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  前立腺肥大症

前立腺肥大症の概要は?
おもなな症状
  尿が出始めるまでに時間がかかる
排尿の勢いが弱い
排尿の回数が多い(特に夜間)
排尿しても残った感じがする
排尿後の切れが悪い
似ている病気
  膀胱頸部硬化症(ぼうこうけいぶこうかしょう)
尿道狭窄(にょうどうきょうさく)
神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)
前立腺炎(ぜんりつせんえん)
前立腺ガン
膀胱結石(ぼうこうけっせき)
起こりやすい合併症
  尿路感染症(にょうろかんせんしょう)
膀胱結石
膀胱尿管逆流症(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅうしょう)
水腎症(すいじんしょう)

前立腺肥大症ってどんな病気?
膀胱下部にある
   前立腺は膀胱の下部、尿道括約筋の奥にあります。約15gのクルミ大の臓器で、男性生殖器官のひとつです。ほぼ中央を尿道が貫いています。
 前立腺部の尿道には、精巣から精子を運んでくる精管が開いています。
精液の流れ
   射精の際には、精管、精嚢、前立腺からの液体が混ざり合った精液が、最初に前立部尿道に流れ出してきます。
 次に、前立腺部尿道が閉じて、膀胱側へ精液が流れないようにして、尿道から外尿道口に向けて、精液が射出されます。
前立腺が腫大する
   前立腺肥大症は、前立腺の内側の部分が腫大(しゅだい)する病気です。前立腺腺腫(ぜんりつせんせんしゅ)とも呼びます。
 前立腺腺腫は数十g程度のことが多いのですが、中には100gを超すような大きなものもあります。
 前立腺が腫大すると尿道が圧迫されて尿の勢いが悪くなり、最悪の場合は尿がまったく出なくなってしまいます。この病態は尿閉(にょうへい)と呼びます。

前立腺肥大症の原因は?
60歳以上の男性の病気
   60歳以上の人に多くみられる病気です。
 30歳代〜40歳代では、まずみられない病気です。 50歳〜65歳の男性の約15%、65歳〜80歳の男性の約25%が中等症以上の症状をともなう前立腺肥大症の患者さんだと推定されています。
本来の原因は不明
   男性ホルモンの存在と、加齢が前立腺肥大症の発生と進行に、影響していることが考えられます。しかし、いくつかの仮説はありますが、根本的な原因の詳細は明らかにはなっていません。

前立腺肥大症の症状は?
前立腺肥大症の多様な症状
   前立腺肥大症では、尿の勢いが悪くなることにともない、さまざまな症状が現れます。
 1992年にアメリカ泌尿器科学会で提唱された国際前立腺症状スコアに基づいて、さまざまな自覚症状をアンケート形式で患者さんに聞き、点数化して評価します。
  第1病期-膀胱刺激期(ぼうこうしげきき)
     尿道の奥や、会陰部(えいんぶ)の不快感、夜間の排尿が2回を超える頻尿、尿意を感じると我慢ができない尿意切迫感、尿が出始めるまでに時間がかかる、尿線が細い、尿が出終わるまでに時間がかかるなどの症状があらわれます。
  第2病期-残尿発生期(ざんにょうはっせいき)
     前立腺腺腫が大きくなり、排尿困難の程度が増すと、膀胱に溜まった尿を排出しきれなくなり、残ってしまいます。これを残尿と呼びます。
 残尿があると、細菌感染が起こりやすくなり、膀胱内に結石ができやすくなります。出血し血尿が出ることもあります。
 過度の飲酒、冷え、長時間座ったままでいると、突然尿が出なくなってしまう尿閉になることがあります。
  第3病期-完全尿閉期(かんぜんにょうへいき)
     さらに前立腺腺腫が大きくなり、膀胱排尿筋(ぼうこうはいにょうきん)の収縮作用では、尿の排泄ができなくなってしまいます。
 膀胱は常に高度に拡張してしまい、残尿量が300ml〜400ml以上になり、膀胱内圧に負けて尿が絶えず少量ずつ漏れ出してしまうようになります。
 こうなると、腎臓からの尿の流れも妨げられてしまい、腎機能障害を起してしまいます。

前立腺肥大症の診断は?
前立腺ガンの除外診断
   50歳以上の人で、排尿障害を訴える患者さんには、まず前立腺ガンの除外診断を行います。
 血液中の前立腺腫瘍マーカー(PSA)の値を測定することが重要となります。
 肛門から指を入れ、経直腸的に前立腺を触診することも、ガンの鑑別診断に重要な検査となります。
前立腺肥大症の評価
  基本的評価
     全般的な健康状態、排尿障害をきたす合併症の有無、既往症の有無、副作用として排尿障害を引き起こす薬剤の服用がないかどうかの確認を行います。
 尿検査、腎機能検査を行います。
 排尿に影響するおもな薬剤 
咳止め・風邪薬 ダンリッチ、PL顆粒、ネオフィリン、市販されている風邪薬のほぼすべて
胃潰瘍薬 コランチル、メサフィリン
抗パーキンソン病薬 アーテン、ドパール、アドパー
抗うつ薬 トフラニール、メレリル
精神安定薬・睡眠薬 セルシン、ホリゾン
麻薬 MSコンチン
強心薬 ジゴキシン
利尿薬 ラシックス
その他 抗ヒスタミン薬、リスモダン、リザベン
  前立腺肥大症の重症度の判定-国際前立腺症状スコア
     国際前立腺症状スコア(IPSS)では、7種類の自覚症状の強弱をそれぞれ点数化しました。ひとつの症状につき0点〜5点の6段階に点数化されています。
 合計点で重症度を評価します。もっとも症状の強い人は35点になります。
 前立腺肥大症の重症度判定 
 国際前立腺症状スコア(IPSS) 
  まったくなし 5回に1回の割合未満 2回に1回の割合未満 2回に1回の割合 2回に1回の割合以上 ほとんど常に
最近1ヶ月間、排尿後に尿が残っている感じがありましたか? 0 1 2 3 4 5
最近1ヶ月間、排尿後2時間以内にもう1度行かねばならないことがありましたか? 0 1 2 3 4 5
最近1ヶ月間、排尿途中に尿が途切れることがありましたか? 0 1 2 3 4 5
最近1ヶ月間、排尿を我慢するのがつらいことがありましたか? 0 1 2 3 4 5
最近1ヶ月間、尿の勢いが弱いことがありましたか? 0 1 2 3 4 5
最近1ヶ月間、排尿開始時にいきむ必要がありましたか? 0 1 2 3 4 5
最近1ヶ月間、床に就いてから朝起きるまでに普通何回排尿に起きましたか? 0回 1回 2回 3回 4回 5回以上
0 1 2 3 4 5
合計点
  前立腺肥大症の重症度の判定-QOLスコア
     QOLスコアは、患者さんがどれほど日常生活に困っているかを、0点〜6点の7段階の点数によって評価します。
 QOLスコア 
  大変満足 満足 大体満足 満足・不満足のどちらでもない 不満気味 不満 大変不満
現在の排尿の状態が、今後一生続くとしたらどう感じますか? 0 1 2 3 4 5 6
  最大尿流量率
     排尿時の尿線の勢いを調べる検査です。
 記録機械に接続された小用便器に排尿するだけで、1秒間に最大何mlの尿が排出されたか記録されます。
  残尿量
     排尿後にどのくらいの量の尿が排出されずに残ってしまっているか、超音波を使って検査をします。
  前立腺容積
     前立腺が腫大しているかどうかを、超音波検査で調べます。
 前立腺の腫大が認められない場合は、膀胱の排尿機能の異常や、尿道狭窄などの鑑別診断を行います。
  重症度判定
     これらの問診・検査により、前立腺肥大症の重症度を診断します。
 前立腺肥大症の領域別重傷度判定基準 
  国際前立腺症状スコア QOLスコア 機能
最大尿流量率(Qmax)、残尿量(RU)
形態
前立腺容積
軽症 0〜7 0〜1 15ml/秒以上、50ml未満 20ml未満
中等症 8〜19 2〜4 5ml/秒以上、100ml未満 50ml未満
重症 20〜35 5〜6 5ml/秒以上、100ml以上 50ml以上

前立腺肥大症の治療法は?
経過観察も選択肢のひとつ
   前立腺ガンとの区別がもっとも大切です。ガンの可能性が否定されれば、前立腺肥大症に対しては、さまざまな治療法があります。
 症状の程度と、その症状によって患者さんがどれだけ困っているかにより、治療法法が決定されます。
 日常生活上、困っていないのであれば治療の必要はありません。治療せず、経過を観察するのも選択肢のひとつとなります。
  手術
     手術には下腹部を切開して、腫大した前立腺を摘出する方法と、尿道から内視鏡を挿入して前立腺を切除する方法があります。近年では、尿道から内視鏡を挿入して前立腺を切除するTUR-Pという手術が一般的です。
 前立腺肥大症が原因で、尿閉を繰り返す場合、膀胱結石の形成、血尿が繰り返す、治療困難な尿路感染症、腎機能障害のいずれかが認められる場合は、手術がすすめられます。
 手術によって、最大尿流量率は2倍〜3倍になり、もっとも治療効果が期待できる治療法です。
  薬物療法
     前立腺部の尿道の圧迫を緩める作用を持ったα1ブロッカーと、腫大した前立腺を縮小させるアンチアンドロゲン薬、植物製剤、漢方薬があります。いずれも副作用はありますが、安全性の高い薬剤です。
 α1ブロッカーは、もともと降圧薬として使われていた薬剤から開発された経緯があり、立ちくらみなどの副作用があります。
 アンチアンドロゲン薬は男性ホルモン値を若干低下させる作用があり、インポテンツなどの副作用があります。
 植物製剤、漢方薬は、切れ味は今ひとつですが、副作用の心配はほとんどありません。
  レーザー治療
     TUR-Pに準ずる治療法です。レーザー照射によって、前立腺を凝固させ壊死させます。
 出血が少なく、入院期間が短いという利点があります。しかし、効果が出るまでに時間がかかり、大きな前立腺には不向きな治療法です。TUR-Pよりも、再発率が高いことも欠点のひとつです。
  温熱療法・高温度療法
     手術よりも簡単で、外来でも治療することが可能です。
 前立腺を高温度にして壊死させます。
 レーザー治療と同様に、大きな前立腺には不向きです。効果の持続期間が半年〜1年と短いのが欠点です。
  尿道ステント
     心臓や肺の合併症のため、麻酔をかけることが危険な患者さんのため、狭くなっている前立腺部尿道に筒状の形状記憶合金のメッシュ(ステント)を置いて、尿の通りを確保する治療法です。
 簡単に治療できますが、結石の形成、感染症、出血などの合併症があらわれることがあります。
効果の高い治療法は痛い
   さまざまな治療法がありますが、それぞれに長所と短所があります。期待される治療効果も違ってきます。
 一般的には、治療効果の高いものほど、リスクと痛みをともないます。

前立腺肥大症かなと思ったら?
前立腺ガンの検査をしましょう
   人によっては、治療せずに経過観察だけでもよい病気です。自分の症状の何を、どの程度良くしたいか、主治医とよく相談して治療法を決めましょう。
 まったく同じ症状でも前立腺ガンの可能性もあるので、前立腺ガンの除外診断だけは泌尿器科で受けておく必要があります。
日常生活上の注意
   日常生活上での注意点は、以下の通りです。
排尿を我慢しないようにする
便秘をしないようにする
適度な運動をする
適度な水分を摂る
過度なアルコールは控える
刺激の強い食事は控える
新しい薬を飲む時は、医師に相談する
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