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 尿毒症

尿毒症の概要は?
おもな症状
  疲れやすい
だるい
喉が渇く
体重が減る
食欲がなくなる
悪心・嘔吐・口臭・しゃっくり・吐血・下血・便秘・下痢などの胃腸症状
味覚障害
知覚障害
灼熱感
痙攣
頭痛
視覚異常
胸痛
呼吸困難
血痰
乾燥して血色の悪い黄褐色の皮膚
皮下出血
似ている病気
  慢性腎不全

尿毒症ってどんな病気?
末期腎不全
  イメージ画像 尿毒症とは、腎機能の低下によって起こる臓器、組織、細胞機能の障害と、体液異常によって起こる症候群の総称です。
 言葉を言い換えると、末期腎不全(まっきじんふぜん)の状態を意味します。
腎臓機能の阻害
   腎臓には老廃物を排泄する以外にも、水、電解質(ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、リンなど)のバランスや酸塩基平衡の維持、ホルモンの産生および不活性化(働きを終わらせること)などの機能を持ちます。
 尿毒症では、これらの腎臓の機能すべてが阻害されている状態です。

慢性腎不全のさまざまな症状は?
おもな慢性腎不全の症状
   慢性腎不全の臨床症状。
 循環器系 
高血圧、心不全、心嚢炎、不整脈
 神経・精神系 
意識障害、集中力低下、眠気、不眠、脳波異常、精神症状
四肢(下肢に多い)痙攣、末梢神経炎、運動・知覚障害
 消化器系 
吐き気、嘔吐、食欲不振、口臭(アンモニア臭)、味覚障害、便秘、下痢、口内炎、消化管出血、膵炎の合併
 呼吸器系 
呼吸障害、胸膜炎、尿毒症肺
 造血器系 
貧血(正球性・正色素性)、出血傾向、免疫能低下
 骨・関節系 
腎性骨異栄養症、異所性石灰化、痛風発作
 皮膚 
掻痒感、色素沈着、発汗異常、皮膚乾燥
 視力障害 
尿毒症性網膜症、糖尿病性網膜症白内障、Red Eyes
 電解質・酸塩基平衡の異常 
ナトリウム・水の貯留、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症、代謝性アシドーシス
 内分泌異常 
成長障害、性機能障害、甲状腺機能障害
 糖・脂質代謝異常 
耐糖能異常、UbおよびW型高脂血症
 悪性腫瘍の多発 
一般人と同様な腫瘍分布
4期に分類
  イメージ画像 慢性腎不全では、腎機能の低下はゆるやかで、腎機能の指標である糸球体濾過値(GFR、正常は100ml/分、腎障害によって低下する)による重症度(病期)と、臨床症状の出現とは良く相関しています。
 慢性腎不全の病期分類は、セルディンという学者が提唱した4期に分ける分類が良く使われます。
 患者さんは病期を良く把握し、症状の出現に気を付けましょう。
  第1期:腎予備力低下期
     GFRが50ml/分〜80ml/分くらいまで低下しますが、代償機能が働いているため、無症状です。
  第2期:腎機能不全期(腎不全軽度)
     GFRが30ml/分〜50ml/分になり、軽度の高窒素血症が出現し、尿濃縮力低下のため夜間の多尿がみられます。
 軽度の貧血のため、倦怠感、易疲労感、動作時の息切れが出ることもあります。高血圧、高リン血症もみられます。
  第3期:腎不全期(腎不全中程度)
     GFRが10ml/分〜30ml/分になり、高窒素血症や貧血は高度になります。代謝性アシドーシス、電解質異常(高カリウム、高リン血症、低カルシウム血症など)がみられます。
 倦怠感や脱力感などが強くなり、高血圧や浮腫などが現れます。
  第4期:尿毒症期(腎不全末期)
     GFRが10ml/分以下になり、著しい高血圧、浮腫、貧血、消化器症状(吐き気、嘔吐、食欲不振、アンモニア臭など)、循環器症状(動悸、胸痛、呼吸困難など、心不全不整脈)、神経・精神症状(眠気、集中力低下、痙攣、意識障害、運動・知覚障害など)などの尿毒症症状が現れ、放置すると死に至ります。

尿毒症の症状は?
さまざまな症状
  イメージ画像 食べ物の多くは、体内で代謝され、大部分は水と炭酸ガスになります。
 蛋白質などは窒素代謝産物(尿素窒素、尿酸、クレアチニンなど)になり、正常なら尿中から排出されます。しかし尿毒症の場合、十分に排泄できずに体内に貯まってしまいます。
 その結果、神経症状、消化器症状、出血傾向などの症状が現れます。
  水、電解質の異常
     ナトリウムやクロールの蓄積は体内の水分の増加をもたらし、高血圧、浮腫・むくみ、心不全などを起こします。
 カリウムの増加は不整脈を、カルシウムやリンの異常は腎性骨異栄養症(じんせいこついえいようしょう)と呼ばれる骨の代謝異常を起こします。
 腎不全によるリン酸、有機酸の蓄積とアンモニアの生成・排泄障害、水素イオンの排泄障害などは、代謝性アシドーシス、骨代謝異常、アルブミンの合成低下、筋力低下などを起こします。
  血液の異常
     尿毒症にともなう貧血を腎性貧血(じんせいひんけつ)と呼びます。
 人生貧血のおもな原因は、造血ホルモンであるエリスロポエチンの腎臓での産生低下にあります。さらに造血抑制因子、赤血球寿命の短縮、低栄養による鉄・葉酸不足、出血傾向などが関わってきます。
  骨代謝異常
     リンの排泄障害により高リン血症になります。または腎臓のビタミンDの活性障害により、腸からのカルシウム吸収、骨吸収、腎臓でのカルシウム再吸収が低下し、低カルシウム血症になります。
 その結果、二次性副甲状腺機能亢進症となり、さらには代謝性アシドーシスも加わって腎性骨胃栄養症が発生します。
 骨折、骨格の変形、骨・関節の痛み、石灰沈着などが起こります。
  免疫の異常
     尿毒症では免疫不全の状態となっているため、感染しやすく、またワクチンなどによる免疫獲得率も弱くなっています。
  代謝系の異常
     インスリン抵抗性や膵臓のβ細胞の糖に対する感受性の低下のため、耐糖能異常やインスリン分解能低下が起こって高インスリン血症になります。
 脂質代謝異常として、中性脂肪分解酵素の低下のため中性脂肪が高値となります。
 アミノ酸代謝異常、代謝性アシドーシス、尿毒性物質の蓄積などで体内の蛋白質の分解が亢進している状態であり、さらに食欲不振などによるカロリー不足となり、栄養障害やビタミン不足の状態になりやすいといわれています。
  神経の異常
     尿毒性物質の貯留によると思われる神経精神異常が認められます。
 眠気から意識障害、精神症状までと、程度も症状もさまざまです。
  内分泌の異常
     内分泌系の障害として、性ホルモンの低下による性機能障害、成長ホルモンの異常による成長障害、甲状腺ホルモンの異常も指摘されています。
人によって症状は異なります
   腎臓が障害されると全身にさまざまな影響を及ぼします。
 これらの病態は、必ずしもすべての患者さんに共通に現れるものではなく、尿毒症になった原因の病気、その病態によって異なります。また、尿毒症になるまでの治療などによっても変化します。

尿毒素とは?
尿毒症の原因となる物質
  イメージ画像 腎不全の進行とともに、蛋白質からの窒素代謝物などの代謝物質が蓄積します。
 これら蓄積された物質のうち、単独または組み合わさって尿毒症症状を引き起こすと考えられている物質を、尿毒素と呼びます。
尿毒素は分子量によって3つに分類
   分子量によって、下記の3つに分類されます。
@小分子量物質(分子量300以下:尿素、尿酸、クレアチニンなど)
A中分子量物質(分子量300〜1万2000:ポリアミン類、副甲状腺ホルモン、β2-ミクログロブリンなど)
B高分子量物質(分子量1万2000以上:ミオグロブリンなど)
まだわかっていないこと
   数多くの物質が尿毒素としてあげられますが、現状ではどの尿毒素が、どのような尿毒症症状を表すのかについては、はっきりとしていません。

尿毒症の診断は?
血液検査
  イメージ画像 血液検査では、尿素窒素やクレアチニンの値が基準値の10倍近くに上昇する高窒素血症(こうちっそけっしょう)がみられます。
 動脈血中の炭酸ガスが増加したアシドーシス(酸性血症)の状態を示します。
 多くの場合、腎性貧血がみられます。
 血液のナトリウム濃度は基準範囲か低値を示し、カルシウム値は低く、リン値は高い傾向にあります。
尿検査
   尿検査では、蛋白、クレアチニンを始めとして、尿中に排泄される物質についての測定が行われます。
他にもさまざまな検査が必要
   尿毒症では、多くの臓器でさまざまな障害が生じます。そのため、エックス線検査、心電図、眼底検査など、幅広い検査が行われます。

尿毒症の治療法は?
腎不全の原因となっている病気の治療
  イメージ画像 まずは、腎不全の原因となっている要素を取り除くことが治療の最初になります。
 脱水、腎毒性物質、感染症、尿路閉塞などが原因であれば、その治療を行います。
 尿毒症が、根本的治療が難しい進行性の病気からきている場合、透析が必要になります。しかし透析となるまでの期間は、保存的な治療を行うことによって、ある程度延長できる可能性があります。
保存的治療
   保存的治療としての食事療法では、カロリーが十分な食事と、蛋白、塩分、水分などの制限が必要になります。
 運動などについては、軽い運動にとどめておいた方が良いでしょう。実際には疲れやすいため、制限しなくてもそれほど運動はできなくなります。
 必要に応じて、降圧薬、利尿薬、強心薬が処方されます。
 腎機能が高度に低下した透析導入前の慢性腎炎の人の生活指導基準 
生活一般 制限、疲労を感じない範囲の生活
勤務 勤務時間制限、超過勤務・残業・夜勤は不可、経過により休養が必要
運動 運動制限、散歩やラジオ体操程度は可能
学習 原則として普通学級に通学可能、授業のみ受けさせる
家事 軽い家事、経過により程度調整
妊娠出産 勧められない
医療 定期的受診、経過により入院
食事療法 塩分8g/日〜3g/日、蛋白質0.5g/体重1kg、カリウム制限、病態に応じて調整
血液透析
   保存的療法には限界があります。限界となったら、ただちに血液透析を行わなくてはいけません。
 元に戻らない進行性の腎臓病による尿毒症が多いため、腎臓の働きが大きく低下した時点で、あらかじめ血液透析用の内シャントを作っておきます。内シャントがあれば、いつでも血液透析ができるようになります。
 利き腕でない方の手首(右利きの人は左手首)の動脈と静脈を繋ぎ、腕の静脈を動脈化させます。こうすることで静脈は太くなり、十分な血液が流れるようになります。
 皮膚表面にある太くなった静脈に針を刺して、血液透析のための血流を確保します。
血液透析は医師の指示に従うように
   尿毒症では、医師から透析を勧められた場合、すぐに透析を開始しなければなりません。開始時期が遅れると、とても危険です。
維持透析
   透析を続けていくことを維持透析といいます。維持透析を週2回〜3回行います。
 多くの人は透析を始めると、それ以前に比べて身体が軽く感じられるようになります。
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