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  女性とうつ病

女性のうつ病ってどんな病気?
女性の置かれている状態
  思春期
   ↓
結婚して妊娠・出産・子育てを行う時期(閉経前までの時期)
   ↓
その後子どもの世話から解放されて熟年を迎える時期(いわゆる更年期)
   ↓
余生を楽しむ老年期
人それぞれ症状やきっかけが異なる
   女性の生涯にはさまざまな段階があり、その女性が置かれた社会環境によって、うつ病におちいるきっかけや症状も微妙に異なってきます。

マタニティーブルーってどんな病気?
出産は一大イベント


 体内に新しい生命が宿り、はじめて母性本能に目覚めるこの時期は、一見、うつ病とは無関係であると思われがちです。しかし、妊娠→出産という女性にとっての『一大イベント』が、うつ病の引き金となるケースは少なくありません(ある専門家の報告によると妊婦さんの約2割にうつ病患者さんが発生しており、しかもその7割以上が妊娠初期から症状が出はじめている、と指摘されています)。
 女性が妊娠中に憂うつな気分におちいりやすい原因は、いくつか考えられます。この時期の女性に特有な心身の状態には、大きく3つの特徴があります。

3つの特徴があります
  女性ホルモンの分泌バランスが妊娠前と大きく変化する
  妊娠初期に、つわり、貧血、便秘、体のむくみ(浮腫)、疲労感、倦怠感など、普段とは違う状態が頻発する
  『母子ともに健全な出産ができるかどうか』といった、捉えどころのない不安が生じる
   1と2はどの妊婦さんにもみられる生理的な現象です。1の変化は体内で起こるものなので本人にはわかりません。これに3の心理的な要素が加わり、自分でも原因のわからない焦り、不眠、食欲の減退、頭痛、疲労感などの症状が出ます。
一過性の軽いうつ病
   このような妊娠から出産期にみられる特有の現象のことを『マタニティーブルー』といいます。ほとんどは一時的なものですが、出産を体験した女性の半数以上にみられるとされています。初めての出産の場合、とくに月経前不快気分障害や月経前症候群などを経験した人、やや神経質なタイプの女性などに起こりやすいことも指摘されています。
 このマタニティブルーは一過性のごく軽いうつ病状態です。「理由もなく涙もろくなった」こんな気分におちいったときは、マタニティーブルーなのだと理解してください。また、落胆、思考力の減退、疲労感など情緒の不安定感をともなうこともあります。なお、多くの場合このようなうつ状態は1〜2週間程度でおさまります。
 しかし、このような『気持ちの落ち込み』が、本当のうつ病へと変化することもあります。そこで、症状が重かったり長引くようなときには、家事への夫の協力、分担などを頼み、必要なら実家などでの休養を考えることも有効でしょう。

産後うつ病ってどんな病気?
出産後はホルモンバランスが崩れてしまいます
   出産後は妊娠中に増加していた女性ホルモンの分泌が急速に低下しますので、再び体内でのホルモンバランスが崩れ、心身が不安定な状態におかれます。出産後にもまだマタニティーブルーが続いたり、不安感、イライラ感が強い、突然激しい動悸や息苦しさが現れる、あるいは赤ちゃんへの興味が湧かない、などの異常のあるようなときは『産後うつ病』と呼ばれます。
放置しておくと子育てに悪影響も
   『産後うつ病』は出産後2週間以内に発病することが多いとされており、放置したままだと本人の気分の落ち込みだけでなく、その後の子育てに悪い影響をおよぼしたり、家族内でのトラブルを生じる原因ともなります。
 産後うつ病は25〜45歳の母親に多く、この世代の女性のうつ病の8%〜13%を占めると言われています。
社会環境に原因も
   社会の都市化現象が進んだ現在、育児環境もまた激変しています。マンションなど集合住宅化にともなう夫婦中心の小家族構成に加えて、子育てに対する夫の支援の少なさなどから、若い母親に強いられるのは『家庭という「密室」での育児』です。
 このような事実を示す一例として、東京都母子保健サービスセンターの夜間電話相談窓口での実態報告があります。たとえば、「育児について心配」と相談を寄せた母親の数は全相談内容の半数を超えており、「子どものことをどうしてよいかわからない」(48%)、「イライラする」(38%)、「ひどく疲れやすい」(32%)などという訴えが多く寄せられています。
 このような若い女性の育児に対する不安は、自然と心理的なストレスを増大させます。うつ病のもっとも怖ろしいところは、「死を望むこころ(自殺企図・念慮)」が顔を出すことです。うつ病患者さんにとってはいやな話ですが、うつ状態での家族殺人事件(子殺し事件を含む)も激増しているという報告もあります。
 とくに、自分が『何ごとにも「完璧主義者」』だと自負している専業主婦の方などの場合は、妊娠中から身近な知人に相談したり、夫の積極的な育児への働きかけなどによってストレスの軽減化を図ることで、うつ病へと悪化させない工夫が望まれます。
 また、家庭的事情などからこのようなサポートの手が得られないような場合は、地域の保健所(保健センター)や子育て支援(相談)センター、プレネイタル・ビジット事業(出産前小児保健指導)などによる継続した育児相談を受けることも一つの方法です。

産後うつ病の症状は?
産後うつ病が疑われる、おもな症状
   出産後4週間以内に次のような症状が複数あらわれ、それが2週間以上続くような人は、一度医師の診察をお勧めします。
 5つ以上ある場合は、うつ病の可能性が強く疑われます。
  抑うつ気分
    ゆううつ、悲しい、希望が持てない、イライラ感が続く、体がどことなく不調、倦怠感が強いなど
  ものごとに対する関心の喪失
    テレビの育児番組を見なくなった、親族との会話が億劫になった、友人と話しても楽しくないなど
  食欲が低下or過食
    食欲がわかない、何を食べても美味しくない・味気ない、口が寂しくなりつい何でも食べるようになったなど
  睡眠障害
    夜中に赤ちゃんのことが気になりよく眠れないなど
  強い焦りや口数の減少
    いつも気持ちが落ち着かず何かにせき立てられるように動きまわる、逆に体の動きが鈍くなり口数が減ったり声が小さくなるなど
  疲れやすい、無気力
    ひどく疲れやすい感じがする、何もやる気が起きない、洗顔や着替え入浴に手間取る・おっくうに感じるなど
  強い罪悪感を感じる
    「自分は母親として失格」・「夫に申し訳ない」など自分を責めるなど
  思考や集中力の低下
    注意が散漫になる、家事などが手につかなくなったなど
  死にたい
    「自分だけでなく赤ちゃんも」、と思うような場合は重症です

引っ越しうつ病って病気は?
引っ越しは一大イベントです
   結婚した女性の場合、出産とともに大きなイベントは『新居を構える』ことです。この時期は一般に30代〜40代にかけてのことだと思います。女性にとっては人生の大きな目標でもあります。
 家庭を持つ主婦の場合、多くは妻としてまた母親としての役割を担いながら、この『夢』の実現に期待と喜びに胸をときめかします。ところが、夢が現実となった新居が、ときとして思わぬ『落とし穴』となることがあります。それが『引っ越しうつ病』と呼ばれる特有の病的な現象です。
女性に多い引っ越しうつ病
   『引っ越しうつ病』は、転居や新築にともなってうつ病を発症するもので、ほとんどが女性だけに生じるのが特徴です。
 すでに仕事の場を離れている女性の場合、日常生活や関心の中心は当然、新しい家庭の場である『新居』に向かいます。ところが、現実に手に入れた憧れの『スイートホーム』が、それまで『描いていた夢』と大きく異なったとき、「こんなはずではなかった……」と、深い『失望の場』に突き落とされることになります。
小さな環境の変化がたくさんある
   『失望の場』の原因は、たいていの人がほんの些細な出来事に対して感じる『環境の違い』や『違和感』です。
 たとえば、それまで都心に住んでいた人が郊外に越したようなとき、それまで近所のスーパーやコンビニで間に合わせていた買い物ひとつにも、バスなどで遠くまで買い出しに出かけなければなりません。また、新しい隣人たちや子どもの学校友だちや先生たちなど、日常接する人たちの顔ぶれも一変します。それまで親しくお付き合いしていた人たちは『電話友達』や『メル友』に変わってしまいます。この対人関係の変化に馴染むためには、相当の心的エネルギーが要り、時間がかかります。
 一方、かんじんの『新居』自体も大きく変化します。それまでの住まいに比べて、間取りやスペースは広くなったものの、キッチン、リビング、寝室、浴室、その他窓の配置や玄関にいたるまで、すべての構造が大きく変わっています。真面目に『プロの主婦業』に徹しようと思っている女性ほど、住宅の手入れや管理に神経を使うことになります。
環境のや対人関係の変化が重い心理的ストレスへ
   それまで長く馴染んでいた生活の場とは、まったく様変わりした環境や対人関係の変化は、『自分が生活の場の主人公』であるという立場や思いだけは変わらないため、本人にとって想像以上に重い心理的な負担を強いることが少なくありません。『引っ越しうつ病』が家庭の主婦を襲いやすいのは、このような背景によるものです。
 なお専門的に、このような主婦特有の現象は、「それまで潜んでいた〈住まいとの一体化(同化)意識〉が、転居によって〈自らの世界の喪失化〉という危機的状況につながり、うつ病を招く」と説明されています。専門家の言うことはなんだかちょっと難しいですね。

女性のうつ病に似ている病気は?
ストレスの影響
   うつ病にかぎらず、多くの病気はストレスが引き金となって発症します。
 この理由は、からだに強いストレスがかかったとき、人体をコントロールしている
   1.内臓などの働きをつかさどる『自律神経系』
   2.ホルモン分泌をつかさどる『内分泌系』
   3.外部からの異物からからだを守る『免疫系』
 この3つの重要な神経系や生体リズムの構成要素に乱れが生じることにあります。

 『自律神経系』は、脳内の司令塔である視床下部からの情報が脊髄を伝導路として、交感神経(おもに拡張・増強作用)と副交感神経(おもに収縮・低下作用)という経路によって、体内全体の多くの重要な臓器や器官を支配する働きをしています。
 また、視床下部はホルモン分泌など『内分泌系』の働きに対しても強い影響力を発揮します。
うつ病に深いかかわりのある疾患
   うつ病にみられるような『こころ(感情)の乱れ』は、視床下部からの指示の乱れに大きく左右されます。しかしその一方で、このようなコントロール系統の乱れは、うつ病以外の多くの病気の発生にもつながっています。
 したがって医師が、うつ病が疑われる異常や症状のある患者さんを診察する場合には、まずうつ病と深いかかわりのある疾患の診断や、うつ病と間違えやすいうつ症状をともなう病気を除外しなければなりません。
 うつ病を併発しやすい病気には、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳卒中などの脳血管障害、ビタミンB12欠乏症、多くの内分泌疾患(甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症など)、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患、肝炎その他のウイルス感染症、などがあります。とくに女性に多いのは、甲状腺機能亢進症・低下症などの内分泌疾患と、全身性エリテマトーデスです。

社会人女性に多い精神疾患は?
サザエさん症候群
   仕事以外にこれといった趣味もなく、また近くに親しい友人や親戚などもない独り暮らしの独身女性に多い「月曜病」または「休日の夕方になると気分がふさぐ症候群」です。日曜日のテレビアニメ「サザエさん」を見ているうちに、明日からの出勤がつらくなるところから名付けられています。
 職場環境に馴染むことや、他人とのコミュニケーションを築くことが苦手のタイプに多いとされており、職場でのサークル活動への積極的な参加や、休日に一緒に過ごせる仲間作りを心がけると良いでしょう。思い切って月曜を休んでしまう『勇気』も必要です。
 つらさが耐えられないほどひどく、しばしば繰り返すような場合は、一度心療内科医に診てもらうことをお勧めします。
シンデレラ・コンプレックス
   「いつの日にか王子さま(恋人・夫・親・子など)が現れて、自分を幸せにしてくれる……」という願望に代表される〈他人に対する依存心の強いこころの状態〉ことをいいます。誰にでもある心理状態ですが、とくに働く若い女性に多いのことが指摘されています。
 このコンプレックスから解放されるためには、なによりも『自立心』を育てることが必要です。
 与えられた仕事へのチャレンジや、余暇やスポーツなどを思いっ切り楽しむなど、つねに「自分の生活は自分で決める」という気持ちを持つことも必要でしょう。
心気症
   からだのどこかにいつも異常が感じられ、些細な体調の変化から「もしかすると自分は、ガンやエイズのような重い病気にかかっているのでは……」と、人一倍思い悩むこころの病気です。
 この病気の特徴は、自分で勝手に病名をつけ、医師や他人などから否定されても、まったくその事実を受け入れないことです。詳しくは『心気症』のページを参照してください。
対応策
   いずれもうつ病とは異なりますが、重症の場合はうつ病を発生させる要因になる可能性もあります。
 症状が長く続き、日常生活に支障をきたすような場合は、精神科医または心療内科医による治療が必要です。
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