ガイドラインの制定
2004年、日本胃癌学会から病期に応じた標準治療のガイドラインが作成され、一般公開されています。
ステージTA期に対する内視鏡的粘膜切除術は、患者さんへの肉体的負担が少ないこと、胃の機能が温存できること、入院期間が短いことで、日本では積極的に行われています。
内視鏡手術の進歩
現在では、ESDと呼ばれる内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)という手術が広く行われるようになっています。
大きな病変をひと塊で切除できる時代になっています。
腹腔鏡手術
最近では、小さな傷から腹部に内視鏡(腹腔鏡)を挿入し、胃切除・リンパ節郭清を行う腹腔鏡手術も普及しています。
外科手術
胃の2/3から、場合によっては胃のすべてを切除する手術が標準とされてきましたが、最近では治療後の生活の質(QOL)を保つため、切除範囲をなるべく小さくする努力がされています。
切除した胃は、元に戻ることはありませんが、手術の際、胃切除後に残った胃や小腸を用いて、食物の通り道を作り直す再建を行うことができます。
ガンが転移しやすいリンパ節を広範囲に切除することが推奨されています。
広範囲の切除では、体力の消耗、肺炎などの術後合併症、入院の長期化などの問題があります。
症状改善のための手術
根治不可能な状態でも、症状を改善するための手術が行われることがあります。
食物の通過障害に対するバイパス手術や、出血に対する胃切除術などが行われることがあります。
手術後の療養
手術直後は、口から飲食物を摂ることができません。点滴で栄養を補います。
飲水・摂食開始は手術方法によって異なりますが、術後3日目〜1週間くらいです。水分から始まり、流動食から徐々に普通の食事へと練習していきます。
胃を切除した後は、1回に摂れる食事量が減少するため、当初は1日5回〜6回に分けて食事をする必要があります。徐々に1回の食事量を増やしていき、普通の人と同じように食事できるようになります。
手術後の抜糸を行い、身体に入っていた排液管などが取れると、入浴も可能になり、退院間近になります。手術後の食事の練習、社会復帰は個人差があるので、自分のペースで行ってください。
胃手術後の合併症|食道・胃・腸の病気
- 家庭の医学
抗ガン剤の効果
広い範囲に転移を起こしているなど、手術不可能な胃ガンに対しては、抗ガン剤治療が行われます。新規抗ガン剤の林床導入によって、抗ガン剤を使用しない対症療法との比較試験の結果、明らかな延命効果が証明されています。
生存期間中央値が抗ガン剤を使用しない場合は3ヶ月〜4ヶ月であるのに対し、抗ガン剤を使用することで10ヶ月に延びています。
TS-1を含めて塩酸イリノテカン、ドセタキセル水和物、パクリタキセルなどの薬剤は、従来の抗がん剤に比較して効果が良く、積極的に使用されています。新規薬剤の開発もすすめられています。
切除したガン細胞を用いた抗ガン剤感受性試験という方法の有用性が多く報告されています。
W期では、最終的な根治は不可能なのが現状です。具体的な薬剤の選択、投与方法に関しては、現在も研究段階にあり、経験豊富な医師と施設のもとで治療が進められています。
放射線治療
欧米では胃ガンの標準治療とされている放射線治療は、日本では有用性が疑問視されています。
温熱療法も、十分な効果を上げていません。
セカンドオピニオンの活用
セカンドオピニオンを積極的に聞くことも大切です。
手術不能症例に対して、さまざまな代替医療、民間療法が普及しています。多くは科学的根拠に乏しいもので、こうした治療法は十分な説明を受けて、納得してから受けるようにしてください。
治療成績の改善
胃ガン全体の5年生存率は、1963年〜1969年の統計では44%でした。
1979年〜1990年の統計では72%で、明らかに改善されています。
1996年の統計では、病期別の5年生存率は、ステージT期で92%、ステージU期で77%、ステージV期で46%、ステージW期で8%です。
現在では、さらに改善されていると考えられます。
治療法ごとの治療成績
治癒切除例の5年生存率は88%、非治癒切除例の5年生存率は11%です。
切除不能例の5年生存率は2%〜3%と不良で、完治は困難です。
内視鏡的切除例の5年生存率は、対象がステージTA期に限られていることから、80%〜95%で外科切除と同等に良好です。
ピロリ菌との関係
胃潰瘍、十二指腸潰瘍に対しては、ピロリ菌の除菌療法が標準治療となっています。
ピロリ菌の除菌によって、胃ガンの発生が抑えられるかどうかは、研究が進められています。
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