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 多発性骨髄腫

多発性骨髄腫の概要は?
おもな症状
  腰背痛
神経症状
骨折
似ている病気
  マクログロブリネミア
起こりやすい合併症
  腎機能障害

多発性骨髄腫ってどんな病気?
腫瘍細胞の増殖
  イメージ画像 単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を作る形質細胞が腫瘍性に増殖し、それにともなって貧血・感染症・腎障害・骨病変などが引き起こされる病気です。
 この腫瘍細胞は、免疫グロブリン(IgG、IgA、IgD、IgE)、またはベンス・ジョーンズ蛋白(κカッパまたはλラムダ)のうち、通常1種類の蛋白を異常に作り出していきます。
一般名は骨髄腫
   単に「骨髄腫」と呼ばれる病気は、正式名称では「多発性骨髄腫」のことです。
 50歳以上の中高齢者に多い病気です。

多発性骨髄腫の症状は?
定期健診で発見されることが多い
  イメージ画像 発病は、ほとんどの場合ではいつから始まったのかはっきりとしません。多発性骨髄腫はゆっくりと進行していきます。
 無症状で、定期健診を受けたところ、血液、尿の蛋白の異常(M蛋白)が発見され、これがきっかけとなり病気が見つかることもあります。
 骨折して診察を受け、多発性骨髄腫が発見されることもあります。
骨と腎臓
   自覚症状としては、胸、背中、腰などの痛み、体重減少などがあります。
 骨は、ほとんど全身の骨が侵されてしまいます。特に、脊椎、肋骨、胸骨などから現われる場合が多いです。腎臓が侵されることも多く、むくみ、全身倦怠感など慢性腎不全の症状で発症することもあります。

多発性骨髄腫の診断は?
専門は血液専門内科
  イメージ画像 症状に、背中の痛み、腰の痛みを訴えることが多いため、はじめは整形外科を受診することが多い疾患です。しかし、診断と治療は、おもに血液専門内科で行われます。
 骨の痛みと、貧血がある場合は、多発性骨髄腫の可能性を念頭に置いておくことが重要です。
血液検査・骨髄検査・X線検査
   血液中の蛋白の数値が高く、分析すると免疫グロブリンと呼ばれる蛋白の一種が、異常に高い数値を示すことから診断されます。
 骨髄検査では、異常蛋白を分泌する形質細胞が多数認められます。
 骨のX線検査では、打ち抜き像と呼ばれる輪郭の明瞭な所見がみられます。骨が薄く、もろくなっているので、骨折の原因にもなっています。
多発性骨髄腫の病期分類
   多発性骨髄腫の病期分類(Durie and Salmon) 
病期 判断基準
I期 下記のすべてに該当する。
ヘモグロビン (血色素量) > 10g/dl
血清カルシウム値 ≦ 12mg/dl
骨X線像が正常、または孤立性形質細胞腫のみ
M蛋白の産生が少ない
   ・IgG < 5g/dl
   ・IgA < 3g/dl
   ・尿中M蛋白 (電気泳動) < 4g/24時間
II期 病期I期、病期III期にも該当しないもの。
III期 下記の少なくともひとつに該当する。
ヘモグロビン (血色素量) < 8.5g/dl
血清カルシウム値 > 12mg/dl
重度の溶骨性病変がある
M蛋白の産生が多い
   ・IgG > 7g/dl
   ・IgA > 5g/dl
   ・尿中M蛋白 (電気泳動) > 12g/24時間

多発性骨髄腫の治療法は?
診断確定後に治療法を決定
   多発性骨髄腫の診断確定後に、治療が必要な症例かどうかを検討します。
 病期Iで、無症状の症例では、治療を行わずに厳重な経過観察だけを行います。
病期II・病期IIIでは治療が必要
   以下のような場合には、治療の対象となります。治療法は、年齢や症状によって異なります。
   ・病期II、または病期IIIの場合
   ・明らかな骨病変が存在する場合
   ・M蛋白血症に関連した臓器障害
   ・検査値異常がある場合
   ・M蛋白が進行性に増加する場合
  60歳以下の治療対象となる患者さん
     病院に入院し、造血幹細胞移植を前提とした治療を行います。高度な腎機能障害、心アミロイドーシス合併例では、治療法を慎重に決定する必要があります。
 通常では、初回治療として、VAD療法(オンコビン、アドリアシン、デカドロン)を行います。
  61歳〜70歳までの治療対象となる患者さん
     一般状態が良好な場合は、造血幹細胞移植を前提とした治療を検討します。
 一般状態が不良の場合は、71歳以上の患者さんの治療法に準じた治療を行います。
  71歳以上の患者さん
     原則的には、MP療法(アルケランおよびプレドニン)を行います。
 造血幹細胞移植以外の治療法を選択した場合、M蛋白値などが安定して増加しない状態のプラトーフェイズへの到達が、治療の第一目標となります。
  自家造血幹細胞移植
     現在、65歳以下の多発性骨髄腫の標準的な治療法として位置づけられています。生存期間の延長が証明されています。
 自家造血幹細胞移植には、骨髄移植(BMT)、末梢血幹細胞移植(PBSCT)の2つの治療法があります。末梢血幹細胞移植(PBSCT)の方が、感染症や出血などの合併症が少なく、早期に退院可能なことから、一般的になってきています。
  サリドマイド
     近年、サリドマイドが自家造血幹細胞移植後の再発時に有効だということが知られています。日本では、原則的に研究目的の治療として行われています。
 サリドマイド被害の再発防止と安全管理を徹底した上で、多発性骨髄腫の治療薬としてサリドマイド製剤の使用が承認されるようになります。

多発性骨髄腫かなと思ったら?
経過の長い病気
  イメージ画像 多発性骨髄腫は一般に経過の長い病気です。骨痛、貧血などで日常生活に支障をきたしたり、感染症にかかりやすくなったり、場合によっては腎機能が悪くなり透析を受けなければいけなくなるなど、さまざまな合併症を引き起こすこともあります。
 患者さん自身が担当医と相談し、病気の状態を理解し、病気と付き合っていくことが大切です。

多発性骨髄腫のケアは?
適度な運動
  イメージ画像 症状が安定していれば、日常生活に特別の制約はありません。
 むしろ、過度の安静は骨病変の進行につながってしまいます。高度の骨病変がなければ、適度な運動を取り入れた生活を送ることが大切です。
 ただし、打撲、転倒などによる骨折には注意をしましょう。中腰の姿勢をともなう作業、急に姿勢を変えることなどは、圧迫骨折や病的骨折の原因となるので、なるべく避けるようにしましょう。
感染症に関して
   正常免疫グロブリンの産生低下、化学療法の結果、免疫不全状態になってしまいます。細菌やウイルスに対する抵抗力が低下するので、発熱、咳、痰などがある場合は、できるだけ早く主治医の診察を受け、適切な治療を受けましょう。
水分摂取
   腎障害は予後を左右する危険な合併症です。
 脱水状態は腎障害を悪化させるので、何らかの理由で水分制限をする必要がある場合以外は、普段から水分を十分に摂取するようにしましょう。
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