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禁酒・食事療法・薬物療法 |
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治療の基本は、禁酒と食事療法、そして薬物療法です。
症状が落ち着いている時でも、膵液分泌刺激の少ない低脂肪食を心がけるようにします。
腹痛症状の強い時には、膵臓を守るために食事を止め、点滴、または高カロリー輸液で栄養を補給し、トリプシンという膵酵素(すいこうそ)の阻害薬、鎮痛薬などによって急性炎症を防ぎます。
これらの治療を行っても腹痛症状が長引いたり、安定しない場合には、膵石に対する治療が検討されます。 |
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膵石に対する治療 |
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治療の対象となる膵石は、主膵管内にあり、膵液の流出障害になっていると考えられる場合です。
主膵管というのは、膵液を十二指腸に運ぶ導管(膵管)のうち、膵臓の尾部に始まり、十二指腸主乳頭に至るもっとも太い膵管のことです。 |
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膵管が太くなっている |
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普通なら、膵液の流出障害があると、その部位より上流の主膵管が太くなります。
たとえば、水道に繋いだホースから水を流している時、出口近くを指を使って狭めると、ホースの蛇口付近の水圧が上がってホース全体が膨らみます。これと同じ現象が、膵管でも起こっています。
この状態では、多くの場合、腹痛症状をともないます。 |
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3つの治療法 |
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膵石症の治療は、入院した上で、急性炎症が治まってから行います。
現在行われている膵石症の治療法は、3つあります。 |
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ESWL・体外衝撃波結石破砕療法 |
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WSWLは、体外から結石に対して衝撃波を当てて細かく砕く治療法です。臨床的には尿路結石の治療に導入され、ついで胆石の治療に応用されました。現在では、膵石治療の第一選択として位置づけられている病院が多くなっています。
実際の治療法は、衝撃波発生装置と一体化した治療テーブル上に腹ばいになり、エックス線透視下・超音波映像下で膵石に照準を合わせて衝撃波を当てます。治療時間は約1時間、十分な破砕効果を得るために、適宜鎮痛薬を使用します。
治療当日は食事を摂れませんが、腹痛がなければ翌日から食事は可能です。治療にともなう一時的な腹痛の他には、重い合併症は少ないとされています。
膵石症の患者さんの場合、膵石がある部位よりも下流の十二指腸の主膵管で炎症によって狭くなっていることが多いため、ESWL単独での治療効果は必ずしも十分でないことがあります。この場合、内視鏡治療を併用します。 |
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内視鏡治療 |
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内視鏡治療は、ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)に引き続いて行われます。押し出すとバスケット状に広がるワイヤーをチューブ内に格納したバスケット把持鉗子を、造影カテーテルの代わりに十二指腸乳頭から膵管内に挿入し、膵石をバスケットの中に入れて十二指腸内に引っ張り出す治療法です。
小さな水石の場合、1回〜2回の内視鏡治療で排石できるため、治療効率の優れた治療法です。しかし内視鏡単独で治療できる膵石は、処置器具が到達できる範囲内にあり、保持できる大きさに限られます。このため、ESWLと組み合わせて膵石を細かい破砕片にすることで治療の相乗効果が得られます。
膵管が狭くなっている部位をバルーンカテーテルで膨らませる内視鏡的バルーン拡張術、十二指腸乳頭の膵管開口部を広げるために内視鏡的に切開する膵管口切開術など、膵石の排石を補助する目的で行われます。 |
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外科手術 |
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内科的治療によっても痛みがコントロールできない場合、膵炎の波及による合併症を併発した難治性の場合、膵臓ガンの合併が疑われる場合、外科手術が検討されます。合併症には胆管狭窄、消化管狭窄、膵仮性嚢胞、仮性動脈瘤、胸水、腹水などがあります。
痛みを取り除くためには、膵管と小腸を繋ぎ合わせる膵管減圧術、神経切除術、膵切除術が行われます。 |