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 大腸ガン

大腸ガンの概要は?
おもな症状
  下血(肛門出血、血液が便に付着、便潜血テスト陽性)
排便習慣の変化(便秘または下痢気味になったり、あるいは両方)
腹痛
貧血
体重減少をともなった全身倦怠感
不定腹部症状(膨満感、重圧感、腹鳴、不定の鈍痛)
まれに原因不明の微熱
似ている病気
  良性ポリープ(腺腫など)
大腸ポリポーシス
カルチノイド腫瘍
粘膜下腫瘍(筋腫、脂肪腫、悪性リンパ腫、肉腫)
大腸憩室(だいちょうけいしつ)
潰瘍性大腸炎
クローン病
アフタ性大腸炎
薬剤性大腸炎
直腸粘膜脱症候群
起こりやすい合併症
  ガンの周辺臓器への直接浸潤や転移
鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)
腸閉塞
穿孔(せんこう)
ろう孔形成
尿異常(血尿、頻尿、排尿困難)
肝臓や肺転移による合併症
二次的感染症

大腸ガンってどんな病気?
大腸の悪性腫瘍
  イメージ画像 大腸は消化吸収が行われた食べ物の最終処理をする消化管です。おもに水分を吸収します。
 長さ約1.8m、口側から肛門側に順番に、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に分類されます。この部位に悪性腫瘍が発生した場合、大腸ガンと呼びます。
急速に増えている
   大腸ガンは食事の欧米化、とくに動物性脂肪、動物性蛋白質の過剰摂取などによって、日本でも急激に増加している病気です。
 毎年約6万人が罹患し、2015年頃には胃ガンを追い抜くといわれています。
 日本人の場合、直腸、S状結腸に多く発生します。罹患の頻度に男女差はみられません。60代がもっとも多く、次いで70代、50代と続きます。
 若年者大腸ガンでは、家族や血縁者の中で多発する傾向があり、遺伝的な素因があると考えられています。

大腸ガンの原因は?
食生活の欧米化
  イメージ画像 大腸ガンの発生原因はまだわかっていません。
 疫学を中心とした研究から、大腸ガンの発生は欧米食の特徴である高脂肪、高蛋白、低繊維成分の食事と相関関係にあり、生活様式が強く関係していることが明らかになっています。
 大腸ガンは一般的な大腸ポリープである腺腫(せんしゅ)からガンが発生するものと、腺腫を介さずに直接粘膜からガンが発生するものが考えられています。
遺伝的原因
   遺伝子的解析では、多くの遺伝子の異常の蓄積によってガンが発生することがわかっています。
 APC遺伝子の変異によって腺腫が形成され、K-ras遺伝子の突然変異によって腺腫が大きくなり異型度が増し、細胞の悪性度が増します。それにガン抑制遺伝子のp53遺伝子とDCC遺伝子の変異が加わって、ガンへと進行すると考えられています。
遺伝的要因で明らかなもの
   遺伝的要因の明らかなものには、家族性大腸腺腫症(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう)・家族性大腸ポリポーシスと、遺伝性非ポリポーシス大腸ガンがあります。

大腸ガンの症状は?
初期症状がない
  イメージ画像 早期の大腸ガンでは、ほとんど自覚症状はありません。
 大腸ガン検診、人間ドッグなどの便潜血検査で見付かることがほとんどです。
 進行した大腸ガンでは、腫瘍の大きさ、存在部位によって、症状が異なります。
右側大腸ガン
   右側大腸ガンでは、管腔が広く、かつ内容物が液状のために症状が出にくく、症状があったとしても軽い腹痛や腹部の違和感程度です。
 かなり大きくなってから、腹部のしこりとして触れたり、原因不明の貧血の検査で発見されることもあります。
左側大腸ガン
   左側大腸ガンでは、比較的早期から便に血が混ざっていたり、血の塊が出たりする症状がみられます。
 管腔が狭く内容物も固まっているため、通過障害による腹痛、便が細くなる、残便感、便秘と下痢を繰り返すなどの症状があらわれます。放置しておくと完全に管腔が塞がって、便もガスも出なくなり、腸閉塞と呼ばれる状態になります。
直腸ガン
   直腸ガンでは、左側大腸ガンとほとんど同じ症状が現れます。肛門に近いために、痔と間違えられるような出血があり、痔と勘違いして放置してしまい、受診が遅れることもあります。
 直腸ガンでは、近接している膀胱や子宮に浸潤(しんじゅん)すると、排尿障害、血尿、膣から便が出たりするなどの症状がみられることもあります。

大腸ガンの診断は?
早期治療なら約100%で完治
  イメージ画像 大腸ガンは、早期に発見できればほぼ100%近く完治できる病気です。しかし早期の大腸ガンでは、症状がほとんどありません。
 無症状の時期にガンを発見するには、便の免疫学的な潜血反応を検査します。
 簡単に検査でき、体に負担もありませんが、陽性と出ても必ず大腸ガンがあるわけではありません。逆に進行した大腸ガンがあっても、陰性になることもあります。
血液検査・エックス線検査
   排便時の出血、便通異常がある場合、血液検査で貧血がないかどうか、腹部のエックス線検査でガスの分布状態を検査します。
 腹部の触診では腫瘤(しゅりゅう)・こぶを触れることがあり、直腸ガンでは肛門から指を入れて触れるだけで診断できることもあります。
造影剤によるエックス線検査と内視鏡検査
   確定診断をするためには、食事制限と下剤によって大腸を空っぽにします。その上で肛門から造影剤を入れて空気で大腸を膨らませて、エックス線写真を撮る注腸検査を行います。
 そして、同様に下剤で大腸を洗浄してから、肛門から内視鏡を挿入して直接大腸の内腔を観察する大腸検査を行います。
 大腸内視鏡検査は、挿入技術の進歩と、器械技術の進歩によって、苦痛も少なく、安全に行えるようになりました。
内視鏡検査の利点
   内視鏡検査では、直接大腸の内側を観察し、異常があれば一部を切除して顕微鏡で悪性かどうかを検査する生検を同時に行うことができます。
 大腸ポリープや、ごく初期のガンであれば、内視鏡で簡単に治療が可能で、診断と治療を同時に行うことも可能です。
その他の検査
   ガンの進行度によって、周囲の臓器への広がり、肝臓やリンパ節への転移の有無を調べます。腹部の超音波検査、CT検査、MRI検査を行うこともあります。
 最近では、早期ガンの進行度を調べて治療方針を決めるために超音波内視鏡検査を行うこともあります。

大腸ガンの治療法は?
ガンの切除
  イメージ画像 大腸ガンの治療の原則は、ガンを切除することです。
 大腸の壁は、内腔側から順番に、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)となっています。
 ガンが粘膜下層までにとどまっているものを早期ガンと呼びます。早期ガンの中でも粘膜下層の浅いところまでであれば、転移の心配はなく、内視鏡での治療になります。
 肛門に近い場所にできた早期の直腸ガンでは、お腹を開けずに手術を行います。
内視鏡的治療
   初期の大腸ガンは、内視鏡でポリープとして発見されます。一般にポリープが大きい場合、短期間の入院のうえで内視鏡治療を行います。
 直腸ガン、転移、再発した場合には、放射線療法が施行される場合もあります。
 摘出したポリープの病理検査(顕微鏡検査)が重要になります。異型細胞(腺腫)、粘膜内にとどまる早期のガンであれば、内視鏡的治療をすることができます。病理検査で病変が粘膜筋板を越えて深くまで広がっていれば、リンパ節転移の危険性が約10%あるので手術が必要になります。
開腹手術
   リンパ節転移の可能性があり内視鏡治療ができないもの、結腸ガン、進行したガンの場合は、外科手術が必要になります。
 手術では開腹し、腫瘍を含めた大腸の一部を切除してリンパ節を綺麗に取り除く郭清(かくせい)を行います。そして残った腸を繋ぎ合わせる吻合を行います。
腹腔鏡手術
   腹腔鏡手術では、炭酸ガスで腹部を膨らませて、腹腔鏡を腹部の中に入れ、その画像を見ながら小さな孔から器具を入れて手術を行います。手術時間は開腹手術より長めですが、小さな傷口でも大腸の切除が可能なため、術後の痛みも少なく、7日〜8日以内で退院できるなど、身体への負担が少ない手術です。
 大きなポリープ、早期の結腸ガンが腹腔鏡手術に適していると考えられています。進行ガン、直腸ガンで広範囲に切除する回復手術と同等の安全性や治療成績が、腹腔鏡手術でも得られるかどうか、臨床試験の結果待ちの状態です。
 腹腔鏡手術は専門医が限られており、大腸ガンに対する腹腔鏡手術を導入していない施設もたくさんあります。腹腔鏡手術を希望する場合、専門医がいる病院を受診する必要があります。
直腸ガンの手術
   進行した直腸ガンでは、肛門から離れている場合には肛門の筋肉が温存できる低位前方切除術(ていいぜんぽうせつじょじゅつ)が行われます。最近ではさらに、術後の性機能や排尿機能を温存するように、必要最低限の手術が行われています。
 それ以外では、人工肛門が必要なマイルス法で手術が行われます。
 人工肛門もさまざまな装具が開発されており、普通に社会生活が送れるようになっています。
手術できない場合
   進行ガンの手術後に、再発予防を目的として行います。
 また、ガンが広がりすぎていて切除不能な場合には、抗ガン薬を用いた化学療法、放射線療法、免疫療法などが行われます。
 この10年間で大腸ガンに有効な抗ガン薬が次々に開発され使用できるようになり、再発しても長期の生存が可能になりました。しかし抗ガン薬は必ず使わなくてはいけないというものでもなく、状況によっては使用しない方が患者さんにとって有益な場合もあります。主治医と良く相談して、最善の治療法を選択してください。

大腸ガンの予後は?
初期なら完治
  イメージ画像 大腸ガンは早い時期に発見すれば、内視鏡的切除や手術療法によって、完全に治すことができます。少し進んで肝臓や肺に転移しても、手術可能な時期であれば、手術療法で完全治癒が望めます。
 発見が遅れてしまうと、肺、肝臓、リンパ節、腹膜などに切除困難な転移が起こります。こうした時期では、手術に加えて放射線療法や化学療法が行われます。
再発
   手術後に再発することもあります。手術後は4ヶ月〜12ヶ月の間隔で定期的に再発チェックのための検査を受ける必要があります。
 肝臓、肺、腹膜が転移しやすい臓器です。切除した部位に再発が起こる局所再発(きょくしょさいはつ)もあります。速い時期に再発を見つければ、再発巣の切除によって完治も期待できます。
 再発の80%以上は、術後3年目以内に発見されます。手術後、5年以上再発しないことが完治の目安となります。

大腸ガンかなと思ったら?
治療成績の良い悪性腫瘍です
  イメージ画像 大腸ガンは早期に発見できれば、そのほとんどが内視鏡的に、または外科的に根治可能な病気です。
 早期大腸ガンの5年生存率は80%以上ときわめて高く、進行ガンでもガンの浸潤の程度とリンパ節転移の程度によって予後が変化します。
 大腸ガンは肝臓に一番転移しやすいので、肝臓転移が見付かっても、肝臓を手術したり抗ガン薬を注入したりして長期に生存することも可能です。
40歳を過ぎたら
   40歳を過ぎたら、症状がないうちに大腸ガンの検診を受けるようにしましょう。
 また、血便、便通異常などの症状がみられたら、すぐに専門医で検査を受けるようにしましょう。

大腸ガンの予防法は?
生活習慣の改善
  イメージ画像 直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴は、大腸ガン発生の危険因子になります。
 生活習慣では、過体重と肥満によって結腸ガンの発生が高くなることが確実とされています。飲酒、ハムなどの加工肉、喫煙も大腸ガンの発生を上昇させる可能性があると考えられています。
 運動の予防効果が確実とされています。また、野菜、果物は、大腸ガン予防の可能性を持つとされています。アスピリンなどの非ステロイド消炎鎮痛薬とホルモン補充療法も、大腸ガン発生を減少させる要因としてあげられています。
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