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胃肉腫


胃肉腫の概要は?

おもな症状

心窩部痛(しんかぶつう)
不快感
食欲不振
悪心
嘔吐
腫瘤触知(しゅりゅうしょくち)
リンパ節触知
下血

症状が似ている病気

胃がん
良性粘膜下腫瘍(りょうせいねんまくかしゅよう)
反応性リンパ細網細胞増生(はんのうせいりんぱさいもうさいぼうぞうせい)

起こりやすい合併症

局所的な出血
狭窄(きょうさく)
他臓器への浸潤や遠隔転移による腹膜炎
黄疸


胃肉腫ってどんな病気?

胃がんと胃肉腫

胃 胃の悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の中でも、胃粘膜から出た上皮性のものを胃がんと呼びます。胃粘膜以外の細胞から出た非上皮性のものを胃肉腫と呼びます。
 胃肉腫は胃の悪性腫瘍の約5%と言われており、比較的少ない病気といえます。
 胃肉腫のうち頻度が多いのは、悪性リンパ腫と間葉系腫瘍(かんようけいしゅよう)です。胃肉腫の約60%は悪性リンパ腫になります。

悪性リンパ腫

 一般的に悪性リンパ腫はリンパ組織ががん化したものを指しますが、普通のリンパ組織ではなく、胃に含まれるわずかなリンパ管内から発生した悪性リンパ腫のことをいいます。
 腫瘍型と表層拡大型に大別され、ホジキン型と非ホジキン型がありますが、胃の場合は非ホジキン型が多いとされています。
 現れ方は隆起型、潰瘍型、決潰型(けっかいがた)、表層拡大型、巨大皺襞型(きょだいしゅうへきがた)など多様です。男女比では1.2対1.0でやや男性に多く、年齢では40代〜60代に多い傾向があります。
 本来、悪性リンパ腫は血液の病気のため、血液内科などの専門医が治療を担当する医療機関が多くなります。

間葉系腫瘍

 間葉系腫瘍(GIMT)には、神経の特徴を持った神経系腫瘍と平滑筋の特徴を持った平滑筋系の腫瘍があります。
 平滑筋肉腫は平滑筋腫と鑑別するのが難しくなりますが、径3cm以上のものは平滑筋肉腫が多くなります。発育形式は胃内型、胃外型、胃内・胃外型、胃壁内型などがあります。中心に不正形、易出血性の潰瘍をともなうことが多く、表面の凹凸も良性のものに比べてはっきり現れます。
 神経の特徴も平滑筋の特徴も持っていない腫瘍はGISTと呼びます。
 GISTは多かれ少なかれ悪性腫瘍の特徴を持っていますが、悪性度は超低リスク、低リスク、中リスク、高リスクの4段階に分類され、良性か悪性のどちらかにハッキリと分類できるものではありません。

胃肉腫の原因は?

原因不明

原因 原因は今のところは不明です。
 GISTの約90%に細胞を増殖させる遺伝子(c-kit遺伝子)の機能をともなった突然変異が認められています。
 何らかの原因によってc-kit遺伝子が突然変異を起こし、細胞増殖が過剰に起こることが重要だと考えられています。
 ピロリ菌が原因で胃肉腫になるとの報告はありませんが、ピロリ菌の存在が胃肉腫を誘発するとされています。


胃肉腫の症状は?

胃の痛みや不快感

症状 自覚症状があったとしても「なんとなく胃の調子が悪い」程度なので、胃がん検診のときに無症状で発見されることが多いです。
 自覚症状から診断することが難しく、胃がんとの見分けもつきにくい病気です。
 気が付かないまま大きくなっていくと、胃の痛み、不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部膨満感などの症状が見られるようになります。
 出血して嘔吐や下血を起こしたために診察を受けて発見されることも少なくありません。
 まれなケースではありますが、腫瘍が大きくなて破裂したり、お腹の中(胃の外)に出血を起こすこともあります。
 悪化したときの5年生存率は10%〜30%です。


胃肉腫の診断は?

画像検査が有効

検査 上部消化管の造影検査と内視鏡検査、超音波内視鏡、腹部超音波検査、腹部CT検査が有用です。
 上部消化管の造営検査と内視鏡検査では、胃粘膜下腫瘍として診断されます。超音波内視鏡検査、腹部超音波検査、腹部CT検査で胃の外からの圧排(あっぱい)ではなく、胃の腫瘍であることを確認します。

悪性リンパ腫や間葉系腫瘍

 悪性リンパ腫は胃がんよりも診断が難しいこともありますが、繰り返し内視鏡検査を行い、組織の一部を取って顕微鏡で調べることで診断が付くことが多いです。
 間葉系腫瘍では手術で腫瘍を切除し、特殊な染色を行った顕微鏡検査を行うことで、最終的な診断を得ることができます。

胃肉腫の治療法は?

悪性リンパ腫の治療法

手術 悪性リンパ腫は抗がん剤による化学療法で治療することが多くなります。

間葉系腫瘍の治療法

 切除することで、診断と治療を同時に行います。

リンパ節転移の可能性

 間葉系腫瘍はリンパ節転移を起こすことはまれです。
 もしリンパ節転移を起こしていたら、かなり進行した腫瘍と考えられ、リンパ節を切除しても治療効果は不明です。
 そのため、胃局所切除術といって、リンパ節は切除せず、腫瘍の部分を丸ごと切除して胃は残すことが多いです。
 ただし、胃の入り口(噴門)、胃の出口(幽門)、その近くに腫瘍ができていた場合、噴門側胃切除術や幽門側胃切除術を行うこともあります。

再発・転移

 c-kit遺伝子を持った腫瘍が再発した場合、イマチニブという薬が腫瘍を抑え込むのに有効な場合が多いです。
 肝臓転移や腹膜転移が多い傾向があります。


胃肉腫かなと思ったら?

悪性リンパ腫なら

医者 悪性リンパ腫の診断を受けたら、血液内科の専門医の診察を受けるようにしてください。

胃粘膜下腫瘍

 がん検診などで胃粘膜下腫瘍として診断されることが多いです。
 胃粘膜下腫瘍には肉腫のほかにも、カルチノイドのような上皮性の腫瘍、胃所性膵(いしょせいすい)、炎症性腫瘤などの可能性もあります。胃所性膵は迷入膵(めいにゅうすい)とも呼ばれ、膵臓の組織が胃の壁の中にできるものです。
 1cm以下の小さなものは成長する速度が遅いことが多いため、経過観察として上部消化管内視鏡検査を繰り返し受けるようになることが多いです。
 腫瘍ができた場所などにもよりますが、胃粘膜下腫瘍で手術を考慮するのは2cmが目安となるので、2cm以上の大きさがあれば専門医の診察を受けるようにしてください。

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