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三浦半島の自然史2


三浦半島の気象

海洋性気候

 

 小さな三浦半島では、海洋性気候の影響を強く受けます。
 夏季は南西風が強く比較的涼しく、冬季は北東風が強く、東京湾側では寒くなります。
 三浦半島中心部の池上・平作・衣笠エリアでは、内陸性気候で夏季は暑く、冬は寒いです。しかし、狭い三浦半島内での比較なので、日本列島と比べるとそれほど厳しい暑さや寒さではありません。
 年間の平均気温は、半島南部で15.5度、中部で15度、北東部で14.5度です。神奈川県内ではもっとも暖かく、関東地方では、房総半島南部に次ぐ暖かさです。

温暖な西側

   相模湾側の大崩では、戦前でも無霜地帯として有名で、野菜や花卉園芸植物の露地栽培、早期出荷で知られていました。
 佐島の天神島では、戦前でも年間平均気温14.4度を切らない無霜地帯なので、熱帯や温帯の植物が自生し、ハマユウの北限地とされていました。

身近な植物図鑑:ハマユウ(ハマオモト)ハマユウ

地球温暖化の影響

   近年は地球温暖化の影響を受け、城ヶ島が繁殖の北限と言われたクマゼミも、横浜や東京で自然発生するようになりました。
 原因は温室効果ガスによるものとする説や、地球規模での気温の周期的な変化など、さまざまな説があります。
 地球温暖化による海水面の上昇も、これからの三浦半島には大きな影響を与えるものと思われます。

三浦半島の植物

意外と豊富な植物相

 

 三浦半島は、三方を海に囲まれているため、島的要素がかなり反映しています。陸地面積が狭く、水の収支が貧弱で、地下水も乏しく、乾燥しやすく、貧栄養、潮風の影響を常に受けるなど。内陸部に比べて、植物の種類も少なく、森林の発達も弱いのが一般的です。
 ところが、三浦半島の植生は意外に豊かで、種類数も少なくありません。

代表的なハマユウ(ハマオモト)

   温暖な気候が植物に大きな影響を与えているものと考えられます。
 戦前から年間平均気温が14.5度のラインを、ハマオモト線と呼ばれ、熱帯インド産のハマユウが自然繁殖する限界線が横須賀市佐島の天神島を通っています。天神島の自然群落は、神奈川県の天然記念物に指定されており、横須賀市自然・人文博物館の臨海自然教育園の中で保護されています。
 しかし、地球温暖化の影響で、ハマオモト線は北上し、ハマユウの繁殖する北限も北上しています。

フォッサマグナ帯

   三浦半島は、植物分布ではフォッサマグナ帯に入っています。
 フォッサマグナ帯特有の、オオシマザクラ、アシタバ、イソギクなどがみられます。反面、氷河期時代の遺存種と考えられているヤマルリソウ、コウヤノマンネングサ、ウリノキなどの寒帯系の植物も分布しています。
 狭い半島ながら、植生の変化には富んでいます。

身近な植物図鑑:アシタバ(明日葉)アシタバ
身近な植物図鑑:イソギク(磯菊)イソギク

里山の変遷

   近年では、里山の手入れがされなくなったので、植生の遷移が進行しています。常緑の広葉樹が増え、一年中青々とした森林景観が増加してきています。
 さらに温暖化の影響により、春に発芽しても冬の寒さで枯死していた植物が、枯れずに成長を続けているのが目立つようになりました。シュロなどはその典型例です。

外来種の侵入

   外来種が自然に帰化して野生化したり、栽培種が野生化したりしているケースも多く見られるようになりました。

三浦半島の動物

意外と豊富な動物相

 

 植物と同様に、野生動物の種類も豊富だったようです。
 幕末〜明治時代初期にかけて、シカや、イノシシが農作物を食害するのに困り、銃を使って捕獲したという記録が残っています。
 また、久里浜湾の沖の岩礁(アシカ島)には、アシカが住み着いており、磯の魚を捕食するので困った漁師が、銃を使って追い払ったという記録も残っています。このアシカは、当時は小氷期と呼ばれる寒冷な気候が続いたため、寒い地方のアシカが南下したものと考えられてきました。しかし、現在では絶滅してしまったニホンアシカだったという説が有力です。

その他の哺乳類

   カワウソは、昭和2年に城ヶ島で捕獲された毛皮が、横須賀市自然・人文博物館に保存されています。
 キツネは、昭和一桁まで見かけられていました。戦後も、三浦半島では3頭が捕獲されています。
 タヌキは、現在でも健在です。
 アナグマは、戦後も生息していましたが、近年は記録がありません。
 テンは、逗子市池子の逗子高校の奥で発見されました。逗子の弾薬庫跡にいると噂されていましたが、事実だったことが確認されました。

身近な生き物図鑑:キタキツネ(北狐)キタキツネ

野鳥

   森戸川源流部で、種類も個体数も増えてきています。キビタキ、ヤブサメ、サンコウチョウ、センダイムシクイ、オオルリなどが繁殖しています。
 手入れの行き届かなくなった里山や、伐採されなくなった森林の遷移が、野鳥の繁殖に適合したようで、野鳥は種類も個体数も増加傾向にあります。

両生類

   両生類は激減してしまいました。特に、トウキョウダルマガエルは絶滅してしまいました。

昆虫

   戦後と比べると、驚くほど減少しました。ヤブカ、ブヨ、ハエなども少なくなりました。
 ホタルやトンボなどは、自然保護の建て前的存在として保護育成への努力が実り、増加傾向にあります。

三浦半島の侵入種

アライグマとブラックバス

 

 三浦半島でも、外来の動植物が野生化し、在来種を圧迫しています。人の生活にも悪影響を与える種類もいるので、無視できない問題となってきています。
 アライグマ、タイワンリス、ハクビシン、ブラックバス、ブルーギル、ミシシッピーアカミミガメ、カミツキガメなどの外来種が野生化しています。なかでも、アライグマとブラックバスによる被害は大きなものとなっています。
 このような事から、外来種を寄生する法律もできています。

人に危険な外来種も

   三浦半島では事件は起きていませんが、カミツキガメに噛まれると、指を食いちぎられてしまうこともあります。
 アライグナは、寄生虫症の宿主となったり、狂犬病を媒介することがあります。人だけではなく、日本の在来生物にも悪影響を与える恐れもあります。
 ペットとして飼う場合でも、最後まで責任を持って飼うようにしましょう。

捕獲した時

   私はボランティアで三浦半島の自然を守る活動をしていますが、外来生物を捕獲した時は、とてもイヤ〜な気分になってしまいます。
 自分自身、動物が好きでペットも飼っているのに、捕獲した外来生物は殺処分しなければならないからです。可哀想だからといって逃がしてあげても、結局、誰かが殺さなくてはいけなくなってしまうわけです。結果としては、誰が汚れ役を引き受けて殺すのかの違いだけでしかありません。
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