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 横隔膜ヘルニア

横隔膜ヘルニアってどんな病気?
先天性と後天性
  イメージ画像 横隔膜ヘルニアには、先天性のものと、後天性のものとがあります。
 横隔膜の裂孔(裂けた孔)から、腹部臓器が胸腔内や縦隔内に脱出した状態です。
先天性には3種類
   先天性の横隔膜ヘルニアには、ボックダレック孔ヘルニア(後外側裂孔ヘルニア)、傍胸骨穴ヘルニア、食道裂孔ヘルニアの3種類があります。
 後天性の横隔膜ヘルニアは、外傷性の後天性横隔膜ヘルニアがあります。



ボックダレック孔ヘルニアの原因は?
胎生期にボックダレック孔が閉じない
  イメージ画像 普通は、胎生8週〜9週ころまでに横隔膜が形成されますが、この時期までに横隔膜の後外側孔が閉じられないと、腸管が胸腔内に陥入して、ボックダレック孔ヘルニアが起こります。胎児期から内臓が肺や心臓を圧迫しているため、生まれつき肺の低形成がみられます。
 ボックダレック孔とは、横隔膜の後外側孔のことを指します。ちなみにボックダレックとは解剖学者のボックダレック氏の名前です。そのため別名、後外側裂孔ヘルニア(こうがいそくれっこうへるにあ)とも呼ばれます。ボホダレクヘルニア、ボホダレク孔ヘルニアとも呼ばれます。
発生頻度
   先天性横隔膜ヘルニアの中では、ボックダレック孔ヘルニアの発生頻度がもっとも高く、出生児2000人〜3000人に1人の割り合いで発症が報告されています。
 横隔膜の左右どちらにも発症しますが、左側に多くみられます。

ボックダレック孔ヘルニアの症状は?
多くは産まれてすぐに発症
   ボックダレック孔ヘルニアの症状の程度は、発症の時期によって異なります。
 多くの場合、出生直後から重症の呼吸不全、高度のチアノーゼをともなった多呼吸が認められます。胸部は樽状に膨隆(ぼうりゅう)し、腹部は逆に陥凹(かんおう)しています。
 呼吸障害が強く、出生直後から人工呼吸管理が必要になります。
遅発型ボックダレック孔ヘルニア
   特殊な例としては、出生直後には呼吸症状は示さないことがあります。年長になってから、風邪をひいて強い咳をした時、腹部を打撲した時などに発症することがあります。
 このようなタイプは、遅発型ボックダレック孔ヘルニアと呼ばれています。

ボックダレック孔ヘルニアの診断は?
出産前に診断できることもあります
   患側の胸部で腸雑音を聴診できることがあります。
 胸部単純エックス線検査によって、確定診断が可能です。
 最近では、出生前に胎児超音波検査で発見できる場合が多くなりました。出生前に診断ができた場合、周産期センターに母胎を搬送し、新生児科医、小児外科医の立会いのもとで分娩し、出生後すぐに治療を開始します。

ボックダレック孔ヘルニアの治療法は?
横隔膜形成術
   呼吸、血液、心臓の状態が良好で、動脈血中酸素飽和度が100%以上あれば、開腹して横隔膜形成術を行います。
 呼吸不全、高度のチアノーゼが認められ、動脈血中酸素飽和度が低下している場合は、呼吸循環動態を安定させてから、横隔膜形成術を行います。横隔膜の欠損が大きい場合は、人工膜を使用します。
呼吸を安定させてから手術
   呼吸循環動態を改善させるために高頻度換気装置、一酸化窒素ガスを使用し、人工肺装置を数日間使用して、動脈血中酸素飽和度を改善させ、呼吸循環動態を安定させてから横隔膜形成術を行います。
 一酸化窒素(NO)には、肺胞血管を拡張させる作用があります。また、人工肺のことをECMOと呼ぶことがあります。

ボックダレック孔ヘルニアの予後は?
発症時期によって異なる予後
   出生後24時間以内の発症例では、予後が悪く、救命率は60%〜70%とされています。
 年長児で発症する遅発型ボックダレック孔ヘルニアでは、救命率は100%です。



傍胸骨孔ヘルニアの原因は?
横隔膜と胸骨の付着が弱い
  イメージ画像 横隔膜が肋骨に付着する部分が弱い場合、傍胸骨孔(ぼうきょうこつこう)ヘルニアが起こります。
 縦隔は腹腔よりも圧力が低いので、横隔膜が弱いと腹圧によって腹腔内臓器が肋骨後部に脱出します。
 胸骨左右に発症し、右側をモルガニー孔ヘルニア、左側をラレイ孔ヘルニア(ラリー孔ヘルニア)と呼びます。また、傍胸骨孔ヘルニアのことを、モルガニヘルニア、傍胸骨ヘルニアとも呼びます。

傍胸骨孔ヘルニアの症状は?
ほとんど無症状
   通常はとくに症状はなく、風邪で医療機関を受診し、胸部単純エックス線検査で偶然発見されることが多いです。

傍胸骨孔ヘルニアの診断は?
エックス線検査やCT検査
   胸部エックス線検査、CT検査、バリウム注腸などの消化管造影検査で確定診断が可能です。

傍胸骨孔ヘルニアの治療法は?
無症状でも手術
   無症状でも自然治癒はしません。
 消化管閉塞を起こすことは極めてまれですが、発見次第開腹し、横隔膜の弱い部位を縫縮補強(ほうしゅくほきょう)します。
 最近では傷の小さい腹腔鏡手術も行われるようになりました。
 予後は良好です。



食道裂孔ヘルニアってどんな病気?
すべての年齢で発症
  イメージ画像 食道が横隔膜を貫通する部位に発症します。
 全年齢を通して発症し、さまざまな症状が現れます。高齢になるにしたがい、肥満、妊娠、背中が丸くなる亀背などの影響を受けて発症します。高齢女性に多い傾向があります。成人の横隔膜ヘルニアの80%〜90%を占め、脱出臓器は胃です。
 先天性と後天性があり、病型では滑脱型(胃の噴門部脱出)、傍食道型(胃底部が脱出)、両者が混合する混合型の3つに分類されますが、ほとんどが滑脱型です。

食道裂孔ヘルニアの原因は?
食道を取り囲む横隔膜が弱い
   先天的に食道裂孔が広かったり、横隔膜の形成が不十分な場合は、幼小児や青少年に発症します。しかし老壮年期に発症するものの方が多くみられます。
 加齢によって横隔膜裂孔の靭帯が弱くなったり、伸びきったりして、噴門部の固定状態が悪くなるためではないかと考えられています。
 肥満、外傷も原因と考えられています。

食道裂孔ヘルニアの症状は?
胸焼け、貧血、嘔吐など
   多くは無症状で、健診で偶然発見されることがあります。
 食後に強まる胸焼け・食道炎、貧血(食道炎から潰瘍ができ出血します)、嘔吐、栄養障害、発育障害(胃が陥入しているため十分な経口栄養摂取ができない)、下血などの症状があらわれます。
 胃の脱出が進むと、逆流性食道炎を合併します。胃液が食道内に逆流するため、胸焼け、胸骨の裏側が圧迫されるような痛み、つかえ感が現れます。

食道裂孔ヘルニアの診断は?
消化管造影検査、内視鏡検査
   食道胃透視検査、内視鏡検査でヘルニアの程度と逆流性食道炎の有無を調べます。食道内圧や、pHモニタリングという食道内の酸性度も調べます。
 食道狭窄の程度が大きい場合は、食道ガンとの区別が重要になります。

食道裂孔ヘルニアの治療法は?
保存的治療法
   症状がなければ、治療の必要はありません。
 胸焼けなどの症状がある場合は、逆流性食道炎を防ぐために制酸薬、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬、H2受容体拮抗薬、消化管運動賦活促進薬などを服用します。
 さらに普段の生活から、食後すぐに横にならない、就寝時には胃液の逆流を防ぐために頭部を高くするなどを心がけます。肥満予防をはかることが大切です。
手術
   保存的(内科的)治療で改善がみられなかったり、胃の大部分が胸腔側に脱出して圧迫症状が強いもの、元の位置に戻らなくなる嵌頓の恐れのある傍食道型では、手術をしなければなりません。食道狭窄、潰瘍、ガンなどを合併している場合も、手術の対象となります。
 手術では、脱出した胃を腹腔内に戻し、裂孔を縫い縮めて、胃液が食道に逆流しないようにします。最近では腹腔鏡手術も行われています。



後天性横隔膜ヘルニアの原因は?
外傷性のもの
  イメージ画像 多くの場合、交通事故、高所からの転落などによる外傷性のものになります。まれに、数年後に発症する場合もあります。
 鈍的腹部打撲(鋭利な物でなく石や柱などによる腹部打撲)、転落などが原因で発症します。
 通常、左側に多く発症し、胃、小腸、大腸など、さまざまな臓器が脱出することがあります。

後天性横隔膜ヘルニアの症状は?
胸の痛み、呼吸困難
   受傷直後の胸部の強い痛み、呼吸困難、嘔吐、ショック、チアノーゼが認められます。
 聴診では患側で胸部呼吸音の減弱、胸腔内で腸雑音が認められることがあります。

後天性横隔膜ヘルニアの診断は?
エックス線検査、CT検査
   胸部単純エックス線検査、CT検査で診断が可能です。

後天性横隔膜ヘルニアの治療法は?
緊急手術
   緊急手術を行い、臓器を元の位置に戻し、横隔膜の破裂部位を縫合します。このとき、腸管などの他の臓器損傷に注意します。
 予後は合併症にもよりますが、多くの場合は良好です。



横隔膜ヘルニアかなと思ったら?
高齢の女性
  イメージ画像 高齢の女性が、食後に強まる胸骨後部痛や、胸焼けを感じたら、食道裂孔ヘルニアの可能性があるので、内科を受診するようにしましょう。
出生直後
   ボックダレック孔ヘルニアや、傍胸骨孔ヘルニアは、出生直後のチアノーゼなどから、産婦人科医が気が付きます。
交通事故や転落事故
   交通事故や、高所からの転落事故の後、胸骨下部の強い痛み、呼吸困難などを感じたら、早めに内科か外科を受診するようにしましょう。
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