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膵石症


膵石症ってどんな病気?
慢性膵炎と合併
  イメージ画像 膵石は膵管内に形成された結石のことです。慢性膵炎と診断された患者さんの約40%に膵石がみられます。
 慢性膵炎の進行にともなって合併する頻度が高くなります。
膵炎発症の5年後
   膵石症の典型的な患者さんでは、初めての膵炎発作から約5年後に膵石が現れ始めます。
 膵石の外観は白色調で硬く、表面は不整で、大きさ5mm以下の小結石から、大きさ10mmを超えるような大結石までさまざまです。
腹痛・発熱・炎症
   膵管内に形成された膵石は、膵液の流出障害を引き起こします。そのため、腹痛発作や、急性炎症の原因になると考えられています。
 膵石が原因で腹痛、発熱、炎症の症状が引き起こされた場合、膵石症と呼びます。
膵石症に似た病気
   膵石と紛らわしい病気に、膵臓の血管壁や、膵腫瘍などの膵病変内に生じたカルシウムで出来た石灰の沈着があります。
 石灰の沈着は膵管内膵石と違って症状には直接結びつかないことが多く、厳密には膵石と区別されています。

膵石症の原因は?
主成分は炭酸カルシウム
  イメージ画像 膵石の主成分は炭酸カルシウムです。
 膵石が形成される仕組み・機序は詳しくわかっていませんが、膵液の性状の変化、膵液のうっ滞などが原因と考えられています。膵液中に蛋白質が結晶として出てくる蛋白栓に、カルシウムが沈着して作られていると考えられます。
慢性膵炎と同様
   膵石症の原因は、慢性膵炎の原因とほとんど同じです。
 アルコールの多飲、高カルシウム血症(甲状腺機能亢進症など)、膵管奇形(すいかんきけい)、低栄養などがあります。このほかにも原因のはっきりしない特発性膵炎(とくはつせいすいえん)によっても、膵石が作られます。
原因による膵石の特徴
   膵石の原因の違いによって、膵石の形態、分布にも、特徴があることがわかっています。
 アルコール性の膵石の場合、膵臓全体に小結石が分布することが一般的です。原因不明の特発性膵炎の場合、比較的大きな膵石が限られた部位に分布することが一般的です。

膵石症の症状は?
腹痛と背部痛
  イメージ画像 慢性膵炎の痛みは、膵管、膵組織内圧の上昇、疼痛関連物質の産生、神経の変性、膵仮性嚢胞の形成、胆管狭窄など、さまざまな要因が組み合わさって起きると考えられています。
 膵石症の場合、膵石が膵管内にはまり込むことによって膵液の流出障害が起こり、これが痛みのおもな原因と考えられています。
 膵石症の典型的な患者さんでは、飲酒後・食事後の腹痛、背部痛としてあらわれます。
長引く腹痛
   膵石症が原因の腹痛は、比較的起伏に乏しい持続性のある痛みであることが多いとされています。
 痛みは前屈みになる前屈位(ぜんくつい)で軽くなることが多いため、腹痛増悪時には独特の前屈み姿勢をとる傾向があります。
 ほかにも、吐き気、嘔吐、食欲不振、体重減少などの症状が見られます。
進行すると栄養障害
   慢性膵炎では、膵炎発作を繰り返すことによって膵外分泌機能、膵内分泌機能の障害が進行していきます。
 慢性膵炎が進行して、膵外分泌機能、膵内分泌機能が損なわれてくると、腹痛症状は軽くなります。腹痛症状に代わるようにして、耐糖能障害(たいとうのうしょうがい)・消化吸収障害にともなう栄養障害が現れるようになります。
膵炎との関係
   膵石症は慢性膵炎の終末像にみられる病態として考えられてきました。しかし膵石が急性炎症の原因と考えられる場合もあり、膵石があらわれたからといって、必ずしも腹痛がおさまる兆候とはいえないところがあります。

膵石症の診断は?
まずはエックス線検査
  イメージ画像 膵石の多くは石灰化を伴っているため、腹部単純エックス線検査でも診断することが可能です。
 ただし、膵臓との位置関係を正確に把握するためには、超音波検査、CT検査を行う必要があります。
超音波検査とCT検査
   超音波検査は外来でも簡単に受けることができ、体への負担が少なく、リアルタイムに画像が得られる特徴があります。
 しかし、検査する医師・検査技師の技量、検査を受ける患者さんが肥満傾向にある場合、消化管ガスの影響を受けやすいなど、必ずしも膵臓全体が描き出せるとは限りません。
 CT検査はエックス線被曝の問題がありますが、微小な石灰化であっても鋭敏に描き出すことが可能で、患者さんの体格、消化管ガスの影響に左右されないという特徴があります。
ERCP・内視鏡的逆行性膵胆管造影
   膵石のある膵管の情報を得る精密検査として、ERCPと呼ばれる内視鏡的逆行性膵胆管造影(ないしきょうてきぎゃっこうせいすいたんかんぞうえい)が行われます。
 ERCPは内視鏡を用いて膵管を造影する検査です。十二指腸の乳頭から造影カテーテルを使って直接膵管内に造影剤を注入し、膵管像をエックス線撮影する検査です。
 膵石のある部位には造影剤が入り込まないため、膵石は造影剤の欠損像として描き出されます。
 ERCPは、膵管狭窄の有無、膵液うっ滞の有無を判定するために、有効な検査法です。
MRCP・MR胆管膵管造影
   最近では、MRI装置を使って膵管内の膵液成分を画像化することにより、膵管像を描き出すMRCPと呼ばれるMR胆管膵管造影検査が広く行われています。
 内視鏡の操作を必要とせず、エックス線被曝もないため、体への負担が少なく、膵管の全体像を把握するのに有効な検査法です。
 ただし、解像度の点では、直接造影法であるERCPに比べると見劣りしてしまいます。
膵石症の治療法は?
禁酒・食事療法・薬物療法
  イメージ画像 治療の基本は、禁酒と食事療法、そして薬物療法です。
 症状が落ち着いている時でも、膵液分泌刺激の少ない低脂肪食を心がけるようにします。
 腹痛症状の強い時には、膵臓を守るために食事を止め、点滴、または高カロリー輸液で栄養を補給し、トリプシンという膵酵素(すいこうそ)の阻害薬、鎮痛薬などによって急性炎症を防ぎます。
 これらの治療を行っても腹痛症状が長引いたり、安定しない場合には、膵石に対する治療が検討されます。
膵石に対する治療
   治療の対象となる膵石は、主膵管内にあり、膵液の流出障害になっていると考えられる場合です。
 主膵管というのは、膵液を十二指腸に運ぶ導管(膵管)のうち、膵臓の尾部に始まり、十二指腸主乳頭に至るもっとも太い膵管のことです。
膵管が太くなっている
   普通なら、膵液の流出障害があると、その部位より上流の主膵管が太くなります。
 たとえば、水道に繋いだホースから水を流している時、出口近くを指を使って狭めると、ホースの蛇口付近の水圧が上がってホース全体が膨らみます。これと同じ現象が、膵管でも起こっています。
 この状態では、多くの場合、腹痛症状をともないます。
3つの治療法
   膵石症の治療は、入院した上で、急性炎症が治まってから行います。
 現在行われている膵石症の治療法は、3つあります。
  ESWL・体外衝撃波結石破砕療法
     WSWLは、体外から結石に対して衝撃波を当てて細かく砕く治療法です。臨床的には尿路結石の治療に導入され、ついで胆石の治療に応用されました。現在では、膵石治療の第一選択として位置づけられている病院が多くなっています。
 実際の治療法は、衝撃波発生装置と一体化した治療テーブル上に腹ばいになり、エックス線透視下・超音波映像下で膵石に照準を合わせて衝撃波を当てます。治療時間は約1時間、十分な破砕効果を得るために、適宜鎮痛薬を使用します。
 治療当日は食事を摂れませんが、腹痛がなければ翌日から食事は可能です。治療にともなう一時的な腹痛の他には、重い合併症は少ないとされています。
 膵石症の患者さんの場合、膵石がある部位よりも下流の十二指腸の主膵管で炎症によって狭くなっていることが多いため、ESWL単独での治療効果は必ずしも十分でないことがあります。この場合、内視鏡治療を併用します。
  内視鏡治療
     内視鏡治療は、ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)に引き続いて行われます。押し出すとバスケット状に広がるワイヤーをチューブ内に格納したバスケット把持鉗子を、造影カテーテルの代わりに十二指腸乳頭から膵管内に挿入し、膵石をバスケットの中に入れて十二指腸内に引っ張り出す治療法です。
 小さな水石の場合、1回〜2回の内視鏡治療で排石できるため、治療効率の優れた治療法です。しかし内視鏡単独で治療できる膵石は、処置器具が到達できる範囲内にあり、保持できる大きさに限られます。このため、ESWLと組み合わせて膵石を細かい破砕片にすることで治療の相乗効果が得られます。
 膵管が狭くなっている部位をバルーンカテーテルで膨らませる内視鏡的バルーン拡張術、十二指腸乳頭の膵管開口部を広げるために内視鏡的に切開する膵管口切開術など、膵石の排石を補助する目的で行われます。
  外科手術
     内科的治療によっても痛みがコントロールできない場合、膵炎の波及による合併症を併発した難治性の場合、膵臓ガンの合併が疑われる場合、外科手術が検討されます。合併症には胆管狭窄、消化管狭窄、膵仮性嚢胞、仮性動脈瘤、胸水、腹水などがあります。
 痛みを取り除くためには、膵管と小腸を繋ぎ合わせる膵管減圧術、神経切除術、膵切除術が行われます。

膵石症かなと思ったら?
禁酒・食事療法・薬物療法
  イメージ画像 膵石のある患者さんは、まず禁酒を徹底し、食事療法、薬物療法を行います。
 多くの場合、これらの治療法で腹痛症状は改善されます。もし症状が長引いたり、再発を繰り返す場合には、膵石治療が検討されます。
医師と治療法の相談を
   膵石治療にはさまざまな選択肢があります。まずは膵臓専門医のいる医療施設で、相談することが良いでしょう。
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