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 糖尿病腎症

糖尿病腎症の概要は?
おもな症状
  腎症前期〜早期腎症
  ・自覚症状はまったくない
  ・腎臓機能検査上でも異常がない
  ・徐々に尿中に微量のアルブミン排泄が増加する
顕性腎症
  ・尿検査で蛋白尿が常時検出される
  ・高血圧傾向がみられる
  ・自覚症状はない
  ・腎機能は徐々に低下している
顕性腎症後期〜腎不全期
  ・大量の蛋白尿の検出
  ・浮腫、むくみ、高血圧
  ・腎機能は急速に低下
透析期
  ・腎臓は働きをほとんど失う
  ・高血圧、浮腫、尿毒症症状

糖尿病腎症ってどんな病気?
糖尿病の合併症
  イメージ画像 糖尿病性腎症とは、糖尿病性神経障害、および糖尿病網膜症と共に、糖尿病の3大合併症のひとつです。
腎臓の機能低下
   糖尿病性腎症が進行すると腎機能が低下し、現在では透析療法を受けている患者さんの原因疾患の第1位を占めています。
 糖尿病を発症してから10年以上経過してから、徐々に蛋白尿が現れます。腎臓が糖尿病による高血糖に長年さらされることによって、腎臓の濾過機能を担う糸球体が損なわれる病気です。
進行するとネフローゼ症候群
   高血糖のため、糸球体濾過量は増加しますが、糸球体の血圧が高くなる糸球体高血圧、糸球体の毛細血管からの血漿蛋白質(アルブミン)の透過性が高まり、アルブミン尿が出ます。
 腎症がさらに進むと、もっとサイズの大きい蛋白も排泄されるようになり、蛋白尿になります。蛋白尿が高度になると低蛋白血症となり、糸球体濾過機能の減少により、ネフローゼ症候群となり、浮腫・むくみが起こります。
 さらに進行すると、体内の老廃物、水分、塩分の排泄が損なわれ、腎不全状態・尿毒症になり、最終的には血液透析か腎移植が必要になります。
 病理組織学的には、糸球体の毛細血管を支える間質のメサンギウム領域に細胞外基質蛋白(さいぼうがいきしつたんぱく)が沈着したり、一部は結節状になり糖尿病性腎硬化症になります。
糖尿病性細小血管症
   糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症はいずれも細い血管障害が主体となっているため、糖尿病性細小血管症と総称されることもあります。
糖尿病性大血管症
   糖尿病の他の合併症では、糖尿病性大血管症としての動脈硬化症が問題となります。
 動脈硬化症が進行すると脳血管障害、虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)、壊疽(えそ)などの重症の疾患になってしまいます。

糖尿病腎症の原因は?
糖尿病による高血糖
  イメージ画像 糖尿病による高血糖が、根本的な原因となります。
 高血糖によってTGF-βなどのサイトカインが産生されたり、糸球体(しきゅうたい)の蛋白質に非酵素的糖化反応が起きます。
 また、血行動態的な異常として、糸球体内高血圧の影響も重要です。

糖尿病腎症の症状は?
自覚症状の出現が遅い
  イメージ画像 糖尿病性腎症は、かなり進行しないと自覚症状は現れません。
 そのため、浮腫・むくみなどの自覚症状が現れた場合、すでにかなり進行していることになります。浮腫は全身、特に下肢にみられます。
 水分貯留が高度になり、胸水や腹水が生じると、身体を動かす時の息切れや胸苦しさ、食欲不振・腹満感が現れます。
悪化すると尿毒症
   腎機能が悪化して腎不全になると、体内への尿毒症物質の蓄積によって尿毒症が出現します。
 腎不全期には、貧血のため顔色が悪くなり易疲労感が現れ、尿毒症のため、吐き気や嘔吐もみられます。低カルシウム血症のため筋肉の強直や疼痛がみられることもあります。
 腎不全末期になると、肺水腫心不全のため、浮腫や息切れ、動悸がひどくなり、出血傾向、手の震え、意識混濁などの尿毒症状が現れます。

糖尿病腎症の診断は?
尿検査
  イメージ画像 糖尿病性腎症の診断は、尿中アルブミン排泄量で行います。
 アルブミンは蛋白質のひとつで、一般的に汎用されている検査法の試験紙法で尿蛋白が陰性であっても、精密に測定すると尿中にアルブミンが出てきていることがあります。
アルブミンとクレアチニンを測定
   随時尿ではアルブミン(mg/dl)とクレアチニン(g/dl)の測定を行います。血清クレアチニン濃度が基準値を超えて上昇した時には、腎機能がすでに健常者の1/2に低下しています。
 その比率(アルブミン/クレアチニン)が30mg/g・Cr〜300mg/g・Crの範囲にあることを「微量アルブミン尿」と呼んでいます。病期分類では、第2期に相当します。
クレアチニンクリアランス
   腎機能はクレアチニンクリアランスで表し、正常なら80ml/分〜110ml/分になります。腎機能が低下すると、この数値が低くなります。
その他の血液検査
   糖尿病性腎症が進行し腎不全期になると、さまざまな異常が現れます。
 血液検査では、総蛋白、アルブミン濃度、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどの電解質を測定する必要があります。尿酸値も高くないかどうか、チェックをします。貧血の検査も必要になります。

糖尿病腎症の尿検査は?
通常の検査
  イメージ画像 尿を採り、通常はテープを使った定性反応でアルブミンや蛋白が出ていないかどうかを検査します。
 陽性に出た場合は、アルブミンや蛋白の排泄量を測定します。24時間蓄尿して測定する場合は、微量アルブミン尿はアルブミン排泄量が30mg/日〜300mg/日と定義されています。随時尿では、クレアチニンを同時に測定して、クレアニチン1gあたり30mg〜300mgと定義されています。これ以上は蛋白尿ということになります。
糸球体濾過量の検査
   糸球体濾過量の検査として、クレアチニンクリアランスを測定する場合もあります。24時間、あるいは数時間の尿を正確に溜めて、尿中と血中のクレアチニン濃度から求めます。
病期の決定
   こうした検査結果から、糖尿病性腎症の病期分類のどこに分類されるか決定し、治療の方針が決められます。
 尿蛋白が3.5g/日以上の高度になり、浮腫や血液検査で総蛋白が6.0g/dl未満でアルブミンが3.0g/dl未満の低蛋白血症、高コレステロール血症がみられるような場合、ネフローゼ症候群となります。
血尿がみられる場合
   糖尿病性腎症が進行して蛋白尿が高度な場合は血尿がみられることもありますが、通常は血尿はみられません。血尿がみられる場合は、他の腎疾患による場合が考えられます。
 こうした場合には、腎生検と言って、腎臓に針を刺して組織を一部採取し、組織検査をすることもあります。

糖尿病腎症の病期分類は?
病期の分類
  イメージ画像 糖尿病性腎症の病期分類は、第1期〜第5期に分かれています。
 蛋白尿と腎機能が指標になり、第2期以降を臨床的に糖尿病性腎症と呼んでいます。
糖尿病性腎症の臨床病期分類
病期 臨床的特徴 治療・食事・生活のポイント
蛋白尿(アルブミン) 腎機能(Ccr)
第1期
腎症前期
正常 正常
(時に高値)
血糖コントロール。
蛋白の過剰摂取は好ましくない。
第2期
早期腎症
微量アルブミン量 正常
(時に高値)
厳格な血糖コントロール、降圧治療。
蛋白の過剰摂取は好ましくない。
第3期A
顕性腎症前期
持続性蛋白尿
1g/日未満
ほぼ正常
Ccr:60ml/分以上
厳格な血糖コントロール、厳格な降圧治療、蛋白制限食。
第3期B
顕性腎症後期
持続性蛋白尿
1g/日以上、時にネフローゼ症候群
低下
Ccr:60ml/分未満
血糖コントロール、厳格な降圧治療、蛋白制限食。
浮腫の程度、心不全の有無から水分を適宜制限する。
第4期
腎不全期
持続性蛋白尿
時にネフローゼ症候群
著明低下
血清クレアニチン値上昇
血糖コントロール、降圧治療、低蛋白食。
透析療法導入。
浮腫の程度、心不全の有無から水分を適宜制限する。
第5期 透析療法中 透析療法中 透析療法、腎移植。
   Ccrは、クレアチニンクリアランスの略です。
 蛋白制限食は、標準体重1kgあたり0.8g〜1.0g/日の蛋白摂取です。
 低蛋白食は、標準体重1kgあたり0.6g〜0.8g/日の蛋白摂取です。

糖尿病腎症の治療法は?
治療の基本
  イメージ画像 基本的な治療法は、血糖値を正常化する血糖コントロールと、血圧を正常化する血圧コントロールです。
 血糖コントロールと血圧コントロールは、尿中アルブミン排泄量を減少させ、どの病期でも行われる治療法です。
血糖コントロール
   食事療法と運動療法が基本となり、必要に応じて糖尿病薬を使用します。第4期以降では、原則として経口薬は使用せず、インスリン注射を使用します。運動療法は、第3期B以降は制限が必要です。
 血糖コントロールの目標は、食前血糖値120mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満、HbA1cが6.5%未満です。
血圧コントロール
   アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)や、アンジテオシンU受容体拮抗薬を使用することが推奨されています。実際には、カルシウム拮抗薬などとの併用療法が必要になることも多いです。
 血圧コントロールの目標は130/80mmHg未満ですが、可能ならば120/70mmHg未満を目標にします。
蛋白質摂取
   食事中の蛋白質摂取量は、第3期〜第4期にかけては制限した方が良いと考えられています。
 標準体重1kgあたり、通常は1.0g/日〜1.2g/日ですが、0.8g/日〜1.0g/日、あるいは0.6g/日〜0.8g/日にまで段階的に制限していく方法が一般的です。
塩分摂取
   高血圧が存在する場合、第1期から7g/日〜8g/日の制限が必要です。第3期以降は高血圧の有無に関わらず5g/日〜6g/日の制限が推奨されています。

糖尿病腎症かなと思ったら?
糖尿病の治療を忘れずに
  イメージ画像 血糖値が高くても糖尿病自体の自覚症状はないことが多いので、なかなか治療に専念しない患者さんが多い傾向にあります。
 しかし高血糖や高血圧を放置しておくと、いつの間にか糖尿病性腎症を始めとする糖尿病合併症にかかっていることもあり、治療に苦慮する場合も少なくありません。
 糖尿病合併症にならないように予防的な考え方で、糖尿病自体を治療する必要があります。
糖尿病性腎症になっても治療を忘れずに
   糖尿病の患者さんは、血糖値だけでなく、尿検査でアルブミンや蛋白が出ていないかどうかも注意するようにしましょう。
 糖尿病性腎症になっても、血糖値と血圧を安定させることが一番大切になります。
 また、できる限りの早期発見、早期治療が腎機能の悪化を防ぐことができます。各種の治療を併用して、継続的な治療が必要になります。食事中の蛋白制限が必要になるので、栄養士による食事指導を受けるようにしましょう。
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