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術後精神病・ICU症候群


術後精神病(Postoperative psychosis)ってどんな病気?

術後精神病とは

 

手術 さまざまな手術の後に、幻覚(げんかく)や妄想(もうそう)を中心とする精神病症状が起こることがあります。
 これを術後精神病と呼びます。

高齢者に多い

 

 手術は身体的にだけではなく、精神的にも大きな影響を与えるものです。そのため、精神的に不安定になり、ひどい精神病症状が現れます。
 とくに高齢者に多いので、注意が必要です。


術後精神病(Postoperative psychosis)の症状は?

術後せん妄が多い

 

せん妄 手術後にもっとも多い精神障害は、術後せん妄です。
 正確には術後精神病と呼ぶのは不適切で、術後せん妄と呼びますが、重要な症状です。

せん妄による見当識障害

 

 せん妄は一種の意識障害で、理解力・判断力が低下し、注意集中が困難になります。会話がまとまらず、ひどい場合は意味不明になります。
 気管挿管などによって発語不能時には、文字が乱れます。
 また、錯覚(さっかく)や幻覚(特に幻視)、妄想(特に被害妄想)が起ります。興奮したり不穏になることも多いため、医療上では大きな問題になります。うつ状態、不安、退行などが問題となることもあります。

本人は覚えていない

 

 手術直後から発症し、一過性・動揺性で、数日以内に回復し、それ以上遷延することはありません。
 回復後、本人はそのことを忘れてしまっていることが普通です。

ICU(Intensive Care Unit)症候群とは?

ICU症候群とは

 

ICU 大きな手術の後、救急入院などで、集中治療室(ICU)に入室した患者さんの中には、錯乱(さくらん)、幻覚(げんかく)、見当識障害(けんとうしきしょうがい)、不穏、興奮など、精神症状が起こるものをICU症候群といいます。

ICU症候群の要因

 

 もともとの病気や手術、麻酔や治療薬などによる影響(身体的要因)、手術による脳のむくみや血流障害などが直接的な要因となります。
 ほかにも、外界との接触がないこと、昼夜の区別がつきにくい部屋で長時間過ごすことによる睡眠リズムの乱れ(環境要因)、チューブ類や医療器械に繋がれて身動きができないための拘禁ストレス(心理的要因)などが挙げられます。
 ICUという特別な環境ゆえ、不安や恐怖など、生命の危機感を引き起こしやすい環境と言えます。
 さまざまな要因が関連し、複合的に絡み合って発症すると考えられています。

ICU症候群の原因

 

 ICU症候群と呼ばれる用語は、こうした状況や、起こっている現象に対して用いられます。医学的な原因は様々です。
 実際にはせん妄が関与していることが多く、不安、抑うつ、脳機能損傷による認知機能障害、精神病性障害などが影響しています。
 ICU在室の患者さんの、約10%に発症すると言われています。

ICU症候群の治療

 

 要因に応じて、もとの病気への対応、睡眠の確保、環境調整、薬物の調整などが行われます。
 具体的には、カーテンを引くなどしてプライバシーを確保する、早めに一般病室に移す、入眠薬を用いた十分な睡眠、スタッフと患者さんとの心理的接触、家族との面会時間の増加、絶望感を取り除くことなどが必要になります。
 それぞれの患者さんの人格を尊重し、心理的側面について治療側が十分に配慮することも大切です。


術後精神病(Postoperative psychosis)の治療法は?

手術前のケアから

 

元気が一番 せん妄には意識障害の原因を取り除くことが第一となりますが、術後やICUでのせん妄には多くの要因が絡み合うため簡単ではありません。
 身体的治療に支障をきたしてしまうため、緊急の鎮静をはかることが多いです。
 手術前の精神的な対応、環境整備も重要になります。

抗精神病薬など

 

 ハロペリドール、リスペリドンなど、抗精神病薬が良く使用されます。必要な量は、せん妄の程度によって異なります。
 経口での服薬ができないときや、鎮静を急いでいる時には、セレネース注(5mg)を点滴静注します。
 興奮が軽く経口での服薬が可能なら、テトラミド錠(10mg)や、レスリン(50mg)を経口服用します。


 夜間せん妄に対しては、睡眠覚醒リズムの調節も大切になります。

不眠の治療

 

 夜間せん妄に対しては、睡眠覚醒リズムの調節も大切になります。不眠はせん妄を悪化させてしまうため、睡眠の確保は重要になります。
 レンドルミン錠、ロヒプノール錠など、作用時間があまり短くない睡眠薬を十分量使うことが多いです。


術後精神病(Postoperative psychosis)の対処法は?

事前に十分な説明

 

説明します 患者さんには、状況や必要な治療の説明を、簡潔にゆっくりとわかりやすく説明しましょう。
 家族に対しては、一過性の回復可能な状態であることを伝え、落ち着いて穏やか雰囲気で付き添ってもらってください。
 患者さんとの信頼関係を確立し、家族が付き添うことで安心感を与えます。事前の対応によって、ある程度の予防が可能です。

睡眠リズムの調節

 

 夜間の睡眠環境に注意してください。とくに午後から夕方には、テレビやラジオを楽しんでもらったり、面会を受けるなどして、覚醒を保つようにしてください。

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