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激しい嘔吐 水様便 脱水症状
コレラ毒素を産生する細菌性のコレラ菌によって起こる、急性胃腸炎です。コレラ菌に汚染された水、加熱不十分な魚介類の飲食によって感染します。 現在では、海外旅行で感染してくる人が大部分です。一部、輸入食品を介して食中毒として発生することもあります。日本国内には常在しない感染症です。 東南アジアやアフリカなどの発展途上国では日常的に流行している病気で、世界保健機関(WHO)では、検疫伝染病として監視しています。
1992年、インドで新型コレラが発生し、日本にも持ち込まれました。 感染症法では、国内でも発生状況の監視が必要な2類感染症に指定されています。
近年では、2002年に、コンゴ民主共和国、マラウイ、ソマリア、モザンビークなどの国でコレラの大きな流行がありました。 2001年に、南アフリカ、インド、アフガニスタン、チャド、コートジボワールなどの国でコレラの大きな流行がありました。
現在流行しているコレラ菌は、エルトールコレラと呼ばれるもので、感染力が強い代わりに、病原性が弱く、死亡率は約2%です。栄養状態の良い日本人の場合は、胃腸の弱い人、老人、乳幼児を除けば、死亡することはほとんどありません。 ただし、感染力が強いために注意が必要です。 1992年に新たなコレラ菌であるO139が発見されました。
1960年ごろまで流行していたコレラ菌は、クラシカルコレラ、またはアジア型コレラ、古典型コレラと呼ばれています。 コレラパンデミーと呼ばれる世界的な大流行を何度も繰り返し、その致死率の高さから多くの人が犠牲となりました。致死率は約20%といわれています。
典型的なコレラの症状としては、2日〜3日の潜伏期間ののち、下痢と嘔吐で突然発病します。 米のとぎ汁のような大量の下痢が何回も出て、急激に体の水分が失われ、脱水症状があらわれます。腹痛はなく、体温は低下します。 眼球が陥没し、頬骨が突出し、声がかすれ、皮膚がシワシワになり、無表情なコレラ顔貌となります。さらに進行すると、血圧低下、低体温、無尿、意識障害、痙攣などが現われ、死んでしまうこともあります。
腹痛や発熱がないため、医療機関への受診が遅れてしまう傾向があります。 近年では、ほとんどが軽症例ですが、高齢者、胃の手術後、胃潰瘍、胃潰瘍薬の服用などで、胃酸が十分でない場合には、症状が重くなる傾向があります。
便からコレラ菌を検出します。コレラ毒素を持っていることがわかった段階で、診断されます。血液、尿の検査所見は、脱水の程度によって異なります。 検査には最低でも2日〜3日は必要になります。診断が確定すると、医師は保健所に届け出ます。 海外からの帰りで、症状がある場合には、帰国時に検疫所に相談するようにしましょう。
コレラの治療には、輸液により全身状態を改善することと、抗菌薬によって体内のコレラ菌を死滅させ、下痢の期間の短縮と感染拡大を防止することです。 患者さんは原則として、2類感染症指定医療機関に入院して治療を受けることになります。症状がない場合は、通院治療となります。
輸液は特に大切で、嘔吐や下痢がひどい場合には、乳酸リンゲル液を静脈内に点滴で注入します。脱水がひどい場合には、1日に10リットル以上の輸液が必要になる場合もあります。 下痢がひどくなければ、経口輸液として、スポーツドリンクを1日1リットル〜2リットル飲みます。スポーツドリンクには薄い糖分と塩分が入っているため、腸から水分が吸収され、脱水に効果があります。
抗菌薬は、下痢の期間短縮、早期排菌停止に効果的です。 ニューキノロン系薬、テトラサイクリン、ミノサイクリンを短期間使用します。 子供で、これらの薬が使用できない場合には、世界保健機関(WHO)はエリスロマイシンを推奨しています。
潜伏期間は通常では2日〜3日、長くても5日程度なので、流行地で発病した場合はもちろん、帰国後5日以内に下痢や嘔吐が現れた場合は、感染した可能性があります。 海外旅行へ行ったことを伝えたうえで、医師の診察を受けましょう。
コレラ菌は便の中に排泄されるので、患者さん自身が手洗いを敢行すれば、他人への感染を予防することができます。 患者さんが排泄の介助を必要としている場合では、介助者が手洗いを敢行しましょう。
コレラのワクチンは存在しますが、その効果は十分ではありません。ワクチンを接種しても、海外での飲食物には注意をするのが賢明です。
ブラジルの預言者ジュセリーノ・ダ・ルース氏によると、2009年夏に日本でコレラが大流行し、2011年までに5000人以上の死者を出すといわれています。