ダンピング症候群
早期ダンピングでは、食後30分以内の発汗、頻脈、顔面紅潮、脱力感、腹部症状(下痢、腹痛、膨満感)などが現れます。原因は胃の食事内容が小腸へと流入することによって起こります。
晩期ダンピングでは、食後2時間〜3時間後に、全身脱力感、冷や汗、めまい、手指の震えなどが現れます。原因は食後に食事内容が急速に小腸へと流入することによって起こる高血糖と、それを是正するインスリン過分泌によって、ある程度の食後時間を経て低血糖症状が生じるために起こります。
早期ダンピングでは胃手術をした人の10%〜30%、晩期ダンピングでは約5%にみられます。
輸入脚症候群
胃切除後、再建腸管の輸入脚と呼ばれる部分に狭窄や閉塞があり、腸の内容物が輸入脚の部分でうっ滞してしまうことが原因で発生します。
おもな症状としては上腹部痛、腹部膨満感、背部痛などがあります。
緑色の胆汁を含む大量の嘔吐が特徴です。輸入脚が完全に閉塞してしまうと、無胆汁性嘔吐になります。
このほか、黄疸(おうだん)、貧血、発熱、頻脈が起こることがあります。
輸入脚内に細菌が増殖し吸収障害を起こした場合、盲係蹄症候群(もうけいていしょうこうぐん)、または盲管症候群(もうかんしょうこうぐん)と呼ばれます。貧血、下痢、体重減少などがみられます。
輸出脚症候群
輸入脚症候群と同様、再建腸管の輸出脚での狭窄や閉塞が原因で発生します。
おもな症状としては、悪心、嘔吐、腹痛などがみられます。
吻合部潰瘍
切除胃と十二指腸や小腸を吻合した部分の周囲に潰瘍ができるため、空腹時の上腹部痛、胸やけ、悪心、嘔吐などの症状が現れます。
潰瘍から出血をともなう場合、吐血や下血がみられることもあります。
潰瘍になる原因としては、残存胃酸分泌腺の機能過剰、再建部周囲血流障害などがあります。
胃切除後の吻合部潰瘍は約1%、迷走神経切離手術後の再発潰瘍は8%〜15%の人にみられます。
貧血
貧血には2つのタイプがあり、いずれの症状もめまい、脱力感、倦怠感(けんたいかん)などがあります。
鉄欠乏性貧血
血球成分に必須の鉄分の吸収が酸分泌低下とともに低下するために発症します。
悪性貧血(ビタミンB12欠乏性貧血)
内因子と呼ばれるビタミンB12吸収に必須な物質が、胃全摘によって欠乏して発症します。
ビタミンB12の吸収障害が起こると巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)が起こることがあります。術後3年〜5年たってからみられることが多いです。
骨障害
食事量が減少し、ビタミンDやカルシムの吸収障害が起こることがあります。
とくに脂肪の吸収が悪くなるとビタミンDも吸収されにくくなり、ビタミンD不足から骨の代謝異常が起こります。このため、骨粗鬆症、骨軟化症が起こりやすくなります。
逆流性食道炎
胸やけ、胸痛、消化液の逆流などの症状がみられます。
胃切除による胃噴門部(いふんもんぶ)の逆流防止機構の障害です。胃液・胆汁・小腸液などの消化液が食道に何度も逆流することによって発症します。
ときとして、治りにくいこともあります。
残胃がん
胃を残す胃切除術が行われた後、残った胃(残胃)に再びガンが発生する病態のことです。
切除断端、吻合部付近に発生することが多い傾向があります。
発見された時には、すでに進行がんとなってしまっていることが多いので注意が必要です。
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