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 急性硬膜下血腫

急性硬膜下血腫の概要は?
おもな症状
  受傷直後からの意識障害
不穏
嘔吐
痙攣発作
似ている病気
  硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)
くも膜下血腫(くもまくかけっしゅ)
脳内血腫(のうないけっしゅ)
起こりやすい合併症
  脳挫傷
頭皮裂傷

急性硬膜下血腫ってどんな病気?
出血がたまったもの
  イメージ画像 頭蓋骨の内側で脳を包んでいる硬膜と、脳の間に出血がたまって血腫になったものを、急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)と呼びます。
 出血した血液が硬膜の直下で脳と硬膜の間にたまるので、短時間のうちにゼリー状に固まってしまい脳を圧迫します。ほとんどが大脳表面に発生しますが、ごくまれに左右の大脳半球の間、小脳表面(後頭蓋窩)に発生することもあります。

頭部の構造
頭蓋骨の構造
  イメージ画像 頭部の基本的な構造は、脳が頭蓋骨(ずがいこつ)という入れ物に入っている状態といえます。
 頭蓋骨よりも外側を、頭蓋外(ずがいがい)と呼び、頭部軟部組織が覆っています。頭蓋骨よりも内側を、頭蓋内(ずがいない)と呼び、脳が髄膜(ずいまく)に包まれた状態で存在します。
 脳に対して影響を及ぼす頭蓋内の損傷の有無が、頭部外傷では問題となります。
髄膜の構造
   髄膜は外側から、硬膜(こうまく)、くも膜、軟膜(なんまく)の3層構造になっています。
 硬膜は頭蓋骨の内側にピッタリと貼り付いており、厚紙のようなしっかりとした膜です。くも膜は薄くて弱い膜で、ピンセットでつまむ程度で破れてしまいます。軟膜は脳の表面そのものなので、はがすことはできません。
 くも膜よりも内側は、無色透明の脳脊髄液(のうせきずいえき)で満たされています。

急性硬膜下血腫の原因は?
脳挫傷
  イメージ画像 原因のほとんどが頭部外傷によるものです。典型例では、頭部外傷により脳表が損傷されその部の血管が破綻して出血し、短時間で硬膜下に溜まるというものです。脳挫傷(のうざしょう)、つまり脳組織の挫滅(ざめつ)があり、そこからの出血が脳の表面と、硬膜の間にたまり、硬膜下血腫になります。
橋静脈の切断
   まれに、硬膜と脳表とを結ぶ静脈である橋静脈(きょうじょうみゃく)が切れて出血することがあります。
 この場合、頭部に打撲(だぼく)などがなくても、脳が強く揺れるような外力によって出血します。とくに、回転性の外力によって出血します。
児童虐待など
   急性硬膜下血腫は小児ではまれですが、虐待による頭部外傷では比較的多くみられることで知られています。
 若年者ではスポーツ中の頭部外傷の際にみられることもあります。

急性硬膜下血腫の症状は?
進行すると死亡
  イメージ画像 血腫による圧迫と脳挫傷のため、頭蓋骨の内側の圧が高まり、頭蓋内亢進(ずがいないこうしん)が起きます。その結果、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などが現われます。
 さらに、血腫の圧迫が脳ヘルニアの状態にまで進行してしまうと、深部にある生命維持中枢である脳幹(のうかん)が侵され、呼吸障害などが起き、最終的には死に至ってしまいます。
局所的な症状
   脳挫傷の局所症状としては、片麻痺(かたまひ)と呼ばれる半身の麻痺、半身の感覚障害、言語障害、痙攣発作などが現われることがあります。
 ほとんどの場合、受傷直後に血腫ができて症状が現われます。しかし、数時間たってから意識がなくなることもあるので注意が必要です。高齢者の日常生活内での転倒による受傷、若年者のスポーツ外傷での受傷などでみられることが多いです。意識障害は次第に悪化し昏睡レベルに達します。受傷当初は意識障害がなくても、一旦意識障害が発現するとその後は急激に悪化することが多く、予後はきわめて不良です。
 近年の統計によると、重症の急性硬膜下血腫の患者さんの約13%に意識障害が現われます。意識障害出現までの時間は、約81%が3時間以内です。
赤ちゃん、乳幼児、子供
   橋静脈(きょうじょうみゃく)が出血源の場合は、乳幼児に多いとされています。
 典型例では、乳児が後に転んで床に後頭部を打ち付けてしまい、数分間泣き続けたのち、嘔吐や痙攣発作を起こし、意識を失うということがあります。

急性硬膜下血腫の診断は?
頭部CT検査
  イメージ画像 血腫は頭部CT検査によって、白く映ります。血腫は脳の表面に広がるため、三日月型の高吸収域として見られます。
 出血は硬膜下腔に拡がるため短時間で血腫は形成されます。通常片側の大脳半球全体が包まれます。まれに大脳縦裂や後頭蓋窩に血腫が形成されることがあります。

急性硬膜下血腫の治療法は?
開頭手術
  イメージ画像 血腫の大きさと症状の程度によって、緊急の開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)が行なわれます。全身麻酔下で、血腫を完全に除去し、出血源を確認して止血します。
 術後の脳圧を軽減するために、開頭した骨片をもとの部位に戻さずに、皮下組織と皮膚のみで閉頭し、1ヶ月〜2ヶ月後に状態が落ち着いた時点で、保存しておいた骨片を戻して整復するという方法がとられることもあります。
 日本のガイドラインでは、血腫の厚さが1cm以上の場合を手術の目安としています。
薬物療法
   血腫が少量の場合は手術の効果が低いので、重症でも薬物療法が行なわれます。頭蓋内圧亢進に対する脳圧降下薬として、グリセオールやマンニトールの点滴注射が行なわれます。
 頭蓋内圧亢進に対する特殊な治療法として、バルビツレート療法、低体温療法がありますが、副作用も大きいために適応は慎重に判断されます。
穿頭血腫ドレナージ術
   脳ヘルニアが進行し、呼吸停止など脳幹の機能が失われた場合、手術での危険性が高く、開頭手術を行えないこともあります。
 重症例では、局所麻酔で頭蓋骨に小さな孔を開け血腫を抜くという、穿頭血腫ドレナージ術(せんとうけっしゅどれなーじじゅつ)が行なわれることもあります。
 状況によって救急処置室などで穿頭や小開頭である程度血腫を除去し、その後状態をみて全身麻酔下の開頭手術に移行することもあります。
予後
   予後は一般的に入院時の意識障害の程度に比例します。昏睡状態の重症急性硬膜下血腫では、死亡率は約70%、社会復帰率は約15%と報告されています。またたとえ日常生活や社会生活へ復帰しても、ほとんどの症例で高次脳機能障害が残るため、満足な生活を送ることができないのが実情です。
 まれに手術の準備中に意識障害が改善に向かう症例があります。このような症例では血腫が自然消退していくものもありますが、例外的な症例と考えられます。
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