そらいろネット > 家庭の医学 > 耳の病気 > 真珠腫性中耳炎
悪臭のある耳漏 難聴 耳鳴り 頭重 めまい 顔面神経麻痺
慢性化膿性中耳炎 急性中耳炎
比較的高度な難聴が主体の疾患で、病気がある程度進行してから、さまざまな中耳炎の症状を起こす病気です。 正常な鼓膜は太鼓のようにピンと張った膜ですが、鼓膜の一部が奥に入り込んでいくのが真珠腫性中耳炎です。 鼓膜や外耳道の皮膚組織の一部が中耳腔に侵入し、増殖します。病変が白く真珠のようにみえることから、真珠腫と呼ばれています。
慢性中耳炎のひとつの形に属します。中耳の炎症が続くと、中耳の奥にあるハチの巣状の骨の乳突洞(にゅうとつどう)や、上鼓室(じょうこしつ)に炎症が及びます。さらに中耳の換気状態が悪くなると、真珠腫性中耳炎が発症します。 滲出性中耳炎が長引き鼓膜が内側にくぼんだことから皮膚組織が中耳に侵入して形成される場合と、慢性中耳炎の鼓膜穿孔から皮膚組織が中耳内に侵入する場合とがあります。 癒着性中耳炎(ゆちゃくせいちゅうじえん)に続いて、起こることもあります。 鼻すすり癖のある人に、発症しやすいと言われています。
奥に入り込んだ鼓膜が、さらに深部へと進むと、さまざまな症状が現れます。 強い炎症や骨破壊が生じて、悪臭のあるドロっとした耳垂れ、難聴、めまい、耳鳴り、顔面神経麻痺などを合併します。 細菌の混合感染を起こして急性増悪すると、粘膜縁や穿孔縁からポリープができたりして、耳漏が血性になることがあります。 真珠腫性中耳炎は、一般的な慢性中耳炎よりも重い病気です。慢性化膿性中耳炎と異なり、風邪症状にともなって症状が悪化したり、耳漏が多くなったりすることはありません。
耳小骨が破壊されると難聴を起こし、さらに真珠腫が内耳へ増殖すると、蝸牛(かぎゅう)が障害されて回復が難しい強い難聴を起こすことがあります。 伝音難聴、もしくは感音難聴をともなった伝音難聴の混合難聴が主体です。聴力レベルが40デシベル〜60デシベルなので、慢性化膿性中耳炎に比べると、聞こえが悪いことが多くなります。
真珠腫が半規管(はんきかん)や前庭(ぜんてい)へ増殖すると、めまいが起こります。 耳の中を触ると起こるめまいを瘻孔症状(ろうこうしょうじょう)と呼び、半規管や前庭が真珠腫で破壊されているサインとなります。
顔面神経は中耳内を走行していますが、真珠腫が顔面神経を圧迫したり、炎症が神経に及ぶと、顔面神経麻痺が起こります。
そのまま放置しておくと、真珠腫が中耳と頭との境の骨を破壊し炎症が波及して、髄膜炎や脳膿瘍(のうのうよう)を起こし、生命に関わる場合もあります。
真珠腫性中耳炎は、耳漏、炎症を繰り返していること、後天的な病気であることが、先天性真珠腫との大きな違いです。 先天性真珠腫は、生まれつき真珠腫組織が中耳などに入り込むことで起こります。
鼓膜に真珠腫病変が見られることが多く、診断は鼓膜を良く見ることが第一です。 手術用顕微鏡、拡大耳鏡、内視鏡を使って、鼓膜を良く観察し、真珠腫の侵入部位、鼓膜の癒着、耳小骨(じしょうこつ)の状態を検査します。 検査と同時に、局所治療を行い炎症を抑えます。
真珠腫性中耳炎の診断には、側頭部ターゲットCTが必須の検査になります。 CTによって真珠腫の進展範囲、内耳瘻孔(ないじろうこう)や硬膜露出の有無、骨破壊、耳小骨の破壊の有無を診断します。
聴力検査では、真珠腫による伝音難聴(でんおんなんちょう)、混合難聴(こんごうなんちょう)の程度を把握するために実施します。
入り込んだ鼓膜の中には耳垢のような物が溜まり、細菌が感染すると病気がさらに悪化してしまいます。 真珠腫がある部分を丁寧に清掃して、抗生剤の点耳や内服で、一時的に症状は改善されます。 しかし、一時的に症状が改善されたからといって、安心してはいけません。放置しておくと必ず再発し、増悪してしまうのが、真珠腫性中耳炎の特徴です。手術できない場合、保存的治療法で病気の進行を遅らせます。
根治療法には、手術で鼓室形成術を行う必要があります。病変の範囲によっては、乳突洞削開術(にゅうとつどうさくかいじゅつ)なども必要になります。 慢性中耳炎とは異なり、真珠腫性中耳炎では手術後の再発が問題となります。より熟練した、慎重な手術が求められます。 真珠腫の完全除去、伝音連鎖の再建と鼓膜の形成を行います。重症の真珠腫性中耳炎では、2回に分けて手術を行う段階的手術も行われています。 最近では手術方法がとても改良されているため、難聴もかなりの確率で改善します。
放置しておくと重大な合併症を招くことがあるので、適切な治療が必要な病気です。滲出性中耳炎はきちんと治療することが必要です。とくに鼓膜の上方の弛緩部が陥凹している場合、耳鼻咽喉科による長期間の経過観察が必要になります。 小児期に真珠腫が疑われる場合、病気がある時期を境に急な進展、増悪を起こすため、注意が必要です。 完全に治すためには、手術が必要です。手術後も再発の可能性があるため、必ず外来通院しるようにしてください。