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 肺結核

肺結核(はいけっかく)の概要は?
おもな症状
  数週間〜数ヶ月続くか、現われては消えることを繰り返す咳、痰、発熱
血痰(けったん)
喀血(かっけつ)
全身の倦怠感
痩せ
似ている病気
  肺炎
肺化膿症・肺膿瘍
気管支拡張症
慢性気管支炎
起こりやすい合併症
  続発性気胸
続発性気管支拡張症
肺性心
呼吸不全

肺結核ってどんな病気?
人から人へ感染する感染症
  イメージ画像 肺結核は、結核菌が肺に感染して、結核病巣ができて起こる肺の病気です。かつては、労咳(ろうがい)と呼ばれていました。時代劇などでは、労咳という言葉を使っているのでご存知だと思います。
 結核菌は、肺結核患者の病巣から喀痰飛沫(かくたんひまつ)と共に放出され、これを他人が吸い込んで、肺の中に病巣を作り感染します。
かつては死因の第一位
   肺結核は、かつては国民病といわれるほどに多く、昭和10年〜昭和25年までは、死亡率の第1位を死守していました。
 昭和25年以降、急速に減少し、平成9年では死因の22位にまで低下しました。
 しかし、欧米に比べるとまだ高率で、平成9年では新規登録患者数、罹患率がともに増加に転じています。結核菌の撲滅には、まだ国民の知識の普及と、努力が必要とされています。

肺結核の原因は?
犯人は小さな結核菌
  イメージ画像 肺結核の原因になる結核菌は、1882年、ローベルト・コッホによって発見されました。
 菌の大きさは、長さ1マイクロメートル〜4マイクロメートル、太さ0.3マイクロメートル〜0.5マイクロメートルの、細長い菌で、桿菌(かんきん)と呼ばれています。特殊な染色をすれば、顕微鏡で見ることができます。
 結核患者から出された結核菌を含んだ飛沫が、周囲の人の肺に吸引されて、肺胞まで到達した菌が定着して病巣を作り、感染が起こります。
ツベルクリン反応が陽性に
   肺胞に達した結核菌は、肺胞にある肥満細胞に取り込まれます。その細胞を破壊して細胞外に出て、さらに他の細胞に入り増殖をします。
 この間、肥満細胞はリンパ球に結核菌が外からきた異物であることを伝え、菌の増殖を抑制し、外部からの結核菌の侵入を防止する免疫力ができると、結核菌が再び侵入したときに反応して炎症を起こします。ツベルクリン反応は、この反応を表すもので、この時点で、ツベルクリン反応は陽性になります。
体の免疫力によって活動は押さえ込まれます
   病巣内の結核菌が、免疫力より強い場合や、結核菌の量が多い場合、病巣は残存して結核結節といわれる病巣を作ります。
 その後、病巣は人体の防衛力によって縮小し、瘢痕化(はんこんか)しますが、結核菌はその中に残存して被包化し、抑えられます。
免疫力の低下で発病
   数年後かたって、体力の低下、防衛力の減退などがあると、病巣が再燃し、結核菌が病巣外に出て肺内に拡大し、肺結核となります。
 胸膜に達して炎症を起こせば結核性胸膜炎となり、リンパ節で炎症を起こせばリンパ節結核(りんぱせつけっかく)となります。血液に結核菌が入り、肺や体内に多数の小さな病巣を作れば粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)となります。
人から人への感染
   肺内の結核病巣が拡大融合すれば、さらに大きな病巣になり、中心が壊死してしまい、空洞となってしまいます。
 空洞の内容物は結核菌とともに気管支を通って痰となり体外に排出され、飛沫となって他人に吸入され感染させます。

肺結核の症状は?
病巣がある間は症状もある
  イメージ画像 肺内に病巣ができて、咳や痰が出ます。
 そこから、分泌物や菌が気管支を伝わって排出されるため、病巣がある間は症状が持続します。
進行すると血痰や喀血が出ます
   病巣の中心が壊死してしまい空洞化すると、血痰や喀血が起きます。
 また、炎症があるため発熱があり、全身倦怠感、食欲不振になり、十分な治療をしないでいると衰弱していってしまいます。
心配なときは病院へ
   咳や痰、発熱が長く続いたときは、単なる風邪と考えずに、病院で検査を受けて、診断してもらいましょう。

肺結核の治療法は?
健康的な生活を
  イメージ画像 肺結核の治療法は、化学療法が導入される以前は、大気、安静、栄養療法が主流でした。最近は、良い薬剤の開発によってこれらの療法の重要性は減少しました。
 しかし、過労や、生活の乱れが発病のきっかけになることもありますので、今でも健康的な生活を維持することは大切になってきます。
薬物療法がメイン
   現在では、治療のメインは薬物療法が行われます。
 痰の結核菌検査、胸部エックス線検査、副作用などを考慮して、使用する薬剤を選択します。
結核治療には決められた基準があります
 
薬剤名 略称 使用方法
イソニコチン酸ヒドラジド
リファンピシン
硫酸ストレプトマイシン
エタンブトール
カナマイシン
カプレオマイシン
エチオナミドorプロチオナミド
エンビオマイシン
ピラジナミド
パラアミノサリチル酸塩
サイクロセリン
INH
RFP
SM
EB
KM
CPM
TH
EVM
PZA
PAS
CS
内服
内服
注射
内服
注射
注射
内服
注射
内服
内服
内服
 病気が発見されたときの治療法は、厚生労働省によって定められた結核医療の基準に従って行われます。
 喀痰検査が陰性で、感染性がなく活動も中等度と考えられる場合は、1番、2番、3番のいずれかの治療法を行います。
 喀痰検査で結核菌が陽性で、病巣の活動性が高く、感染性も高い場合は、2番、3番のいずれかの治療法を行います。
 初感染で、特に病変が軽度の場合は、イソニコチン酸ヒドラジド(INH)を単独で治療します。
 以前、治療を受けたことのある人が、再び排菌したときには、薬剤への耐性がない場合は初回治療時と同じ治療をします。いずれかの薬剤に耐性がある場合は、抗結核薬のうち、以前使わなかった薬を3種類選んで使用します。
   イソニコチン酸ヒドラジド(INH)、リファンピシン(RFP)の2剤併用で、6ヶ月〜9ヶ月間治療をします。
   イソニコチン酸ヒドラジド(INH)、リファンピシン(RFP)に、硫酸ストレプトマイシン(SM)、またはエタンブトール(EB)の3剤併用で6ヶ月間治療後、イソニコチン酸ヒドラジド(INH)とリファンピシン(RFP)の2剤併用で3ヶ月〜6ヶ月間治療をします。
   イソニコチン酸ヒドラジド(INH)、リファンピシン(RFP)、ピラジナミド(PZA)に、硫酸ストレプトマイシン、またはエタンブトール(EB)を加えた4剤併用で2ヶ月間治療し、その後、イソニコチン酸ヒドラジド(INH)とリファンピシン(RFP)の2剤併用、またはイソニコチン酸ヒドラジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)の3剤併用で4ヶ月間治療します。
外科的治療をすることも
   結核の治療法は、現在では内科的な薬剤療法が基本となっていますが、ときには外科療法を行わなければならないこともあります。
 化学療法を行ったにもかかわらず排菌が続く場合や、喀血が続く場合には外科療法を検討します。

肺結核かなと思ったら?
いつもの風邪とちょっと違うと思ったら受診しましょう
  イメージ画像 「風邪は万病の元」と昔から言われていますが、結核の初期症状も風邪と紛らわしいことが多く、普通の風邪と少し違うと思ったら、病院を受診しましょう。
 もし結核と診断されても、現在では薬剤の開発により治療することができます。慌てることなく、医師の指示に従って治療を受けましょう。
感染の恐れがる場合は入院
   排菌のある間は、他人に感染させる危険性があるため、入院が必要です。しかし、以前ほど長期間の入院が必要なくなりました。
周囲への感染を防ぐ必要もあります
   家族、職場などで人への感染を防ぐために、保健所の指示によって検査と、予防処置が行われます。最近では、食生活の改善や、環境整備が進み、抵抗力も向上しているので、それほど心配する必要はありません。
 ただ、過去に感染の機会がなく、免疫力を持たない子供の場合は、十分に検査をしましょう。ツベルクリン反応が陽転していれば、予防のために服薬することもあります。

肺結核の有名人・芸能人
ハリセンボンの箕輪はるかさん
   2009年4月、女性お笑いコンビ「ハリセンボン」の箕輪はるかさんが肺結核で入院しました。肺結核は空気感染が起こる可能性がある病気のため、スタッフ、関係者、スタジオやイベントなどの観覧者などにも肺結核が感染した可能性があります。そのため、保健所では接触者の調査・健康診断の実施を決めました。
歴史上の有名人
   明治時代の歌人・詩人である石川啄木、樋口一葉。江戸時代末期や幕末では、新撰組の沖田総司、長州藩士の高杉晋作、政治家の陸奥宗光なども肺結核で亡くなっています。
 三国志の曹操も肺結核で死亡したと考えられています。
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