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 サリン中毒
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サリン中毒ってどんな病気?
ナチスドイツが開発した毒ガス
  イメージ画像 サリンは1938年にナチスドイツが開発した化学兵器です。VX、タブン、ソマンと同類の神経ガスに分類される毒ガスです。
 無色、無臭の液体、または蒸気で使用します。非常に作用が速く、吸入、皮膚曝露(ひふばくろ)、経口のいずれかによっても吸収されます。
 強いコリンエステラーゼ活性阻害作用を持っています。毒性の強い順に、VX、ソマン、サリン、タブンとなります。
重症の有機リン剤中毒に似ている
   サリンは、農薬の有機リン剤の極めて猛毒な状態と考えてよいでしょう。
 臨床症状は、重症の有機リン剤中毒の症状に良く似ており、治療法も同じです。
サリン事件
   常温では液体ですが、容易に気化します。ガス状になっても呼吸器や眼の結膜からすぐに吸収されます。
 オウム真理教によって製造されたサリンは、松本サリン事件や、東京地下鉄サリン事件で使用され、多くの人が同時に重症になり、死亡にまで至る恐ろしい毒ガスです。
化学兵器として使用される
   サリンは市販されている製品から発生することはありません。
 政情不安な現在では、世界で化学兵器やテロとして使用される可能性があり、注意が必要です。アメリカや北朝鮮も化学兵器としてサリンを所有しているとされ、イランイラク戦争ではイラク軍がイラン軍のクルド人に対してサリンを使用しました。

サリン中毒の原因は?
致死性の高い毒薬
  イメージ画像 サリンは元に戻らない不可逆的にコリンエステラーゼと結合し、自律神経節、中枢神経系、神経筋接合部にアセチルコリンを蓄積させ、中毒症状を引き起こします。
 液体の皮膚曝露時のヒトの最小致死量は、0.01mg/kgと極めて少量です。ごく微量の滴下で、ヒトは死亡してしまいます。
 散布時のヒトの吸入半数致死濃度(LC50)は、70mg/立方メートルです。

サリン中毒の症状は?
必ず現れる瞳孔の縮瞳
  イメージ画像 瞳孔が小さくなる縮瞳(しゅくどう)は、必ず起こります。軽症の場合でも、物が暗く見える、物が見えにくくなる視力低下、見えない範囲がある視野狭窄、目に何か入っている感じがする異物感、眼痛など、多彩な症状がみられます。この他、頭痛や吐き気がみられます。
 重症度に応じて、鼻汁(びじゅう)・流涎(りゅうぜん、ヨダレのこと)、気管支攣縮、分泌亢進、呼吸障害、痙攣、呼吸停止と進行していきます。
 サリンで重視すべき点は、呼吸を止める作用があるということです。
肺水腫など
   サリンは酸や酸性溶液に接触すると、フッ化水素を遊離します。
 加熱されるとフッ化物やリンの酸化物である刺激性の固体が昇華して凝結してできる微細な粒子の霧であるフュームを遊離し、肺水腫(はいすいしゅ)を引き起こすこともあります。
少量の皮膚曝露
   極めて少量の皮膚曝露時には、全身症状は現れず、汚染された部位の皮膚だけに筋線維性攣縮、発汗などがみられます。
後遺症
   サリンの被害者にどのような後遺症が残るのか、専門的な研究が実施されたのは、サリン事件を経験した日本だけです。
 後遺症には、心的外傷後ストレス障害・PTSDなどの心的な物、目がかすむ、身体がだるい、熱が出るなど軽微な物、完全に身体を動かせないほどの重度な物まであります。
 身体的な後遺症の原因は、中枢神経系や副交感神経の回復不能な損傷だと考えられています。生涯に渡る後遺症だと考えられています。

サリン中毒の診断は?
重症度を検査
  イメージ画像 重症度の判定を目的として、サリンの血中濃度測定は意味がありません。
 中毒症状、血漿中、または血球中のコリンエステラーゼ値が、重症度の判断材料になります。
 赤血球コリンエステラーゼ値が70%にまで下がった場合、患者さんの約半数に全身症状が現れます。

サリン中毒の治療法は?
早期の治療が必要
  イメージ画像 農薬として使用される有機リン剤や、他の神経ガスに対する治療法と同じです。ヨウ化プラリドキシム(PAM)、硫酸アトロピンを、可能な限り早く使用します。
 アメリカでは、戦場に持参し、兵士自身が自己注射するためのキットが販売されています。
症状が現れるまでの時間
   皮膚曝露の場合、症状が現れるまで数時間以上かかるため、皮膚曝露から6時間後の赤血球コリンエステラーゼ値が正常であっても、経過観察を中止してはいけません
 液体の皮膚曝露時には、最低でも18時間は入院して、経過観察する必要があります。
 吸入曝露の場合、症状の発症は早く、医療機関に到着する前に重症化してしまいます。
入院と経過観察が必要
   縮瞳以外のすべての症状が消失するまで、入院と経過観察が必要です。
 縮瞳のみが、数週間ほど持続することもあります。

サリン中毒の応急処置は?
自身の防護を行ってから救出を
  イメージ画像 現場で汚染を除去することが原則です。衣類は脱がせ、脱がせた衣類はビニール袋などに入れて密封処理します。すぐに風通しの良い、空気のきれいな場所に運びます。
 重症度に応じて、気道の確保、人口呼吸を行います。
 二次汚染を防ぐため、救出・救助に当たる人は、防護を怠ってはいけません。呼吸器系だけでなく皮膚からも吸収されるので、ガスマスクだけではなく対応する防護服を着用しないと防護することはできません。
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