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自分の意思をは関係なくあらわれる、目的のない異常運動のことを、「不随意運動」と呼びます。ですが、専門的には多種多様なものがあります。
脳梗塞、脳出血、神経変性疾患などによって、大脳基底核などの錐体外路(すいたいがいろ)に障害が起こるとあらわれることがあります。 それ以外にも、薬の副作用によってみられることもあります。また、原因がとくにはっきりしないこともあります。
錘体路は、随意運動に関与するもので、前頭葉(ぜんとうよう)の運動野から延髄の錐体交差で反対側に交差し、脊髄の前角に至るまでをいいます。 この経路は、運動のオン・オフの働きをし、錐体路の障害で運動麻痺がみられます。
また、錐体外路は、大脳深部の基底核を中心とする複雑な経路です。運動、筋緊張を調節する働きがあります。錐体外路の障害では、筋緊張の異常など、さまざまな不随意運動(ふずいいうんどう)がみられます。
振戦(ふるえ)は、律動的に細かく振動するような運動をいいます。安静時にみられる振戦はパーキンソン病の特徴です。 一方で、字を書いたり、物を持ったりするときにみられる振戦は姿勢時振戦と呼ばれます。特に原因がはっきりしない姿勢時振戦のことを、本態性振戦と呼びます。 おもに手に症状があらわれ、時には頭部にも振戦がみられます。それ以外には異常はなく、良性の疾患です。
軽症の場合、治療の必要はありません。 日常生活に支障が出る場合は、アロチノロール(アルマール)、クロナゼパム(リボトリール)の投与によって、振戦を軽くすることが可能です。人によっては、飲酒によって症状が軽くなることもあります。
上下肢全体を投げ出すような、または、振り回すような大きく激しい不随意運動のことをいいます。 バリスムスは、視床下核の脳梗塞や、脳出血による障害で、反対側の上下肢に起こる場合がほとんどです。
バリスムスは、自然に消える場合がほとんどです。治療法としては、ハロペリドール(セレネース)の投与が、比較的有効です。
手足や頭を、ゆっくりとくねらせるような動きをする、不随意運動です。 脳性麻痺(のうせいまひ)、代謝異常などが原因であらわれます。
アテトーゼそのものは、薬物療法による治療効果はあまり期待できません。強い筋肉の緊張をともなう場合には、ジアゼパム(セルシン)などで、筋肉の緊張を軽くさせる程度です。
ジストニアは、筋肉の緊張の異常によって、異常な姿勢・肢位をとるものをいいます。 頚部(けいぶ)の異常姿勢を示す、痙性斜頚(けいせいしゃけい)、字を書く時にだけ手に変な力が入り字が書きにくくなる書痙(しょけい)も、局所の特発性ジストニアに入ります。
アテトーゼ同様、代謝異常によって起こることもあります。他にも、パーキンソン病治療薬、抗精神病薬の副作用によって起こることもあります。 トリヘキシフェニジル(アーテン)などが効果的です。
ミオクローヌスは、手足、全身のビクッとする素早い動きのことです。健康な人でも、入眠時にみられることがあります。 代謝異常が原因で発症することの多い病気ですが、まれな病気です。亜急性硬化性全脳炎(あきゅうせいこうかせいぜんのうえん)、クロイツフェルト・ヤコブ病では、ミオクローヌス自体がおもな症状としてあらわれます。
ミオクローヌスの治療法は、代謝異常が原因の場合は、その原因となっている疾患の治療を行うことで改善されます。 クロナゼパム(リボトリール)が効果的です。
ロジスキネジーは、口をモグモグさせたり、舌をペチャペチャさせたりするような不随意運動のことです。 パーキンソン病治療薬、抗精神病薬の副作用によって、起こることがあります。
日常的に良く見られるまぶたがピクピクしたり、眼が開かなくなる眼瞼れん縮(がんけんれんしゅく)、コップを持った手が震えたりする本態性振戦は、あまり心配の必要のない疾患で、比較的薬が良く効きます。しかし、パーキンソン病にともなう手の震えも本態性振戦と良く似ており、不随意運動が進行性の疾患の初期症状の場合もあります。 不随意運動の起こる原因はさまざまなので、不随意運動がみられるようであれば、神経内科などの専門医を受診するのが良いでしょう。