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 肺膿瘍・肺化膿症

肺膿瘍・肺化膿症の概要は?
おもな症状
  肺炎様症状
高い発熱

膿性の痰
胸痛
似ている病気
  肺炎
肺結核
起こりやすい合併症
  呼吸困難
チアノーゼ
意識障害

肺膿瘍・肺化膿症ってどんな病気?
肺膿瘍・肺化膿症・肺壊疽
   肺膿瘍(はいのうよう)、肺化膿症(はいかのうしょう)、肺壊疽(はいえそ)は、ほとんど同じ病気として使われます。
 結核、真菌、寄生虫によるものは、化膿性炎症による膿瘍形成ではないので、肺膿瘍には含まれません。
細菌感染による肺の壊死
  イメージ画像 肺膿瘍は、細菌性肺炎と同様に、肺胞(はいほう)に細菌が増殖し、それに対して体の白血球をメインとする炎症細胞・感染防御物質が集まり、炎症を起こした状態の感染症です。
 しかし、細菌性肺炎が重症で広範囲にわたるため、肺の組織が破壊され腐ってしまう壊死が起き、膿がたまるのが特徴的な症状です。
肺に穴ができ膿が溜まる
   肺組織の壊死により、肺内部に空洞が広がり、液状の壊死物質が空洞内に溜まってしまいます。
 つまり、肺に穴が開き、その穴の中に膿(うみ)が溜まってしまった状態のことをいいます。
原発性肺膿瘍と続発性肺膿瘍
   とくに他の疾患がない場合は、原発性肺膿瘍、または一次性肺膿瘍と呼ばれます。肺炎に引き続いてみられる症状です。
 扁平上皮ガンなど、肺ガンの中心部が壊死し、周囲の臓器の炎症が広がったものを、続発性肺膿瘍、または二次性肺膿瘍と呼ばれます。横隔膜下膿瘍となります。
有名人・芸能人も
   お笑いコンビ「よゐこ」の有野晋哉さんも、肺膿瘍で入院しました。
 俳優で歌手の鶴田浩二さんも、肺膿瘍と診断後、1987年に肺ガンで亡くなりました。

肺膿瘍・肺化膿症の原因は?
起炎菌によって症状が違う
  イメージ画像 組織破壊の程度は、原因となる細菌の数や種類などによって左右されます。
 嫌気性菌(けんきせいきん)、黄色ブドウ球菌、緑膿菌(りょくのうきん)、クレブシエラ、大腸菌などが、肺膿瘍を起こしやすい細菌です。
 結核菌も空洞をともなうことがあるので、必ず鑑別診断を行います。
感染経路
   嫌気性菌は、口腔内にたくさん存在するため、誤嚥(ごえん)を起こすことによって気道から侵入してきます。また、骨盤腔内の膿瘍から血流に乗って肺に到達することもあります。この場合は特に、血行性感染と呼びます。
 大腸菌は、尿路、胆道などの感染病巣から血液を介して肺に到達します。
 黄色ブドウ球菌は、皮膚、軟部組織、心内膜炎(しんないまくえん)などの病巣から、血液を介して肺に到達します。

肺膿瘍・肺化膿症の症状は?
おもな症状
  イメージ画像 肺炎と同様に、発熱、咳、膿性の痰がみられます。やがて、痰に血が混じるようになり、色の濃い多量の痰が排出されます。胸痛が起こることもあり、この場合は胸膜への炎症の広がりを示唆しています。
 身体所見では、呼吸数や脈拍の増加がみられます。
 重症例では、呼吸困難、チアノーゼ、意識障害がみられます。このような場合、緊急に治療を開始する必要があります。
嫌気性菌
   誤嚥による肺膿瘍では、腐敗臭のある痰をともないます。
 症状がゆるやかにあらわれる場合があり、倦怠感や体重の減少だけの場合もありますので、高齢者などでは注意が必要です。
 A群β溶血性連鎖球菌を始めとする口腔内に常在する緑色連鎖球菌群、ミレリグループによる肺膿瘍は、本人が気づかない誤嚥から嫌気性菌と混合感染を起こし、肺膿瘍や、膿胸(のうきょう)を起こします。
黄色ブドウ球菌・グラム陰性桿菌
   黄色ブドウ球菌や、グラム陰性桿菌による肺膿瘍では、ほとんど症状が急激にあらわれます。

肺膿瘍・肺化膿症の診断は?
胸部X線
  イメージ画像 細菌性肺炎の検査と同様に、もっとも有効な検査は、胸部X線検査です。
 胸部X線画像では、空洞と空洞内に液体状の膿による水平面がみられます。体位を変えると、重力によって水平面が動くのが特徴です。
嫌気性菌の場合
   細菌学的検査では、嫌気性菌が関係している場合は喀痰(かくたん)の培養だけでは有用性は低いので、胸壁を通して肺に針を刺し、空洞内部の膿成分を採取し、嫌気状態での培養を行う必要があります。
 血行性感染の場合は、喀痰培養とともに、血液培養が有用です。
誤嚥性肺炎の場合
   誤嚥性肺炎の場合は、誤嚥の原因となった基礎疾患の検査が必要です。脳血管障害、神経疾患、胃食道逆流、口腔内の病変など。
 原因疾患をコントロールしなければ、肺膿瘍を繰り返すことになってしまいます。
血行性感染の場合
   血行性感染の場合は、尿路、胆嚢(たんのう)、腹腔内、骨盤内、骨、皮膚、カテーテルなどの、細菌が供給される遠隔病巣を特定する必要があります。

肺膿瘍・肺化膿症の治療法は?
入院が原則
  イメージ画像 肺膿瘍の治療には、入院治療が原則となります。誤嚥性肺炎なのか、血行性感染なのかを推定します。
 強力な抗生物質を長期間使用し、嫌気性菌に対する抗生物質も追加します。治療には1ヶ月〜2ヶ月かかり、治りにくい場合には、手術による外科的切除術が行われます。
治療薬の選択
   誤嚥性肺炎の場合は、嫌気性菌の関与を考慮して、ペニシリン系と、βラクタマーゼ阻害薬との配合薬。または、クリンダマイシンと、カルバペネム系抗菌薬投与が推奨されます。
 血行性感染の場合、原因となる病巣を推定し、血液培養などの結果によって抗菌薬を選択します。

肺膿瘍・肺化膿症かなと思ったら?
高齢者・寝たきりの人は要注意
   細菌性肺炎と同様に、高齢者や、寝たきりの人などでは、症状の現れ方がゆるやかで、倦怠感、食欲不振、体重の減少などの不特定の症状だけの場合があるので、注意が必要です。
呼吸器専門医の受診を
   呼吸器疾患専門医のいる病院を受診しましょう。
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