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下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症


下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症の概要は?

おもな症状

 

幼児期以後の成長障害

症状が似ている病気

 

体質性発育遅延
精神社会性小人症
原発性小人症
ターナー症候群
甲状腺機能低下症

起こりやすい合併症

 

二次性徴・性発育の遅延


下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症ってどんな病気?

実際には少ない患者数

 

イメージ画像 小児期までに、脳内にある下垂体と呼ばれる器官から分泌される成長ホルモンの分泌量が少ないため、成長が悪くなって低身長になる病気です。
 低身長は、身長SDスコアがマイナス2SD以下という統計の基準で定義されています。
 同性・同年齢の100人のうち、2人〜3人は低身長という定義に該当します。この2人〜3人の中で、下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症は、5%以下になります。

ホルモンの関係

 

 成長ホルモンの分泌のみが良くない場合と、他のホルモンの分泌障害をともなう場合があります。
 成長ホルモン以外の下垂体ホルモンの分泌も障害されている場合、低身長と合わせて、性機能の発育障害が多くみられます。

病名

 

 下垂体性小人症は、「かすいたいせいこびとしょう」、もしくは「かすいたいせいしょうじんしょう」と呼ばれます。
 最近では、成長ホルモン分泌不全性低身長症という病名が使われるようになり、「せいちょうほるもんぶんぴつふぜんせいていしんちょうしょう」と呼びます。


下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症の原因は?

原因不明の特発性

 

イメージ画像 約95%は、原因が明らかでないため、特発性と呼ばれます。
 周産期の視床下部(ししょうかぶ)、下垂体、下垂体茎(かすいたいけい)の障害が示唆されています。出生の頃に生長ホルモンが低下したため、骨盤位分娩や仮死などの分娩障害が原因ではないかと推測できるものも含まれます。

続発性

 

 約5%は、頭蓋咽頭腫に代表される脳腫瘍、下垂体の異常などの器質的な原因で起こります。
 下垂体の形成不全や脳腫瘍、脳の炎症、髄膜炎、頭部放射線照射、頭部外傷などが考えられます。

遺伝性・家族性

 

 成長ホルモンの分泌のみが良くない場合、家族性に生じる遺伝によるもの、散発性に生じるものがあります。
 ごくまれなケースとしては、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子の遺伝子の異常、下垂体の発生に関係する遺伝子(転写因子)の異常による遺伝性のものがあります。


下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症の症状は?

一般的な症状

 

イメージ画像 出生時の身長、体重は正常です。
 徐々に成長の遅れが目立ち、平均身長から年々遠ざかります。一般的な症状は、成長率の低下と、低身長だけです。骨の発達が遅れ、いわゆる骨年齢が低下しています。

続発性と遺伝性・家族性

 

 続発性の低身長症では、ある年齢から急に身長の伸びが悪くなります。成長曲線を描くと、発症時を境にして、成長曲線が急に横に寝てくるのがわかります。
 遺伝性の低身長症では、特発性よりもさらに著しい低身長をきたすのが一般的です。

その他の症状

 

 脳腫瘍などが原因の場合、病気の発病とともに成長が障害されます。
 先天的に重症の成長ホルモン分泌不全がある場合は、新生児期に低血糖がみられる場合があります。ストレスに反応して血糖などを上げる作用のあるホルモンが脱落するしても、低血糖が起こり、意識が低下することもあるので注意が必要になります。
 まれにみられる症状としては、下垂体から分泌される他のホルモンの分泌不全をともなうことがあります。たとえば、性腺ホルモンが障害されると、体形が幼いままで、男子では声変わりや射精がなかったり、女子では月経がこなかったりします。このほか、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症、副腎機能低下症、尿崩症などの症状がみられることもあります。


下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断は?

診断の手引き

 

イメージ画像 間脳下垂体障害調査研究班の診断手引きに従って、検査と診断が行われます。

通常の診断基準

 

 成長ホルモン分泌刺激試験は、子供にとってはやや負担のかかる検査のため、まず、左手のエックス線写真によって骨の年齢を調べます。下垂体性の低身長症では、身長年齢とほぼ一致します。
 血液中の成長ホルモンの濃度は時々刻々と変化するため、1回の採血で測定しても診断できず、成長ホルモンを分泌させる薬剤を使用して血液中の成長ホルモンの濃度が増加するか調べる成長ホルモン分泌刺激試験を行います。
 成長障害があり、成長ホルモン分泌刺激試験のうち2つ以上の試験で成長ホルモンの最大値が6ng/ml以下の場合、成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断されます。
 成長障害は、身長SDスコアがマイナス2SD以下、または2年間の成長速度SDスコアがマイナス1.5以下のいずれかです。
 成長ホルモン分刺激試験では、インスリン、アルギニン、グルカゴン、クロニジン、Lドーパ、GHRP-2が検査されます。

その他の診断基準

 

 新生児期に成長ホルモン分泌不全と考えられる低血糖がある場合、他の下垂体ホルモン分泌不全がある場合、脳腫瘍などがある場合、1つの成長ホルモン分泌刺激試験で6ng/ml以下(GHRP-2負荷では16ng/ml以下)なら、成長ホルモン分泌不全性低身長症と診断します。

重症度

 

 すべての成長ホルモン分泌刺激試験で、成長ホルモン最大値が6ng/mlを超える場合は、軽症に分類します。
 最大成長ホルモン頂値が3ng/ml〜6ng/mlの場合、中等症に分類します。
 成長ホルモン最大値が3ng/ml(GHRP-2負荷では10ng/ml以下)の場合、重症に分類します。

その他の検査

 

 インスリン様成長因子-I(IGF-I)の低値、IGF結合蛋白3(IGFBP-3)の低値、骨年齢が暦年齢に比べて80%以上の遅れ、尿中成長ホルモンの低値、睡眠時や24時間の成長ホルモンの分泌低下などがみられます。
 原因を調べるため、頭部MRI検査が行われます。


下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療法は?

成長ホルモンの注射

 

イメージ画像 成長ホルモンを投与し、成長率の改善を図ります。
 成長ホルモンは飲み薬はなく、注射するしかありません。遺伝子組み換え成長ホルモンを、体重1kgあたり0.175mgを1週間の量として、1週間に6回〜7回に分割して注射します。
 成長ホルモン治療は自己注射が認められているため、注射の打ち方を医師から習います。基本的に毎日寝る前、皮下注射します。ペン型の注射器が開発されるなどして、注射時の苦痛も和らげられる工夫がされています。子供が小さい時は両親が注射し、大きくなったら本人が注射します。
 成長ホルモンによる副作用は、一般的にはまれです。かつて白血病について注目されていましたが、現在では因果関係は否定的になっています。

平行して行う治療

 

 成長の促進を助けるため、少量の副腎皮質ステロイド薬、甲状腺ホルモン薬を併用することもあります。
 成長ホルモン以外の下垂体ホルモンの低下についても、合わせて治療することがあります。
 脳腫瘍などが原因の場合、それに応じた原因疾患の治療を行います。

治療には時間がかかります

 

 1年目は平均8cmの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と身長の伸びは落ちていきます。
 1年目〜2年目は、他の子供の身長に近付きますが、その後は徐々に近付くという程度の効果になります。
 すぐに正常身長になるという治療法ではありません。

治療の効果

 

 長期治療した場合、現在の多数例のデータで成人身長の平均は、男性で約160cm、女性で約148cmです。

治療費

 

 成長ホルモンは、とても高価な薬ですが、主治医が成長科学協会から適応判定を得るとともに意見書を書き、本人・家族が保健所を通じて小児慢性特定疾患の申請を行い認可されれば、治療費の自己負担はかなり軽減されます。


下垂体性小人症・成長ホルモン分泌不全性低身長症かなと思ったら?

小児内分泌専門医へ

 

イメージ画像 現在、低身長でなくても、成長率の低下がみられる場合、学校での背の順が前の方になっていくような場合、必ず小児内分泌専門医を受診するようにしてください。
 成長ホルモン分泌不全性低身長症の他にも、ホルモンの病気が隠れている場合があります。
 成長ホルモンによる治療の効果が期待できますが、時期を逃すと治療が難しくなるため、小学校低学年までに受診することが理想です。
 受診時には、母子手帳と、小中学校の成長記録を持参するようにしてください。

治療にあたって

 

 成長ホルモンを投与する治療を始める場合、成人身長に対する治療効果は、専門医と一般医では考え方に差があります。
 低身長が認められたら、小児内分泌専門医の診察を受けることをオススメします。

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