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 歯周病・歯周疾患
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歯周病・歯周疾患ってどんな病気?
歯周組織に起こる病気の総称
  イメージ画像 歯周病は歯周組織と呼ばれる歯の周りにある組織のいずれか、あるいはすべてに起こる病気の総称です。
 歯周疾患とも呼ばれます。かつては、歯槽膿漏(しそうのうろう)と呼ばれていた病気です。歯槽膿漏という言葉は、歯茎から膿が出ることに由来します。
日本人に多い病気
   日本人の約70%は、歯肉に何らかの異常を持っています。働き盛りの中高年では、約80%に歯周病があると報告されています。
 歯周病は虫歯と並ぶ歯科の二大疾患で、50歳以上の日本人で歯周病のない健康な歯茎を持つ人は、10人に1人もいないと言われています。
 歯周病は一度かかると治らない不治の病とされてきましたが、最近では歯周病の原因が少しずつ明らかになってきました。
歯周組織
   歯周組織は、以下の組織から構成されています。
 歯の根と骨を覆っている部分で、一般的に歯茎と呼ばれる歯肉(しにく)。
 歯の根の表面部分にあたる、セメント質。
 歯を支えている顎の骨の一部である、歯槽骨(しそうこつ)。
 セメント質と歯槽骨とを連結している膜である、歯根膜(しこんまく)。別名を、歯周靭帯(ししゅうじんたい)とも呼ばれます。
2つに分類
   歯周病は、以下の2つに大別することができます。
 歯肉から炎症が起こる歯肉炎(しにくえん)や歯周炎(ししゅうえん)。
 セメント質、歯槽骨、歯根膜など歯周組織の深部から、非炎症性で破壊が起こる咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)。

歯周病・歯周疾患のみられる人の割合は?
年齢 所見のない人 所見のある人 対象歯のない人
総数 プロービング後の出血 歯石の沈着 歯周ポケット4mm〜6mm 歯周ポケット6mm以上
総数 歯石沈着あり 総数 歯石沈着あり
5歳〜9歳 57.1% 38.9% 22.9% 16.0% - - - - 4.0%
10歳〜14歳 48.8% 51.2% 24.9% 25.4% 1.0% 0.5% - - -
15歳〜19歳 33.9% 66.1% 25.4% 35.6% 5.1% 0.8% - - -
20歳〜24歳 23.8% 76.2% 15.2% 51.4% 9.5% 1.0% - - -
25歳〜29歳 25.3% 74.7% 14.4% 42.0% 17.8% 7.5% 0.6% 0.6% -
30歳〜34歳 19.7% 80.3% 11.8% 44.5% 23.5% 9.7% 0.4% - -
35歳〜39歳 20.1% 79.9% 11.3% 44.8% 19.6% 7.2% 4.1% 2.1% -
40歳〜44歳 15.4% 84.6% 9.8% 45.9% 25.6% 10.2% 3.3% 2.4% -
45歳〜49歳 12.1% 87.2% 9.7% 34.6% 34.6% 12.8% 8.2% 2.7% 0.8%
50歳〜54歳 10.8% 87.5% 9.8% 36.0% 34.3% 11.4% 7.4% 3.7% 1.7%
55歳〜59歳 11.3% 85.7% 7.9% 29.6% 38.4% 14.5% 9.9% 4.4% 3.0%
60歳〜64歳 10.2% 84.4% 7.2% 26.0% 37.7% 14.7% 13.5% 6.3% 5.3%
65歳〜69歳 8.5% 80.4% 6.1% 25.1% 34.9% 11.7% 14.3% 7.5% 11.1%
70歳〜74歳 6.5% 73.2% 5.4% 19.4% 37.3% 16.7% 11.2% 5.8% 20.3%
75歳〜79歳 4.4% 59.4% 3.1% 14.8% 28.9% 11.9% 12.6% 6.3% 36.2%
80歳〜84歳 2.3% 49.1% 4.7% 11.1% 26.9% 10.5% 6.4% 3.5% 48.5%
85歳以上 2.8% 43.1% 8.3% 12.5% 13.9% 9.7% 8.3% 4.2% 54.2%

歯周病・歯周疾患の原因は?
細菌と異常な力
  イメージ画像 歯肉炎や歯周炎は、口の中に生息している口腔常在菌(こうくうじょうざいきん)と呼ばれる細菌によって起こる感染症だと考えられています。
 咬合性外傷は、歯周組織の適応能力を超えた力が加わることによって起こることが、わかっています。

歯周病・歯周疾患の原因分類に関連する細菌は?
プラーク性歯肉炎 アクチノマイセス・ビスコーサス
アクチノマイセス・ネスランディ
プレボテラ・インターメディア
妊娠性歯肉炎 プレボテラ・インターメディア
壊死性潰瘍性歯肉炎 プレボテラ・インターメディア
フソバクテリウム属
スピロヘータ
慢性歯周炎 ポルフィロモナス・ジンジバリス
タネレラ・フォーサイシア
(バクテロイデス・フォーサイサス)
アグレガチバクター(アクチノバシラス)・アクチノマイセテムコミタンス
フゾバクテリウム・ヌクレアトゥム
トレポネーマ・デンチコラ
侵襲性(急速破壊性)歯周炎 ポルフィロモナス・ジンジバリス
タネレラ・フォーサイシア
(バクテロイデス・フォーサイサス)
アグレガチバクター(アクチノバシラス)・アクチノマイセテムコミタンス

プラーク(歯垢)・歯石とは?
プラークとは?
  イメージ画像 プラークは歯垢とも呼ばれます。最近では、バイオフィルムとも呼ばれます。
 口の中に生息している細菌と、その産生物が作る沈着物です。歯の表面にこびりついており、うがい、口をすすぐ程度では、取り除くことができません。歯ブラシ、糸ようじ、デンタルフロスを正しく使うことで除去できます。
 プラーク1mg中には、1千万個以上の細菌が含まれています。そのうち約25%は生きています。
 歯の溝や小さな穴、歯と歯の間、歯と歯茎との境界に貯まりやすく、虫歯や歯周病の大きな原因になっています。
歯石とは?
   歯石はプラークが石灰化したものです。硬く歯の面にくっついており、歯ブラシでも取り除くことはできません。歯石中の細菌はほとんど死んでいるため、プラークと比べると、その病原性は低いといえます。
 歯石の表面は軽石や海綿のようにたくさんの小さな穴が開いており、プラークが付着しやすい場所となり、歯ブラシの妨げとなってしまいます。また、歯石を足場にして、プラークが付着して石灰化を繰り返し、次第にその量が増加していきます。

歯周病・歯周疾患の症状は?
生活習慣病
  イメージ画像 歯周病は、生活習慣病として位置付けられるようになりました。
 歯周病の原因が食習慣、歯磨き習慣、喫煙などと関係があるため、歯科医師による治療のみでは効果が上がらないことも明らかになっています。
 患者さん個人の生活習慣の改善、自助努力が、歯周病治療の成否に大きく関与します。
ゆっくり進行する
   ほとんどの歯周病は激しい痛みがなく、はっきりした自覚がないまま静かに経過する慢性の病気です。はっきりした症状がないまま進行するため、歯がグラグラして、おかしいと気付いた時には、すでに手遅れの状態ということも少なくありません。この場合、歯を支える歯周組織の大半が失われています。
 歯周病はゆっくり進行しますが、厳密には、ほとんど症状を示さない静止期、その後に続く激しい急性炎症と組織の破壊がみられる活動期が、繰り返し起こっています。
進行のしかた
   歯周病は正常な歯肉にまず歯肉炎が起こることで始まり、これがさらに進行すると歯周炎になります。
  開始期病変
     歯磨きを止め、プラークが付き始めて2日後〜4日後に起こる歯肉の表面の急性の炎症です。
  早期病変
     プラークが付いてから1週間後にみられ、明らかな歯肉炎を意味します。
  確立期病変
     歯周ポケットが形成され、炎症がさらに広がって、上皮の下の歯肉結合織に及びます。
  発展期病変
     確立期病変の炎症がさらにひどくなった状態で、歯周炎と呼ばれる状態です。炎症は歯肉の部分を超えて、内部の歯根膜(しこんまく)、歯槽骨(しそうこつ)にまで及んでいます。
歯のグラつき
   急性炎症と組織破壊によって、歯と歯肉の間に亀裂ができます。この亀裂のことを、歯周ポケットと呼びます。
 歯周ポケットができると同時に、歯の周りの結合組織も歯槽骨(しそうこつ)も破壊されてしまいます。外から見ると、歯茎が痩せて退縮し、歯の根が現れるようになり、やがて歯がグラグラして、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
 こうした症状を示す歯周病の原因は、歯肉付近の歯についたプラーク(バイオフィルム)の中の細菌です。
起こりやすい合併症
   歯や口は、消化器官の一部としての役割を持っています。また、身体全体とも繋がっています。
 歯周病は口の中に限局しているだけなら、それほど大きな問題にはなりません。しかし長期間慢性化することで、病原性を持ったプラーク中の細菌が血液に入ったり、飲み込まれて口から離れた心臓や肺などの遠隔臓器に行き、合併症を起こす危険性があります。
 起こりやすい代表的な合併症としては、誤嚥性肺炎、心内膜炎、心臓血管障害、菌血症、敗血症、糖尿病、早産、低体重児出産などを引き起こす可能性があります。

歯周病と全身疾患は?
歯周病と全身疾患
  イメージ画像 ダウン症候群、1型糖尿病、パピヨン・ルフェーブル症候群、HIV感染、白血病、悪性不良性貧血は、歯周病と関連があると、古くから言われています。これらの病気の口腔内症状として、歯周組織に重度の破壊が起こってきます。
 全身疾患がどのようにして歯周組織を破壊するのか、その詳細はわかっていません。
 歯周病が心臓血管系疾患、呼吸器系疾患、糖尿病、低体重児出産などとも強い関係のあることが報告されています。確かな証拠があるわけではありませんが、少なくとも歯周病を起こす細菌を含んだプラークには病原性があり、それが血液中や唾液中に入り、心臓や肺など口から離れた臓器や胎児に悪影響を及ぼします。
歯周病の治療で防ぐ
   プラークが直接的な原因か引き金になって炎症を起こしていることは間違いありません。
 プラークコントロールを基盤とした歯周病の治療を行うことが、大切になります。

歯周病・歯周疾患の診断は?
従来の診断
  イメージ画像 歯周病の診断では、従来からエックス線写真による骨の吸収の度合い、歯周ポケットの深さ、付着喪失の程度、歯周ポケットに器具を入れた時に出血があるか、歯の動揺度などについて検査してきました。
原因となっている細菌の検査
   正確で詳しい診断をするために、最近では細菌学的検査法、免疫学的検査法も行われるようになっています。
 局所の細菌を直接観察する方法、細菌に対する抗体を使って調べる蛍光抗体法(けいこうこうたいほう)、細菌を培養する方法、歯周病の原因菌の特異的なDNAをプローブ(検出の指標)として調べるDNAプローブ法、歯肉溝浸出液中の炎症物質を特定する方法などがあります。
 診断キットによって、診察室で簡単に検査できるようになっています。

歯周病・歯周疾患の治療法は?
初期治療
  イメージ画像 歯周病の治療は、その原因が細菌であるという考えに基づいて行われます。
 まず原因を取り除き、口の中を清潔にするため、初期治療を行います。
口腔内の清潔
   腫れや痛みを鎮め、炎症を軽くする、噛み合わせを調節して噛めるようにするなどの治療が行われます。
 歯に付着しているプラーク、歯石、食物残滓(食べ物の残りカス)などを取り除き、歯や歯肉を清潔に保つためのプラークコントロールが重要になります。
 プラークや歯石による歯の表面の汚れを取り除くためのスケーリング、ルートプレーニングという処置を行います。
 スケーリングは歯石除去とも呼ばれ、歯に付着している歯石などの異物を取り除く方法です。ルートプレーニングは、キュレットという器具を使って歯根面のプラーク、歯石、壊死セメント質を除去して滑らかにする方法です。
その他の治療法
   歯周ポケットの内側で炎症を起こしている病的な組織をかき出す、歯周ポケット掻爬(ししゅうぽけっとそうは)という治療も行われます。
 歯周ポケット内の細菌を減らすために、抗生物質や抗菌薬をポケット内に入れる薬物療法も良く行われる治療法です。
外科的な手術
   口腔内の洗浄、抗生物質による治療を行っても、病的な組織を十分に取り除くことができないような場合、歯茎を切って、ルートプレーニングによって歯根面を綺麗にした後、歯茎を縫い合わせる歯周外科も行われます。
 歯根面の異物を取り除き滑らかにするだけでなく、積極的に失われた組織を再生させるGTRという方法も応用されるようになりました。
予防が大切
   歯周病を予防したり、コントロールすることは、歯や口の健康を守るのみならず、全身の健康維持にも繋がります。人生80年の高齢化社会を、豊かで快適に過ごすためには、歯周病の予防とコントロールは極めて重要です。
 歯周病は歯周組織に起こる病気の総称です。歯肉炎、歯周炎、咬合性外傷、歯肉膿瘍、歯周膿瘍など、それぞれの病気によって、治療法は異なります。
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