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胃手術後の合併症


胃手術後の合併症ってどんな病気?

術後早期の合併症

手術 大きく分けると、手術後早期の合併症と、手術後晩期(退院後など)の合併症とに大別できます。
 手術後早期の合併症としては、肺炎、後出血、縫合不全、膵炎、膵液瘻(すいえきろう)、創感染などがあります。

術後晩期の合併症

 術後晩期の合併症としては、手術を受けて退院した後、長期にわたって障害が残ります。
 ダンピング症候群、輸入脚症候群(ゆにゅうきゃくしょうこうぐん)、輸出脚症候群(ゆしゅつきゃくしょうこうぐん)、吻合部潰瘍(ふんごうぶかいよう)、貧血、逆流性食道炎、残胃がんなどがあります。


胃手術後の合併症の原因は?

胃切除後症候群

胃 進行した胃がんなどの手術で胃を切除した人は、胃に食物を溜めておく機能、分解・消化機能などが損なわれるため、後遺症が現れます。
 胃の機能障害、カルシムなどの代謝障害などがあります。
 これらを胃切除後症候群、胃手術後障害とも呼びます。

現れる症状はさまざま

 胃の切除手術では、切除範囲をできるだけ小さくする縮小手術が選ばれるようになり、代用胃によって胃を再建することもあります。
 切除された胃の範囲、神経の切断の状態、胃の再建方法によって、現れる症状はさまざまです。

胃手術後の合併症の原因と症状は?

ダンピング症候群

吐き気 早期ダンピングでは、食後30分以内の発汗、頻脈、顔面紅潮、脱力感、腹部症状(下痢、腹痛、膨満感)などが現れます。原因は胃の食事内容が小腸へと流入することによって起こります。
 晩期ダンピングでは、食後2時間〜3時間後に、全身脱力感、冷や汗、めまい、手指の震えなどが現れます。原因は食後に食事内容が急速に小腸へと流入することによって起こる高血糖と、それを是正するインスリン過分泌によって、ある程度の食後時間を経て低血糖症状が生じるために起こります。
 早期ダンピングでは胃手術をした人の10%〜30%、晩期ダンピングでは約5%にみられます。

輸入脚症候群

 胃切除後、再建腸管の輸入脚と呼ばれる部分に狭窄や閉塞があり、腸の内容物が輸入脚の部分でうっ滞してしまうことが原因で発生します。
 おもな症状としては上腹部痛、腹部膨満感、背部痛などがあります。
 緑色の胆汁を含む大量の嘔吐が特徴です。輸入脚が完全に閉塞してしまうと、無胆汁性嘔吐になります。
 このほか、黄疸(おうだん)、貧血、発熱、頻脈が起こることがあります。
 輸入脚内に細菌が増殖し吸収障害を起こした場合、盲係蹄症候群(もうけいていしょうこうぐん)、または盲管症候群(もうかんしょうこうぐん)と呼ばれます。貧血、下痢、体重減少などがみられます。

輸出脚症候群

 輸入脚症候群と同様、再建腸管の輸出脚での狭窄や閉塞が原因で発生します。
 おもな症状としては、悪心、嘔吐、腹痛などがみられます。

吻合部潰瘍

 切除胃と十二指腸や小腸を吻合した部分の周囲に潰瘍ができるため、空腹時の上腹部痛、胸やけ、悪心、嘔吐などの症状が現れます。
 潰瘍から出血をともなう場合、吐血や下血がみられることもあります。
 潰瘍になる原因としては、残存胃酸分泌腺の機能過剰、再建部周囲血流障害などがあります。
 胃切除後の吻合部潰瘍は約1%、迷走神経切離手術後の再発潰瘍は8%〜15%の人にみられます。

貧血

 貧血には2つのタイプがあり、いずれの症状もめまい、脱力感、倦怠感(けんたいかん)などがあります。

鉄欠乏性貧血

 血球成分に必須の鉄分の吸収が酸分泌低下とともに低下するために発症します。

悪性貧血(ビタミンB12欠乏性貧血)

 内因子と呼ばれるビタミンB12吸収に必須な物質が、胃全摘によって欠乏して発症します。
 ビタミンB12の吸収障害が起こると巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)が起こることがあります。術後3年〜5年たってからみられることが多いです。

骨障害

 食事量が減少し、ビタミンDやカルシムの吸収障害が起こることがあります。
 とくに脂肪の吸収が悪くなるとビタミンDも吸収されにくくなり、ビタミンD不足から骨の代謝異常が起こります。このため、骨粗鬆症、骨軟化症が起こりやすくなります。

逆流性食道炎

 胸やけ、胸痛、消化液の逆流などの症状がみられます。
 胃切除による胃噴門部(いふんもんぶ)の逆流防止機構の障害です。胃液・胆汁・小腸液などの消化液が食道に何度も逆流することによって発症します。
 ときとして、治りにくいこともあります。

残胃がん

 胃を残す胃切除術が行われた後、残った胃(残胃)に再びガンが発生する病態のことです。
 切除断端、吻合部付近に発生することが多い傾向があります。
 発見された時には、すでに進行がんとなってしまっていることが多いので注意が必要です。


胃手術後の合併症の治療法は?

ダンピング症候群

早期ダンピング

食事療法 早期ダンピングでは、食事療法が有効になります。
 1日の食事回数を5回〜6回にして、1回の食事量は減量し、時間をかけてゆっくりと食べるようにします。食後の休憩も有効です。
 食事内容は高たんぱく、高脂肪、低炭水化物の食事にして、水分は控えめにします。冷たい飲食物は腸を刺激するので控えるようにします。
 食事療法によって、85%の患者さんは緩解します。
 食事療法と薬物療法で症状が改善しない場合、胃の再建手術が行われることもあります。

晩期ダンピング

 晩期ダンピングでは、低血糖による発作が現れた時には、飴などの糖分を摂取することで症状が軽減します。
 早期ダンピングと同様、食事療法も効果が期待できます。

輸入脚症候群・輸出脚症候群

 低脂肪、高たんぱくの高エネルギー食を心掛けます。栄養分を点滴で補給することもあります。
 消化液の貯留に対して減圧処理をすることで軽快することもありますが、難治性の場合には手術が必要になります。

吻合部潰瘍

 胃酸が原因の場合、制酸剤の投与で治癒に向かいます。
 血流障害などさまざまな因子によって起こる難治性潰瘍の場合、手術が必要になることもあります。

貧血

 それぞれの貧血の種類に応じた治療を行います。
 鉄欠乏性貧血では、鉄剤を服用したり、静脈注射したりします。
 巨赤芽球性貧血では、はじめの2ヶ月は週2回〜3回のビタミンB12剤を筋肉注射し、その後、1ヶ月〜3ヶ月に1回、筋肉注射していきます。

骨障害

 カルシウムを豊富に含む牛乳、チーズ、ヨーグルトなどを積極的に摂取するようにします。
 骨量検査を受けて、必要であればカルシウム剤やビタミンB12剤を使用します。

逆流性食道炎

 薬物療法が中心となります。制酸剤、アルロイドG、蛋白分解阻害薬(メシル酸カモスタット)の内服などが有効です。
 薬物療法で期待した効果が得られない高度な逆流性食道炎には、手術が行われることもあります。

残胃がん

 早期発見に成功すれば、胃切除を行わず、内視鏡的粘膜切除術や、他の内視鏡治療の選択が可能です。
 進行がんの場合、根治手術が必要になります。

胃手術後の合併症かなと思ったら?

定期駅な診察が必要

診察 手術後に異常な症状があることに気付いたら、手術を受けた病院で原因を探してもらい、治療を受けるようにしてください。
 保存的治療で緩解するものが多いですが、難治性の吻合部潰瘍や残胃がんでは、手術を含めた治療が必要になることがあります。
 胃切除術後は、定期的な検査や診察を受けるようにしましょう。そうすることで、さまざまな術後合併症を早期発見し、治療に繋げることができます。

医師と相談

 胃切除術後の合併症は、症状が発生するタイミングや特徴を詳しく医師に伝える必要があります。
 症状の原因を特定することで、改善策や対処法を発見することができます。

数年後に発症するものも

 骨障害や巨赤芽球性貧血は、手術後数年経過してから現れるので、手術を受けた医療機関に定期的に受診し、経過を見てもらうようにしてください。
 手術を受けた医療機関を受診するのが難しい場合、消化器外科の専門医のいる医療機関を受診するようにしましょう。


胃手術後の合併症の予防法は?

食事

規則正しく 胃手術後は、食事量は少なめにして、時間をかけて食べるようにします。
 また、食べてすぐに横にならない、寝る前には食べないように心掛けましょう。

規則正しい生活を

 食事量が減少するため便秘気味になったり、下痢を起こしやすくなってしまいますが、規則正しい生活を心掛けてください。

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