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膵ガン・膵臓ガン


膵ガン・膵臓ガンの概要は?
おもな症状
  上腹部の痛み
不快感
黄疸(おうだん)
食欲不振
体重減少
糖尿病の悪化
症状が似ている病気
  慢性膵炎(まんせいすいえん)など上腹部痛のある疾患
閉塞性黄疸を起こす胆道疾患
体重の減少をともなう内分泌疾患・代謝性疾患
糖尿病の悪化時
起こりやすい合併症
  閉塞性黄疸
膵嚢胞(すいのうほう)
膵炎
糖尿病

膵ガン・膵臓ガンってどんな病気?
予後不良のガン
  イメージ画像 膵臓に発生した悪性腫瘍です。膵ガンは、消化器ガンの中でもっとも予後不良のガンです。
 日本人における死因としては、男性では第5位、女性では第6位になります。50歳以上の男性に多く、60歳代がピークになります。男女比率は、1.5:1の割合です。膵ガンでの死亡率は年々増加傾向にあります。
膵臓の組織
   膵臓の組織には、アミラーゼ、トリプシン、リパーゼといった消化酵素を含む膵液を分泌する外分泌細胞と、糖尿病と関連したインスリンなどのホルモンを産生する内分泌細胞から成り立っています。その他にも、外分泌細胞から産生された膵液を流す膵管(導管)を構成している上皮細胞(じょうひさいぼう)が含まれています。
 通常発見される膵ガンの多くは、膵管上皮細胞がガン化したものです。
膵臓の場所
   膵臓(すいぞう)は胃の裏側(背中側)に位置し、十二指腸とくっついています。脾臓(ひぞう)まで横に細長くなっている後腹膜(こうふくまく)の臓器です。長さは約15cm、幅は3cm〜5cm、厚さは約2cmしかありません。
 膵臓の周りには、腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)、上腸間膜動(じょうちょうかんまくどう)、静脈などの太い血管、腹腔神経叢(ふくくうしんけいそう)、上腸間膜動脈神経叢(じょうみゃくかんまくどうみゃくしんけいそう)などが近接しているため、膵臓にガンが発生し大きくなってくると周囲の血管、神経などに浸潤しやすいという特徴があります。
 胃や大腸といった消化管臓器とは異なり、直接内視鏡で膵臓を観察できないことが、早期発見を難しくしています。
 ちょうど三等分され、十二指腸側にあたる右側を頭部、脾臓側にあたる左側を尾部、中央を体部と呼びます。
早期発見が困難な上、悪性度が高い
   予後不良の原因としては、後腹膜臓器であるために早期発見が困難なことがあります。
 また、極めて悪性度が高く、たとえば2cm以下の小さなガンであっても、すぐに周囲の血管・胆管・神経への浸潤や、近くのリンパ節への転移、肝臓などへの遠隔転移を伴うことが多いからです。
膵管から発生
   膵ガンは、十二指腸への膵液の通り道である膵管(すいかん)から発生したガンが90%以上を占めます。ランゲルハンス島(膵島)から発生したガンはまれです。
 3分の2以上は、膵頭部に発生します。

膵ガン・膵臓ガンの原因は?
予後不良のガン
  イメージ画像 直接の原因は、まだ明らかになっていません。
 喫煙慢性膵炎(まんせいすいえん)、糖尿病との関係が報告されています。最近では膵嚢胞(すいのうほう)の存在が、膵ガンの発見と関連していると報告されています。家族に膵ガンの人がいる場合も、危険因子として指摘されていますが、明確な因果関係はわかっていません。

膵ガン・膵臓ガンの症状は?
特徴的な症状
  イメージ画像 膵ガン全般に共通することは、症状が現れにくく、早期では無症状のことが多いということです。症状があってもみぞおち付近の不快感など、腹部不定愁訴(ふくぶふていしゅうそ)程度です。
 食欲不振、体重減少、腹痛、とくに上腹部痛・腰背部痛などが現れます。他にも、膵頭部ガンでは、閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)、灰白色便(無胆汁性)が特徴的な症状です。
閉塞性黄疸
   肝臓で作られた胆汁は、胆管を通って十二指腸へと排出されます。胆管は膵頭部の中を走行するため、膵頭部にガンができると胆管が圧迫したり閉塞したりするため、胆汁の通過障害を起こし、閉塞性黄疸が現れます。
糖尿病の悪化など
   膵管も胆管と同様に閉塞して二次性膵炎を起こし、耐糖能異常、すなわち糖尿病の悪化がみられることがあります。
 さらに進行すると、十二指腸や小腸に浸潤し、狭窄・閉塞を起こし通過障害が起こります。
膵体部や尾部のガン
   膵体部や尾部に発生したガンは、症状があまり現れません。腹痛が現れるまでにはかなり進行していることが少なくありません。

膵ガン・膵臓ガンの診断は?
早期発見が難しい
  イメージ画像 膵ガンは早期診断が非常に困難な病気です。
 血液検査では、閉塞性黄疸にともなう肝機能異常、アミラーゼ値の異常、血糖異常が認められることが多くあります。
腫瘍マーカー
   腫瘍マーカーとしては、CA19-9、DUPAN2、SPAN1、CEAなどが異常な高値を示します。
 しかし、ある程度の腫瘍サイズになるまでは生産量が少ないため、それほど高値を示さないので、やはり早期診断にはあまり役立ちません。
さまざまな検査
   スクリーニング検査(ふるい分け)としては、腹部超音波エコー、CT、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)、内視鏡的超音波(EUS)、磁気共鳴画像(MRI、MRCP)、ポジトロン放射断層撮影(PET)などがあります。
 とくに閉塞性黄疸がある場合は、黄疸を減らす治療のために経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD)、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)を行うことによって、診断も可能です。
区別するべき病気
   区別すべき病気としては、粘液産生膵腫瘍(ねんえきさんせいすいしゅよう)、黄疸の出る病気として肝炎・胆石症胆管炎・胆管腫瘍・十二指腸乳頭部ガン・腫瘤形成性慢性膵炎などがあります。

腫瘍マーカーとは?
腫瘍から出る特異な物質
  イメージ画像 腫瘍マーカーとは通常、腫瘍ができるとその表面に特異的に発現してくる物質で、腫瘍の大きさ、広がりに応じて、血液中にその物質がたくさん流入してきます。
 腫瘍マーカーは、腫瘍の発生している臓器と強い特異性があるため、血液検査で高値を示すようなら、その臓器に腫瘍があることが推測されます。
さまざまな腫瘍マーカー
   婦人科の腫瘍で特に特異性があるものに、CA125があります。この腫瘍マーカーは卵巣腫瘍、とくに卵巣ガンの場合に高値を示します。ただし他の腫瘍マーカーでも同様ですが、子宮内膜症などの他の病気でも高値を示すことがあるため、CA125の検査値が上がったからといって、すぐに卵巣ガンだと診断することはできません。
 CA19-9は、婦人科以外の腫瘍でも高値を示すことが知られていますが、婦人科腫瘍では卵巣腫瘍、とくに成熟嚢胞性奇形腫で高値を示すことがあります。
 卵巣ガンは、いわゆる腺ガンであることが多いのですが、扁平上皮ガンが多い子宮頸ガンでは、SCCという腫瘍マーカーがよく高値になります。
 胎盤から分泌されるhCGという腫瘍マーカーは、胞状奇胎(ほうじょうきたい)、絨毛ガンなどで高値を示します。
腫瘍マーカーで確定診断にはなりません
   これらの腫瘍マーカーは、一般的に病気の病状に従って増減します。しかし診断上の意義は、画像診断などを含めた検査の一部に過ぎないことを頭に入れておくことが大切です。
膵ガン・膵臓ガンの治療法は?
根治を目指して外科的治療
  イメージ画像 膵ガンの根治を目指して、外科的切除術、放射線治療、抗がん薬による化学療法が実施されます。治療の原則はもっとも根治性が期待されている外科的切除です。
 発見時にすでに進行してしまっていることも多く、必ずしも全例が手術の適応になるわけではありません。画像検査によるガンの広がりから、病気の進み具合を診断し、年齢や心身生理機能と合わせて治療方針を決定します。


 現在では、根治性がもっとも期待されている治療法は外科的切除術です。膵頭十二指腸切除術や、膵体尾部切除術があります。可能な限り積極的に病巣だけでなく、その周囲も取り除く拡大手術が行われています。
 しかし、発見された時点ですでに、進行してしまっていることが多く、切除可能なのは約40%の患者さんになります。
3種類の手術
   膵ガンの手術は大きく分けると、膵頭部ガンに対する膵頭十二指腸切除術(すいとうじゅうにしちょうせつじょじゅつ)、膵体尾部ガンに対する膵体尾部切除術(すいたいびぶせつじょじゅつ)、頭部から体部まで広がっている場合の膵全摘術(すいぜんてきじゅつ)の3つになります。
 それぞれの切除に加えて、周囲のリンパ節、神経、結合組織を取り除きます。
 膵ガンが近くの血管に浸潤していた場合、それらの血管も合わせて切除することがあります。
  膵頭十二指腸切除術
     膵頭部ガンで行われる膵頭部十二指腸切除術は、胃から空腸(くうちょう)までと切除範囲も大きく、再建も複雑で、腹部外科手術の中ではもっとも大きな手術のひとつです。
 最近では、胃を切除せずに残す幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(ゆうもんりんおんぞんすいとうじゅうにしちょうせつじょじゅつ)が選択されることも多くなってきています。
  膵体尾部切除術・膵全摘術
     膵尾尾部に続く脾臓も切除されますが、その影響はほとんどないとされています。
 膵全摘術が行われた場合は、血糖コントロールのため、終生インスリンの注射が必要となります。
再発と転移
   膵ガンを切除しても、術後にまた同じガンが現れて再発することがあります。
 膵ガンの再発で多いのは、病変部を切除したすぐそばにできてくる局所再発と肝転移再発です。また、腹膜に種をばら撒いたような腹膜播種(ふくまくはしゅ)と呼ばれる転移で再発してくることもあります。
 手術後の再発を予防するため、手術に加えて、抗がん薬や放射線照射を手術前・手術中・手術後に施行する集中的治療が行われるようになってきています。
 治療法が医療機関によって異なり、標準治療と言われるものは、まだ確立されていません。
広範囲に広がっている場合
   遠隔転移はなくても、腹腔動脈・上腸間膜動脈・総肝動脈(そうかんどうみゃく)・門脈から上腸間膜静脈などの膵周囲組織に広範に浸潤している場合は、切除不能となります。
 この場合、ガン浸潤のための障害が現れている場合は、その障害を取り除く治療を行います。
 たとえば、膵頭部ガンで閉塞性黄疸が現れている場合は、黄疸を軽減させるために、胆管内に閉じ込められてたまっている胆汁をストローのようなチューブで外に出してやるという内瘻術(ないろうじゅつ)を行います。胆管閉塞部(たんかんへいそくぶ)にチューブではなく金属製の網目状のステントを留置することもあります。
 また、開腹術によって胆管と小腸を吻合するバイパス手術を行うこともあります。
 十二指腸が閉塞して、食物の通過障害がある場合は、胃と小腸を吻合するバイパス手術を行い、残された生存期間でQOL(生活の質)の向上がはかられます。
5
   局所の進行膵ガンに対しては、抗がん薬治療や、それらを併用した放射線療法を行います。肝臓などに転移がある場合は、抗がん薬による単独治療となります。
 最近ではゲムシタビン、TS-1、ジェムザールなどの新規抗がん薬による化学療法が期待されています。ガン細胞上の分子標的とした分子標的薬の開発も進められ、その有用性も現れてくるものと思われます。
5年生存率
   全切除後の5年生存率は10%ですが、ガンの進行度を示すステージ別では、以下の表のようになっています。
 膵ガンの治療成績は、他の消化器ガンに比べると、必ずしも良いとは言えません。しかし、治療成績は年々向上しているのも確かです。
 早期発見し、診断を行い、治療するかで、予後の改善に繋がっていきます。
ステージ 5年生存率 生存中央値
ステージT 59% 80ヶ月
ステージU 50% 63ヶ月
ステージV 25% 21ヶ月
ステージWa 10% 13ヶ月
ステージWb 3% 6ヶ月
放射線治療・化学療法
   一般的には、局所に限られる膵ガンが手術の対象となります。
 膵臓周囲組織に広範に浸潤した 切除が不可能な膵ガンは、抗がん薬を使用した化学療法と放射線療法の併用を行います。遠隔転移のある膵ガンは抗がん薬単独による化学療法が治療の中心となります。
 生存中央値は4ヶ月〜6ヶ月となってしまい、予後は良くありません。

膵ガン・膵臓ガンかなと思ったら?
定期健診を
  イメージ画像 病気に気付いた時には、すでに進行してしまっていることが多いです。50歳以上の好発年齢を過ぎたら、定期的な検診をオススメします。
検査を受けた方がいい人
   膵ガンは早期発見が何よりも大切な病気です。以下の項目に該当する人は、できるだけ早期にスクリーニング検査を受けるようにしましょう。
 ◎40歳以上で胃腸や胆道系の病変がなく、上腹部のもたれや痛みのある人
 ◎痩せてきて背部痛・腰痛のある人
 ◎中年以降に糖尿病が現れた人、糖尿病のコントロールが難しくなった人
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