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頭部外傷後の意識障害 頭痛 悪心(おしん) 嘔吐
ほとんどの頭部疾患
意識障害による二次的外傷
頭部外傷のうち、受傷時の記憶喪失、あるいは受傷後6時間以内に回復した意識消失がある場合を、臨床的に「脳震盪」と定義しています。 頭部外傷を受けた直後には、意識障害、頭痛、悪心、嘔吐などの神経症状が現れます。肉眼的には脳損傷をともないません。
頭部打撲の衝撃により、脳細胞が一時的に機能を停止、あるいはその一部が損傷を受けて一過性の意識障害が起こります。 脳神経細胞の機械的破壊、虚血、低酸素症、脳腫脹、脳細胞から湧き出される神経や血管への影響物質の存在などが原因と考えられます。 電気生理学変化としては、脳幹を中心にした神経活動の障害が起こります。
健忘(けんぼう)が起こるため、受傷時のことを思い出すことができません。 日付・場所・周囲の人がわからない見当識(けんとうしき)の障害、意識消失が一過性にみられることがあります。ほとんどの場合は、受傷直後に改善するため健忘だけが残り、その他の機能異常は認められません。
頭部に衝撃を受けた直後から、意識障害、神経反射の消失、弛緩性麻痺、頭痛、悪心、嘔吐、視力障害、視野狭窄、聴力障害、臭覚障害、手足のしびれ、痛みなどの症状もあらわれます。 一過性のもので、時間とともに回復します。
意識は「あり」、「なし」で2つに分けられるものではなく、意識がはっきりとしている清明(せいめい)と、意識がまったくない深昏睡(しんこんすい)の間にいくつかの段階があります。 代表的な意識障害の重症度評価が、日本で広く用いられているJCS(ジャパン・コーマ・スケール)、別名3-3-9度と、世界的に用いられているGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)です。
眼を開けてまばたきをしているか、応答が可能な、刺激しないでも覚醒している状態を1桁とします。声や痛みの刺激によって覚醒する状態を2桁とします。刺激しても覚醒しない状態を3桁とします。 このように3段階に分類します。このほか、意識清明を0とするので、深昏睡の300まで、意識は10段階に分類されます。
開眼の反応を「E」、言葉の反応を「V」、運動の反応を「M」として、それぞれにスコアを付けて合計点で評価します。 意識清明はEが4、Vが5、Mが6で合計15となります。深昏睡はEが1、Vが1、Mが1で合計3になります。 8以下を重症頭部外傷と定義し、JCSでは30以上に相当します。
普通は、頭部CTでは異常は認められません。CTよりも精度の高い頭部MRIでは、小さな出血、むくみ・浮腫が映し出されることがあります。
通常は経過観察だけで正常に回復します。 頭部CTで脳挫傷や、血腫などの異常があれば、それに対する治療が行われます。 頭痛や嘔吐があれば、症状に応じて安静にし、対症療法として鎮痛薬や制吐薬などの点滴や薬物療法が行われます。
失われていた記憶の一部は戻りますが、怪我をした時のことは思い出すことができないのが普通です。 一般的には、その後に記憶障害が後遺症として残ることはありません。
頭部外傷の場合、現場で比較的軽度な脳震盪か、もっと重症な外傷による意識障害か診断するのは非常に困難です。もっとも重症を予想して、治療を行います。 頭部に強い衝撃を受けて意識障害が出現したら、救急の基本を行います。 呼吸が止まっていたら人工呼吸、心臓が停止していたら心臓マッサージを行い、救急病院に運びます。頭部損傷では頚椎損傷をともなうことが多いので、頭部は固定しておくことが大切です。