グラム陰性菌:インフルエンザ菌、髄膜炎菌
抗酸菌:結核菌
スピロヘーダ:梅毒トレポネーマ
真菌
クリプトコッカス、カンジダ
原虫など
トキソプラズマ、マラリア

脳炎の特徴

 

 急性脳炎では単純ヘルペスによる単純ヘルペス脳炎の頻度が高く、日本国内では年間100万人に1人、300例〜400例の発症があるとされています。
 日本脳炎の場合、7月〜9月に小流行がみられます。
 他にも、インフルエンザ、風疹、麻疹などにともなう急性脳炎・急性脳症・二次性脳炎などがあります。
 髄膜炎菌髄膜炎(ずいまくえんきんずいまくえん)、日本脳炎、プリオン病のクロイツフェルト・ヤコブ病は、感染症法の4類感染症に指定されており、全数把握のため届け出が義務付けられています。


髄膜炎・脳炎の症状は?

急性、亜急性、慢性

 

イメージ画像 発熱、頭痛、意識障害、痙攣などが急性に現れた場合、または亜急性、慢性に起こったかに注意する必要があります。
 なぜならば、細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎、ヘルペス脳炎では急性に起こります。結核性髄膜炎、真菌性髄膜炎では亜急性に起こります。遅発性ウイルス脳炎では、慢性に数年かけて発症します。
 原因を知るためにも、症状の現れ方が重要になります。
 乳児の髄膜炎では髄膜刺激症状があまり現れず、泣き声が甲高くなって大泉門が膨らみます。

病気が進行すると

 

 病気が進行すると、深い意識障害、痙攣の重積を示すことがあります。
 体温、脈拍、血圧、呼吸などのバイタルサイン・生命徴候の監視も必要になります。


髄膜炎・脳炎の診断は?

髄液検査

 

イメージ画像 髄膜炎では、髄液検査による細胞数増加の確認が診断上、重要になります。
 髄液の外観、細胞の種類、蛋白、糖値、病原検査によって、各種髄膜炎の診断の手掛かりが得られます。糖値が低下していれば、細菌性髄膜炎、結核性髄膜炎、真菌性髄膜炎を見分ける必要があります。

 髄液所見の鑑別・見分け 
項目 外観 圧(側臥位)
mmH2O
細菌数
mm3
蛋白
mg/dl

mg/dl
正常 水様透明 70〜180 5以下 15〜45 50〜80
(血糖比0.6〜0.8)
ウイルス性
髄膜炎・脳炎
水様
(日光微塵)
正常〜上昇 30〜500
リンパ球
単球
50〜200 50〜80
急性細菌性
髄膜炎
混濁・膿性 200〜600 500以上
多核白血球
50〜1000 0〜20
結核性髄膜炎
真菌性髄膜炎
水様
(日光微塵)
200〜600 30〜500
リンパ球
単球
50〜500 40以下

大切な問診

 

 脳炎では、発熱、頭痛、意識障害、痙攣発作などは必ず起こる症状ですが、意識障害などのため、同居している人から病気の起こり方などを聞くことが大切になります。

一般的な検査

 

 赤沈の亢進、C反応性蛋白上昇などの一般炎症所見、髄液所見で細胞数増加がみられます。CT、MRI、脳波なども検査します。
 ヘルペス脳炎では側頭葉・辺縁系に60%〜70%の頻度でみられ、日本脳炎では視床、基底核、黒質によく発症します。
 脳波では、ヘルペス脳炎では周期性一側てんかん放電がしばしばみられます。

病原の診断

 

 病原の診断では、グラム染色、一般細菌、血液培養、酸菌染色、墨汁染色を行う必要があります。
 各種ウイルスに対する髄液からのPCR法を含む病原検査、血清、髄液の酵素抗体、補体結合抗体、血球凝集抑制抗体などの抗体価検査がポイントになります。

PCR法

 

 PCRとは「Polymerase Chain Reaction」の略で、ポリメラーゼ連鎖反応のことです。DNA、あるいはRNAの断片を大量に増幅する酵素学的化学反応で、感度が良く、各種ウイルス、細菌の検出に使用されています。
 PCR法によるウイルスゲノム(遺伝子)の検出は、発症後10日以内の急性期で陽性率が高く、細菌に対して普及している検査方法です。
 髄腔内の局所抗体産生をみる場合、血清・髄液抗体比(正常では100以上)などを参考にします。


髄膜炎・脳炎の治療法は?

それぞれの原因に合った治療法

 

イメージ画像 治療には入院が必要になります。早期に治療を開始すれば、予後の改善が期待できます。重症例では、神経後遺症のリスクが高くなります。
 各種髄膜炎・脳炎には、それぞれの病原に応じた特異的な治療があります。

例えば細菌性髄膜炎

 

 髄液所見から細菌性髄膜炎が疑われた場合、起炎菌を突き止める同定結果を待つことなく、抗生剤の投与を開始します。起炎菌の判明前には、抗菌スペクトルが広く、髄液への移行の良い抗菌薬が選択されます。インフルエンザ菌に対しては、ステロイド薬を併用します。

それぞれの治療法

 

 結核性髄膜炎・真菌性髄膜炎では、抗結核薬、抗真菌薬が使用されます。
 ヘルペス脳炎が疑われる場合では、アシクロビル(ゾビラックス)の点滴静脈注射が行われます。


髄膜炎・脳炎かなと思ったら?

神経内科、感染症科、内科、小児科へ

 

イメージ画像 発熱、頭痛、項部硬直などの髄膜刺激症状、発熱、意識障害、痙攣、髄膜刺激症状などが現れた場合、髄膜炎・脳炎が疑われます。
 髄膜刺激症状とは、髄膜の炎症、くも膜下出血などによる髄膜に対する刺激の結果としてみられる症状です。自覚症状としては頭痛があり、他覚的には項部硬直、ケルニッヒ徴候などがみられます。
 専門の神経内科、感染症科などの内科、小児科を受診するようにしてください。

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