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 非結核性抗酸菌症・非定型抗酸菌症

非結核性抗酸菌症・非定型抗酸菌症の概要は?
おもな症状
  咳(せき)
痰(たん)
血痰(けったん)
似ている病気
  肺結核

非結核性抗酸菌症・非定型抗酸菌症とは?
結核菌以外の抗酸菌
  イメージ画像 結核菌以外の抗酸菌をまとめて、非結核性抗酸菌(ひけっかくせいこうさんきん・NTM)と呼びます。
 非結核性抗酸菌による慢性の感染症が、非結核性抗酸菌症になります。そのほとんどは、肺に限定した肺NTM症になります。
 2003年(平成15年)までは、非定型抗酸菌症(ひていけいこうさんきんしょう)と呼ばれており、現在でもこの名称を使うのが一般的です。
肺マック症と肺カンサシ症
   非結核性抗酸菌症の原因菌は約20種ありますが、全体の約60%をアビウム菌が占めます。そして約20%をイントラセルラーレ菌、約10%をカンサシ菌が占めます。
 アビウム菌とイントラセルラーレ菌は約15年前まで区別することが困難で、病気の特徴や治療法も同じであるため、マック症(MAC症)と呼んでいます。非結核性抗酸菌症の約80%が、肺マック症になります。
 カンサシ菌による非結核性抗酸菌症は、肺カンサシ症と呼ばれます。

非結核性抗酸菌症・非定型抗酸菌症の原因は?
人から人へは感染しない
  イメージ画像 非結核性抗酸菌症の大きな特徴は、肺結核と異なり、ヒトからヒトへの感染がないことです。
 喀痰中(かくたんちゅう)にたくさんの非結核性抗酸筋が含まれていたとしても、隔離する必要はありません。
一部の人だけに発症
   非結核性抗酸菌は土の中、ホコリの中、浴室、水周りで生息しており、空気中をたまたま漂っていた菌を肺内に吸い込むことで感染すると考えられています。
 ほとんどの人は非結核性抗酸菌を吸引していますが、ごく一部の人のみが感染し、発病すると推測されています。
 経過は肺結核以上に緩慢で、年単位でゆっくりと進行していきます。まったく進行しない症例や、自然に改善する症例も少なくありません。
慢性化しやすい
   肺結核に比べて薬剤効果が劣っており、特に肺マック症は一部の症例を除いて、治療が困難です。
 多くの例で慢性化し、長年に渡って病気と共存することになります。
 症状が乏しく、経過が緩慢な場合、治療せずに経過観察ですますこともあります。

非結核性抗酸菌症・非定型抗酸菌症の診断は?
結核と異なる診断方法
  イメージ画像 肺結核と異なり、喀痰中から菌の検出のみでは診断することができません。非結核性抗酸菌は日常的にある程度吸い込まれているため、たまたま気道内に混入していた非結核性抗酸菌を検出することがあるためです。
 そのため、「非結核性抗酸菌症に典型的なエックス線像、CT所見があり、非結核性抗酸菌を喀痰中から2回検出するか気道支鏡で1回検出する」という診断基準が設けられています。ただし、結核菌と同様に、菌が培養されるまでは診断できません。
診断には時間が必要
   診断にはある程度の時間が必要ですが、感染性がなく、病気の進行も緩やかなため、問題はありません。
近年、増加傾向にある
   1990年代から、非結核性抗酸菌症、特に肺マック症は急増しています。結核の減少もあり、現在では抗酸菌症の30%以上を占めるほどに増加しています。



肺マック症ってどんな病気?
女性に急増中
  イメージ画像 1980年代までは結核治療後、肺気腫(COPD)、塵肺(じんぱい)など、肺の中に感染しやすい場所がある人に発症する例が多く、そのため男性に多い疾患でした。
 しかし1990年代以降、とくに基礎疾患のない50代以降の女性での発症例が増加傾向にあり、約80%を占めています。

肺マック症の症状は?
慢性的な咳と痰
   病変は中葉(ちゅうよう)・舌区(ぜつく)と呼ばれる肺の左右心臓の横の部分を中心とした気管支拡張と、小結節影が主体です。
 慢性的な咳や痰(たん)が典型的な症状です。症状がほとんどなく、健診の胸部エックス線検査で異常を指摘される例もあります。
 比較的軽症でも、喀血(かっけつ)や血痰(けつたん)を生じやすいのも特徴です。
 経過は慢性で、数年単位で徐々に進行する例が大部分ですが、まれに進行が早い例もあります。

肺マック症の診断は?
エックス線検査や喀痰検査
  イメージ画像 感染しやすい環境、症状、エックス線やCT所見で肺マック症が疑われる場合、喀痰検査を繰り返し、診断するのが一般的です。
 エックス線の経過がわかる例で進行が早い場合や、どうしても喀痰が出せない場合には、気管支鏡検査で診断することもあります。

肺マック症の治療法は?
薬物療法
  イメージ画像 肺マック症は治療が難しく、慢性化する例が大部分を占めます。肺ガンなどと異なり、早期に診断するメリットは高くなく、病気と共存する心構えの方が大切になります。
 症状が比較的強いか、進行が早い場合、抗菌薬を投与します。
 結核治療薬でもあるリファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)に、一般抗菌薬であるクラリスロマイシン(CAM)を併用する治療法が、現在の世界標準となっています。重症例では、初期に約2ヶ月間、ストレプトマイシン(SM)の筋肉注射を加えることもあります。
 治療は喀痰から菌が培養されなくなってからさらに1年間以上行います。しかしこの治療によって、結核のように治癒するわけではなく、治療終了後も再発・再悪化を繰り返し、慢性化する例が多いのが現状です。
日常生活上の注意
   日常の活動は、2割〜3割程度、控え目にするようにしましょう。
 風呂などの水周りから感染すると考えられているので、水周りの清潔保持に留意するようにしましょう。シャワーなど、狭い空間に水しぶきが充満する環境は、できるだけ避けるようにしてください。
喫煙者の男性
   喫煙者で、特に男性の場合に発症するマック症の中には、エックス線検査やCT検査で肺の上の方に空洞がみられるタイプがあります。
 このような例では一般に進行が早いため、診断された時点で抗菌薬を投与するとともに、外科手術を考慮します。空洞が肺の一部分に限局し、すえて切除できることが基本的な条件となります。
 手術の有無にかかわらず、禁煙を強く勧めます。



肺カンサシ症ってどんな病気?
女性に増加中
  イメージ画像 以前は中年以降の喫煙男性が90%以上を占めるといわれていました。また、土木建築、金属加工、製鉄などの粉塵曝露歴を持つ人に目立つ疾患でした。
 しかし現在では、女性が30%以上を占める疾患となっています。

肺カンサシ症の診断は?
喀痰検査
  イメージ画像 エックス線やCTで肺の上の方に小さな空洞がみられるのが特徴です。
 慢性的な咳と痰が症状ですが、比較的乏しく、健診のエックス線では肺結核の疑いがあると診断されます。喀痰検査によって、カンサシ菌が検出されて診断される例が多くみられます。

肺カンサシ症の治療法は?
抗菌薬が有効
  イメージ画像 肺カンサシ症は、もっとも抗菌薬が有効な非結核性抗酸菌症です。結核の治療薬剤でもあるイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)を用います。喀痰からカンサシ菌が培養されなくなってから、さらに1年間投与すると、大部分の患者さんを治癒させることができます。
治療の中断は厳禁
   症状が乏しく治療期間が結核よりも長いため、治療の中断が目立ちます。そのために、再発率が約10%あるのが問題点です。
 禁煙とともに、服薬の重要性を理解しなければなりません。



非結核性抗酸菌症・非定型抗酸菌症かなと思ったら?
呼吸器科へ
  イメージ画像 結核に理解のある呼吸器科医、もしくは結核療養所を受診するのが良いでしょう。
 生活は普通どおりにできますし、ヒトからヒトへの感染はないので、自宅で家族と一緒に生活しても問題ありません。
 非結核性抗酸菌症は、水や土壌などの自然界に存在しており、それが感染するということは、身体が弱っている・身体の免疫力が低下していることが考えられます。むしろ体力を増強させるような生活が望まれます。
長い治療期間
   治療に関しては、薬は肺結核よりもはるかに長期間服用する必要があります。そのため、積極的に治療を行う医師と、消極的な医師が存在するという問題もあります。
 患者さんと家族は、病状、自然経過、治療法、有効率、副作用、治療期間、予後などの説明をしっかりと受けるようにしましょう。
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