ハチ刺傷・ハチ刺され

ハチ刺傷・ハチ刺されってどんな病気？

ハチ毒とショック

　ハチ毒による直接作用と、繰り返して刺されることによるアレルギー作用から、局所・全身の症状を示します。ときには生命に関わるような激しい全身症状をきたすことがあります。
　死亡する場合の多くは、繰り返して刺されることによるアナフィラキシーショック（急性の全身性ショック）が原因といわれています。
家庭の医学：虫刺症・ムシ刺され

ハチの種類

　アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチ、マルハナバチ類の約20種類が、毒針を持ち、攻撃的なハチとされています。
身近な昆虫図鑑：スズメバチ科
身近な昆虫図鑑：ミツバチ科

3種類のハチ毒

　ハチ毒には、3種類あります。

局所の痛みは腫脹・腫れを起こすアミン類（ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリンなど）

アレルギー反応の原因になる高分子タンパク質（ホスホリパーゼ、プレテアーゼ、ヒアルロニダーゼなど）

溶血作用（赤血球の崩壊）を起こしたりする精神毒でもある低分子ペプチド（メリチン、アパミンなど）

ハチ刺傷・ハチ刺の症状は？

刺された直後の激痛から

　刺された頻度や、その人の体質によって、症状にはかなりの個人差があります。通常は、刺された直後に激痛が走り、局所は発赤し、腫脹します。
　初めて刺された場合は、1時間〜2時間で治まります。その後、局所が赤く腫れてかゆみや痛みをともなう場合があります。
　大型のスズメバチや、多数のハチに一度に刺されると、ハチ毒による中毒として、頭痛、発熱、嘔吐・下痢などの消化器症状、呼吸困難、さらには痙攣などの全身症状があらわれます。多臓器不全によって死亡することもあります。

アナフィラキシーショック

　体質によっては刺された直後から全身のかゆみ、息苦しさ、気分不良などの全身症状があらわれます。
　ひどい場合は、血圧が低下し、刺されてから15分〜20分以降にアナフィラキシーショックが起こります。
　前回刺されたときに、局所の症状が激しかった場合、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性が高いとされているので、注意が必要です。

ハチ刺傷・ハチ刺の診断は？

診断は容易です

　ハチに刺された状況がはっきりしている場合には、容易に診断できます。
　次回に刺されたときにアレルギー症状が現われるかどうかを、血液検査（IgE-RAST）で推定することも可能です。

ハチ刺傷・ハチ刺の治療法は？

軽症時と重症時で違う治療法

　局所の疼痛、掻痒感・かゆみ、発疹、熱感などに対する対処療法と感染予防が行なわれます。局所のかゆみには、副腎皮質ステロイドの外用薬を塗ります。
　症状が強い場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の内服、注射などを行ないます。
　ショック状態になると、輸液や酸素吸入をしながら、エピネフリンを注射し、呼吸・循環管理を中心にした抗ショック療法を行ないます。

アドレナリン注射

　山林業などに従事する人々を対象に、アナフィラキシーショックによる死亡を回避するため、刺された現場で注射できるアドレナリンが日本でも2003年から発売されています。

ハチ刺傷・ハチ刺の応急処置法は？

ミツバチはトゲを抜く

　普通、ハチに刺されたら、安静にして、局所を冷やして様子をみます。
　ミツバチの針は釣り針状になっており、抜けにくくなっている上、毒腺が残って収縮して毒を注入し続けます。ナイフなどを使って丁寧にトゲを剥ぎ取るようにします。不用意に指やピンセットでつまむと、さらに毒液を体内に注入することになるので、注意が必要です。

全身症状には要注意

　刺された直後〜1時間以内に、何らかの全身症状が出た場合は要注意です。とくに、以前にハチに刺されて激しい症状が出た人には生命の危険があります。
　気分不良や息苦しさなどがみられた場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
　全身症状がなくても、発赤、腫れ、かゆみ、痛みが強い場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。

アンモニア水は効果なし

　昔から言われているアンモニア水や、小便は効果がありません。かえって皮膚炎を引き起こすことがあるのでやめましょう。

アドレナリン製剤を用意しておく

　以前に刺されたことがある人は、あらかじめ医療機関から注射器にセットされたアドレナリン製剤を入手して、準備しておくとよいでしょう。
　なお、むやみに巣に近付いたり、いたずらをしないようにしましょう。秋になるとハチの攻撃性が高まるので、気をつけましょう。