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胆石症


胆石症の概要は?
おもな症状
  腹痛(右季肋部痛を中心とした疼痛)
一時的な発熱、胆嚢炎を合併している場合は38℃を超える発熱が持続
黄疸(胆石で総胆管が閉塞している場合)
症状が似ている病気
  胃・十二指腸潰瘍
膵炎(すいえん)
起こりやすい合併症
  胆嚢炎(たんのうえん)
胆管炎(たんかんえん)
胆嚢穿孔(たんのうせんこう)
胆嚢水腫(たんのうすいしゅ)

胆石症ってどんな病気?
肝臓で胆汁が作られる
  イメージ画像 たんぱく質や脂質の消化、吸収を助ける胆汁は、肝臓で作られます。作られた胆汁は、肝内胆管や胆管をへて、胆嚢管(たんのうかん)から胆嚢に流れ込み、貯蔵されます。
 胆汁の成分は、胆汁酸、コレステロール、リン脂質、ビリルビン、水などからなります。
胆嚢は胆汁を濃縮して送り出す
   胆嚢は、洋ナシのような形をした袋で、胆汁の水分を吸収します。胆汁を、およそ7倍〜10倍に濃縮する臓器です。
 胃から十二指腸に食べ物が送られてくると、胆嚢が収縮して、濃縮した胆汁を胆管を通して、十二指腸へ送り出します。
肝内結石、胆管結石、胆嚢結石
   この胆汁の通り道(胆道)にできる結石を相称して、「胆石」と呼びます。
 肝内胆管の結石を肝内結石(かんないけっせき)、胆管の結石を胆管結石(たんかんけっせき)、胆嚢の結石を胆嚢結石(たんのうけっせき)と呼びます。
増加傾向にあります
   日本での胆石症は、食生活の欧米化や、高齢化によって増加しています。成人人口の約10%に達しています。
 そのうち、胆嚢結石が約80%でもっとも多く、胆管結石が約20%、肝内結石は1%〜2%の割合になっています。

胆石症の原因は?
大きく3つに分けられます
   胆石は、構成成分によって、コレステロール石、ビリルビンカルシウム石、黒色石に大きく分けられます。
  コレステロール石
     本来は、コレステロールは水に溶けない性質を持っています。しかし、胆汁の中の胆汁酸によってミセル化し、水に溶けるように変化します。
 コレステロールが増加したり、胆汁酸が減少すると、コレステロールが胆汁内で結晶化してしまい、コレステロール石ができてしまいます。
 肥満、年齢、性別(特に女性)、食生活(高脂肪食)、遺伝的素因(胆石の家系)、妊娠、経口避妊薬が危険因子とされています。
  ビリルビンカルシウム石
     細菌が持っている酵素によって、胆汁中のビリルビンが遊離し、カルシウムと結合して石ができると考えられています。
 高齢者では、十二指腸から細菌が胆管内へ侵入しやすくなるため、胆管内にビリルビンカルシウム石が多くみられます。
  黒色石
     黒色石のできる原因は詳しくはわかっていません。現在のところ、ビリルビン分子の複数個が互いに結合してできるビリルビンの重合体とする説が有力です。
 高齢、溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)、肝硬変、胃切除術後、心臓弁置換術後などが、危険因子とされています。

胆石症の症状は?
激しい腹痛
  イメージ画像 おもな症状は、腹痛、発熱、黄疸(おうだん)などです。
 もっとも特徴的な症状は、胆石疝痛発作(たんせきせんつうほっさ)と呼ばれる、激しい右上腹部痛です。
 天ぷら、ウナギ、焼肉、中華料理などの、脂肪分の多い食事をたくさん食べた数時間後に出現することが多いです。痛みのために体をエビのように曲げて我慢したり、あまりの痛みに転げまわったりすることもあります。
黄色い液体の嘔吐
   痛みは、右肩や、背中にも響くのが特徴で、時には胸に痛みを感じることもあります。
 また、冷や汗が出たり、寒気、吐き気がして、黄色い液体を吐いたりすることも多くあります。
発作がなくて気が付かないことも
   疝痛発作のような急激な症状がなく、食後の上腹部痛、吐き気、食欲不振といった症状の場合は、単に「胃の調子が良くない」とか、「胃痙攣」などと自己診断していることも多くあります。
黄疸が出たら要注意
   胆管にできた結石が詰まってしまうと、胆汁が十二指腸に流れなくなり、逆流した胆汁が血液中にあふれ、体中が黄色になってしまう黄疸があらわれます。
 高熱と、上腹部の激しい痛みをともない、細菌の感染が加わって体中に毒素が回ってしまうと、急激に症状が進行してしまいます。意識障害、ショック状態(血圧の低下、呼吸や脈が速くなる)になり、死に至ることもあるので、注意が必要です。

胆石症の診断は?
問診と血液検査
  イメージ画像 診断にはまず、詳しい症状の聞き取りを行う問診、聴診、触診、必要に応じて血液検査を行います。血液検査では、肝臓や胆道の酵素上昇や、胆道感染、胆道ガン(腫瘍マーカー)を検査します。
さまざまな検査方法
   胆石症の検査・診断には、さまざまな検査方法があります。それぞれ一長一短がありますが、病院の施設や、医師がもっとも適切だと考える検査方法が選択されます。
 区別すべき病気としては、上腹部痛を起こす胃潰瘍十二指腸潰瘍、胃腸炎、膵炎、食道ヘルニア、逆流性食道炎腎臓結石虫垂炎(ちゅうすいえん)、腸閉塞腹膜炎、虚血性心疾患(狭心症)、悪性腫瘍として胆嚢ガン、胆管ガンなどがあります。
  腹部超音波検査
     胆石症が疑われる場合は、腹部超音波検査を最初に行います。
 腹部にゼリー状の液体を塗り、超音波を当てて、胆石があるかどうか、胆石の大きさ、胆嚢の壁の状態などを調べます。胆嚢結石の98%は、この検査で診断できます。
 食事の影響を受けるため、絶食してからの検査になります。
  腹部CT検査
     腹部CT検査では、腹部内部の断面図の画像を撮影します。
 胆石の大きさ、成分、位置、ガンの有無、ガンが周囲の臓器に広がっていないかなどを調べることができます。
  静脈性胆嚢造影検査
     造影剤を注射したあとで、胆嚢を撮影して、胆嚢の状態(収縮能)をみる検査です。
 胆嚢の石を溶かす治療を決定する時に必要となる検査です。
  内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)
     内視鏡的逆行性膵胆管造影は、口から入れた内視鏡を十二指腸まで送り込み、胆管の出口から造影剤を胆管に流して撮影する検査です。
 胆管の状態を詳しく知ることができると同時に、石を取り出す治療としても使われます。
 胃カメラを飲む苦痛と、検査後に膵炎を起こすことがあります。
  経皮経肝胆道造影(PTC)
     皮膚と肝臓に細長い針を刺して、胆嚢や肝臓の中の胆管を造影剤で映し出す検査です。
  磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)
     磁気共鳴膵胆管造影は、造影剤が不要で、リスクの高い場合でも胆管や膵管を映し出すことができる検査です。
 苦痛がなく行えますが、この設備を整えている医療機関は限られています。
  超音波内視鏡検査(EUS)
     超音波を発する装置を付けた内視鏡を、口から十二指腸まで送り込み、そこから超音波を当てて胆嚢や胆管を調べる検査です。
 腸管ガスなどに邪魔されることなく、精度の高い鮮明な画像を得ることができます。
 しかし、胃カメラを飲む苦痛がともないます。

腫瘍マーカーとは?
腫瘍から出る特異な物質
  イメージ画像 腫瘍マーカーとは通常、腫瘍ができるとその表面に特異的に発現してくる物質で、腫瘍の大きさ、広がりに応じて、血液中にその物質がたくさん流入してきます。
 腫瘍マーカーは、腫瘍の発生している臓器と強い特異性があるため、血液検査で高値を示すようなら、その臓器に腫瘍があることが推測されます。
さまざまな腫瘍マーカー
   婦人科の腫瘍で特に特異性があるものに、CA125があります。この腫瘍マーカーは卵巣腫瘍、とくに卵巣ガンの場合に高値を示します。ただし他の腫瘍マーカーでも同様ですが、子宮内膜症などの他の病気でも高値を示すことがあるため、CA125の検査値が上がったからといって、すぐに卵巣ガンだと診断することはできません。
 CA19-9は、婦人科以外の腫瘍でも高値を示すことが知られていますが、婦人科腫瘍では卵巣腫瘍、とくに成熟嚢胞性奇形腫で高値を示すことがあります。
 卵巣ガンは、いわゆる腺ガンであることが多いのですが、扁平上皮ガンが多い子宮頸ガンでは、SCCという腫瘍マーカーがよく高値になります。
 胎盤から分泌されるhCGという腫瘍マーカーは、胞状奇胎(ほうじょうきたい)、絨毛ガンなどで高値を示します。
腫瘍マーカーで確定診断にはなりません
   これらの腫瘍マーカーは、一般的に病気の病状に従って増減します。しかし診断上の意義は、画像診断などを含めた検査の一部に過ぎないことを頭に入れておくことが大切です。
胆石症の治療法は?
胆嚢結石の場合
   治療法法は、症状の有無と、胆嚢の機能の有無によって決められます。
  症状がある胆石の場合(有症状胆石)
    胆嚢温存療法
       胆嚢の機能が保たれ、大きさが1cm以下で、石灰化がない結石は、経口胆石溶解療法が標準治療となります。胆石症全体の、約10%にあたります。50%〜70%の患者さんに溶解効果があります。
 ウルソデオキシコール酸を6ヶ月間服用し、効果のみられる場合は治療を継続します。溶解が困難でも、発作や急性胆嚢炎の発症が抑制できるため、高齢者、手術の危険性が高い場合、手術を希望しない場合、長期の服用が有効といわれています。胆石の再発率は約25%です。
 2cm以下の単発のコレステロール石で、胆嚢収縮能の良好な胆石は、体外衝撃波胆石破砕術(たいがいしょうげきはたんせきはさいじゅつ)と、経口胆石溶解療法の併用で66%〜82%の治療効果が得られます。体外衝撃波胆石破砕術は、高周波数の音波で胆石を砕く方法ですが、この設備を整えている医療機関は限られています。治療後の再発率は5年で約30%です。
    胆嚢摘出療法
      イメージ画像 胆嚢の機能がない場合、溶解療法が無効な場合、長期の服薬に耐えられない場合、胆嚢を切り取る手術を行います。現在では腹腔鏡下胆嚢摘出術(ふくくうきょうかたんのうてきしゅつじゅつ)が標準治療ですが、これが困難な場合は開腹胆嚢摘出術を行います。
 腹腔鏡下胆嚢摘出術は、腹部に小さな穴を4ヶ所あけて、腹腔鏡と呼ばれるカメラで腹部の内部を見ながら、細長い鉗子や電気メスを使って胆嚢を取り除く手術です。全身麻酔で行いますが、手術後の痛みもほとんどなく、入院期間も短く、退院後はすぐに日常生活に戻ることが可能です。
 手術の合併症に関しては、胆管損傷が0.96%で開腹術よりも高率です。血管損傷、腸管損傷などもあり、死亡率は0.01%です。しかし、経験を積んだ病院では、ほとんど合併症が起こりません。
  症状がない胆石の場合(無症状胆石)
     胆石はあるのに、典型的な胆石発作を起こしたことがないことを無症状胆石と呼びます。人間ドッグ、集団検診で発見される胆石の50%〜70%は無症状胆石で、少数個の大きな黒色石が多いです。
 無症状胆石の有症状化率は年間平均1%〜2%程度で、無症状胆石から胆嚢ガンが発生する確率も1.1%程度です。
 無症状胆石は年に1回〜2回の腹部超音波検査で経過観察を行います。
 しかし、無症状でも胆嚢に石が充満していたり、胆嚢壁が肥厚していたり、胆嚢ガンをともないやすい先天性の合流異常がある場合は、手術を行います。

胆石症の治療法は?
胆管結石の場合
   胆管結石の治療法は、結石を取り除くことが原則となります。内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)、内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)などの、内視鏡的治療が標準的です。
  内視鏡的治療
    イメージ画像 高度な技術と経験のある施設では、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)による結石除去の成功率は約90%です。しかし合併症として、出血、急性膵炎胆嚢炎、穿孔、などの前期合併症が5%〜15%に起こり、まれですが手技にともなう死亡例もあります。
 内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)は、胆管の出口の乳頭括約筋を切開して石を取り出すため、胆汁の流れを調整する乳頭機能が失われる欠点があります。
 内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)は、バルーン(風船)で乳頭部を広げるので、乳頭機能が温存されるという利点があり、肝硬変などで血が止まにくい人、胃の手術後などでESTが困難な場合でも結石を取り除くことが可能です。しかし、大きな石を取り除くには、ESTよりも熟練と回数を必要とし、また乳頭の機能低下も報告されています。
 石を取り除ける割合や、合併症では、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)の方が優れているとの報告がありますが、長期の経過に関しては結論が出ていません。
  胆管切石術
     内視鏡治療では除去できない結石や、乳頭機能の温存が必要な場合には、手術療法を行います。胆管を切開して、石を取り出し、胆管を縫い合わせる手術を行います。胆管切石術といい、日本では、胆管結石の半数以上が開腹手術を受けています。
 胆管結石手術の結石再発率は1.6%で、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)の再発率は10%〜20%と比較すると、明らかに低率なので、乳頭機能の温存が重要です。
 乳頭機能の温存と、手術の負担を減らす腹腔鏡下胆管切開術が理想的な方法ですが、技術的に難しく、まだ標準手術にはなっていません。

胆石症かなと思ったら?
黄疸、発熱は要注意
  イメージ画像 典型的な疝痛発作がでた場合は、内科か、外科を受診しましょう。慢性的な症状がある場合も、一度は受診をして適切な治療方針を相談するのが良いでしょう。
 黄疸、発熱がある場合は、すぐに受診しなければいけません。
生活習慣に気をつけよう
   生活上の注意点としては、暴飲暴食、高脂肪食、早食い、過度の香辛料を控えた規則正しい食生活を送り、過労、精神的なストレスを避け、適度な運動を続けるなどの生活習慣の改善が大切です。
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