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甲状腺の激しい痛みと固い腫れ 発熱 動悸 痩せ
甲状腺に炎症が起こる病気です。 すべての経過が2ヶ月〜4ヶ月くらいかかるので、急性と慢性の中間くらいになるので、亜急性甲状腺炎と呼ばれています。
風邪などの上気道感染後に発症することが多いため、ウイルス感染が原因だと考えられています。 ただし、どんなウイルスが原因なのかわ明らかになっていません。 また、体質によってかかりやすさが異なります。ウイルスが原因であっても、他人に感染することはないと言われています。
首の前部にある甲状腺のあるのどぼとけの下あたりに痛みを感じます。 甲状腺全体、もしくは左右のどちらかの一部が腫れ、硬くなります。多くの場合は左右どちらかが腫れ、痛みも片側にみられます。 前駆症状として、風邪のような症状があり、2週間〜3週間後に急に発症します。
特徴的な症状は首の痛みです。 甲状腺に自然痛や圧痛が認められます。 耳の後ろ側や後頭部まで痛くなるので、神経内科、整形外科、耳鼻科、歯科などを受診する患者さんも多いです。
痛みの程度は、あくびをしたり首を伸ばしたりするとちょっと痛いといった程度のものから、少し首に触っただけで飛び上がるほど痛いといったこともあります。物を飲み込んだり、衣類が触れたりするようなごく軽い刺激でも、激しく痛む患者さんもいます。 甲状腺は硬く腫れて、押すと痛みがあります。 痛みを感じる場所が、左右に移動することもあります。
発熱は、微熱程度から40℃近い高熱が出るなど、患者さんによってさまざまです。
甲状腺の破壊の程度が激しい場合、甲状腺ホルモンが血液中に流れ出します。 その結果、甲状腺機能亢進症の症状が現れます。症状としては、強い全身の倦怠感、動機、発汗、体重減少、手の震えなどがみられ、重い病気になってしまったと感じる患者さんもいます。 甲状腺にたまっているホルモン量は約1ヶ月なので、甲状腺機能亢進症の症状は、やがて自然に消失していきます。甲状腺の左右で炎症を繰り返す場合、症状が長引くことがあります。 甲状腺機能亢進症のあと、一時的に気力低下、手足のむくみ、冷えなど甲状腺機能低下症になってから正常に戻ることもあります。
特徴的な症状がある病気なので、甲状腺に痛みがあることに気が付けば、診断は容易です。 しかし、誤診されることも多い病気です。 甲状腺内にある小さな腺腫(せんしゅ)の中に出血して、血豆のようなシスト(のう胞)ができると、似たような痛みを起こすことがあるので診断では注意が必要です。
超音波断層検査を行い、痛みの部位に低エコー部が確認できれば、亜急性甲状腺炎と診断できます。
血液検査では、赤沈、CRPなどの炎症反応が陽性になります。 甲状腺の中に蓄積されているホルモンが血液中に漏れると甲状腺ホルモンが高値になり、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低値になることがあります。 この結果はバセドウ病と同じですが、TSHが測定限界以下に下がることは少ないです。バセドウ病の原因物質であるTSHレセプター抗体(TRAb)が陰性なので、バセドウ病と区別できます。
自然に治る病気なので、中心は対症療法になります。 症状が軽ければ、治療しなくても大丈夫ですが、薬を飲んだ方が症状が緩和され楽になります。
熱と痛みに対しては、サリチル酸製剤を投与します。 痛みがひどく重症の場合、副腎皮質ステロイド薬を投与することもありあます。ステロイド薬の投与で痛みや発熱は1日〜2日で焼失しますが、薬の原料や中止が早すぎると症状が再燃してしまいます。 薬は1ヶ月〜3ヵ月は服用することになります。甲状腺の機能が回復したことを確かめてから、薬をやめることが大切です。途中で薬を中断してしまうと、再発を繰り返す原因になってしまいます。
動悸に対しては、β遮断薬が使わることがあります。
特徴的な症状があるのでわかりやすい病気ですが、誤診されてしまうことが多い病気です。 甲状腺に痛みがあるときは、亜急性甲状腺炎ではないかと医師に伝えてみるのも良いでしょう。
一度かかると免疫ができると考えられているので、再び感染しても同じ病気を起こすことはまれです。 少なくとも十数年たたないと、再発しないようです。