そらいろネット > 家庭の医学 > 子供の病気 > 軟骨無形成症・アコンドロプラジア
生まれつきの、先天性の全身の骨の病気です。 骨の成長障害を特徴とします。 四肢(手足)が胴体に比べて短くなるため、身長が極端に低くなります。四肢短縮型低身長(ししたんしゅくがたていしんちょう)になり、独特の体型を示します。
身長が伸びにくく、年齢と共に少しずつ、健康児との差が目立ってきます。 治療しなかった場合、身長は成人になっても、男性では平均130cm、女性では平均120cmまでしか成長しません。
発症頻度は1万人あたり、0.5人〜1人といわれています。 遺伝性の病気としては、発症頻度が高い病気です。
健康な両親から軟骨無形成症の子供が産まれてくることもありますが、軟骨無形成症の子供の後に産まれてくる子供にも、続けて病気が発症することは、ほとんど考えられないと言われています。
軟骨無形成症は、遺伝性の病気です。 家系に軟骨無形成症の人がいなくても、突然変異で発症することがあります。発症原因としては、遺伝によるものより、突然変異によるものの方が多い傾向があります。
軟骨細胞などに存在する線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)という遺伝子の、突然変異が原因となります。 繊維芽細胞増殖因子受容体3型の突然変異によって、軟骨細胞の増殖が抑制され、骨の縦軸方向の成長も抑制されるため、小人症になります。
近位四肢短縮型低身長を起こす病気としては、軟骨無形成症、致死性骨異形成症(ちしせいこついけいせいしょう)、軟骨低形成症(なんこつていけいせいしょう)などがあります。 致死性骨異形成症は、すべて繊維芽細胞増殖因子受容体3型の突然変異が原因となります。軟骨低形成症は、約半数が繊維芽細胞増殖因子受容体3型の突然変異が原因です。
長管骨(上腕骨、大腿骨などの長い筒状の骨)が長くなりにくいので、胴体の長さに比べて、手足は極端に短くなります。 指の長さも、短くなります。
全身の骨の病気のため、長管骨以外の骨でも、軟骨の増殖が阻害されます。 頭蓋骨の底の部分が未発達で、顔の骨の形成も悪くなります。頭が大きく、額の部分は飛び出して、鼻の付け根は低くなり、顎が突き出ます。軟骨無形成症に特有の顔貌が見られます。 頭蓋骨の底の脊椎(せきつい)に繋がる大孔(だいこう)や、大後頭孔(だいこうとうこう)と呼ばれる部分の穴が狭くなることもあります。 背骨の異常のため、脊髄(せきずい)を通る空間が狭くなる脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)がみられることもあります。
大孔狭窄(だいこうきょうさく)のため、脳と脊髄の中を流れる脳脊髄液(のうせきずいえき)が大後頭孔でせき止められます。このため、脳の中に脳脊髄液が異常に溜まりすぎて、水頭症を起こすこともあります。 水頭症を起こしたとしても、ほとんどの場合は軽症で、手術などはしなくても済みます。
脊柱管狭窄、胸腰椎部(きょうようついぶ)の脊柱変形のため、四肢に、麻痺(まひ)、しびれ、脱力感などの症状を起こすこともあります。 歩行障害など、神経症状を起こすこともあります。
胸椎(きょうつい)と腰椎(ようつい)の移行部が後ろ側に湾曲したり、腰椎が前側に湾曲したりする胸腰椎部の脊柱変形が起こります。 腹部は前に出っ張り、臀部は大きく後ろに飛び出します。脚部にはO脚やX脚が見られます。 一見しただけで、身体の釣り合いがとれていないことがわかります。
中耳炎を起こしやすい傾向がみられます。
手の指を伸ばした時、人差し指(第二指)と中指(第三指)の間、あるいは中指(第三指)と薬指(第四指)の間が離れている、三尖手(さんせんしゅ)が見られることもあります。
健康状態は良好です。知能の低下も見られません。筋力の低下も見られません。 運動発達には、大きな遅れは見られません。
出生後の体型、骨のエックス線検査を行い診断します。 両端が幅広くて、太くて短い四肢の長管骨、シャンパングラスのような小さな骨盤腔、胸腰椎の前後湾(ぜんこうわん)などの所見がみられます。
妊娠中でも、超音波検査で診断が可能です。
水頭症は、CT検査で診断します。
現在まで、根本的な治療方法は見付かっておりません。病気を治すための治療ではなく、日常生活の不自由さを改善するための治療になります。 どの治療法も利点と欠点を併せ持っています。治療を行うかどうかは、利点、欠点、考えられる合併症について医師の説明を十分に受けてから決めるようにしてください。
近年になって、低身長に対しては成長ホルモン投与による治療が行われるようになりました。その結果、身長の伸び率、体形の改善に効果が認められています。 乳幼児期から、定期的な成長ホルモンの注射によって身長の伸びは改善しますが、注射をやめると身長の伸びは止まってしまいます。
外科的治療としては、手術によって脚を伸ばす脚延長術があります。脚の骨を切って、特殊な機械(脚延長器)を使い、半年くらいかけて少しずつ伸ばしていきます。 手術時期は、身長の伸びが停止する10歳以降が良いとされています。
合併率が比較的高いとされる、水頭症、中耳炎に対しても、注意をしなくてはいけません。 2歳以下では、気管支炎、肺炎、中耳炎、水頭症、背骨の変形(脊椎後湾)などの合併症に注意する必要があります。風邪にかかった時は、速めに小児科を受診するようにしてください。