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 血管腫

血管腫の概要は?
おもな症状
  赤あざ
新生児、ないし一歳未満の乳児の前額中央部、眉間、上眼瞼内側などにみられる淡紅色斑
生下時から存在する皮膚面より隆起しない境界鮮明な赤斑
結節状、腫瘤状に隆起する鮮紅色の血管腫
症状が似ている病気
  皮膚の細菌感染
悪性腫瘍
起こりやすい合併症
  感染
出血
スタージ・ウェーバー症候群
クリッペル・ウェーバー症候群
緑内障
カサバッハ・メリット症候群

血管腫ってどんな病気?
二種類に分類できる
  イメージ画像 一般的に血管腫といっても、非常に多くの種類が存在します。性質の異なる2つの疾患群に分類されます。
 ひとつは、苺状血管腫(いちごじょうけっかんしゅ)のように、血管を構成する細胞の増殖を本体とする病変です。
 もうひとつは、赤ぶどう酒様血管腫(あかぶどうしゅようけっかんしゅ)のように、細胞の増殖をともなわない構造上の異常です。血管奇形とも呼ぶべきものです。基本的には生まれつきみられるもので、その後の大きな変化はありません。
多い血管腫
   比較的、頻度の高い血管腫としては、毛細血管腫(もうさいけっかんしゅ)、海綿状血管腫(かいめんじょうけっかんしゅ)があげられます。それに、注意すべき小児の血管腫である、苺状母斑(いちごじょうぼはん)などがあります。

毛細血管腫の症状は?
毛細血管腫
   出生時、または幼少期からみられることが多いと考えられています。
 毛細血管腫は、一般に頭頸部(とうけいぶ)、上肢の皮下に発生し、大きさは比較的小さく、皮膚の色の変化をともないます。その他に症状はありません。

苺状血管腫・苺状母斑の症状は?
生後間もなく急成長
   苺状血管腫は、出世時にわずかに赤いか、無症状です。生後数週間で、急速に隆起し、増大していきます。6ヶ月〜12ヶ月で最大になります。悪性腫瘍と間違えられることもあります。学齢期にかけて、徐々に消えてなくなることが多いです。
 表面はイチゴのように鮮赤色のことが多いのですが、色調に変化がないこともあります。
 表面がこぶ状に隆起するのは3割程度で、6割近くは軽度に隆起するだけです。機能的に問題が生じるような、眼瞼(がんけん)、鼻腔、口唇、口腔、咽頭周囲、肛門周囲などに発症した場合、出血・潰瘍化を繰り返す場合などは治療を行う必要があります。
 あまりにも巨大な場合は、カサバッハ・メリット症候群と呼びます。

赤ぶどう酒様血管腫の症状は?
赤あざ・単純性血管腫・毛細血管腫
   血管の発育異常、毛細血管の拡張によって生じます。赤ぶどう酒様血管腫は、生まれつきある隆起しない赤い皮疹です。赤あざ、単純性血管腫、毛細血管腫とも呼ばれているものです。通常は出生時から認められます。
 顔面にもっとも多くみられますが、体のいずれの部位にも発生します。赤あざは子供の成長に比例して面積が増しますが、それ以上に拡大することはありません。自然に消えてなくなることがなく、加齢によって色調が濃くなるため、形成外科的治療や、レーザー治療などを考慮する必要があります。
合併症の可能性
   眼の周囲に赤あざがみられる場合は、緑内障(りょくないしょう)などの眼症状、てんかんなどの脳神経症状を合併する場合があります。これを、スタージ・ウェーバー病と呼びます。
 四肢の赤あざでは、成長とともに患肢の肥大、延長、静脈瘤、動静脈ろうなどが明らかになる場合があります。これを、クリッペル・ウェーバー病と呼びます。

サーモンパッチ・ウンナ母斑の症状は?
赤あざに類似
   赤あざに類似した皮疹のことです。新生児の額、うなじの中心部にしばしばあらわれる、境界が不鮮明な単純性血管腫です。
 新生児の30%〜50%にみられる症状ですが、自然に消えていく傾向が強く、1歳〜2歳までには大部分が消失します。
 うなじに発生したものは、ウンナ母斑と呼ばれ、約50%は、大人になっても残ってしまいます。
 サーモンパッチと、ウンナ母斑を合わせると、3人〜4人に1人くらいの頻度で認められます。

海綿状血管腫の症状は?
皮下と筋肉内で発生
   海綿状血管腫は、皮下にも発生しますが、筋肉内など深部に発生することが多いです。この場合、小児期よりも少し大きくなってから、痛みなどで気が付く場合も多くなります。
 皮下、および筋肉の両方にまたがって発生することもあり、非常に広範な病変であることも多く、治療が困難な場合もあります。
海綿状血管腫から出血
   深部の海綿状血管腫では、出血などによって急激な痛みを訴える場合があります。しかし、通常ですと痛みは数日で自然に軽快します。
 小児の場合、脚の長さに差が出る場合があります。多くは、腫瘍のある脚の方が長くなります。
 皮下に広がった病変では、外傷によって大量の出血を起こす場合もあります。
皮膚の変色
   海綿状血管腫の多くは、皮膚色の変化や、数珠状(じゅずじょう)に拡張した静脈が観察されます。皮膚色は、少し青みがかかった色調になります。
病気に気が付かないことも
   筋肉内に限定した海綿状血管腫では、痛みがない場合もは、病気にまったく気が付かないこともあります。
 広範な病変では、体全体の血液凝固の異常が起きる場合もあります。良性腫瘍ですが、生命に関わる重篤な症状を示す場合もあります。

血管腫の診断は?
毛細血管腫の診断
   毛細血管腫は、目視で診断が可能です。
海綿状血管腫の診断
   海綿状血管腫では、皮膚色の変化、静脈の怒張(ふくれ)などでわかる場合もあります。
 深部の病変に対しては、X線で静脈石が写る場合があり、診断に有用です。特に深部の血管腫の診断には、MRIによる検査が有効です。

血管腫の治療法は?
苺状血管腫・苺状母斑の治療法
  イメージ画像 自然に消失していくので、合併症の危険がない場合は、治療をせずに経過をみます。ただし、まぶたに発生し眼を塞いでしまう場合、気道を塞いでしまう場合には治療が必要となります。
 即効的な治療法として、副腎皮質ステロイド薬の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射を行います。これらの治療は効果的ですが、重い副作用を生じる可能性があります。
 色調だけを自然経過よりも早期に薄くしたい場合は、色素レーザー治療を行います。副作用は少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。
 放射線療法などの治療法もあります。
赤ぶどう酒様血管腫の治療法
   赤ぶどう酒様血管腫の治療には、第一選択として色素レーザー治療を行います。効果の程度は病変の深さによって異なりますが、ほとんどの赤あざに対して効果があります。
 範囲が広い場合、数回にわけて手術を行う場合があります。
サーモンパッチ・ウンナ母斑の治療法
   顔面のサーモンパッチは、自然に消失していく場合が多いので、治療せずに経過をみます。
 ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たないので、治療をおこなわないのがほとんどです。
海綿状血管腫の治療法
   深部の海綿状血管腫は、ある程度以上は大きくならないので、放置して経過観察をするのが基本となります。
 痛みをともなう場合は、手術が必要となります。病変が広範な場合は、手術が不可能なこともあり、現在でも難治性の腫瘍となっています。
最近の治療法
   新しい治療法としては、血管腫の中に、アルコールを直接注入する治療法も試みられています。効果のある場合もありますが、日本では公に認められた治療法ではありません。
 将来的には、血管を潰す物質による薬物療法が可能になると考えられています。

血管腫かなと思ったら?
診断は容易ではない
  イメージ画像 血管腫を早期に的確に診断することは、簡単ではありません。
 皮膚科専門医を受診し、診断を受けます。病名が確定したら、治療法について相談していきます。
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