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急性中耳炎


急性中耳炎の概要は?

おもな症状

 

耳痛
難聴
耳鳴り
耳漏・耳垂れ
発熱

似ている病気

 

慢性化膿性中耳炎

起こりやすい合併症

 

風邪


急性中耳炎ってどんな病気?

中耳の炎症

 

イメージ画像 中耳と鼻の奥は、耳管と呼ばれる細いトンネルで繋がっています。
 風邪を引いた時などに、鼻の中で増殖した細菌が耳管を通過し、細菌がいないはずの中耳に入り込んで炎症が起きた状態を中耳炎と呼びます。乳幼児の急性感染症の代表的な病気です。

子供に多い病気

 

 子供の耳管は、大人に比べると太くて短いため、耳管から中耳へ菌が浸入しやすい構造になっています。しかも菌を除く免疫の働きが未熟なため、中耳炎を起こしやすいです。
 6ヶ月〜2歳の子供に発症することが多い病気です。急性中耳炎の50%以上が、上気道炎に続いて発症します。
 また、季節的に鼻炎になりやすい冬〜春にかけて、多くみられる病気です。


急性中耳炎の原因は?

細菌の感染

 

イメージ画像 急性中耳炎の原因菌は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリスによる感染がほとんどを占めます。最近では、ウイルス感染の関与も考えられています。
 細菌、ウイルス感染症、鼻副鼻腔炎咽頭炎などの上気道感染症に続いて、上咽頭から耳管を経由して炎症が及びます。このような感染を経耳管感染と呼びます。
 鼓膜に小さな穿孔がある場合、洗髪や水泳の後に、外耳道側から細菌が浸入して中耳炎を起こすことがあります。このような感染を経外耳道感染と呼びます。

耐性菌の出現

 

 最近では、抗生物質の効かない薬剤耐性菌が急増しています。耐性肺炎球菌、耐性インフルエンザ菌の頻度が急増しています。ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)が注目されています。
 中耳炎が重症化したり、症状が長引く難治性、何度も繰り返す反復性の中耳炎も増えてきており、薬剤耐性菌が子供の中耳炎の原因菌として問題になっています。

反復性中耳炎

 

 保育園や幼稚園など、集団保育を受ける環境では、反復性中耳炎が増加している傾向があります。


急性中耳炎の症状は?

耳痛・耳垂れ・発熱・耳閉感

 

イメージ画像 鼻水や咽喉の痛みなど風邪のような症状に続いて、耳痛、耳垂れ、発熱、耳閉感などがおもな症状です。急に耳の奥に刺すような強い痛みがあり、耳が塞がって聞こえにくく感じます。小さな子供の場合、耳痛を訴えず、発熱のみのこともあります。乳幼児では39℃以上の発熱があることも少なくありません。
 子供の場合、小児科を受診することが多いですが、早期診断・早期治療のために、耳を気にしている様子が見られる時は、耳鼻咽喉科専門医の診察を受けるようにしましょう。

乳幼児では

 

 「耳が痛い」と言うことができない乳幼児の場合、耳に手をやる仕草や、泣いてぐずる、不機嫌で眠らないなどの行動がみられます。
 耳の中から粘液が出てくる耳垂れで、中耳炎に気が付くこともあります。

悪化すると

 

 中耳炎が進行すると鼓膜が炎症によって脆弱化し、中耳内に溜まった膿汁の圧によって鼓膜に穴が開く鼓膜穿孔が生じ、耳漏・耳垂れが認められます。耳漏が生じると、中耳圧が低下して耳痛も軽快するのが一般的です。


急性中耳炎の診断は?

鼓膜の観察

 

イメージ画像 耳鏡や内視鏡検査で鼓膜を観察することで、診断は容易です。
 鼓膜の発赤、腫脹、膿の貯留による混濁が認められます。穿孔(せんこう)がある場合、拍動性の耳垂れの流出が起こります。
 治療とともに鼓膜は急速に改善するので、治療効果の観察のためにも、鼓膜の所見は重要です。

合併症と細菌の検査

 

 発熱などの全身症状が強く、外耳道が狭くなっている場合、乳様突起炎(にゅうようとっきえん)のような重篤な合併症を併発していることが多いので、注意が必要になります。
 近年、耐性菌の増加があるため、初診時に細菌検査を行うことも大切です。
 耳垂れの他、上咽頭分泌物を検査することもあります。この検査方法は、細菌の陽性率が高くなります。

聴力検査

 

 軽度の難聴が一時的に起こります。特殊な菌による感染、重篤感染時には、内耳性難聴を起こすこともあります。
 耳閉感が強い場合、難聴の自覚が強い場合、純音聴力検査を行い、難聴の程度や性質を知る必要があります。

鼻の中の検査も併せて行う

 

 鼻炎や副鼻腔炎を併発していることが多いため、鼻の中の診察も行います。


急性中耳炎の治療法は?

抗生物質の内服

 

イメージ画像 抗菌薬の内服が基本的な治療法です。通常、ペニシリン系抗菌薬が最初に選択されます。
 内服を始めて1週間以上効果がみられない場合、内服後の鼓膜の変化、細菌検査の結果などを参考にして、もっとも効果的な抗菌薬に変更します。
 症状が軽く、薬剤耐性菌がいない場合は、抗菌薬を使わずに鎮痛薬の内服だけで経過観察を行うこともあります。
 耐性菌が原因菌と診断された場合、点滴静注、局所の洗浄などが行われます。

鼓膜の切開

 

 膿汁(のうじゅう)が鼓膜内に充満する場合、鼓膜切開を行うことで、発熱、耳痛などの症状を軽快させることができます。鼓膜切開はイオントフォレーゼという麻酔方法で比較的容易に外来で行えますが、鼓膜の炎症が強い場合はすでに鼓膜の知覚神経が麻痺しているため、無麻酔でも鼓膜切開が可能です。
 鼓膜は切開しても数日で閉鎖し、難聴などの後遺症は残さないので、必要な時は怖がらずに鼓膜切開を受けてください。

同時に行う他の病気の治療

 

 急性中耳炎の患者さんでは、同時に鼻炎や上気道感染をともなっていることが大半のため、鼻炎や上咽頭の治療が必要になります。
 膿性鼻汁(のうせいびじゅう)の多い患者さんでは、吸引、鼻洗浄などの処置を行います。

重症の場合

 

 重症の患者さんには、点滴静注が行われます。
 発熱が続いたり、難聴、顔面神経麻痺などの合併症が生じた場合、乳突削開術(にゅうとつさくかいじゅつ)と呼ばれる緊急手術による排膿が必要になります。

繰り返す場合

 

 中耳炎を繰り返す反復性中耳炎は、アデノイドなど鼻咽腔(びいんくう)に細菌が常在し、耳管を経て中耳腔に細菌が感染する場合と、滲出性中耳炎のように中耳腔に慢性的に浸出液が溜まっている場合が考えられます。
 鼻咽腔の感染巣に対する治療や、鼓膜チューブの留置を行う場合もあります。


小児急性中耳炎診療ガイドライン

15歳以下のガイドライン

 

イメージ画像 15歳以下の患者さんには、小児急性中耳炎診療ガイドラインが作成されています。このガイドラインの目的は、抗菌薬の適切な使用によって抗菌薬の効かない薬剤耐性菌の増加を防ぐことにあります。
 軽症の急性中耳炎では3日間は抗菌薬を使用せずに経過観察を行い、症状が悪化する場合には中等症と同様に抗菌薬を内服し、重症の場合には5日間の抗菌薬内服に加えて鼓膜切開の適応を考慮することが推奨されています。

薬剤耐性菌の急増

 

 近年、急性中耳炎の起炎菌である肺炎球菌やインフルエンザ桿菌における薬剤耐性菌の増加が問題になっています。
 薬剤耐性菌とは、殺菌するために使用する抗菌薬・抗生物質に抵抗性を獲得した細菌のことで、これら薬剤耐性菌が急増した背景には、新しいセフェム系抗生物質を始めとする抗菌薬の不用意な使用があると言われています。
 このため、不要な抗菌薬の使用を最小限にするために小児急性中耳炎ガイドラインが作成されました。抗菌薬の選択は、単に抗菌力の強弱だけでなく、薬効が中耳粘膜の炎症部位に十分達するかどうかを考える必要があります。

点耳薬による治療

 

 最近では、上のような考えに従って内服抗菌薬が選択されますが、必要によっては抗菌薬の局所投与(点耳療法)を併用する場合があります。
 点耳療法は内服薬の100倍〜1000倍の濃度に達すると言われており、内服治療で回復しない場合には局所投与の効果が期待できます。しかしこの方法では、有効な抗菌薬の濃度を維持する必要があり、現在使用されている点耳薬では有効濃度の維持が難しいと考えられています。このため、今後の点耳薬の改良が期待されています。


急性中耳炎かなと思ったら?

小児科か耳鼻科へ

 

イメージ画像 中耳炎はごく一般的な病気です。小児科単独で診察することも多い病気ですが、一時期減少していた合併症が、耐性菌の増加によって増えてきている傾向があります。
 症状が長引くようであれば、耳鼻科専門医による診察を受けるようにしましょう。

夜に突然の発症

 

 夜間や日曜祝日など、病院が診療をしていない時間帯に耳の痛みが強くてツライ時は、市販の鎮痛薬を服用して安静を保つようにしましょう。鼻を強くかみすぎないようにして、翌朝、耳鼻科を受診するようにしてください。
 鼻詰まりがひどい時は、温かい物を食べたり、蒸しタオルなどを通して呼吸することで、一時的に鼻が通るようになります。
 耳が痛い時は、耳の周囲を冷やすのも効果があります。特に急性中耳炎では、お風呂などに入浴して極端に温めることで症状が悪化してしまいます。耳を温め鼓膜穿孔させて排膿を促し耳痛を軽快させる方法もありますが、悪化させる可能性もあります。また、運動で汗をかいたり、お酒を飲むと、拍動性の耳鳴りが現れ病気を悪化させてしまいます。

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