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外耳道損傷(がいじどうそんしょう) 鼓膜炎(こまくえん) 中耳炎
耳小骨脱臼(じしょうこつだっきゅう) 中耳炎 内耳炎
鼓膜は、皮膚、結合織(けつごうしき)の線維層、粘膜の3層構造の丈夫な膜です。厚さは0.5mm〜0.9mmで非常に薄く、直接的な外力にわきわめて弱いです。空気の振動を、人体でもっとも小さな耳小骨(じしょうこつ)を介して、内耳に伝えます。 鼓膜に対して、綿棒などで外力が直接加わり傷を付けたり、飛行機の激しい昇降時の気圧変動などを介して直接的に傷が付いた状態を、鼓膜損傷と呼びます。
耳かき、綿棒、マッチ棒、ヘアピンなどによる、耳掃除に関連する鼓膜損傷が、全体の半数弱を占めます。 耳掃除中に子供やペットがぶつかり、耳を突いてしまうことが多いので、注意が必要です。本人の不注意や、誤りで鼓膜を突いてしまうこともあります。
平手打ち・びんたなど、殴打による鼓膜損傷が約30%を占めます。 ボールをぶつけるなど、スポーツ関連の事故が約20%を占めます。 このほか、頭部外傷、爆風、外耳道異物、溶接の火花や赤熱した鉄粉が内耳に入る、吸引による外耳道内気圧の瞬間的な激変でも、鼓膜損傷を起こすことがあります。 女性より男性の方がやや多く、60%強が男性です。10代〜20代が大半を占めます。
直接的な外力によって損傷を受けると、鼓膜の破れる音と、鋭い痛みが起こります。間接的な外力による損傷では、鼓膜の破裂する大きな音が聞こえますが、痛みは直接的な外力を受けた時ほど激しくありません。 鼓膜損傷の症状は、損傷の大きさによって異なります。代表的な症状は、耳痛、耳鳴り、難聴です。 穿孔(せんこう)が大きければ、難聴、耳痛をともなうことが多く、耳の詰まった感じ、出血がみられます。 感染が起こると、数日後に耳漏(じろう)が出ます。
耳かきなどが深く入り、耳小骨の連結に異常があれば、難聴の程度も強くなり、内耳に障害が起こりめまいをともなうこともあります。 めまいは、内耳と繋がっているアブミ骨の脱臼が起こり、蝸牛(かぎゅう)の外リンパ液が漏れているために起こります。これを、外リンパ瘻と呼びます。 耳かきなどの耳の中での方向によっては、顔面神経麻痺も起こります。
頭部外傷による頭蓋底骨折では、髄液が耳管を通り鼻に流れ出たり、鼓膜穿孔から耳漏のように流れてくることもあります。
内耳に障害がある場合、聴力検査を行います。難聴の程度、内耳障害の有無、耳小骨連鎖の離断が予測することができます。 鼓膜穿孔の診断は、額帯鏡(がくたいきょう)、オトスコープ、顕微鏡、ファイバースコープを使うことで、容易に診断可能です。
高度難聴がある場合、CT検査を行います。骨折、変位、出血の有無などを調べる必要があります。 めまいがある場合、外リンパ瘻を疑い、平衡機能検査を行います。
受傷直後に耳垂れなどがなければ、出血などを綺麗に清掃するのみで、特に処置をせず、経過観察を行います。 感染予防のための抗生剤を数日間服用することもありますが、最近では抗生剤の服用は慎重に検討される傾向になっています。
穿孔周囲の鼓膜が折れて重なっている場合、自然治癒は難しいため、顕微鏡で見ながら元の位置に戻します。 めまいなどの症状から内耳障害が疑われる場合、副腎皮質ステロイド薬を併用する必要があります。 感染を起こして耳垂れが出ている場合、耳鼻科での局所清掃を行い、アミノ配合体を含まない抗生剤の点耳薬、内服薬を数日間服用します。
3週間〜4週間経過しても、損傷部が小さくならない場合、硝酸銀(しょうさんぎん)などの薬品を使って、穿孔の周辺を処置し、鼓膜に和紙などを貼って治癒を促すことがあります。 1週間〜2週間ごとに、和紙のズレや穿孔の大きさを検査します。 こうした治療によって、90%以上は自然に穿孔が閉鎖します。 外傷から時間がたっている場合、顕微鏡を使って鼓膜の穿孔縁を処置したのち、3Mテープ、キチン膜、コラーゲンシートなどで閉じます。
3ヶ月経過しても穿孔が閉鎖しない場合、鼓膜形成術を行います。穿孔が大きいと閉じにくいので、耳後部の筋膜や結合組織をフィブリン糊で接着する方法があります。 短気入院で手術を行いますが、耳小骨に異常がなければ外来で行うことも可能です。
鼓膜損傷後は、中耳炎、耳漏、難聴になりやすいため、患部を清潔に保って炎症の拡大を防ぎ、耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。鼓膜損傷だけでなく、他にも障害が起こっている可能性もあるので、自己判断せずに専門医を受診してください。 顔面神経麻痺、脳脊髄液漏がみられる場合、早急に専門的治療を必要とします。
周りに子供がいる場所では耳掃除をしない、溶接などの作業を行う時は耳栓を使用するなど、予防に努めてください。
治療中は、入浴、洗髪などで、耳の中に水が入らないように気を付けてください。