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口唇ヘルペスは唇やその周囲に小さな水ぶくれができる病気です。単純性ヘルペスウイルスが原因で起こります。 単純性ヘルペスウイルスは感染力が強く、直接的な接触の他にも、ウイルスのついたタオルやグラスなどを介しても感染します。そのため、親子、夫婦など密接な間柄で感染することが多く、「愛のウイルス」と呼ばれたりもします。
単純性ヘルペスウイルスの特徴は最初に感染した初感染で免疫を獲得します。その人に抗体ができていても、機会があれば再感染や再発を繰り返します。 大人にみられる口唇ヘルペスのほとんどが再発型で、1年に1回〜2回の再発が多いようです。
単純性ヘルペスウイルスにはT型とU型の2つのタイプが存在します。 T型は唇、顔面などの上半身に発症します。U型は性器を中心とする下半身におもに発症します。 以前はほとんどの人が乳幼児期に周囲の人々との接触によって、T型に感染して抗体を持っていましたが、衛生状態の改善・核家族化などの影響により、現在では20代〜30代でも半数くらいの人しか抗体を持っていません。 乳幼児期の初感染は症状がないか、あっても軽いのに対して、大人になってからの初感染は症状が重くなります。
単純性ヘルペスウイルスT型に対する抗体を持っていると、T型だけでなく、U型に対しても感染しにくく、発症しても軽症ですみます。
乳幼児期の単純ヘルペスウイルスT型の初感染は、ヘルペス性口内炎などで現れることがありますが、多くの場合、症状が現れません。 初感染の後、ウイルスは神経節に潜み、何らかのきっかけで暴れだして口唇ヘルペスなどとして再発します。 初感染で口唇ヘルペスということもありますが、日常みられるのはほとんどが再発型です。
風邪で熱が出た後にみられる風邪の華・熱の華が、口唇ヘルペスです。 風邪以外でも、疲労、紫外線、胃腸障害、外傷、ストレス、老化、抗ガン薬、副腎皮質ホルモン薬、免疫抑制薬などの体の抵抗力や免疫機能の低下が、再発の誘因となります。
症状が出ている時期は、ウイルスを大量に排泄しています。この時期に患者に接触した人で、単純ヘルペスウイルスの抗体を持っていない人や、持っていても抵抗力が落ちている人は感染する確率が高くなります。 感染した場合、接触した日から多くは3日目〜7日目に発症します。具体例としては、口唇ヘルペスの大人が乳幼児にキスすることによって発症する乳幼児ヘルペス性口内炎・口唇ヘルペスが挙げられます。これは自分自身の患部に触れて他の部位に感染する場合にも当てはまり、患部に指で触れた場合は、きちんと手洗いをしなければ、数時間は感染する可能性があります。
アトピー性皮膚炎の人では、皮膚の免疫機能が低下しているので、皮膚から感染してひどい症状が出るので注意が必要です。
ウイルスを持っていても症状が出ない場合、たいていウイルスは神経節に潜んでいます。しかし、唾液や精液などにウイルスが排泄されていることもあります。この場合、無症状であることから自分の体液にウイルスが存在することに気付かず、キスや性行為でパートナーに口唇ヘルペス、性器ヘルペスを発症させることがあります。 特にパートナーが抗体を持っていない場合には、重症化するので、気になる人は抗体の有無を検査すると良いでしょう。
初感染か、再発か、体調の良し悪しなどの要因で、症状の程度は変化します。一般的に口唇ヘルペスは以下の4つの段階を経て2週間ほどで治っていきます。
水ぶくれが現れるのに先立ち、口唇ヘルペスの兆しがみられます。 皮膚にピリピリ、チクチク、ムズムズなどの熱感、違和感、かゆみを感じます。再発を繰り返す人は、自分でわかるようになります。
皮膚の熱感、違和感、かゆみなどの自覚症状から、半日以内に赤く腫れてきます。 この時期は、患部でのウイルスの増殖が活発です。このような早い時期に治療を始めることが大切です。
赤く腫れた上に水ぶくれができます。この中にはウイルスがたくさん存在します。水ぶくれは初感染では大きく、再発を繰り返すと小さくなっていきます。 水ぶくれが破れて湿っぽくなった患部に触ると、感染してしまいます。 口紅などが合わなくてできる水ぶくれは、くちびる全体にできるのに対して、口唇ヘルペスでは、1ヶ所にできるのが普通です。
かさぶたができて、治っていきます。
単純性ヘルペスウイルスは、皮膚に痕を残さないのが特徴ですが、体の抵抗力が低下している人では、えぐれた痕が残ることもあります。 またまれに、患部近くのリンパ節が腫れることもあります。
厄介なことに口唇ヘルペスはしばしば再発し、その回数は1年に1回〜2回が多いようです。日常によくみられる口唇ヘルペスはほとんどが再発によるものです。 普通は再発のたびに軽症化し、水ぶくれは小さくなり、患部も狭い範囲に治まります。 ただし、アトピー体質の人では重症化することもあります。
赤く腫れて水ぶくれができ始める3時間前〜4時間前に、くちびるや鼻の周り、顔面に、ピリピリ、チクチク、ムズムズなどの再発の兆しが現れるため、再発するということが自分でわかるようになります。
再発の予感がした、もしくは口唇ヘルペスの症状が出たら、なるべく早い時期に治療を始める方が治癒も早くなります。 治療にあたってはウイルスを退治する抗ウイルス薬を使うことが、もっとも効果的です。最近では、軟膏、錠剤の抗ウイルス薬もあるので、手軽に治療ができるようになりました。 ただし、抗ウイルス薬はウイルスの遺伝子に働いてウイルスの増殖を抑制するもので、ウイルスを殺す作用はありません。また、神経節に潜んでいるウイルスに対しても効果はありません。 そのため、症状が出ている間、特に症状の出始めのウイルスが増えている時期が治療に適した時期となります。
単純ヘルペスウイルスは一度感染すると、その後は神経節に潜んでいます。 その後、時々暴れて症状が出るのですが、この暴れているウイルスの増殖を抑制するのが抗ウイルス薬です。抗ウイルス薬の中にも、軟膏、錠剤、注射薬など、さまざまな種類があります。 医師は効果と使いやすさを考えて、症状に合った抗ウイルス薬を選択し、その他の状況に応じて鎮痛剤、ビタミン剤、抗生物質などで治療します。
口唇ヘルペスは、早めの治療が功を奏します。 再発を繰り返す人、海やスキーに行くと必ず再発するような人は、医師に相談して再発の兆しがあったらどのような処置をすべきかについて、指導を受けておくと良いでしょう。
口唇ヘルペスは精神的・肉体的ストレスによって体力や抵抗力が落ちている時に再発することが多いのが特徴です。 そのため、バランスの良い食事をとり、十分に休息をとることが大切です。日頃からの体だけでなく、精神的にも健康な生活を心がけるようにしましょう。
症状が出ている時期はウイルスの量も多く、感染源になるので、人との接触には注意が必要です。 相手が抗体を持っていて抵抗力がある場合には発症しないか、発症したとしても軽症です。相手が重症化しやすいケースもあるので、注意が必要です。
免疫機能が未発達なため、全身に強い症状が現れます。キスなどは避けるようにしましょう。 母親が既に抗体を持っている場合、抗体が胎盤を通じて新生児に渡り、それほど重症化しません。 いずれにしても、症状が出ている時は赤ちゃんとの接触は控えるようにしましょう。
口腔性交で相手に性器ヘルペスを発症させる危険性があります。初感染の性器ヘルペスは重症化するので気をつけましょう。 抗体を持っているのかどうか気になる人は、検査を受けると良いでしょう。
皮膚にバリアーがないので、皮膚に触れると簡単に感染し、重症化してしまいます。
白血病、悪性腫瘍、移植手術後などの患者さんに対しては、お見舞いも控えるようにしましょう。
自分自身も患部に触れて感染するので、むやみにあちらこちら触らないように気をつけましょう。特に目に感染して発症する角膜ヘルペスは失明する危険性もあるので、注意しましょう。 ほとんどの口唇ヘルペスは再発型のため、本人はすでに抗体を持っているため、それほど神経質になる必要はありません。抗ウイルス剤で治療をしていれば、口紅などの化粧をしても大丈夫です。 ただし、以下の点には注意しましょう。
単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、ウイルスがついたタオルや食器からでも感染するので、これらの共用は避けるようにしましょう。
食器についた唾液の中でも、ウイルスはかなり長い時間生きています。洗剤できちんと洗うようにしましょう。
他の洗濯物と一緒に洗ってもかまいません。日光に良く当てて、しっかり乾かすようにしましょう。