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 色覚異常・色盲

色覚異常・色盲ってどんな病気?
色覚とは?
  イメージ画像 眼の中で光を感受する網膜には、短波長・中波長・長波長の3種類の光を吸収する視物質を持つ錐体細胞(すいたいさいぼう)があります。
 外界から入る色の情報は、3種類の錐体細胞の相対的な活動性の違いとして感受されます。そして小型の網膜神経節細胞(もうまくしんけいせつさいぼう)を介し、大脳の第一次視覚野(だいいちじしかくや)に伝えられます。ヒトは最終的には、色覚中枢で色を感じます。これが色の感覚、すなわち色覚となります。
 色覚として感受するすべての色は、これら3種類の錐体がつかさどる3原色を組み合わせることで表現されます。この色覚の特徴は、錐体細胞に視物質を発現させる遺伝子の特性で決まっています。
色覚の遺伝子
   光を感受する視物質は、オプシンという膜蛋白質とレチナール(ビタミンA誘導体)が結合した物質です。おもに短波長(419nm)、中波長(531nm)、長波長(558nm)の3種類の光を吸収します。
 オプシンには、神経細胞の桿体(かんたい)に発現するロドプシン、錐体に発現する青錐体オプシン・緑錐体オプシン・赤衰退オプシンの4種類があります。
 ロドプシンは第3染色体、青錐体オプシンは第7染色体、緑錐体オプシン・赤錐体オプシンはX染色体に配置されています。X染色体上で、ひとつの赤錐体オプシンの下流に緑錐体オプシンが1コピーないし数コピー配置されています。これらのオプシンのうち、色覚に関与するのは3原色に相当する錐体オプシンです。
 ヒトが属する哺乳類では、多くが2種類の錐体オプシンしか持っていません。3種類、4種類の錐体オプシンを持つ脊椎動物では例外的です。
 哺乳類の中で霊長類に属するヒトとサルだけが、もうひとつのオプシンを再び獲得しています。それがX染色体上に緑と赤のオプシンが並んで配置され、この2つのオプシンの形がほとんど同じで、おもに2ヶ所のアミノ酸が異なることで吸収波長が微妙に変わる理由と考えられています。
 この遺伝子に変異が生じると、オプシンの発現が止まったり、異なる波長を吸収する視物質になったりします。これがいわゆる色盲(しきもう)、色弱(しきじゃく)です。日本人男性の約5%、白人男性の約8%で、赤と緑の混じる色を区別しにくい先天性赤緑色覚異常を持つ人がいます。この特性が多く存在するのは、遺伝子の配置の特徴からきていると考えられています。
色覚異常の分類
   現在、色盲は俗語として扱われ、一般には色覚異常・色覚障害と同義に使われています。医学的には色覚異常を2色型色覚(色盲)と、異常3色型色覚(色弱)に分類して区別しています。
 さらに原色の種類から、赤色の異常を第1、緑色の異常を第2、青色の異常を第3とします。たとえば、赤色の色覚異常を第1異常とし、第1色弱と第1色盲とに分類します。また眼の病気で、後天的に錐体細胞や網膜神経節細胞の異常から色覚に影響する時は、青色の色覚に変化が出やすく、第3異常を示すことが多いとされています。

色覚異常と社会的背景
色盲という言葉が使われなくなった理由
  イメージ画像 正常色覚を持たない人は「色盲」と表現され、社会的に進学や雇用上の制約から差別の原因のひとつとなっていました。
 近年、人権に対する意識の向上によって社会的制約が次々と撤廃されつつあり、その流れの中で「色盲」という表現が使われなくなり、代わりに「色覚異常」、「色覚障害」という表現が使われるようになりました。
 ただし、どのような呼び方が適切なのか、今後も議論されるべき問題です。
日常生活に支障はありません
   色覚遺伝子に変異のある人が社会生活上、実際に困る場面に遭遇することはあまりありません。色覚異常があっても信号の色はわかりますし、絵も描けますし、衣装の色合わせもできます。
 しかし、ある種の色相の差異が、さまざまな環境の明度・彩度の中で判別しにくくなる時はあります。これは、変異のない人に色の基準を合わせていることから起きることです。
色覚バリアフリー
   加齢や障害によって身体にハンディのある人が日常生活を送りやすいように、生活空間では敷居の段差をなくすバリアフリーという考えが浸透してきています。そこで色覚遺伝子に変異があってもなくても、色の判別が共有できるようにしようという試みが「色覚バリアフリー」と表現され、普及しつつあります。
 日常の色表現が多彩になった今日、いろいろな色覚を持った人が垣根なくコミュニケーションできる成熟した社会が望ましいと思われます。その一貫として、色覚異常を広く認識させてきた学校健診での色覚検査が2003年度から撤廃され、色覚異常を考慮した教育環境の準備が始まっています。
異常?障害?
   色覚バリアフリーはウェブサイト作成でも、前景色と背景色の色差、明度差を一定以上にするようW3Cがガイドラインというものがあります。ガイドラインがあってもなくても、見に来てくれた人にとって見やすいサイト作成を心がけているため、うちのサイトではあまり関係がないかもしれません。
 最近では人権に配慮した言葉、差別を助長するような言葉は使わない、意味不明な横文字を使うなどが多く、言葉本来の持つ意味が失われつつあります。色覚異常や色覚障害という言葉も、もし後に「者」を付けると異常者、障害者となってしまうので、色盲そのものの意味からかなりかけ離れた言葉になってしまいます。
 色盲の人と同じ職場で働いていた経験がありますが、特にこれといって問題になるようなことはありませんでした。異常な人でもないですし、仕事の障害になるようなこともありませんでした。
 そもそも色の見え方には個人差があり、色の感じ方を検証する方法すらありません。それを異常や障害と呼ぶのは、問題があるように思います。 「盲」という漢字は「見えない」という意味があるので、「色盲」という言葉こそが正しいと思うのですが、みなさんはどう思いますか?

色覚異常・色盲の原因は?
先天性色覚異常
  イメージ画像 先天性の色覚異常は、伴性劣勢遺伝(ばんせいれっせいいでん)することがわかっています。
 発生頻度は男性に多く、全人口の約5%です。女性は約0.2%にしかみられません。
後天性色覚異常
   後天性の色覚異常の原因には、眼底(がんてい)、視神経、脳などの視覚に関係する部位の障害によるものや、心因性のものなどがあります。
 色覚の異常だけでなく、視力の低下、違和感のある物の見え方などの症状を同時に自覚することがあります。

色覚異常・色盲の診断は?
仮性同色表
  イメージ画像 色の感じ方を表現するには、色の波長である色相(しきそう)、色の明暗である明度(めいど)、色の濃度である彩度(さいど)を用います。
 色相は判別しやすい組み合わせを対角上に配した環状で表現され、色相環(しきそうかん)を形成します。色覚異常があると色相環がある方向に圧縮され、判別困難になります。これを混同軸の発生といいます。第1・第2異常(赤緑色覚異常)では赤と緑、第3異常(青黄色色覚異常)では青と黄色が混同軸になります。この混同軸上の混同色を利用した検査が仮性同色表です。
 世界的に評価を受けている石原式色覚検査表は検出感度が高く、ふるいわけ(スクリーニング)としてもっともポピュラーです。ほかに、実用的な面から標準色覚検査表、東京医科大学式色覚検査表、大熊式色覚検査表が考案されています。
 仮性同色表は、混同軸の存在を発見しやすい反面、分類や程度判定には不向きな方法です。
色相配列試験
   色相環を色相順に並べさせるのが色相配列試験です。
 色相環の歪みの程度を、混同軸方向での誤答頻度として判定できるため、程度判定として用いられます。逆に軽度の異常は見逃してしまうので、スクリーニングには用いられません。
 色相環を15の小さい輪で完成させるパネルD15がもっとも簡便で、広く用いられています。より厳密な試験として、色相を10個に分け、さらに10個に細分割して配列試験を行う100-hueテストがあります。
色合わせ試験
   仮性同色表、色相配列試験で、混同軸の存在と程度を分類すると、最終的にどの遺伝子の変異がどの程度起こっているかを決定する段階に入ります。現実にどの色を同じと感じるかという色合わせ(混色)試験で、色覚異常、色盲色弱の確定診断になります。
 色合わせは、3原色によってすべての色を表現できるという原理から、任意の2原色を用いて、その軸上の色合わせ(混色)が可能です。しかし実際には、赤緑色覚異常が多いことから、レーリー均等と呼ばれる赤色と緑色の混色と黄色を、どの程度の混色比で判別可能かを試験します。多くはアノマロスコープを用いて検査します。
 オプシンを発現しない色盲では、混色比をいずれにしても黄色に感じます。黄色が一定の明るさで均等になると第2色盲で、均等になる混色比と黄色の明るさとが関係する場合は第1色盲になります。
 変異オプシンを発現する色弱では、混色比と黄色の明るさが正常とは異なる位置を示し、位置から第1色弱と第2色弱が判別されます。
ランタンテスト
   交通関係者の信号灯の色光識別能力に関する職業適性検査として、ランタンテストがあります。ランタン型の色覚検査器で色光などの色指標を与え、色名で答えさせる試験です。被験者が納得できる点で、説得力のある方法です。

色覚異常・色盲の治療法は?
先天色覚異常
  イメージ画像 先天色覚異常には、治療法はありませんが、生涯のある時期に正確な検査をして、色覚異常の病型と程度を診断してもらい、的確な指導を受けることが大切です。
 多くの人は、代償能力と訓練によって問題なく日常生活を送り、ほとんどの職業に就くことができますが、色覚の異常の程度によっては色彩を直接取り扱う職業などでは制限が加わることもあります。ただ最近では色盲を理由に就職などを不必要に制限するような風潮はなくなってきています。
 色覚異常といっても、色に対する感覚が、色覚の正常な人とやや異なっているだけで、特別な配慮は必要ないことが多いですが、程度もさまざまなので、医師に相談して早めに状態を把握し、その後の対処を決めていくことが必要です。
後天色覚異常
   後天色覚異常では、原因になっているものを治すことが大切で、治療法は原因によって異なります。
 眼の病気が原因である場合には、視力、視野、眼底などの眼科的検査が必要です。また、心因性のものでも眼科的検査を行い、構造的な変化がないことを調べなくてはいけません。物の色が以前とは違って見える、なんとなく見えにくいなどの症状を自覚した場合には、眼科を受診して、詳しい検査をしてもらいましょう。

色覚異常・色盲かなと思ったら?
先天性色覚異常
  イメージ画像 先天性色覚異常の中で多いのは、赤緑色覚異常です。
 X染色体上に変異があるので、伴性遺伝(はんせいいでん)します。日本では男子で5%、女子で0.2%に発現し、女性には保因者が存在します。第2異常が、第1異常の3倍多く出現します。
 色覚異常は遺伝子の変異であるため、治療法はありません。
問題のあった検査法
   2002年までは学校健診で色覚検査が行われていたため、異常が見付かった人が色覚異常の確定診断のために眼科を訪れていました。
 しかし確定診断に必要なアノマロスコープを装備する眼科は多くないため、実際には不十分な診断が行われ問題がありました。
現在は希望者が検査を受ける
   2003年以降、学校健診での色覚検査は廃止され、希望者のみが検査を受けるようになりました。
 検査で異常が出たら、専門の医療機関で遺伝子相談や、職業適性についてのアドバイスを受けることが可能になっています。
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