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 集会の日の夜
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小説のようなモノ

 「失礼します。ミナミ、また明日な。」
 「うん、バイバーイ」
 ミナミの家の前で家族に挨拶を交わし、一人、自分の家に帰った。

 大きな声を出さなくても十分に聞こえる狭い家の中で、姉の大声が響く。
 「ちーず、なにやってんの!? 」
 いつもの、姉の嫌がらせが始まった。相手をするのも面倒臭く、
 「うるせーなー。」
 と、一言吐き捨てた。
 「毎日、毎日、家の中を泥だらけにして。あんた、なにやってんの?そんなことする暇があるなら、畑の一つでも耕しなよ。どうせ、畑を貰うことなんてできるわけないだろうけど。芋一つ、まともに作れないんだもんね。なにしに生まれてきたの? 」
 捲くし立てるように、姉の悪口は続いている。僕は目に涙をにじませながら、黙って土をこねていた。言い返したくても言い返せない、そんな理由があった。これが、僕の日常。

 布団の中に入っても、今日の集会のことを考えていた。
 『誰が選ばれるんだろう。ガイアか、オルテガか、マッシュが選ばれればいいのになー。特にガイアは、なにかにつけて手を出してくるから、この村からいなくなっちゃえばいいのに。オルテガでも、マッシュでも、いなくなれば少しはいじめられずにすむかな。』
 『もし、自分が選ばれたらどうしよう。僕みたいな病弱な男が選ばれるなんていうことはないとは思うけど。』
 そう考えつつも、心の片隅には、自分が選ばれるんじゃないかと心配だった。コケシとして選ばれるのではないかという不安。

 そう、この村に昔から伝わる伝説。コケシ。村に飢饉がやってくると病弱な子供は手足を切られ捨てられるという伝説。
 家にはコケシが数体、飾られていた。なにも言わずに僕を見つめるだけのコケシ。恐ろしくて、目を合わせることもできなかった。

 コケシとして、兵士に選ばれるのではないだろうかという恐怖と、現在の生活から抜け出したいという葛藤に苦しんでいた。すさんだ日常生活。病弱な自分。
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