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治療法の進化 |
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胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療法は、大きく3つの時代に分類して考えることができます。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療は、約20年で大きく変化しました。かつては死亡する人も多かった病気ですが、現在では治療法が確立されたため、昔のような恐ろしい病気ではなくなりつつあります。 |
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第1期生活習慣病の時代 |
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1980年代以前、治療は安静を保つことと、胃に負担をかけない食事をとることが基本でした。それに加えて、薬剤療法が行なわれていました。
当時の薬剤療法は、胃酸を中和する制酸薬、胃酸分泌を抑制する抗コリン薬が攻撃因子抑制薬として使用されました。同時に、胃粘膜防御因子増強薬と呼ばれる薬剤を併用していました。
理想的な治療法にもみえますが、実際には効果はありませんでした。 |
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第2期治療革命の時代 |
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ヒスタミンH2受容体拮抗薬、通称H2ブロッカーの登場によって、治療法が大きく変化していきした。
H2ブロッカーは、塩酸を分泌する壁細胞のヒスタミンH2受容体に作用して、胃酸の分泌を抑制できる画期的なものでした。これまでどの薬剤によってもできなかった夜間の酸分泌をほぼ完璧に抑制することができ、胃内の平均pHを確実に上昇させることができました。
腹痛などの自覚症状は1週間以内に90%以上の患者さんで消失し、潰瘍も8週以内に80%以上の治癒率を得られるようになりました。 |
さらに、プロトンポンプ阻害薬(PPI)という酸分泌抑制薬が開発されました。
PPIは壁細胞における受容体を経由して酸を産生するプロトンポンプそのものに作用し、酸を作ることを直接止めてしまいます。そのため、PPIはすべての酸分泌刺激に対して抑制を行なうことが可能な薬剤です。
PPIを使用することで、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の90%以上の患者さんが、8週以内に治ることがわかりました。 |
胃潰瘍、十二指腸潰瘍が治癒したあと、何も治療を受けなければ、1年以内の再発率は約70%にもなります。
このため、潰瘍治癒後も、H2ブロッカーや防御因子増強薬による維持療法と呼ばれる潰瘍再発予防のための薬剤投与が行なわれました。
維持療法を行なうことにより、1年の再発率を10%〜20%に下げることができます。 |
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第3期原因療法の時代 |
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ピロリ菌の除去療法によって、維持療法なしでも1年の胃潰瘍の再発率は約10%、十二指腸潰瘍の再発率は約5%と、きわめて低く抑えられることが日本でも明らかとなりました。 |
胃潰瘍、十二指腸潰瘍のもうひとつの原因であるエヌセッドの服用に関しては、エヌセッドの服用を中止することが原因療法になります。しかし、関節リウマチなどの患者さんの場合、中止できないことがおおいため、原因療法に準じる治療法として、エヌセッド投与によって減少する胃粘膜プロスタグランジンを補充したり、プロスタグランジン誘導体の投与が行なわれます。 |