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胸部外傷で一番多い |
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胸郭(きょうかく)を形成している胸骨、肋骨、肩甲骨、鎖骨、胸椎の損傷のうち、肋骨骨折は、胸部外傷の中でも、もっとも多くみられる外傷です。
肋骨は細くて平らな骨で、胸部に左右12本ずつ存在し、鳥かごのようになって、肺や心臓を包むように保護しています。
肋骨の折れる原因には2種類あります。ひとつは、外力が直接肋骨に作用した部位が折れる直達外力(ちょくせつがいりょく)です。もうひとつは、外力が加わった部位から離れた場所で肋骨が折れる介達外力(かいたつがいりょく)です。 |
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若年者には起こりにくい |
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年少者では肋骨に弾性があるため、肋骨骨折を起こしにくいです。年少者で多発肋骨骨折が起こった場合、かなりの外力が加わったことが予想され、肺損傷などを合併している可能性が高くなります。
成人〜高齢者に多い骨折で、高齢者では肋骨がもろくなっているため、小さな力でも簡単に肋骨骨折を起こしてしまいます。 |
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合併症の可能性 |
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直接外力による肋骨骨折では、肺損傷を合併する可能性が高くなります。介達外力による肋骨骨折では、心大血管損傷を合併する可能性が高くなります。
通常は1本〜2本の骨折ですが、交通事故など大きな外力によって多数の肋骨骨折が起きた場合、肺も損傷してしまいます。肺の外に空気が漏れる気胸や、肺の中に血液が溜まる血胸(けっきょう)、肺挫傷(はいざしょう)を起こすこともあります。
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好発部位 |
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左右に12対ある肋骨のうち、肋骨骨折の好発部位は第4肋骨〜第8肋骨です。
上部の肋骨骨折では、胸郭の出口付近の血管損傷を合併する可能性が高くなります。第一肋骨骨折では鎖骨下動静脈損傷。鎖骨下動脈損傷では、損傷した側の腕の冷感、橈骨動脈(とうこつどうみゃく)の拍動が弱くなります。
下部の肋骨骨折では、右側では肝臓や右腎臓、左側では脾臓(ひぞう)、左腎臓などの腹腔内臓器損傷を合併する可能性が高くなります。肝臓や脾臓損傷では、腹腔内出血による腹部の痛み、膨隆、低血圧がみられます。腎損傷では、血尿が出ます。 |
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骨折そのものより合併症が問題 |
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肋骨骨折自体は、治療上で問題になることは少ないです。
同時に発生する合併症の胸腔内臓器が問題になることが多くなります。 |