そらいろネット > 家庭の医学 > 運動器の病気 > 変形性股関節症
脚の痛み 動かし始めや立ち上がる時の痛み 重い物を持ったり、長時間歩くと痛い
慢性関節リウマチ 痛風
股関節に対する血液循環が不十分だったり、関節の酷使で関節軟骨に変性が起きたり、軟骨下骨(なんこつかこつ)に骨改変が起こります。このような結果、股関節の変形や破壊が起こった状態です。
変形性股関節症は、特発性と続発性に分類することができます。 特発性は、解剖学的には正常に発達したのちに、成人になってから発症したものです。高齢者の場合、特発性変形性股関節症が増えています。 続発性はの場合の原因疾患としては、先天性疾患が多く、先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)があります。その他にも、ペルテス病、大腿骨骨頭壊死、大腿骨すべり症などでも起こります。
多くの場合は赤ちゃんの時からの股関節脱臼である先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全からの続発性(二次性)変形性股関節症です。 臼蓋形成不全は、治療しても治っていない人も多く、股関節の骨盤側の受け手である臼蓋が浅い状態で、関節の一部分に荷重がかかりやすいために軟骨がすり減りやすく、変形性股関節症になりやすくなっています。
関節滑膜(かんせつかつまく)に神経はないので痛みは感じませんが、滑膜に繰り返し刺激が加わると炎症が生じて、疼痛を引き起こします。 疼痛は股関節痛とは限らずに、臀部痛(でんぶつう)、大腿部痛、膝上部痛などがあるため、注意が必要になります。 歩行時や運動時に痛みが強く、安静時の痛みは強くありません。痛みの程度は、股関節の変形の程度や、軟骨の磨り減り具合によって異なります。 また、股関節の可動域が制限されます。足がまっすぐに伸びなくなって、広がりにくくなります、あぐらなどもしにくくなります。
疼痛に引き続き、筋委縮が起こり、筋力の低下がみられます。 軟骨と共に骨もすり減ってくると、脚の長さが短くなり、歩きにくくなります。 進行すると関節変形と運動制限が起こり、股関節屈曲拘縮(こかんせつくっきょくこうしゅく)になります。小・中臀筋に機能不全が起こり、歩行が困難になります。
臼蓋形成不全はありますが、軟骨は十分に残っている状態です。長く立っていたり、歩行時に、股関節部に重だるい感じや軽い痛みがあります。休むを症状はほとんど消失します。
関節の軟骨が少しすり減ってきた状態です。 股関節の動きが少し悪くなり、痛みも強くなりますが、休めば痛みはほとんど消失します。
痛みや股関節の動きの制限が強くなります。長く立っていたり、歩いた後の痛みが、休んでも継続します。変形が強い場合、脚が短くなることもあります。長時間続けて歩くことができなくなり、杖なども必要になります。 進行期のエックス線写真を見ると、軟骨の幅が正常に比べて半分くらいに狭くなっています。末期では、軟骨はまったくなくなり、骨の変形もひどくなります。
診断にはエックス線所見で、関節の隙間が狭くなっていること、荷重部の骨頭や臼蓋の骨硬化像、骨棘形成(こっきょくけいせい)、骨嚢胞(こつのうほう)の形成を確認します。 進行すると、関節の隙間がなくなります。 末期になると、骨頭や臼蓋の破壊、変形、関節亜脱臼などが起こります。
補助的な検査として断層撮影、CT撮影も行います。 この他にも、骨シンチグラフィ、MRIも参考になります。 関節液が溜まっているのが認められます。関節液は淡黄色透明で、強い粘り気があります。
関節滑膜の炎症は化膿性の炎症ではないため、細胞数の増加はみられません。血液検査でも、炎症を示す所見はみられません。
変形性股関節症の治療には、保存的治療法と、手術的治療法があります。 病気の進行状況によって、治療法が異なります。前股関節症の時期から年に1回〜2回は整形外科の診察を受け、病気の進行状況を知っておくことが大切です。
保存的治療ではエックス線所見が認められても、疼痛が軽微だったり、持続時間が短い場合に適用されます。 体重のコントロール、筋力の強化が治療の中心になります。体重を減量することで痛みを軽くして、進行を遅らせることができます。歩く時に身体が左右に揺れる人や痛みの強い人には、杖の使用も有効です。 体重のコントロールは、管理栄養士による食事指導、運動処方によって行います。可動域制限が進まないように、脚をまっすぐに伸ばすこと、外側に広げるようにすることが大切です。 股関節に負担がかかるためスポーツには制限されますが、股関節周囲の筋力をつけるためにプールの運動は推奨されています。
内服薬は、消炎鎮痛薬がおもになります。常用すると胃潰瘍などが心配されるため、痛みが強い時だけ、あるいは外出の予定がある時だけ服用するといった服用方法にします。安静時も痛い、痛みで眠れないといった場合、1日2回〜3回、時間通りに飲む場合もあります。 外用薬は、皮膚からの吸収が良い消炎鎮痛薬の入った湿布、または塗り薬を使用します。冷湿布・温湿布のどちらでも問題ありませんが、両方使ってみて自分に合った方を選ぶことも可能です。温湿布は皮膚への刺激が強いため、湿布かぶれが多い傾向があります。
手術的治療は、年齢、性別、職業、社会的環境などを考慮して行われます。臼蓋形成術、寛骨臼回転骨切り術、キアリ骨盤骨切り術、大腿骨骨切り術が多く行われています。 骨切り術は、比較的若年者で多く適応されます。臼蓋形成術は骨を移植したり、臼蓋自体を移動させて股関節のかぶりを大きくする方法です。大腿骨の骨を切って、身体を傾ける方法もあります。 股関節形成術、特に人工関節置換術は、60歳以上の末期股関節症の患者さんに多く行われています。人工関節置換術は長期成績が良好で、リハビリテーションの進みが早いといった利点から、手術件数が年々増加しています。近年では改良が進み、若い人にも行われるようになってきました。 関節固定術は、痛んだ関節を手術で固定する方法です。中年期までの人で、重労働をする人は、人工股関節置換術では早期に緩みなどの問題が出てしまうため、関節固定術を行うことがあります。 頻度は少ないものの術後の合併症として肺塞栓(はいそくせん)、血栓性静脈炎、異所性骨化(いしょせいこっか)などが起こることがあるので注意が必要です。
変形性関節症の人は、肥満の場合が多いものです。体重が多ければそれだけ関節の負担も多くなるので、減量を心がけることが大切です。 若い頃からの生活習慣で重い物を持ったり、和式の生活をしたり、寒いところで働く人は、日常の環境を変えてあげる必要があります。痛む場所を冷やさないようにしたり、サポーターなどで保護するなどの工夫をしましょう。 入浴をして筋肉をほぐしたり、関節を動かしてあげることも大切です。痛いからといって動かさないでいると、関節はかえって悪くなってしまいます。
悪くなった関節を放っておくと、動かしたはずみに急に痛みが強くなって動けなくなってしまうことがあります。 応急処置としては、氷や湿布で冷やすことで痛みは和らぎます。しかし場合によっては温めた方が良い場合もあるので一概には言えません。
痛みが続くようなら、整形外科を受診するようにしてください。