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 市中肺炎・院外肺炎

市中肺炎(しちゅうはいえん)・院外肺炎(いんがいはいえん)とは?
病院の外で感染する肺炎
   病院の外で感染し、発症する肺炎を市中肺炎と呼びます。病院内で発症する院内肺炎(いんないはいえん)と対比して用いられる言葉です。
 原因微生物・病原体の種類によって、細菌性肺炎(さいきんせいはいえん)と、非細菌性肺炎(ひさいきんせいはいえん)があります。非細菌性肺炎には、ウイルスによるものも含まれます。この中でも、マイコプラズマ肺炎とクラミジア肺炎は、非定型肺炎と呼びます。

市中肺炎・院外肺炎ってどんな病気?
誰にでも発症する
  イメージ画像 市中肺炎とは、日常生活を送っていた人が、病院や診療所などの外で感染し、発症した肺炎のことです。
 肺炎は一般的な病気でもあり、これまで病気をしたことのない健康な若年者でも発症することがあります。
肺炎発症のリスク
   一般的には、なんらかの病気・基礎疾患を持っていて、さまざまな治療を受けている人の方が、肺炎を発症するリスクは高くなります。
 また、『1日の喫煙本数×喫煙年数』が600を超える重喫煙者、慢性肺疾患のある人、高齢者で食事をすると誤嚥しやすくむせる人は、肺炎を繰り返すこともあります。
死亡率
   日本国内の肺炎の死亡率は、2007年(平成19年)の報告によれば、人口10万人に対して75.3人です。死亡順序は第4位の位置を占めています。
 高齢者になるにしたがい死亡率が急激に増加します。85歳以上の男性では死因第2位、90歳以上の男性になると死因第1位になります。
 市中肺炎・院内肺炎を含めた肺炎では、過去50年以上に渡って、日本人の死因の第4位を占めています。きわめてありふれた疾患であると言えます。
肺胞の感染症
   肺炎を正確に定義すると、肺のもっとも奥に存在する肺胞の感染症ということになります。そのため、肺炎を発症するためには、病原体が肺のもっとも奥まで到達する必要があります。
肺胞にいたる経路
   病原体が肺胞にいたる経路としては、以下のようなものが考えられます。
@ 病原体が咳やくしゃみで感染する飛沫感染(ひまつかんせん)
A 口の中に元々いた菌が気道の方に落ちて吸い込まれる
B 肺以外のところに病巣を作っていた細菌の一部が血液に入って肺に流れ着く
 一般的には、@の経路が考えられます。高齢者では@とAが考えられます。Bの経路はまれです。
細菌はウイルスなど
   インフルエンザウイルスや、その他のウイルスによって上気道に炎症が起こると、上気道に細菌が定着しやすくなり、二次的に細菌による肺炎である細菌性肺炎を起こしやすくなります。
 細菌以外の微生物では、マイコプラズマ、クラミジア、ウイルスなども市中肺炎の原因となります。

市中肺炎・院外肺炎の症状は?
一般的な症状
  イメージ画像 市中肺炎の典型例では、咳(せき)、痰(たん)、発熱、寒気・悪寒(おかん)、息苦しさ・呼吸困難、胸の痛み・胸痛などが起こってきます。
 また、膿(うみ)のような色の付いた粘りのある痰である膿性痰(のうせいたん)がみられます。
 炎症が肺を包んでいる胸膜(きょうまく)にまで及ぶと、胸に胸水と呼ばれる水が溜まる胸膜炎(きょうまくえん)になります。胸に膿が溜まる膿胸(のうきょう)を起こしたりします。激しい胸痛をともなうこともあります。
重症例では
   糖尿病を持っている人や、アルコールをたくさん飲む人では、肺に空洞ができて悪臭をともなう痰が出ることもあります。これを、肺膿瘍、または肺化膿症と呼びます。
 肺炎はガス交換を行う肺胞の炎症なので、元々肺に疾患のある人や、広い範囲に拡大した肺炎では、呼吸不全から死亡することもあります。
 肺炎を重症化させやすい要因として、60歳以上の高齢者、男性、喫煙者、低栄養状態(アルブミン低下)などがあげられます。
非定型肺炎では
   非定型肺炎では、発熱と咳がもっとも良くみられます。
 咳は頑固であることが多く、細菌性肺炎と違って膿のような痰がみられることはありません。頭痛、筋肉痛、関節痛など、肺以外に症状がみられることがあります。
 肺炎が広範に拡大した際には、呼吸困難が生じます。
合併症
   二次的に心不全を合併すると、顔や手足にむくみをともない、脈拍が増加します。

市中肺炎・院外肺炎の原因は?
細菌性肺炎の原因
  イメージ画像 市中肺炎の病原微生物は、細菌では肺炎球菌(はいえんきゅうきん)がもっとも多くみられます。次いでインフルエンザ桿菌(かんきん)の頻度が高くなります。
 その他にも、黄色ブドウ球菌、モラクセラ・カタラーリスなどがあります。温泉旅行後などでは、レジオネラを考慮します。
非定型肺炎の原因
   非定型肺炎の病原体としては、マイコプラズマ、クラミジアがあげられます。
ウイルス性肺炎
   インフルエンザの流行期では、インフルエンザウイルスによる肺炎を発症することがあります。
誤嚥性肺炎
   寝たきりの高齢者、意識障害のある人では、無意識に口の中の菌を気管内に飲み込み、肺炎を起こすことがあります。おもに嫌気性菌(けんきせいきん)による肺炎です。
治療には原因を特定する
   原因となる微生物・病原体の種類によって有効な治療薬が異なるので、適切な治療を施すために原因微生物を特定することが重要になります。
 肺炎と同様の症状を示す疾患として、肺結核、肺真菌症があります。治療にはこれらの疾患との鑑別が必要になります。
 また、重喫煙者などにおいては、肺ガンに合併して気管支が閉塞した結果、二次的に肺炎を発症することもあります。この場合、閉塞性肺炎(へいそくせいはいえん)と呼ばれます。

市中肺炎・院外肺炎の診断は?
胸部エックス線検査
  イメージ画像 肺炎は肺胞の感染症です。そのため、胸部エックス線写真で陰影を見付けることが、診断のための最大の根拠となります。
 肺炎の程度、および原因となる微生物の種類によって、さまざまな陰影が出現します。
細菌性肺炎の検査
   血液検査を行うと、通常では白血球が増加して、炎症があることを示すさまざまな反応も強く現れます。
 原因となる細菌を見付けることが、細菌性肺炎と診断する有力な証拠となります。
 一般的には痰を調べますが、口内の元々存在する菌も一緒に検出されてしまうため、原因となっている最近を決定するには、喀痰(かくたん)のグラム染色によって、白血球に食べられた細菌の存在を確認する必要があります。
 細菌性肺炎の病原微生物 
・インフルエンザ桿菌
・黄色ブドウ球菌
・肺炎球菌
・モラクセラ・カタラーリス
・緑膿菌
・レジオネラ菌
・連鎖球菌
非細菌性肺炎の検査
   非細菌性肺炎においては、血液を検査すると、細菌性肺炎と違って白血球の増加ははっきりせず、正常範囲であることも多くあります。
 胸部エックス線写真では、「すりガラス様」と形容される淡い陰影が認められます。
 マイコプラズマ、クラミジア、またはウイルスは、一般的には痰や血液から培養することが難しく、診断は血液中の抗体が増えていることを検査して行われます。
 非細菌性肺炎の病原微生物 
・インフルエンザウイルス
・水痘ウイルス
・麻疹ウイルス
・クラミジア
・ニューモシスチス
・マイコプラズマ
・真菌
最近の検査方法
   最近では、肺炎球菌とレジオネラについては、尿中抗原診断キットが発売されているため、尿を調べることによって確定診断となることもあります。
 インフルエンザウイルスでも、迅速診断キットが広く使用されているため、簡単に診断できるようになっています。
重症度の診断
   肺炎の診断には、その重症度を正確に評価する必要があります。
 重症度を判定する指標としては、年齢、脱水症状の有無、呼吸不全の程度、意識障害の有無、血圧低下の有無などがあります。これらの指標を参考にして、入院して治療するか、通院して治療するかを判断します。
 重症度が高いほど、肺炎による死亡率が高くなってしまいます。

市中肺炎・院外肺炎の治療法は?
病原体によって異なる治療法
  イメージ画像 ウイルス以外の微生物による感染症の際には、抗生物質、抗菌薬を使用する治療が中心となります。
使われる薬品
   細菌性肺炎には、ペニシリン系やセフェム系などの抗生物質が使用されます。
 マイコプラズマやクラミジアによる非定型肺炎やレジオネラ肺炎では、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効果がないので、マクロライド系やテトラサイクリン系の薬が使用されます。
 肺炎の治療には、抗菌薬の選択も極めて重要ですが、抗菌薬の投与回数、投与量、併用薬に対する注意などを考慮する必要があります。
 また、抗菌薬の効果が不十分な場合は、抗菌薬の選択、投与方法を再検討することも必要となり、肺炎以外の疾患の可能性も念頭に置いておく必要があります。
インフルエンザによる肺炎
   インフルエンザウイルスによる肺炎では抗ウイルス薬を投与しますが、肺炎球菌・インフルエンザ桿菌・ブドウ球菌などによる二次感染を合併することがあるので、これらの細菌に有効な抗菌薬を併用することが必要になることもあります。
 インフルエンザウイルス感染症に肺炎を合併しやすい背景として、高齢者、基礎疾患を持つ人、介護施設入所者などがあります。これらに該当する場合は、抗菌薬の併用が求められます。
重症の場合
   重症の肺炎では、酸素投与、場合によっては人工呼吸管理が必要になることもあります。

市中肺炎・院外肺炎かなと思ったら?
風邪から肺炎に
  イメージ画像 市中肺炎は、ウイルスなどが原因の風邪・上気道炎に引き続いて発病することが多いため、風邪を引いた時はあまり無理をしないことが大切です。
 無理な労働や外出は避け、身体の安静と保温に努め、十分な休息をとることです。
基礎疾患のある人は注意
   高齢者、COPD、糖尿病などの基礎疾患のある人は、肺炎にかかりやすく、また重症化しやすいので、注意が必要です。
近況は医師に報告を忘れずに
   肺炎を起こした家族がいる場合は、マイコプラズマが考慮されます。症状の出る直前に温泉などの旅行に行った場合は、レジオネラの可能性が考慮されます。飼育していた鳥が死んだ場合は、クラミジアの一種によるオウム病が考慮されます。
 このようなことがあった場合は、必ず医師にその情報を伝えるようにしましょう。
 これだけで、肺炎の原因となる微生物を推測することが可能になります。

市中肺炎・院外肺炎の予防法は?
予防には2種類
  イメージ画像 肺炎の予防には、日常生活での感染予防と、ワクチン接種の2つの方法があります。
日常生活の予防
   冬のインフルエンザ流行時には、人ごみへの外出をなるべく避けるようにしましょう。また、マスクをするなどの予防が必要です。
 帰宅したら、すぐにうがいを行い、手を洗うことが勧められます。
ワクチンによる予防
   インフルエンザワクチンの接種が、インフルエンザの予防に有効とされています。インフルエンザに引き続いて肺炎を起こしやすい高齢者、基礎疾患のある人は、必ずインフルエンザワクチンを接種するようにしましょう。
 高齢者のインフルエンザワクチン予防接種は、自治体によって補助もあるので活用しましょう。
 肺炎球菌ワクチンの接種は、自己負担ですが肺炎球菌肺炎を予防することが出来るため、予防接種が推奨されます。
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