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肘部管症候群


肘部管症候群の概要は?

おもな症状

 

手指のしびれと知覚障害(小指・薬指)
手指がうまく使えない(巧緻運動障害)
手指に力が入りにくい
薬指・小指のかぎ爪指変形
親指の付け根以外の手の筋肉が痩せて平たい手になる

似ている病気

 

頸椎疾患
尺骨管症候群(手関節で尺骨神経が障害された時)
胸郭出口症候群(手指のしびれ)

起こりやすい合併症

 

小児期の上腕骨外顆偽関節によるものは外反肘(肘を伸ばして手の平を返した時肘より先が親指側に曲がる)
肘の変形性関節症によるものは肘関節の拘縮をともなう


肘部管症候群ってどんな病気?

尺骨神経の麻痺

 

イメージ画像 小指と薬指の感覚と、指を伸ばしたり閉じたり開いたりする手指の筋肉を支配している尺骨神経(しゃっこつしんけい)が、肘の内側の肘部管というトンネルで圧迫や引き延ばしを受けて発生する神経麻痺です。

尺骨神経とは?

 

 尺骨神経の働きは、正中神経と共同で手指の屈曲、小指と薬指の屈曲、親指を人差し指の根元にピッタリと付ける内転運動、親指以外の4本の指を外に開く外転運動、お互いにくっつけたりする内転運動があります。
 知覚神経は小指、薬指の小指側半分を支配しています。
 尺骨神経には2ヶ所、圧迫を受けやすい部位があります。もっとも多いのが肘関節部で、机の上で肘をついていて手がピリピリした経験は多くの人が経験していると思います。この部位を長時間にわたって圧迫したり、無理に肘を曲げる姿勢をとることで症状が現れると、肘部管症候群と呼ばれます。

男性に多い病気

 

 女性よりも男性に多い病気で、30歳前後と、50歳代に発症のピークがあります。
 30歳前後では、小児の上腕骨外顆偽関節後の外反肘による遅発性尺骨神経麻痺です。50歳代では、変形性肘関節症によって発症するものです。


肘部管症候群の原因は?

肘部管の圧迫・引き延ばし

 

イメージ画像 肘の内側の上腕骨内上顆(じょうわんこつないじょうか)と呼ばれる踝(くるぶし)の後ろに、骨と靭帯(じんたい)で形成された肘部管と呼ばれるトンネルがあります。このトンネルを尺骨神経が通っています。
 トンネル内は非常に狭く余裕がないため、慢性的な圧迫や引き延ばしが加わると、容易に神経麻痺が発生します。

圧迫と引き延ばしの原因

 

 圧迫の原因には、トンネルを構成する骨が隆起した骨棘(こっきょく)、靭帯の肥厚、トンネル内外にできたガングリオン嚢腫などがあります。
 神経引き延ばしの原因には、小児期の骨折によって生じた外反肘(がいはんちゅう)などがあります。外反肘とは、肘を伸展させると過剰に外側に反る変形のことです。


肘部管症候群の症状は?

進行によって異なる症状

 

イメージ画像 麻痺の進行によって症状が異なります。
 初期は小指と薬指の小指側にしびれ感が現れます。
 麻痺が進行するにつれ、手の筋肉が痩せてきたり、小指と薬指がまっすぐに伸びない鉤爪変型・鷲手変形が起こります。筋力が低下すると、指を開いたり閉じたりする運動ができなくなります。握力も低下します。

自覚症状

 

 尺骨神経が侵されると、小指と薬指が伸びにくくなったり、親指以外の4本の指で内外転ができなくなります。
 ポケットに手を入れようとすると小指が引っかかったり、親指と人差し指で新聞紙を掴む力が弱くなったりします。


肘部管症候群の診断は?

ティネル徴候とフロメンテスト

 

イメージ画像 肘の内側のくるぶしの後ろを叩くと、痛みが指先に響くティネル徴候がみられます。
 紙を患者さんの親指と人差し指の間に挟んだ状態で紙を引っ張ると、親指を曲げないと引き抜かれてしまうフロメンテストが陽性になります。

知覚テスター

 

 電気を使った検査では、神経を電気で刺激してから筋肉が反応するまでの時間が長くなります。
 知覚テスターという機器で感覚を調べると、感覚が鈍くなっています。

区別の必要な病気

 

 首の病気による神経の圧迫、糖尿病神経障害などとの鑑別が必要です。

補助診断

 

 MRI、超音波検査、電気生理学的検査があります。
 MRI、超音波検査では、神経の圧迫の状態や腫瘍の有無が疑われます。電気生理学的検査では、神経の圧迫の部位や神経の損傷の程度がわかります。


肘部管症候群の治療法は?

生活習慣の改善

 

イメージ画像 年齢によって、症状の現れ方や、治り具合が異なります。一般に若い人では進行が遅く、中高年層では進行が早く重症化しやすいと言われています。
 肘の圧迫、長時間の肘の屈曲など、明らかな原因がある場合は、生活習慣の改善と安静で軽快することが多いです。

薬による治療

 

 初期でしびれや痛みが軽症の場合、肘を安静にして、消炎鎮痛薬やビタミンB剤を内服します。
 このような保存療法で十分な効果が得られない場合や、筋肉が痩せ細ってきている場合は、手術を行います。

外科手術

 

 手術方法は、靭帯を切ってトンネルを開き、神経の圧迫を取り除きます。ガングリオン嚢腫があれば、切除します。
 神経の緊張が強い場合、内上顆というくるぶしを削ったり、神経を前方に移動させます。
 外反肘変形によって神経が引き伸ばされている場合、矯正骨切り術を行うこともあります。矯正骨切り術とは、骨を切って変形を矯正し、神経麻痺を治すことです。
 最近では、内視鏡を使用しながら小さな傷で圧迫を取り除く手術も行われています。

術後の経過

 

 肘部管は非常に狭いため、手術が必要になることが多くなります。筋肉に痩せ細りが出る前に手術を行うと、予後は良好です。


肘部管症候群かなと思ったら?

整形外科へ

 

イメージ画像 小指や薬指にしびれ、痛みがあり、肘の内側のくるぶしの後ろを叩くとしびれや痛みが走ったら、整形外科を受診するようにしましょう。
 手指の筋肉に痩せ細りがあった場合、至急、受診するようにしてください。
 肘部管症候群は重症化すると手術をしても、回復に6ヶ月以上の長期間かかることがあります。早期発見、早期治療が重要です。

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