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味覚の3つの経路 |
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味覚障害は、さまざまな原因によって引き起こされます。
味を感じる経路には、
1.味物質の味蕾への到達
2.味蕾での知覚
3.中枢への伝達
に分類されます。これらのどこで障害があっても、味覚障害が引き起こされます。 |
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研究者により異なる原因 |
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味覚障害の原因は、研究者によって考えがことなっています。味に関わる因子には、味覚以外にも、香り、舌触り、歯触り、温度、審美、食欲、加齢など、多様なものがあります。
特発性、薬剤性、亜鉛欠乏症、全身疾患、口腔疾患、心因性などが多いとされています。 |
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亜鉛欠乏症 |
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亜鉛は、体にとって必須のミネラル(微量元素)です。普通に食事をとっていれば、欠乏することはありません。しかし、薬剤、腎臓障害などの亜鉛代謝異常、食事量の減少によって、低亜鉛症になることがあります。
薬剤が原因の味覚障害では、味覚異常、味覚減退、苦味が増すなどの症状があらわれます。亜鉛と薬剤が、金属原子1個に対して、2個以上の配位子が結合した複合化合物のキレート化合物を形成し、亜鉛欠乏により味覚障害を起こすことがあります。薬剤による口の渇きによって苦味を感じることもあります。味覚障害を起こす原因が不明な場合も多くあります。
腎障害では、亜鉛の吸収が悪くなったり、尿毒素が味蕾に影響し、味覚障害を起こすことがあります。
味覚障害の原因となる薬剤 |
・リウマチ治療薬 |
・利尿薬 |
・降圧薬 |
・抗生剤 |
・抗甲状腺薬 |
・肝疾患治療薬 |
・血管拡張薬 |
・抗脂血症薬 |
・抗けいれん薬 |
・鎮静薬 |
・筋弛緩薬 |
・自律神経用剤 |
・非ステロイド性消炎鎮痛薬 |
・鎮吐薬 |
・抗潰瘍薬 |
・ホルモン剤 |
・頻尿治療薬 |
・ビタミン剤 |
・糖尿病治療薬 |
・痛風治療薬 |
・骨粗鬆症治療薬 |
・免疫抑制薬 |
・抗結核薬 |
・抗真菌薬 |
・冠血管拡張薬 |
・抗パーキンソン薬 |
・抗アレルギー薬 |
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神経障害 |
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味覚に関わる神経は、舌の前方3分の2あたりにある鼓索神経(顔面神経)、舌の後方3分の1あたりにある舌咽神経(ぜついんしんけい)、軟口蓋(なんこうがい)の大錘体神経(顔面神経)などの末梢神経です。これらの末梢神経に障害があれば、味覚障害を起こすことがあります。
脳腫瘍、脳卒中などによる中枢神経障害でも、味覚障害を起こすことがあります。 |
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風味障害 |
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感冒(風邪)などにともなう嗅覚障害は、味覚障害と密接な関係があります。併発すると、食物の香りも味もわからない風味障害を起こします。
高窒素血症(こうちっそけっしょう)の場合は、アンモニア臭を起こすことから、風味障害を起こすことがあります。 |
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味蕾への障害 |
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口内炎、口腔カンジダ症などは、口腔粘膜の働きに影響を及ぼすため、味覚障害の原因となります。(参考:膣カンジダ症)
腫瘍の治療のため、口腔に放射線照射を行うと、高度の味覚障害が起きます。
口が乾燥し、口腔乾燥状態になると、苦味を感じます。口が乾燥する病気に、シェーグレン症候群があります。 |
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加齢・高齢 |
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唾液には味の分子を溶かす作用があるので、唾液分泌の減少により、味に変化があらわれます。高齢になると、多くの場合は唾液の分泌が減少します。
また、味蕾は、加齢とともに減少していきます。
偏食や、食事量の減少によって、亜鉛摂取量が減少すると、味覚障害の原因となります。
内臓機能が衰え、亜鉛を消化吸収する機能が落ちれば、亜鉛摂取量も減少します。 |
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その他さまざまな原因 |
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その他、原因がわからないものもあります。
鉄欠乏性貧血による舌炎では、鉄剤の服用が効果的です。
その他にも、うつ病などによる心因性の味覚障害もあります。 |