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 肥満症

肥満症ってどんな病気?
単に太っているだけではない
  イメージ画像 肥満とは単に体重が多いことではなく、脂肪組織が蓄積した状態のことを指します。
 しかし体内の脂肪組織の量、つまり体脂肪を正確に測定する方法は簡単ではありません。身長、体重に基づく指数が肥満と基準として用いられてきました。
体脂肪計も完璧ではない
   最近では体脂肪計が市販されていますが、生体インピーダンス法と呼ばれる微弱な電気を人体に流して体脂肪量を計算するものです。その正確性は、まだ不十分です。
肥満は病気ではありません
   肥満そのものは病気ではありません。
 体脂肪は、エネルギー補給機能、体温を維持するための断熱作用、内臓の保護作用など、良い役割も持っています。
 しかし肥満があると、さまざまな健康障害・合併症を起こしやすいことが問題とされています。
 肥満に基づく健康障害を合併した場合や、健康障害の危険が高い場合を「肥満症」と呼びます。
内臓脂肪型肥満・上半身肥満
   最近の研究では、肥満の合併症は肥満度が高いことでのみ起こるわけではなく、内臓脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満・上半身肥満で起こりやすいことがわかってきました。

標準体重と肥満度は?
標準体重と理想体重
  イメージ画像 「標準体重」とは、その身長におけるもっとも生理的な状態にある場合の体重を意味します。
 また、体格における死亡率がもっとも低い体重という意味で、「理想体重」という表現が使われることがあります。
ブローカ・桂変法
   従来の日本では、
(身長−100)×0.9kg
 で求めるブローカ・桂変法による標準体重の計算が使われてきました。しかしこれでは、簡単ではあるものの、誤差が大きいなどの欠点がありました。
日本肥満学会の統計
   日本肥満学会では、
体重(kg)÷身長(m)
 で計算されるボディマス指数(BMI)が22の時に病気の合併率がもっとも少ないという統計成績がありました。
 そこで、
身長(m) ×22
 によって求められる体重を、標準体重とするように勧告しました。
 このように計算された標準体重は、厚生労働省(旧・厚生省)による「日本人の肥満とやせの判定表」の数字とも良く合っています。
肥満度の計算式
   標準体重に基づいて肥満度は、
(体重−標準体重)÷標準体重×100%
 で計算されます。
 この計算式によれば、標準体重よりも少ない体重の人は、肥満度がマイナスで表されます。
肥満の判定基準
   肥満の判定基準は従来では、肥満度20%以上、BMI換算で26.4以上となっていました。
 日本肥満学会では、肥満の判定基準をBMI25以上とすることを提唱しました。
 下に肥満およびやせの判定表を掲載しておきます。ネットで検索して計算できるページを利用した方が早いんですが・・・
肥満とやせの判定表
 
身長
(cm)
BMI  18.5  標準体重
(kg)
 25.0   30.0   35.0   40.0 
140cm 36.3 43.1 49.0 58.8 68.6 78.4
141 36.8 43.7 49.7 59.6 69.6 79.5
142 37.3 44.4 50.4 60.5 70.6 80.7
143 37.8 45.0 51.1 61.3 71.6 81.8
144 38.4 45.6 51.8 62.2 72.6 82.9
145 38.9 46.3 52.6 63.1 73.6 84.1
146 39.4 46.9 53.3 63.9 74.6 85.3
147 40.0 47.5 54.0 64.8 75.6 86.4
148 40.5 48.2 54.8 65.7 76.7 87.6
149 41.1 48.8 55.5 66.6 77.7 88.8
150 41.6 49.5 56.3 67.5 78.8 90.0
151 42.2 50.2 57.0 68.4 79.8 91.2
152 42.7 50.8 57.8 69.3 80.9 92.4
153 43.3 51.5 58.5 70.2 81.9 93.6
154 43.9 52.2 59.3 71.1 83.0 94.9
155 44.4 52.9 60.1 72.1 84.1 96.1
156 45.0 53.5 60.8 73.0 85.2 97.3
157 45.6 54.2 61.6 73.9 86.3 98.6
158 46.2 54.9 62.4 74.9 87.4 99.9
159 46.8 55.6 63.2 75.8 88.5 101.1
160 47.4 56.3 64.0 76.8 89.6 102.4
161 48.0 57.0 64.8 77.8 90.7 103.7
162 48.6 57.7 65.6 78.7 91.9 105.0
163 49.2 58.5 66.4 79.7 93.0 106.3
164 49.8 59.2 67.2 80.7 94.1 107.6
165 50.4 59.9 68.1 81.7 95.3 108.9
166 51.0 60.6 68.9 82.7 96.4 110.2
167 51.6 61.4 69.7 83.7 97.6 111.6
168 52.2 62.1 70.6 84.7 98.8 112.9
169 52.8 62.8 71.4 85.7 100.0 114.2
170 53.5 63.6 72.3 86.7 101.2 115.6
171 54.1 64.3 73.1 87.7 102.3 117.0
172 54.7 65.1 74.0 88.8 103.5 118.3
173 55.4 65.8 74.8 89.8 104.8 119.7
174 56.0 66.6 75.7 90.8 106.0 121.1
175 56.7 67.4 76.6 91.9 107.2 122.5
176 57.3 68.1 77.4 92.9 108.4 123.9
177 58.0 68.9 78.3 94.0 109.7 125.3
178 58.6 69.7 79.2 95.1 110.9 126.7
179 59.3 70.5 80.1 96.1 112.1 128.2
180 59.9 71.3 81.0 97.2 113.4 129.6
181 60.6 72.1 81.9 98.3 114.7 131.0
182 61.3 72.9 82.8 99.4 115.9 132.5
183 62.0 73.7 83.7 100.5 117.2 134.0
184 62.6 74.5 84.6 101.6 118.5 135.4
185 63.3 75.3 85.6 102.7 119.8 136.9
186 64.0 76.1 86.5 103.8 121.1 138.4
187 64.7 76.9 87.4 104.9 122.4 139.9
188 65.4 77.8 88.4 106.0 123.7 141.1
189 66.1 78.6 89.3 107.2 125.0 142.9
190 66.8 79.4 90.3 108.3 126.4 144.4
191 67.5 80.3 91.2 109.4 127.7 145.9
192 68.2 81.1 92.2 110.6 129.0 147.5
193 68.9 81.9 93.1 111.7 130.4 149.0
194 69.6 82.8 94.1 112.9 131.7 150.5
195 70.3 83.7 95.1 114.1 133.1 152.1

肥満症の原因は?
体重調節のメカニズム
  イメージ画像 体重はエネルギーの摂取と消費のバランスで決定されます。
 エネルギーの摂取は食事によりもたらされ、エネルギーの消費は体温の維持・呼吸・血液循環など生命の維持に使われる基礎代謝、食事摂取時の熱産生、生活活動、運動によるエネルギーによります。
 成人になるとこのバランスが維持され、体重は変化しないように調節されています。
 体重が減少すると、食欲が亢進してエネルギーの消費は減少します。逆に体重が増加すると、食欲が低下してエネルギーの消費は増加します。
レプチン
   最近になって、体重調節にはさまざまな因子が関わっていることがわかってきました。
 食欲の調節には、脂肪細胞から出るレプチンという蛋白質が重要な役割をしています。レプチンは脳の視床下部(ししょうかぶ)というところにある満腹中枢に働いて食欲を抑える働きがあります。レプチンがなくなった動物では著しい肥満になることがわかっています。
新しい発見
   最近になって、熱産生を行う蛋白質が発見されました。熱産生にともなう消費エネルギーの低下が肥満の原因のひとつになることから、注目されています。

肥満症の遺伝と環境は?
長い人類の歴史
  イメージ画像 病気が起こる原因は、遺伝と環境の両方が関わっています。
 肥満に関しても、人類の歴史のほとんどが飢餓(きが)と寒さとの戦いだったため、獲得したエネルギーを脂肪として蓄える体の仕組みが発達しました。その結果、倹約遺伝子・肥満遺伝子が保存されてきたと考えられます。
遺伝子レベルでの研究
   遺伝因子については、世界中で研究が行われています。
 現在までには、一部の遺伝子の関与が明らかになったものの、遺伝子を調べて肥満になりやすい体質かどうかを検査できるまでには至っていません。
環境が重要
   一般的に、肥満の原因としては、遺伝因子よりも環境因子の方が重要だと考えられています。
 環境因子としては、食べすぎ・過食、食べ方の誤り、運動不足が重要となります。
 食べることに不自由がなく、運動量が少ない欧米型ライフスタイルが浸透するとともに、過食、食べ方の誤り、運動不足が日本でも増加し、肥満が急激に増えています。

肥満症と食べすぎ・過食は?
食べ過ぎてしまう原因
  イメージ画像 人はなぜ食べ過ぎてしまうのか。
 通常では、レプチンなどによって満腹中枢が刺激され、食べ過ぎないようにコントロールされています。
 遺伝的にレプチンに異常があるために肥満が起こってくることはまれなケースです。逆に肥満傾向にある人の多くは、レプチンが増加していることがわかってきています。レプチンの働き、もしくは満腹中枢の機能が障害されているものと考えられています。
ストレスと過食
   過食を引き起こす原因としては、ストレスが重要と考えられています。
 強いストレス状態におかれると、手元にある食べ物を手当たり次第に食べてストレスを解消しようとする「気晴らし食い症候群」と呼ばれる状態になってしまうことがあります。
 多くの肥満者が、食べることによってストレスを解消していることがわかっています。
過食で胃が大きくなる
   過食が続くと胃が大きくなり、たくさん食べないと満腹感が得られないようになることも問題視されています。
 さらに食べ過ぎて、肥満が進行する原因になります。

肥満症と食べ方の誤りは?
食事の回数
  イメージ画像 肥満者のかなりの人は、食べすぎではないことがわかっています。この場合、食べる量よりも、食べ方に問題があります。
 食事回数と、肥満との関係をみると、食事回数が少ない人ほど太りやすい傾向があります。
 朝食を抜いて夜に多く食べるなどの「かため食い」は、食べた栄養が吸収されやすく、過剰エネルギーをもたらすことで肥満に繋がりやすいです。また、食事の回数が減ることで、食事摂取時の熱産生が減少することも肥満の原因と考えられます。
夜食や早食い
   1日の摂取量の半分以上を夜に食べる「夜食症候群」も太りやすい食べ方です。夜は消化管の機能が活発になり、食べた物が貯蔵エネルギーになりやすいと考えられています。
 「早食い」も良くありません。満腹感を感じにくく、不必要に食べ過ぎることになります。

肥満症と運動不足は?
脂肪が貯まりやすい体質になる
  イメージ画像 運動不足では、消費エネルギーが低下して、エネルギーが体内に貯まりやすくなります。しかしそれよりも、エネルギーを体の中に貯めやすいという代謝状態を作る方が問題となります。
 運動不足は血糖値を下げる働きを持つインスリンというホルモンの働きを低下させ、血糖を正常に保つのに必要なインスリンの量を増やしてしまいます。この時のインスリンは、血糖値を下げる力は弱まっているのに、脂肪を作る作用は弱まっていないため、体の中で余分なエネルギーを脂肪に変えることを促進することになります。
脂肪が作られやすくなる
   運動不足は、安静にしていても体温を維持し生命活動を保つために使われる基礎代謝で使われるエネルギーも少なくしてしまいます。
 脂肪合成酵素の働きも高まって、脂肪が体の中で作られやすくなります。

肥満症のタイプは?
脂肪細胞の増加と肥大
  イメージ画像 摂取エネルギーから消費エネルギーを差し引いた過剰エネルギーが脂肪として蓄積され、脂肪細胞が増加、あるいは肥大して太りすぎになります。
 小児期からの肥満では脂肪細胞が増加し、成人してからの肥満では脂肪細胞が肥大することが多くなります。
皮下脂肪型と内臓脂肪型
   脂肪の分布は、上腕部、腹部、臀部〜大腿部の皮下の場合と、腹部の内臓周囲の場合とがあります。それぞれ、「皮下脂肪型肥満」、「内臓脂肪型肥満」と呼ばれます。
 体型から、皮下脂肪型肥満では下半身肥満、または洋ナシ形肥満と呼ばれます。内蔵脂肪型肥満では上半身日暗、またはリンゴ型肥満と呼ばれます。

肥満症の症状は?
呼吸障害
  イメージ画像 肥満の自覚症状として頻度の高いものは、呼吸障害です。
 睡眠時に、いびき、10秒以上の無呼吸が頻繁に認められる睡眠時無呼吸症候群、日中の注意力障害、居眠りを起こしたりします。
 さらに重症になると、皮膚などが紫色になるチアノーゼ、多血症(たけつしょう)、右室肥大(うしつひだい)、右心不全(うしんふぜん)などを起こすこともあります。このような症状は、ピックウィック症候群と呼ばれています。
関節障害
   過度の体重負担によって、下肢の股関節、膝関節、腰椎が障害され、腰痛、下肢痛などを起こします。
合併症
   肥満によってさまざまな健康障害を起こしやすくなります。
 2型糖尿病、高血圧、高脂血症、高尿酸血症(こうにょうさんけっしょう)、痛風(つうふう)、動脈硬化(心血管障害・脳血管障害)、脂肪肝は肥満によって通常の2倍〜5倍も合併しやすくなります。
 これらの合併症は、皮下脂肪型肥満よりも、内臓脂肪型肥満の方に起こりやすいことがわかっています。
 ほかにも肥満に合併しやすい病気としては、胆石、生理の異常(無月経、月経不順)などがあります。最近では悪性腫瘍である大腸ガン、胆嚢ガン、乳ガン、子宮ガン前立腺ガンなどが合併しやすいといわれています。
内臓脂肪症候群・メタボリックシンドローム
   内臓脂肪蓄積に基づいて複数の病気が集積した病態は、最近では「内臓脂肪症候群」、または「メタボリックシンドローム」と呼ばれています。動脈硬化から心筋梗塞などを起こしやすいものとして注目されています。
 こうしたことから、内臓脂肪型肥満はハイリスク肥満とも呼ばれています。
 日本でもメタボリックシンドロームは激増しており、警鐘が鳴らされています。
皮膚疾患
   極度の肥満の場合、上腕部、腹部、大腿部に皮下脂肪の断裂による皮膚線条が現れることがあります。
 うなじ、腋窩(えきか)などに黒い色素沈着が現れる黒色表皮症になることもあります。

肥満症の診断は?
肥満と肥満症
  イメージ画像 肥満があるかどうかは、見ただけである程度は見当が付きます。ですがより正確な判定のためには、身長と体重を測定し、ボディマス指数(BMI)を算出します。日本肥満学会の基準では、25以上を肥満と判定します。
 肥満があるだけでは病気とは言いません。肥満に基づく健康障害を有するもの、あるいはその危険が高い場合を肥満症として区別します。
肥満の目安
   合併症の危険が高いハイリスク肥満である内臓脂肪型肥満のスクリーニングとして、立位、吸気時のヘソの位置での腹囲を測定します。日本肥満学会の基準では、男性では85cm以上、女性では90cm以上であれば、内臓脂肪型肥満の可能性が高いものとします。
 内臓脂肪を正確に測定するためには、ヘソの高さで腹部CT検査を行い、内蔵脂肪面積を計算します。100u以上であれば内臓脂肪型肥満と診断します。
 簡単に体脂肪率を測定する方法としては、生体インピーダンス法による体脂肪計による測定があります。男性では体脂肪率20%〜25%以上、女性では体脂肪率30%〜35%以上を肥満の目安と考えます。ただし、同じ機器を使っても、時間、飲食、運動、身体状況などによって計測値が変化する場合があり、注意が必要です。
二次性肥満
   別の病気が原因で肥満が起こることもあります。これを二次性肥満と呼びます。
 二次性肥満の場合、元の病気に対する治療が必要になるので、二次性肥満かどうかの検査が行われることがあります。
 クッシング症候群などの内分泌性肥満、ステロイド薬、抗うつ薬などの薬物使用による薬剤性肥満。視床下部の腫瘍などによる視床下部性肥満。遺伝性疾患にともなう遺伝性肥満などがあります。

肥満症の治療法は?
一般的な治療法
  イメージ画像 二次性肥満に対しては、原因となっている病気の治療が中心になります。
 通常の肥満の治療の基本は、食事療法と運動療法です。薬物療法、外科療法は日本ではほとんど行われていませんが、補助的な手段として使われることがあります。
食事療法と運動療法を続ける
   食事療法と運動療法は一緒に行うことが重要です。食事療法だけでは、途中から減量効果がなくなる「適応」と呼ばれる現象が現れやすく、挫折することが多いものです。この現象は生体防衛機構のひとつと考えられており、減量にともなって基礎代謝で使うエネルギーが低下することが原因です。
 食事療法だけでは、脂肪ではなく大切な体の中の構成成分も現象してしまうことにもなりかねません。
 肥満の治療は長い期間にわたります。一時的に体重が減少することはあっても、その後の体重増加(リバウンド)を起こすことが多く、理想的な体重を維持できる割り合いは非常に少ないです。減量した体重を維持するためには、肥満の原因になった食習慣などの生活習慣を改善することが重要です。
行動療法
   1日の食事の時間、内容、摂取状況などを詳しく記録し、肥満の原因となる食行動や習慣を明らかにします。同時に体重を1日数回測定してグラフにして記入しておくと、問題となる食行動がわかりやすくなります。
 これは行動療法と呼ばれ、最近、注目されています。
無理のない減量計画
   減量を行うにあたっては、無理のない治療目標を立てる必要があります。
 体脂肪を1kg減らすためには、約7000kclのエネルギーを減らすことが必要です。食事療法だけで1日にご飯を3杯減らしたとしても、約2週間かかる計算になります。
 減量に成功したように思っても、水分が抜けているだけの場合も多々あります。
 1ヶ月に1kg〜2kgの減量が無理のないところです。

肥満症の食事療法は?
運動療法と一緒に行う
  イメージ画像 肥満症の治療は、食事療法が中心的役割を占めます。摂取する食事内容だけでなく、食習慣にも注意を払う必要があります。運動療法と平行して行うことが必要であることは言うまでもありません。
 食事療法を行う上で考えなければならないことは、健康に障害を与えないで体脂肪を減らすことです。無理な食事療法は体脂肪だけでなく、体の中の蛋白質・骨量などを減らしてしまいます。
 摂取エネルギーの設定、栄養素の配分、食習慣の改善を行います。
  摂取エネルギーの設定
     体脂肪を減らすためには、摂取エネルギーを消費エネルギーより低く設定する必要があります。しかし、健康な日常生活を送る上で必要なエネルギー摂取量があります。
 1日に必要なエネルギー量は、標準体重に身体活動強度に基づく必要エネルギー量をかけることで求められます。普通の社会人では、標準体重に25kcl〜30kclをかけたあたりが必要エネルギーになります。必要エネルギーより低く設定することで減量効果が得られるようになります。
 外来で行う通常の日常生活での食事療法は、こうした減量療法として1200kcl〜1800kclの範囲で摂取エネルギーの設定を行います。減量のために入院した場合は、医師の管理下でさらに低いエネルギーでの食事療法を行うことがあります。
 肥満の程度が強い場合、超低エネルギー食療法(VLCD)と呼ばれ、1日200kcl〜600kclしか摂取しない半飢餓法(はんきがほう)を行うこともあります。
  栄養素の配分
     摂取エネルギーを抑えるためには、3大栄養素である糖質(炭水化物)、蛋白質、脂肪、およびビタミン、ミネラルの適切な配分が必要です。
 糖質・炭水化物は制限しすぎると、体の蛋白質や脂肪からエネルギーが急激に動員されるため、体蛋白質の減少やケトン体が血液中に増えることがあります。糖質・炭水化物は1日100g以上摂取するようにします。ご飯なら軽く1膳くらいです。糖質・炭水化物を過剰に摂取すると、体の中で脂肪になるので注意しましょう。過剰の糖質・炭水化物の約3割が脂肪として蓄積されます。蛋白質は内臓、筋肉などの蛋白質でできている活性組織の萎縮を防ぐために、標準体重1kgあたり1.0g〜1.2gの摂取が必要です。
 脂肪については、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミンは脂肪と一緒に吸収されるので、1日20g程度の摂取が必要です。蛋白質食品を必要量とっていれば脂肪も十分に含まれているので、高脂肪食品を摂る必要はありません。
 ビタミン、ミネラルの不足は体の機能異常、疲労感を起こすので、必要量を摂取しなければなりません。そのため、緑黄色野菜、豆類、乳製品を十分に摂取すると良いでしょう。ダイエット中は水溶性ビタミンの補給のために、総合ビタミン剤を併用するのもひとつの方法です。
 便通を整えるために、食物繊維を十分に摂取します。
  食習慣の改善
     食事の量・内容だけでなく、食習慣を正しく改善する必要があります。1日3食の規則的な食事、かため食い、早食いの是正、1日の摂取量の半分以上を夜にとる夜食症候群の改善などです。

肥満症の運動療法は?
運動療法の目的
  イメージ画像 肥満の治療として運動療法を行う第一の狙いは、体脂肪を減少させることです。運動を行うと脂肪組織に蓄積されていた中性脂肪が分解し、遊離脂肪酸が筋肉で効率よく利用され、体脂肪が減少することになります。
 合併症を起こしやすい内臓脂肪型肥満では、運動はとても効果的です。内臓脂肪は皮下脂肪に比べて運動によって燃焼しやすいためです。
 運動療法の第二の狙いは、太りにくい体質を作ることです。運動によって生命活動に最低限必要なエネルギーである安静時の基礎代謝が上昇します。
運動療法の効果
   運動によりインスリンの働きが良くなり、糖尿病になりにくくなります。インスリンの働きが良くなることで、インスリンの分泌量が下がるので、インスリンによる体脂肪蓄積作用を軽くすることができます。さらに運動は、脂肪合成酵素の働きを抑えることで脂肪を貯まりにくくします。
 また、運動には以下のような効果が期待できます。
心肺機能の増強と、筋力の増強により、体力と運動能力を向上します。
骨のカルシウムを保持し、骨粗鬆症を予防します。
高脂血症や高血圧を改善し、動脈硬化を予防します。
運動による爽快感とストレス解消が得られ、ストレスによる過食を防ぎます。
運動療法の注意
   狭心症(きょうしんしょう)、下肢の関節障害などがある場合、運動を制限する、あるいは禁止した方が良い場合もあります。
 疑わしい場合は、運動療法を始めるにあたってメディカルチェックを行って、主治医と相談することが必要です。
 運動療法によるエネルギー消費自体は、それほど大きくありません。適度な運動は食欲を増進するため、食事療法を同時に行わないと、かえって体重増加を招いてしまうことも少なくありません。
運動療法の強さ
   体脂肪を減らすためには運動による消費エネルギーを、1日200kcl〜300kcl程度とするのが良いでしょう。歩行・ウォーキングでは約1時間です。
 運動による体質改善作用は3日以内に低下するため、運動は週3回以上、1日合計30分〜60分行うのが望ましいです。
 運動の強さは最大限に体力を使った時の50%前後の強さが良いとされています。脈拍数では1分あたり110〜130になるくらいの運動で、早足での歩行などがこれに相当します。運動習慣のない場合、膝や足などを痛めることが多いので、少しずつ運動を強くしていき、時間を延ばすようにします。
運動の種類
   運動の時間がうまくとれない場合、通勤で歩いたり、なるべく階段を使うなどの工夫で運動量を増やすようにします。歩数計を使って1日7000歩以上を目標にするのも良い方法です。
 運動の種類は、歩行、ジョギング、自転車、水泳など全身を使う有酸素運動、筋力トレーニングなどの無酸素運動があります。有酸素運動は脂肪を燃焼させる効果があり、体脂肪減少のためには無酸素運動より適しています。自転車、水泳、水中歩行などは、膝と足への負担が少なく肥満者に適しています。
 運動をする時間はいつでもよく、空腹時の方が体脂肪が分解しやすい利点があります。しかし、糖尿病の人でインスリンや糖尿病の飲み薬を服用している場合は、低血糖の用心のため、運動はなるべく食後1時間〜2時間に行うようにします。

肥満症かなと思ったら?
摂取エネルギーの計算を覚える
  イメージ画像 エネルギー計算は難しそうですが、慣れればそれほど難しくないことがわかります。『糖尿病食事療法のための食品交換表』は減量のためにも役立ちます。
 自分が実際に摂取エネルギーを理解し、エネルギー制限を正しく実行できるようにしましょう。
食事のポイント
   食事の量だけでなく、質も問題です。肉類には蛋白質だけでなく脂肪も多く含まれているので控えるようにします。ハンバーグ、フライドチキン、揚げ物なども控えます。
 野菜は低エネルギーでビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含むので、たくさん食べます。ノンオイルドレッシングは良いですが、油を含んだドレッシングやマヨネーズは高エネルギーなので使わないようにします。
 果物はビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含みます。含まれる果糖は脂肪に変わりやすいので、食べ過ぎないようにします。
 調理の際には、油や調味料は計算する習慣をつけ、おかずはなるべく薄味にします。味付けが濃いと、ご飯の食べすぎに繋がります。「炒める」、「揚げる」よりも、「茹でる」、「焼く」にした方が、エネルギー量が少なくなります。調理器具として、テフロン加工のフライパンを使うと油の量を減らすことができます。
 盛り付けは必ず1人分ずつ分けて盛り付けます。大皿などから取るようにすると、自分が食べた分量がわからなくなり、人につられて食べすぎになりやすいです。またお茶碗を小ぶりにして皿数を多くするといった工夫をすることで、食事の充実感が得られ、食べすぎを防ぐことができます。
食べ方の工夫
   早食い、ドカ食いにならないように、ゆったりとした気分で食事を楽しみます。
 食べる順番では、まずスープなどの汁物、野菜類など、低エネルギーのものから食べ始めます。良く噛んで、味わいながらゆっくり食べるように心がけます。ゆっくり食べることで満足感も得られ、過食を避けることができます。
 主婦の場合、残り物を自分で食べてしまわずに、冷蔵庫にしまうなどします。
間食、清涼飲料水は慎む
   食間にだらだらと食べる習慣を改めます。間食で食べるスナック菓子、煎餅などは炭水化物や脂肪が多く高エネルギーなので、そうしたものを手の届くところに置かないようにします。
 コーラ、ジュースのような清涼飲料水は、糖質を多く含むので摂り過ぎないようにして、なるべくお茶や水にします。間食はしないことが原則ですが、どうしても空腹になった場合は、コンソメスープなどの温かい飲み物をゆっくり味わって飲むか、ところてん、こんにゃく、きのこ、トマトなど、低エネルギーの食品を摂ります。
外食・ファストフードに注意
   外食やファストフードは一般的にエネルギーが高く、脂肪、炭水化物が過剰で野菜が足りません。一部を食べ残し、サラダを追加するなどの工夫が必要です。
 食事はなるべく家で摂るようにし、外食の回数を少なくするようにします。
アルコール摂取に注意
   アルコールは高エネルギーで肥満や脂肪肝を助長するので、できれば避けるようにします。またアルコール摂取により自制心がゆるみ、食欲が亢進する点でも注意が必要です。
 つまみには低エネルギーのものを選びます。
ストレス解消
   食べることでストレスを解消するのは、肥満の原因になることが多い生活習慣です。
 ストレスを貯めないようにし、趣味などの手段でストレスを解消するようにします。
運動の習慣
   運動不足と肥満の関係は、良く知られた事実です。運動不足は肥満の原因であると共に、肥満が原因で体を動かすのがおっくうになるという結果もあり、悪循環を形成します。
 現代人のライフスタイルはどうしても運動不足になりやすく、それによって太りやすい代謝状態になってしまいがちです。1日に決めた時間に自分でやりやすい運動をするようにします。日常生活の中で、通勤に行き帰り、会社内の移動、仕事のための移動、買い物など、できるだけ歩く機会を増やす工夫も大切です。
さまざまなダイエット法に飛び付かない
   テレビや雑誌では、さまざまなダイエット法の情報があふれています。正しいものもありますが、誤ったダイエット法も多いので、気をつける必要があります。
 リンゴ、ヨーグルト、キャベツ、バナナなど特定の食品ばかりを食べる方法がありますが、体に必要な栄養素が欠乏するため、貧血、肌荒れ、骨粗鬆症などの健康障害を起こしたり、体脂肪ではなく体の構成成分である蛋白質が減少したりもします。
 体重減少効果があるとしても、さまざまな健康食品や民間薬が通信販売やインターネットで売買されています。基本的に怪しい物には手を出さないのが賢明です。死亡者の出た中国産のやせ薬のように重い副作用を起こすものもあります。
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