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夢と心理学


夢とフロイト

夢分析の始まり

 

 精神分析学の創始者として有名なジークムント・フロイトは、夢を心理学的に体系化して研究を行いました。
 フロイトは『夢とは、過去の満たされなかった願望が形を変えて実現したもの』と考えていました。
 過去の願望とは、幼児期に抱く性的な欲求、攻撃的な衝動を意味しており、その中でも特に近親相姦的な願望を重視していました。

 親を含む周囲の大人たちは、幼児の欲求や衝動を『いけないこと』として禁止します。一方で、幼児自身も『いけない子』にならないように行動します。
 そうして、初めから願望そのものが『なかったこと』として、心の奥底に押し込めてしまい、『抑圧する』わけです。
 フロイトは、『心の底』のことを、「潜在意識」と名付けました。


願望と夢

願望が形を変えて夢に現れる

   抑圧された願望は、大人になってからも潜在意識の中でくすぶり続けます。
 火山の下に溜まっているマグマのようにフツフツと煮えたぎり、常に表面に出るチャンスをうかがっています。
 フロイトは、現実には実現不可能な願望が、夢となって現れると考えていました。つまり、夢は満たされない願望のはけ口であるということになります。

 抑圧された願望は、夢の中で、そのままの形で現れるわけではありません。
 願望がそのままストレートに夢の中で現れれば、表面意識がパニックを起こしてしまう可能性もあります。
 それは、自分自身が『とんでもない願望』を抱いていることを、認めたくないものだなと考えているためです。

 抑圧された願望は、誰にも正体を見破られないように、形を変えて夢に現れます。
 男性器は棒やナイフ、女性器は穴や壺、父親は国王、母親は王妃など、姿を変えて夢の中に現れます。
 こうした変装した形を、シンボルや象徴と呼びます。フロイトは、シンボルが何を意味しているのか判明すれば、夢の解釈も可能になると考えました。

夢とユング

夢から隠された現実を知ることができる

 

 フロイトの弟子でもあるユング心理学の創始者カール・グスタフ・ユングは、『夢は現在その人が抱えている心理的問題を表すもの』と考えました。
 ユングは、過去のドロドロとした欲望よりも、現在の心理状態の方を重要視しました。

 さらにユングは、『夢は無限の可能性に満ちたものである』とも考えました。
 夢は、自分たちの生活を改善するような知恵や知識を授けてくれることがあると考えました。
 これは、潜在意識から提供される知恵であり、自分たちの誤った生活態度を指摘し、足りないことを補ってくれるものです。


夢から得られるもの

夢に幅広い意味を求めた

 

 時として夢は、未知の自分、自分が気付いていない一面を知らせてくれることがあります。
 未知の自分は、潜在意識の中に潜んだままになっている、未開発の自分のことです。
 そうした新しい自分を、夢が見せてくれます。

 ユングは、夢が意味するものを、性的欲求の代償として限定せず、もっとバラエティーに富んだものと考えました。
 そして、シンボルの意味も、幅広い解釈を行っています。国王は権力や自我のシンボルでもあり、ナイフは攻撃性や鋭い知性のシンボルとされます。


フロイトとユング

夢は潜在意識が生み出すもの

 

 フロイトとユングは、夢の捉え方について、食い違いがあります。
 しかし、『夢は潜在意識が生み出すもの』という考えでは、一致しています。この考え方は、その後も研究者たちに引き継がれていき、現在では一般的になっています。

 のちのことではありますが、フロイトとユングは考え方の違いにより決別しました。
 決別したとはいえ、精神医学や心理学の世界では、現在でも欠かすことのできない存在であるのは間違いありません。

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